前話にもどる
魔物の力は強大でした。
一人、また一人と、戦士達は若い命を、魔物の暗い穴の中に散らしていきました。
あるものは、床に仕掛けられた槍に肛門から口まで串刺しにされ、
またあるものは、飛び出した魔獣に生きたままはらわたを食い裂かれ、
そしてまたあるものは、酸の池に落ち苦悶の声を上げながら骸骨となり…
ようやく、サキュバスの住まう最深部へとたどり着いた頃、
戦士達の数は半分以下になっていました。
男達の間には、実戦をくぐりぬけた兵士独特の連帯感が生まれていました。
学生同士のようなベタベタした友情ではありません。
死んだ仲間の亡骸を踏み越えて進みつつ、
なお、お互いに強く思い合う戦士の絆なのです。
男達は死んだ仲間達の声を背負いつつ、
サキュバスの待つ部屋へと踏み込みました。
そこで、男達は驚きの光景を目にしました。
今までの陰鬱な地下道がまるで別世界かのように、
豪華で優雅な貴族の宮殿のような部屋がそこに広がっていました。
シャンデリアには無数の蝋燭が立てられており
壁には妖絶な魔界の花がたわわに飾られ、淫猥な香りを放っています。
そして中央の宝石を散りばめた玉座では
無粋な侵入者達をものともせずに、
優雅なたたずまいで食事を続けるサキュバスの女王が
凄まじいまでの美しさと威厳を惜しげなく振りまいているのでした。
「女王様、デザートを運んでまいりました。」
引き締まった体のサキュバスの一人が、女王の前に大きな皿を台に乗せて運んできます。
皿の上には全裸の人間の男が、特に縛られた様子もなく、おとなしく座っていました。
男は女王の前に運ばれると、自ら脚を抱えて広げ、
自分の男根を魔物に差し出したのです。
「女王様、この日を待ってました。どうか、俺のチ、チンコを、召し上がってください。」
体格に比べてやや小ぶりな陰茎は、男の股間でぶるぶると震えながら、
それでもしっかりと屹立して歓喜の雫を垂れ流していました。
女王は顔をしかめながら、フォークを手に取り、男の亀頭をぷつりと突き刺しました。
「あふうっ!」
張り詰めた薄い皮の破れた部分から、血の玉がにじみ出ます。
「とくに美味そうにも見えんが…」
女王は気だるげにナイフも取り上げ、先端をくびれで切断しました。
悲鳴と共に、切断面から血が噴き出します。しかし噴き出す液体には、白いものも確かに混じっておりました。
女王は交じり合ったピンク色のドレッシングを亀頭の肉にからめると、
見ている者の背筋に鳥肌を立たせるような優雅な手つきで、口の中へと運びました。
「駄目だな。私の口には合わん。素材が悪い。」
女王は顔をしかめました。そして皿を片付けるよう身振りで指示します。
「そ、そんな! ま、まだサオが残って…」
サキュバス達が急いでやってきます。
「申し訳ございませんでした。」
吐き出された肉片が転がっていき、元は地獄の猛獣である小さなキメラがそれを捕まえて飲み込みました。
「お願いします! せめて片方のタマだけでも!」
男の叫びもむなしく、女王の食卓は片付けられました。
残飯扱いの男は、集まってきたインプ達に投げ与えられます。
女王のおこぼれを待っていた醜悪なインプ達は、ここぞとばかりに男に群がりました。
そして持っていた細い管を、いまだ生々しく血を吹く海綿体の切断面に、
各自ズブズブと突き刺していったのです。
「ぎゃああああ!」
苦痛にもがく男の手足を邪魔だとへし折ってしまい、
インプ達は亀頭の代わりに生えたストローから、ジュルジュルと男の血を吸うのでした。
数分もたたぬうちに男の悲鳴は弱って消え、
干からびたミイラのような死体が後に残されました。
「それで、そこの宦官どもは私の宮殿で何をしておるのだ?」
戦士達は魔法が解けたように我に帰りました。
彼らは呆然と無防備に、一人の人間が屈辱的な死を迎える様を眺めていたのです。
