夏です。プールです。水泳の授業です。
みんながワイワイと大はしゃぎの中で、一人憂鬱な顔をして沈んでいる子がいました。本人は目立たないように心持ち背をかがめているのですが、元が年のわりに長身なので不自然な姿勢が逆に目につきます。
クラス一の長身かつ秀才、落ち着いた言動と大人びた甘いマスクが女子に人気の佐藤君には、一つだけ弱点がありました。彼は泳げないのです。
この学校は海も川も近くにあるので、子供たちはみんな夏になるとそろって遊びにいきます。このクラスで泳げないのは数年前に都会から引っ越してきた佐藤君一人だけ。毎年、夏になると、今まで遊んでいた友達にポツンと置いていかれるので、佐藤君は夏が大嫌いでした。
普通、プールの授業で泳げない子がいるときは、先生がつきっきりで面倒を見ることになるのですが、筋肉マッチョの渡辺先生は脳ミソも筋肉なので、気合と根性しか知らない教えるのはド下手な体育教師でした。去年も夏の間、プールの度に二人っきりの暑苦しいランデヴーを繰り返したのですが、佐藤君の泳ぎは何一つ上達しませんでした。
なので今年の佐藤君のコーチは、水泳部所属の岡本君がやることになりました。最初はほっとした佐藤君なのですが、すぐに今日休まずに学校に来たことを後悔しました。
小柄だけれども活発で色黒の岡本君は、基本的には佐藤君と仲良しなのですが、かなりの毒舌家で教え方もちょっとスパルタなのです。
「死ね、人間のクズが! そのまま沈んで腐れ! 水中で目も開けられない奴が、偉そうに地上の空気吸ってんじゃねぇ! あやまれ! 水の底に頭こすり付けて、今までムダに息してきたことをオレたちにあやまれ!」
佐藤君はあふれる涙をプールの塩素にかぶれた振りでまぎらわせ、繊細なハートについた傷を隠すのでした。
ちなみに、岡本君のやりすぎを心配して二人を見守っているどんちゃんと山田君は、それなりに泳げます。岡本君の剣幕に口を挟むことができず、ただ佐藤君が水中で暴行を受けるのを見ているしかできなかったのですが。
それでも、教え方がうまいのか、毒舌スパルタの効果か、なんとこの日のうちに、佐藤君はぎりぎり25メートル、泳げるようになったのです。渡辺先生は去年何をしていたのでしょう。とにかく、佐藤君のぶるぶる震える手がプールの端にタッチすると、仲良し四人組は歓声を上げました。職人気質の岡本君も、自分の仕事に満足気で上機嫌です。
ところが、そんな四人組を馬鹿にして笑う声がありました。振り返ると、見たことの無い妙に顔色の悪い変なヤツが、プールサイドに座っています。こんなヤツいたっけ? と、四人は思いましたが、プールの授業は隣のクラスも合同なので、よくわかりません。そんなことより、せっかく上機嫌だった岡本君の機嫌を損ねる爆弾発言を彼はかましました。
「お前の泳ぎ下手だなあ」
「誰だよお前、黙ってろボケ。死ね」
ハッキリ言って佐藤君の泳ぎは確かにまだ上手いとは言いがたいですし、そんな正直な感想よりもっと苛烈で残酷な発言を、さっきまで岡本君自身がしていたのですが、自分の仕事にケチをつけられた岡本君は、それを自分に対する挑戦状と受け取りました。
「ヒヒッ、そいつが端から端まで泳ぐ間に、俺なら行って戻ってこれるぜ」
「黙れっつってんだろ。絞めるぞコラ!」
慌てて三人が止めにはいります。岡本君なら、本気で縊り殺しかねません。
「いいよ、岡本、オレ気にしてないよ」
佐藤君は実際悔しかったのですが、親友を殺人者にするわけにはいきません。岡本君の前に立ちふさがり、大人な対応を取りました。が、そんな友情のドラマを無視して、KYな人物が火に油を注ぎます。
「なんならハンデつけてもいい。そこのビート板でも使ってな。ヒヒッ、それとも浮き輪の方がいいかい?」
岡本君はキレました。他の三人も、こりゃダメだと思いました。
「頭きた、だったら泳いで見せてみやがれクソ野郎! そこまで言ってテメエのがしょぼかったらタダじゃおかねェぞ、ハゲ!」
それを聞いた謎の人物はニタリと嫌な笑いを浮かべました。
「いいぜ、でも俺が勝ったらそいつの尻子玉もらうぞ」
「は? なんだって?」
