「序」
「さあ、リョウ君の番よ。」
(頼む、はずれてくれ・・・。)
目を閉じて、恐る恐る引いたクジを見てみると、そこにはしっかり「あたり」の文字がありました。
(そ、そんな。)
こうしてボクの運命は大きく変わってしまったのでした。
毎年、一回この国の男女比の崩れたバランスを補うため、小学生男子を対象にブルマ検査が執り行われる。ブルマ検査では性器の大きさ、バランス、膨張率などに一定の基準を設けて、この基準から外れた男子を対象に、男子から女子への性転換が施される。
しかし、最近では男子の性器の成長がよく、ブルマ検査の基準に引っかかる者が、年々減少している。このため、学校側は課せられたノルマ人数を確保するため、ブルマ検査に引っかかった者だけでなく、先にブルマになったものに屈辱的な行為をしたものなど、男子としてあるまじき行為をしたものを、不合格として補ってきたが、それでもなお不足する場合は、不足人数分を合格者の中から「くじ引き」で決定するのであった。
「施術室で」
「さあ、リョウ君いらっしゃい。」
「・・・。」
ブルマ検査で合格したのに、くじ引きでブルマになるなんて・・・。なにより、自分のオチンチンがなくなってしまうことがとても怖くて、震えがとまらなかった。
「やさしく切ってあげるから。怖がらなくてもいいのよ。」
男の子にとって突然ブルマになることは恐怖でしかない。しかし女医さんや看護婦さんは、そんなボクの恐怖を取り除くようにやさしかった。
「キミももうすぐ私たちと同じ女の子よ。」
(ついにこれからボクはブルマになるんだ。)
「いい?ブルマになったって、リョウ君はリョウ君なのよ。でもこれからはリョウちゃんだけどね。でもね、ブルマに生まれ変わったら、男の子のときとは違った新しい人生が始まるの。一生のうちで、男の子と女の子の両方が味わえるなんて特別なことよ。」
女医さんに注射されながらそう言われて、なんとなく納得できたような気がした。
「それじゃあ・・・。始めるわよ。」
女医さんが施術用のハサミを持って、ボクのオチンチンを摘んだところまでは覚えているけど、その後は薬がきいたのか寝てしまったみたいです。
「おめでとう。リョウちゃんはこれで立派な女の子よ。」
目が覚めたら、女医さんにそう言われました。
ベッドに寝たまま、恐る恐る股間をさわると、タマタマもオチンチンも付いていませんでした。
(本当に切られちゃったんだ。)
そう思うと、涙が目にこみ上げてきました。
「オチンチンがなくなっちゃって不安だと思うけど、早く現実を受け止めようね。そのためにもリョウちゃんにはこれから、学校に戻る前に教育舎に行ってもらうわ。そこで、体だけじゃなく、心もブルマになって、新しい人生を送ろうね。」
そう言われて、次の日からボクは教育舎というところで教育を受けることになりました。
「学校で」
ブルマになったボクは男の子からブルマになるための教育舎での教育期間がおわると、またもとの学校に戻りました。
そう、ブルマとしての新しい日々が始まると信じながら・・・。
「おっ、来たぞリョウだ。」
親しかった友人二人が、校門で声をかけてきました。
「久しぶり。」
「なーにが久しぶりだよ。オカマ野郎。」
(えっ・・・。)
「リョウが来たんだって。」
顔見知りの男の子たちがゾロゾロと集まってきました。
「何、オンナのカッコしてるんだよ。」
「ち、違うよ。ボクはブルマになったんだ。」
「そーだな。リョウにはもうチンポないんだよな。それならみんなの前でパンツ脱いでチンポ切られた痕、見せてみろよ。」
「そーだ、そーだ、早く見せろよ。」
「うわぁぁぁぁぁん。」
「こらー!何やっているんだ。」
「ヤベー、逃げろ。」