彼らは武器を構えました。
「礼儀を知らぬ無礼者め。躾をしてやらねばいかんな。」
女王が指を鳴らすと、奥から二体のサキュバス達が現れました。
「お呼びでしょうか、女王様?」
「調教だ。そこの宦官どもを片付けるが良い。」
片方のサキュバスが頬を膨らませます。
「んもうっ、意地悪だわ、女王様ったら。宦官じゃあアタシ達が楽しめないじゃありませんか!」
「とはいえ、このままのさばらせて置く訳にもいかないわ。テンタークルにやらせましょう」
そう言ってサキュバスは何かの粉をばら撒きました。
「みんなっ! 気をつけろっ!」
仲間の一人が叫ぶのが早いか、
突如壁一面に飾ってあった花が、蔦を伸ばして戦士達に襲い掛かりました。
全方位から囲むように襲い掛かる触手に逃げる術もなく、
男達はあっという間につかまってしまったのです。
魔法の呪文を唱えようとした仲間の口に太い触手が入り込み、乾いた音を立てて頭蓋を突き破ります。
「おイタはしない方が身の為よ。」
サキュバスの片方が言うと、もう一人がくすくすと笑いました。
鋭い葉が器用に鎧の間に突き刺さり、
見る見るうちに、男達の肉体をあばいていきます。
「悔しいっ! こんなに若くてピチピチなのに、肝心のお宝が付いてないなんてっ!」
「人間共も、無い知恵を絞って考えたんでしょうね。無駄なあがきだけど。」
サキュバスの合図で男達の裸体は宙に吊り上げられました。
大股開きでお尻を突き出した不安定な格好です。
片方のサキュバスが戦士の一人に近づいて、その後ろの窄まりへ、無造作に指を差し込みました。
「うああっ!」
驚きと恥辱に悲鳴を上げた戦士を見て、再び魔物はクスクスと笑います。
「うふふっ、ねえ、悔しい? 悔しい?」
身動きの取れない戦士達は、仲間の屈辱にも助けを出せず、怒りに歯を食いしばるのでした。
「ちょっと、一人ひとりに指を使ってたんじゃ、いつまでたっても終わらないわよ。
それに洗ってないから汚れるし。」
「アタシはスカ平気だもーん。でもこの人数は確かに面倒ね。」
「だから、テンタークルに任せなさいって。どうせ宦官なんだから。」
「はーい。」
少し不満そうに指を抜いたサキュバスは、投げキッスをしながら呪文を唱えました。
すると、男達を捕まえていた蔦の間からピンク色の触手がぬらぬらと伸びてきたのです。
男達は恐怖に目を見開きました。
それというのも、このピンクの触手こそ、
かの悪名高き『戦慄の七日間』で英雄ロッドの正気を奪い、
暴虐の限りを尽くした怪物そのものだったからです。
それでも、戦士達は一縷の望みにすがりました。
彼らは性器を地上に残してきたので、彼のように魔物の前で腰を振ってよがることにはならないと…
しかし、彼らの希望は、はかなく打ち砕かれたのでした。
触手が肛門に滑り込んできたとき、最初は不快なだけでした。
ですから、彼らはこれをただの侮蔑の一種と、甘く捉えていたのです。
「あっ…はっ、あぁんっ…!」
戦士の一人が野太い声で甘いあえぎを漏らし始めたかと思うと、
次々に仲間達の声が合唱に加わりました。
ポールは彼らが狂ったのかと思いましたが、すぐに自らの肉体で体感することになりました。
「う、うあああああっ!」
触手のいぼの突起が、前立腺を引っかいたのです。
急所を見つけた怪物は、ここぞとばかりに攻め立てました。
声を殺そうと思っても、勝手に情けない音があふれ出るのです。
すでに戦士達の中には、宙吊りのまま自ら腰を振り、
ぐちゅぐちゅと淫猥な音を脚の間に響かせているものもおりました。
快楽に歪んだ口から、だらしなく涎をたらし、
そんなお互いの顔を見つめて屈辱にさいなまれつつ、
彼らは魔物の虜になろうとしていたのです。
「なかなか良い見世物だ。クズの去勢豚ではあるが、これだけ数がそろうと眺めは悪くない。」