「ヒヒッ、俺カッパだもんよ。勝負に勝ったら尻子玉もらうもんさ。ヒヒッ」
大変です。KYなだけじゃなくて、ちょっとネジがゆるんでいます。どんちゃんと山田君は、何だか嫌な予感がしたのですが、火のついた岡本君を止めることはできませんでした。佐藤君だけは、彼は泳ぎに自信があるんだという意味だと解釈しました。
「ケッ、どこまでもふざけた野郎だな。じゃあ、佐藤が勝ったらテメエの脳ミソ地面に押し付けて削りおろす!」
三人の脳裏に、グロテスクな肉塊を足蹴に返り血を浴びた岡本君の姿が浮かびました。ゾクリと真夏の太陽の下で鳥肌が立ちます。佐藤君は一瞬、勝ってはいけないと感じましたが、負けた場合に削られるのは自分の頭だということに気づくと、真剣に戦う気になりました。裏付けるように岡本君が激励の声をかけます。
「よし佐藤、特訓の成果見せてやれ。後のことは心配すんな。負けたらオレがお前をブッ殺す」
そんなわけで自称カッパと佐藤君の50vs25mのハンデ競争です。
岡本君の合図と同時にプールの両端からスタートする二人。
バシャバシャと音を立てて進む佐藤君の隣で、スイスイとカッパが泳ぎます。自慢するだけあってカッパの泳ぎはなかなか速く、佐藤君もかなり頑張ったのですが、やはり負けてしまいました。
岡本君は悔しそうでしたが、ゲホゲホ言いながら水から上がってきた佐藤君に手を貸しました。なんせ彼はさっきまでまったく泳げなかったのですから。それを考えるとたいしたものです。それをわかっていたので岡本君は佐藤君を責めはしませんでした。その辺はフェアな子なのです。ただ口がちょっと汚いだけで。
ある程度予想通りの結果ではありましたが、腹の立つことには違いありません。顔をしかめた岡本君に、自称カッパはニタニタと笑いかけました。とても嬉しそうです。
「じゃあ約束どおり尻子玉もらうぞ」
「なんだよ、尻子玉って」
一応賭けはしたものの、寄越せといわれても何のことやらサッパリです。イライラしていた岡本君は、ジュースの一本くらいはおごらされる事を覚悟していましたが、それ以上なら殴り倒してうやむやにするつもりでいました。どんちゃんもいるし、相手は喧嘩はそれほど強そうではありません。
カッパはスタスタと佐藤君の前にいくと、まだよく酸素が頭に回っていない佐藤君の水泳パンツに手をかけ、グイと引っぱり下ろしました。
水に触れてちょっと縮んだ性器が、ぷるんと飛び出します。
「えっ…ちょっ…!」
予想外の行動に、前を隠すことも思い当たらなかった佐藤君は、呆然と目を丸くしました。他の三人も、何が起こっているのかわからず、ぽかんとそれを眺めています。
するとカッパは、もう一方の手で佐藤君の股間にぶら下がる袋を握りました。
ぬるっとした感触の冷たい手に敏感な部分を掴まれ、佐藤君の口から思わずひゃっと声が漏れます。そのままカッパはその手に力をこめて、佐藤君のタマ袋を引きちぎってしまいました。四人の耳にブチッという音が響きます。一拍置いて激痛が佐藤君の身体を突き抜けました。
「いっ…てええええ!!」
佐藤君は股を押さえてうずくまりました。
「な、なにしてんだテメエ!」
シワのよった肌色の袋を、手の上でポンポンとお手玉しているカッパに、岡本君が叫びます。
「言っただろう、オレはカッパだよ。勝負に勝ったら尻子玉もらうんだよ」
そして、口を大きく開けると、ペロリと佐藤君のタマを飲み込んでしまいました。
「うーん、うまいねぇ」
あまりのことに、どんちゃんなどは口をポカンと開けたまま固まってしまいました。山田君が慌ててうずくまる佐藤君の様子を確かめますが、なぜか血が流れたりしている様子はありません。
おそるおそる手を放して覗き込むと、縮こまったオチンチンがぷるぷると震えていますが、それを持ち上げると、つるんと肌が続いているだけです。見慣れた袋も、傷口も傷跡も、何もありませんでした。
「バカ、ちょっとまて返せ! 佐藤は医者の一人息子だぞ! タマ取られたら困んだろうがよ!」
岡本君がカッパに詰め寄ります。
「でも、お前ら勝負する時、いいって言ったぜ」
「誰がキンタマちぎって食うなんて思うかよ!」