みんなに囲まれたボクの状況を見て、一人の先生が助けてくれた。
(・・・助かった。)
しかし、休み時間はもっと悲惨だった。ボクがトイレに行こうとすると・・・。
当然ボクはブルマだから、ためらうことなく女子トイレに向かった。
「いやーっ。チカン。」
「オトコは入ってこないで。」
「違うよ。ボクは・・・」
女の子たちの剣幕に女子トイレから追い出されてしまった。
「お前はこっちだろ。」
先ほどの二人に強制的に男子トイレに連れ込まれてしまった。仕方なく男子トイレの個室で用を足そうとすると・・・。
「おーっとっとっと。リョウちゃん、まさかウンコか?」
「ションベンならこっちでやれよ。」
「チンポ持って、立ちションでさっさとやっちゃえよ。」
(みんな、もうボクが立ってできないことを知っていながら・・・。)
男子トイレではもう用を足すことはできない・・・。かといって女子トイレにも戻れない。そんなことを考えているうちにガマンが限界になってしまった。
「あーっ。こいつションベン漏らしたぞ。」
「ホントだ。クセーぞ。」
「やーい、やーい、お漏らし小僧。」
もうその場で泣き崩れるしかなかった。こいつらの前でお漏らしをしたことも屈辱だったけど、自分だけブルマになって、今、場違いなブルマー姿で男子トイレの中にいることが、とても悔しく情けなかった。
このあと、しばらくボクは学校には保健室登校をしました。なぜ、ボクだけこんなことになったのかというと、今年この学校でブルマになった男の子は10人。しかし、ボク以外の子は教育期間が終わると、違う学校で、ブルマとして新しい出発を切るという理由で転校していました。このため実質的に今年のこの学校のブルマはボク一人だけになったため、一人浮いた存在になってしまったらしいのです。いずれにしても、ボクには地獄の日々でしかなかった。
「銭湯にて」
ブルマになって一ヶ月が過ぎた。ブルマの生活にもそれなりに慣れてきたけど、突然男の子でなくなってしまったことの衝撃と、なにより学校でのあの悔しさはまだ完全に抜け切れてはいなかった。そんな時ボクは、自分の部屋で男の子だった時の服に着替え、ズボンの股間にハンカチを丸めて突っ込んで、股間のふくらみを再現してみた。こうすると、一瞬だけど男の子に戻れたような気分になれた。でも、もうオチンチンはついていない。惨めな気持ちになると分かっていても、これがボクにできるブルマへの最大の抵抗だった。
そんなある日、ボクの家のお風呂が故障して銭湯にいくことになった。
「もうあんたはブルマなんだから、ちゃんと女湯に行くのよ。」
「わかってるよ。」
母の言葉が心に突き刺さる。しかし、ボクは密かに冒険をしてみることにした。それは、もう一度「男湯」にはいることだった。
(完全に女の体になってしまったら、もう二度と男湯には入れない。せめてもう一度だけ・・・。)
幸いボクはブルマになったばかりだから、同じ年の女の子と比べてまだ胸も膨らんでいないし、男の子の格好をしていればまだ十分、男としていける。それに、隣町の銭湯まで行けばボクがブルマになったことを知っている人はまだいない。
これは自分なりに考えた作戦だった。あとはどうやって股間を隠すかだ。これにも、作戦があった。脱衣場で、すぐに腰にタオルを巻いてしまえばいい。そして、お風呂から出るまで腰のタオルをはずさなければバレない・・・。
この作戦を実行するべく、ボクはワンピースから男の子だったときの服に着替えて隣町の銭湯に向かった。
「いらっしゃい。」
お金を払って、男湯の暖簾をくぐる。これで第一段階クリアだ。野球帽をかぶっていたボクを、番台のおばちゃんは全く疑わなかった・・・。
周りの目を気にしながらも、素早く裸になりタオルを腰に巻いた。幸い誰にもバレていない。第二段階クリアだ。
