昔々、ある王国に、サキュバスという悪魔があらわれました。
それは男を魅惑し、性的な快感で思いどおりに操ってしまうという恐ろしい魔物でした。
ところが王国一の騎士だった英雄ロッドは、
魔物を退治するために、地下の迷宮へ勇ましく乗り込んでいきました。
彼は王国一の色事師でもあったため、自分の技に自信があったのでしょう。
サキュバスごとき、俺にかかれば処女の小娘も同然さ。
しかし、その言葉を遺して彼はあっけなく帰らぬ人となりました。
それどころか、彼はピンクの触手に捕らえられ、精力の全てを吸い尽くされる様子を、
魔力で全世界の鏡に無修正生中継されてしまったのです。
ごしゅぢんさま、下等な人間などどうなっても構いませんから
どうかこのM豚めの卑しいチ○ポにその針を刺してくださ…あっ、はぁふうぅ〜ん!
拷問は七日七晩休みなく続けられ、
国の英雄が壊れた噴水のように子種を噴きあげ続ける様に
人々は恐れおののきました。
その後なぜか地下迷宮へ押し寄せた男達をエサにサキュバスは更に強くなり、
事態を重く見た国王は、ついに去勢騎士団の編成を決意したのでした。
−−−−−−
ポールは、いえ、その部屋に並ぶ男達はみな緊張していました。
ついにこれから出陣前の最後の儀式が始まるのです。
神殿の中では沢山の僧侶達が、これから戦いに向かう戦士達と、今戦っている戦士達、
そして、道半ばで倒れた戦士達の魂の為に祈りを捧げていました。
静かに大僧正様がポールたちの前に立っています。
大僧正様は一人ひとりの顔を確認すると、ゆっくりと話し始めました。
「よくここまで来ましたね。あなた達は選ばれた戦士。
これから強大な淫魔に立ち向かうことになります。
淫魔は人間の根源的な欲望を食らう恐ろしい魔物、
あなた達はその身を守るために性の快楽を手放さなくてはなりません。
これまでも多くの騎士達が、この国の為、人々の為に
自らの聖剣をこの神殿に捧げていきました。
ごらんなさい。これらが全てあなた達と志を同じくする同志なのです。」
大僧正様はそう言って両手を左右に広げました。
改めて男達はこの部屋の壁を見渡しました。
そこには一面にずらりと銀の台が並べられ、
その一つ一つに、切り離された男の証と、
持ち主の名と所属部隊を記したプレートが飾られているのでした。
胴体と繋がっていないにもかかわらず、
その器官は生気に満ち溢れ、中には猛々しく勃起しているものもありました。
大聖神ファルス様の聖なる力で、
遠く離れてもなお、これらの性器はその持ち主と繋がっているのです。
「残念ながら、すでに命の灯火を絶たれ、帰らぬ人となった者もいます。」
大僧正様は悲しそうな顔で飾られた男性器の一つに手を伸ばしました。
それは元の持ち主の体格を思い起こさせるような立派な生殖器でしたが、
今や力なく垂れ、どす黒い色に変色してしまっています。
おそらく、迷宮の中で命を落としたのでしょう。
大僧正様は祈りの言葉を唱え、死者の剣に口付けを落としてから、そっと聖火にくべました。
巫女の一人がプレートを取り外し、銀の台座を片付けます。
プレートは外の共同墓地に、遺灰と共に眠ることになるのでした。
「しかし、彼らの多くはまだ、あの地下迷宮のどこかで戦いの火花を散らしています。
彼らの勇気と犠牲を無駄にするわけには行きません。
旅立つあなた達に祝福を捧げます。
そして必ずやかの魔物を打ち倒し、この国に平和を。」
大僧正様の合図と共に、数名の巫女達が、聖なる銀のナイフを手に現れました。
このナイフは大僧正様の聖なる力の込められた黄金の聖水で清められており、
魔を払う特殊な力がそなわっているのです。
更に数名の巫女が男達を囲み、その衣服を紐解いて、
長い訓練で鍛え上げられた逞しい裸体をあらわにしました。
元の体格や、肌と体毛の色などは様々でしたが、
皆、屈強で優秀な戦士であることは間違いありません。
彼らの持つ聖なる剣もそうです。
色や形、太さや長さはそれぞれですが、その全てが勇気ある男の証なのです。
それは壮観な眺めでした。
惜しむらくは、その顔や剣の構えに、まだどことなくあどけなさの残る所でしょうか。
実戦に乏しい若者達には、まだ経験が足りないのでした。
ことに最年少のポールは、人に裸を見られることに慣れておらず、
整った顔を赤面させていました。
頬に刻まれた傷は、隊の他の男達と比べても遜色のない程に、彼を大人びて見せていたのですが、
さすがに生まれたままの姿となっては、その未熟さを隠すことはできません。