「じゃあ、お前もう一度勝負するかい?」
待ってましたとばかりに、カッパはニタリと笑いました。
「お前が勝ったらそいつのタマは返してやるよ。でも俺が勝ったら今度はお前のタマをもらうぞ」
岡本君はちょっとためらいました。明らかにこの得体の知れない相手に自分の大事な所を賭けるのは気味が悪いです。でも、元はといえば佐藤君に勝負をけしかけたのは岡本君です。そこに責任を感じていた岡本君は、勝負を受けてしまいました。
カッパは大喜びで気持ち悪い笑い声を上げます。
そこへ、騒ぎに気づいた渡辺先生が、今頃ノコノコやってきました。飛び込む準備をしている岡本君とカッパを見て言います。
「なんだお前ら、何やってんだ」
どんちゃんと山田君が先生に同時に話しかけます。
「あ、センセエ、佐藤がカッパに負けてキンタマ食われたんです」
「それで岡本がもう一度勝負するって。とめてください先生」
「??? なんのこっちゃ…水泳勝負か? 合図出せばいいのか?」
「違うって先生」
そんなわけで自称カッパと岡本君の50vs50mの競争です。
渡辺先生の合図と同時にそろってスタートする二人。さすがは水泳部の岡本君、子供とは思えません。しかし、カッパもさるもの、いいところまでいったのですが、タッチの差で負けてしまいました。
歯を食いしばる岡本君の前にカッパが立ちはだかります。
「ヒヒッ、じゃあお前のタマももらうぞ。約束だ」
「おいおい、スポーツの世界に賭け事を持ち込んじゃいかんぞ。勝負が終わった後は男同士の友情をだな…」
のんきなコメントをかましている先生を無視して、カッパは岡本君の水着もずり下ろします。そして根元にちょっぴりだけ毛の生えたオチンチンの先をひょいとつまみあげると、その下に隠れていた袋を、むしりとってしまいました。そして、わざと岡本君の目の前で見せびらかすように飲み込みます。
それを見た渡辺先生が驚いて声を上げました。
「おいっ! 何をしとるんだ、お前は!」
「ヒヒッ? まだそんなこと言ってるのか? 時代に乗り遅れたオッサンだな」
「今すぐ吐け! すぐに病院に行けば繋がるかもしれん!」
カッパはやれやれと首を振りました。
「だから、何度も言わせるんじゃないよ。俺はカッパなんだから、勝負に勝ったら尻子玉を取るんだ。別にタマが無くたって死にやしないさ。ヒヒッ」
「二次性徴前に睾丸無くしたら問題大有りだろうが!」
カッパの目がギラリと輝きました。
「そんなに言うならあんたがもっぺん代わりに勝負するかい? オッサンの尻子玉なんか抜いてもしかたないけど…キュウリも一緒につけてくれるならやってもいいぜ」
そういってカッパは股間を押さえる二人の少年を指差します。
「あんたが勝ったらこいつらのタマは返してやるよ。でも俺が勝ったらあんたのタマとイボつきキュウリだ」
鼻で笑って見下すカッパの態度が、渡辺先生の怒りに触れました。
「? よくわからんが何でもいい! 子供たちのタマを返せ!」
「先生…キュウリってもしかして…」
「合図を頼むぞ山田! 大人をバカにするとどうなるか見せてやる!」
そんなわけで自称カッパと渡辺先生の50vs50mの競争です。
山田君の合図と同時にそろってスタートする二人。
さすが大人の渡辺先生、脳ミソまで筋肉なだけあってスポーツはお手の物です。途中までは調子よく、ぐんぐん差を開いていったのですが、なんとカッパは今まで手を抜いていたのか、圧倒的な速さで追い抜くと、一気にゴールしてしまいました。
みんなはその人間離れした泳ぎに、ただ呆然とするしかありませんでした。信じられないという顔で水から上がった渡辺先生を、余裕の表情でカッパが待ち構えます。
「さあ、タマとキュウリだな」
カッパは先生の競パンもみんなの前で引っ張りおろして、毛むくじゃらの股間から二つの実を収穫します。カエルのように舌を伸ばして大きな陰嚢をゴクリと飲み込むと、次に先生自慢の大きなペニスも掴みました。
先生の顔がさっと青ざめます。
「ま、待て! キュウリって、キュウリじゃないのか!」
「あん? タマとセットのキュウリが他にあるかよ」