女王の褒め言葉に、サキュバス達は喜びました。
「どれ、こいつらに自らの末路を見せてやるが良い。」
「はーい!」「承知しました。」
明るい返事と共に、サキュバスは一度奥へ戻り、何かの物体を持って戻ってきました。
それは彼らと同じくピンクの触手に縛られた一人の人間のようでした。
しかし、弱弱しくうごめく身体は老人のごとく痩せ細り、
しかしながら、股間に脈打つ陽根だけは、異様なまでに猛々しく太く反り返っているのです。
萎びた口からもれ出るあえぎは消え入りそうなほどなのですが、
その鈴口からあふれ出る体液の量は、
全身にからみついた触手から与えられる快感の強さを物語ります。
ポールは目を見開きました。
自分の見ているものが信じられません。
しかし、たとえ親指を楽に突き立てられるほど尿道口が拡張されていようとも、
ポールはその巨大な男性器に見覚えがありました。
「ロ、ロッド様!?」
そう、そこで魔物の玩具と成り果てていたのは、
かつて千人斬りの異名をとどろかせた、伝説の英雄の宝剣だったのです。
『戦慄の七日間』の後、映像が途切れ、誰もが死んだと、それが慈悲だと思っていた英雄ロッドは、
あれから十年以上の時が流れた今も、この地下の牢獄で永遠の快楽に弄ばれ続けていたのです。
「うふふ、どう? あんた達もこうなるのよ。」
「もっとも、この男は並外れて精力が強いおかげでまだ生きているんだけれどね。」
「そうね、並の男はすぐに干からびちゃうもの。おかげでアタシ達は毎日おいしい白ワインを飲めるのよ。」
「宦官では搾り出せないから、せいぜい観葉人間といったところね。」
サキュバス達は勝手なことを言いながら笑います。
ポールはかつての英雄の、うつろな瞳を見つめました。
昔、まだ彼が小さな子供だった頃、町の子供はみな英雄ロッドに憧れ、
彼のような騎士になるのだと夢見ていました。
時々彼が町の外れに顔を見せると、次々に子供達が群がりました。
たいていの場合、彼はいつも違う顔ぶれの美人を連れていたので、子供達の相手はあまりできていなかったのですが、
その姿がまた少年達の羨望を煽り立てました。
そして『戦慄の七日間』です。
あまりの卑猥な光景に、親達は鏡を見ることを禁じましたが、なにせ世界中の写る物には、全てに写っているのです。
少年達が隠れて見るのを誰も止めることはできませんでした。
ポールもまた、自分のベッドの中にこっそり手鏡を持ち込んで、ロッドの様子をうかがった一人でした。
ポールは、憧れの英雄の口から流れる、卑猥で卑屈な汚い言葉の連続にショックを受けつつも、
初めのうちは、いずれ反撃の時が来ると信じていたのですが、
四日目、五日目と拷問が続き、もはやまともな言葉を発することもできなくなった彼が、
ただその太いペニスの先から、だらだらと精液を垂れ流す様を見て、
悔しいような、憎いような、羨ましいような、なんとも言えない複雑な気分になりました。
そして、七日目の晩が開けた朝日と共に英雄が意識を失い、ようやく映像が途切れたとき、
ポールは自分のベッドの中で泣きながら、自分のまだ小さなペニスを握り締め、必ず彼の仇を討つことを誓ったのでした。
しかし、それがどうでしょう。
今やポール自身もまたかつての英雄と同じようにピンクの触手に捕らえられ、
干からびるまで永遠に弄ばれる運命に陥ろうとしているのです。
ポールは肛門の奥をほじられながら、女のようにアンアンとよがり声を上げ、体をくねらせて、
あの日の数倍の悔しさを胸にむせび泣いたのでした。
つづく
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投稿:2010.10.16更新:2010.10.16
去勢騎士団〜サキュバスの迷宮2
著者 自称清純派 様 / アクセス 16378 / ♥ 2