ナイフを持った巫女達が男達の前にひざまずくと、
彼らは皆その身体を硬くしました。
巫女達は祝福の祈りを呟きながら、
そそり立つ男性自身の根元に鋭い刃をあてがったのです。
「うわああっ!」
悲鳴が響き渡りました。
皆の視線がそちらへ集まります。
ことに男性達の怯えた目が、悲鳴を上げた赤髪の青年の股間を凝視しました。
大僧正様も、ナイフの魔法に不手際があったのかと慌てて駆け寄ります。
幸いなことに、問題はナイフではありませんでした。
敏感な部分を巫女の細い指に支えられた青年が、
緊張のあまりに、その精を巫女の顔面へ放ってしまったのです。
「も、申し訳御座いません巫女様!」
青年は顔を紫色にしながら言いました。
「お気になさらず、よくあることですわ。」
巫女はそう言って頬に流れる粘液をぬぐい、
唇の端についた雫を舌先で舐めとりました。
静かな神殿の中に、男達が唾を飲み込む音が生々しく反響します。
これが仲間のうちでいつも威張り散らしていた青年のことであったので
いつもであれば、彼らは彼を冷やかして笑い者にしていたかもしれません。
しかし、今、彼らはみな同じように急所をさらけ出した姿で、
明日はわが身、いえ、次の瞬間にも、同じ目にあうかも知れぬ立場なのです。
男達は粛々と、厳格な顔つきで、聖なる儀式にその秘所を委ねるのでした。
再び、巫女達のナイフが男達の股間にあてがわれました。
そして、敏感な部分の肌に静かに切り込みが入れられます。
よくあること、という言葉のとおり、
陰茎の切断と同時に数名が吐精していました。
「ううっ…」「ああっ…」
多少の痛みでは毛ほども動じない屈強な男達ですが
この時はかみ殺し切れなかった呻き声が次々とあがりました。
ポールの陰部を捧げ持つ巫女は、
少し祈りの言葉を唱え終わるまでに時間がかかっているようでした。
見たところまだ若いその乙女は、少々遅れながらもしっかりと、
一つ一つの手順をこなしていきました。
自分の陰部に刃が食い込むその瞬間、ポールは思わず目を閉じました。
大僧正様の魔法の効果で、肉体的な痛みを感じることはありませんでした。
しかし、身体の感覚が失われているわけではなく、
冷たい刃が男根を切断すると、ポールは深い喪失感を感じました。
大事なものを奪い取られ、心に大きな穴が開いたような虚無感に、
ポールはもう少しでまるで子供のように泣き叫びそうになりました。
「うわああん、どろぼう! ぼくのオチンチン返してぇ!」
ポールは歯を食いしばってそれに耐え、
無理やり閉じていた目を開きました。
そこには、いつも見慣れているはずの、
しかしなんだか違って見える自分の局部が、巫女の白い手の中に握られていました。
巫女は最後の祈りの言葉を呟くと、
若き戦士の聖なる剣の先端に、恭しく口付けを落としました。
もはや肉体には繋がっていないにもかかわらず、
ポールは亀頭の先端に、巫女の柔らかな唇を感じました。
途端にこぼれ出た粘液が、巫女の唇との間に透明の糸を引きます。
巫女はつつましく口元をぬぐい、ポールに微笑みかけるのでした。
巫女は立ち上がり際に、ポールの耳元にささやきかけました。
「勇者様のご無事を祈っております。お守りにこれをお持ちください。」
そう言って、聖なるナイフを握らせます。
「先輩の司祭様に怒られてしまうので、内緒ですよ。」
冗談めかした言葉に、ポールは微笑みました。
「ありがとう、必ず帰ってきてバレないうちに返すよ。」
小さな声でささやき返すと、巫女はゆっくり頷きました。
「それから、あなたのこれを飾るときには少し皮を引っ張っておきますわ。」
ポールは再び燃え上がるほど顔を赤くしましたが、
大人と背を並べて張り合う若者の矜持を理解してくれた彼女に、少し感謝しました。
切断面に聖水が塗られ、再び男達に服が着せられます。
そこにいるのは、完全な戦士達でした。
ポールは自分の性器を胸元に抱える巫女を見つめました。
気恥ずかしく思いながらも、若い男女は静かに熱い視線を交わします。
男達の弱点であった敏感な器官は、
今や二つの柔らかい膨らみに包まれ、安全に守られているのです。
彼女達の胸元に、じわりと濡れた染みが広がっていましたが、
誰もそれを気にする者はありませんでした。
戦士達は、その聖剣を預けた巫女達に見送られながら、
魔物の待つ迷宮へと旅立って行ったのです。
つづく
-
投稿:2010.10.16更新:2010.10.16
去勢騎士団〜サキュバスの迷宮1
著者 自称清純派 様 / アクセス 32205 / ♥ 1