「俺はキュウリと聞いたからOKしたんであって、チンポのことだと知ってたら…」
言い訳を並べようとする先生の言葉をカッパがさえぎります。
「あんた、確か『何でもいい』っつったぞ」
ブチッ。
「ぎゃうっ!」
渡辺先生も股間を押さえてうずくまります。人参か大根のように根っこからズボッと引き抜かれたちょっとグロテスクな大人の肉棒を、カッパはポリポリと、ほんとにキュウリみたいな音を立ててかじりました。
「むん、この歯ごたえがたまらん」
自分を見つめる子供たちの視線に気づくと、カッパは再びニヤリと笑いました。
「どうだ? 他にも勝負して見たいヤツはいるか?」
カッパはみんなに言いますが、さすがに今の泳ぎを見た後では誰も名乗り出ません。いよいよ誰にもタマを取り返すことはできないことを知った暗い面持ちの佐藤君と岡本君は、最後に残った亀頭を舌の上で転がしているカッパを、絶望的な気分で眺めました。
そこへ花子先生がやってきました。
「みんな、プールは気持ちいい? 準備運動ちゃんとしないと駄目よ」
水辺に立つ生徒たちに、保健の先生らしくさわやかに声をかけます。
「…あら? 渡辺先生どうしたの?」
ふと、目の前で、パンツを足首に引っ掛けた格好で、股間を抱えて女座りをしている体育教師に気づくと、花子先生はなんと声をかけたものか少し迷いました。
山田君が花子先生に説明します。
「佐藤と岡本のキンタマが勝負に負けてカッパに食べられちゃって、とりかえそうとした渡辺先生もチンチンごと取られちゃったんです」
「? えーっと、良くわからないけれど…」
確かにそれが実際に起こったことなのですが、無理もありません。
上機嫌のカッパが解説します。
「ヒヒッ、俺との賭け勝負に負けたから、こいつらの尻子玉を抜いておいしくいただいてやったのさ。あんたも勝負して見るかい? ここを一往復だ」
「このレーンを行って戻ってくるだけでいいの?」
「ああ、先に帰ってきたほうが勝ち、簡単だろ? まあ、あんたは女だから勝負してもかけるタマがねぇけどな。ヒヒッ」
カッパは自信満々で言いました。そこへ平然と花子先生が答えます。
「じゃあ私が負けたら、ここにいる男の子全員の尻子玉抜いて食べてもいいわよ」
「えええ! 先生そんな!」
あまりと言えばあまりの発言に、少年たちだけでなく、カッパまでド肝を抜かれました。
「ヒッ!? あんた本気かい?」
「その代わり、あなたが負けたら今まで食べた子供たちのタマを全部返すのよ」
少しあっけに取られていたカッパでしたが、すぐに目の色が変わって熱がこもりました。
「いいねぇ、やってやろうじゃないか」
「決まりね、でも、私今水着を持ってないから家まで取りに帰ってもいいかしら?」
「いいぜ。好きにしな」
「じゃあ私が準備が出来てここに戻ってきたらすぐにスタートね。それまでプールの中で待ってなさい。絶対に逃げちゃ駄目よ」
「ヒヒッ、早く行ってきな」
カッパは余裕綽々です。花子先生は、白衣をひるがえしました。そこへ渡辺先生が声をかけます。
「そ、園田先生、こいつメチャメチャ速いですよ」
渡辺先生は、自分で勝てなかったのだから、女の花子先生に勝てるわけがないと思いました。そんな心配を花子先生は笑い飛ばします。
「大丈夫よ、渡辺先生。私こう見えても、結構速さには自信ありますのよ」
「しかし相手はカッパで…」
花子先生は最後まで聞かずにトコトコと去っていきました。
カッパは超ご機嫌で、プールに飛び込んで、グルグルと泳ぎ回ります。
「ああ、今日は大漁だなぁ。何個食えるんだろう。ひいふうみい…いやあ楽しみだなあ。どれから食おうかなあ。そこのデブ…のはちっちゃそうだな。小柄な奴の方が意外とデカいかなあ」
並んだ男の子たちの股間の小さな膨らみをいやらしい目で眺めながら、ジュルリと音を立てて舌なめずりをします。少年たちは思わず、股間の袋がギュッと縮むのを感じて、両手で急所を隠しました。その姿勢が余計にカッパの笑いをさそいます。エヘラエヘラと、気持ち悪い声がプールに響き渡りました。
その時突然、プールの底の蓋がガクンと開いて、水が外に流れ出しました。有頂天だったカッパは目を丸くします。
「なんだ、なんだ! 何をした!」
プールの水はどんどん減っていきます。慌てるカッパの目の前でついにプールは完全に空になってしまいました。
ようやく水着を着込んだ花子先生が帰ってきました。そして、何事もなかったかのように声をかけます。
「おまたせ。さあ勝負をはじめましょう」
「待て待て! 水が干上がっちまったら泳げねえだろうが!」
花子先生はとぼけた顔で言いました。
「『行って戻ってくるだけでいい』ってあなた言ったじゃないの」
「ふざけるな! 早く水を入れろ! 勝負はそれからだ!」
クスリ、と花子先生は笑いました。
「ダメよ。『私が準備が出来てここに戻ってきたらすぐにスタート』だもの」
カッパはようやく花子先生がわざとプールの栓を抜いたことに気づきました。
「ハ、ハメやがったな!」
「渡辺先生、合図してくださいな」
花子先生は朗らかに言いました。
そんなわけで自称カッパと花子先生の50vs50mの競争です。
…場所はプールですが、種目は陸上です。
渡辺先生の合図と同時にそろってスタートする二人。さすが花子先生、長くスタイルのいい脚は飾りではありません。自信満々なだけあって、ゆうゆうと大差をつけてカッパに勝ちました。
干上がったプールに座り込むカッパに、花子先生が宣言します。
「さあ、私の勝ちよ。約束を守ってもらおうかしら」
「…クソッ、しょうがねえ…」
カッパは口を開くと、ゲロゲロッと百個くらいのタマを吐き出しました。セットで百個なので、二百個なのかな? ちょっとわかりません。
「な、なんじゃこりゃ!」
肉団子のような包みが山盛りになっているのを見て、みんなが飛び上がりました。
「『今まで食べた子供たちのタマを全部』だ。好きにしな」
うって変わって不機嫌そうなカッパが、しかめっ面で言い放ちます。
岡本君が眉をひそめて、少しアンモニア臭い小山を覗き込みました。
「どれがオレのか、わかんねぇじゃねえかよ」
「適当にまたぐらに押し当てて見ろ。当たりのタマならピタッとくっつくさ。それぐらい自分でやんな」
佐藤君と岡本君は思わず顔を見合わせます。
「うええ…」
二人は顔をしかめながら、それでもしかたなく、転がっているタマの中から、ギトギトの粘液にまみれた袋をつまみあげると、パンツを下ろして一組一組、自分の股間に押し当てていきます。とてつもなく嫌な作業ですが、見ただけでは自分のかどうかよくわからない以上、他に方法がありません。
「おい、投げんな! オレのかも知れねぇだろ!」
「ご、ごめん! オレのじゃなかったからつい…」
「ったく…オイてめぇら、人のキンタマ、ジロジロ見てんじゃねぇよ!」
そんな中、渡辺先生が抗議しました。
「ちょっと待て。どうみても俺のがないぞ」
それを聞いてみんな改めて袋の山を見直します。確かにどのタマも明らかに子供のものばっかりで、そもそもペニスがついてません。
「『子供たちのタマ』だっつってんだろ。大人のチンポは賭けに入ってねぇ」
カッパはふてくされながら答えました。
「そ、そんな! ちょっとまて! じゃあもう一勝負!」
「やなこった! 今日は大損だ! もうここには来ねえよ!」
カッパはそう叫ぶと、外の川へ飛び込んであっという間に逃げていってしまいました。
「待て! 待ってくれ! コラー!」
きゅんとせつなくなるような悲痛な叫びがプールサイドに響き渡ります。
どうにか日が暮れるまでには、無事佐藤君も岡本君も、自分の宝物を見つけ出す事が出来ました。なんだかもうベタベタのドロドロで、二人ともげんなりしてしまったのですが、スポン、とくっついたときには、二人ともフルチンで踊りまわりました。
ちなみに、残った誰のものかわからない睾丸は、みんな花子先生が預かる事になりました。捨ててしまうのもちょっと気がひけるので、大事に保管するそうです。
よかったですね。
めでたし、めでたし。
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投稿:2011.03.16
学校の怪談 〜プールの決闘編
著者 自称清純派 様 / アクセス 15948 / ♥ 2