(今日のボクは男の子だ・・・。)
意を決して浴室の戸を開いた。モワッとした男湯独特の、それでいてボクには懐かしい男臭い湯気が鼻をついた。まだ午後4時だからお客も数人しかいない。
(これならバレない・・・。)
手早く洗い場で体を洗って湯船に浸かった。これでまずここにいる誰にもボクがブルマだとわかることがないと思うと、ひと時の男湯を楽しんだ。腰にタオルを巻いたままだが、文句を言う人はいない・・・。
湯船に浸かって5分ぐらいしただろうか。脱衣場から声がする。ボクと同じくらいの男の子の声だ。
(さて、早めに出るとするか・・・。)
今のボクには男湯に長居は無用だ。ここまで隠し通した秘密がバレてしまっては、それこそ大変だ。早々にボクは脱衣場に向かった。しかし、脱衣場に出る戸を開けたとたん、悲劇は起きた。
「あー。やっぱりコイツここにいやがった。」
「!!」
脱衣場にいた男の子は、このまえ学校のトイレでボクを惨めな姿にさせたあいつらだった。
(なんで、なんでこいつらがここにいるんだよ。)
一目散にボクは湯船の中に逃げ込んだ。しかし、もう逃げ場はもうない。
「オトコの格好でお前が家から出てくるのが見えたんで、ついてきてみたら、まさか堂々と男湯に入っているとはな。」
(やめろ、やめてくれぇ。)
「なあ、リョウちゃん。俺たち友達だったよな。」
「・・・・・。」
「だったら、男同士、裸の付き合いだ。いつまでも湯船に浸かっているなよ。」
「おい、リョウを湯船から出してやろうぜ。」
「よせ、やめろ。」
「遠慮するなって、ここには男しかいないんだからさ。」
抵抗もできず、ボクはやつらに両腕をかかえられて立たされてしまった。両腕をつかまれてしまったために、まったく抵抗ができない。ここで抵抗したらどうなるか・・・。
両腕をつかまれたまま、洗い場を通り過ぎる。
(頼む、頼むからはなしてくれ・・・。)
抵抗ができないボクをいいことに、両脇の二人が耳元にささやく。
「リョウちゃん、なにビクビクしているんだよ。」
「ここで腰のタオルを取ったらどうなるかな。」
(頼む・・・。それだけは・・・。)
脱衣場への戸が開いた瞬間・・・。
「それー。ご開帳!」
両脇の二人に脱衣場の中に突き飛ばされて、腰のタオルもはがされてしまった。
「うわあああぁぁぁ。」
急いで股間を押さえてその場にしゃがみこんだけど、一人に肩を押され尻餅をつかされてしまった。
「アハハハハ。ほんとにチンポ切られてやんの。」
「ブルマが男湯に入っていいと思っているのかよ。」
「悔しかったら、ここでチンポ勃たせてみろよ。って、もう勃たせたくても、勃たせるものがついていないか。」
「おまえ、そんなに男の裸がみたかったのかよ。」
この騒ぎと、ブルマという言葉を聴いてまわりの人の視線もこちらに注目する。
白髪頭の年配の男性はあきれて口を開けていた。
「よせ、見るんじゃない。」
小さな男の子を連れていた父親は顔をしかめると、急いで息子の目を手で覆った。
いくらブルマが街に普通にいる社会だからといって、男がブルマになる(させられてしまう)というのは、普通の男にとって耐え難い恐怖でしかないのだ。
小さな女の子が親に連れられて男湯にいるならまだしも、ブルマとはいえ、もう男湯は卒業していなければならない年齢の女の子が男湯にいるというのは、異様な光景だ。周りの、冷ややかな、それでいて呆れ顔の視線が突き刺さる。ヤツラの笑い声も突き刺さる。
もう、どうしてよいかわからず、ボクはその場にうずくまって泣くしかなかった・・・。
「その後」
銭湯では、最終的に番台のおばちゃんに助けられましたが、そのおばちゃん、そして両親にこっぴどく叱られました。「あの二人も悪いけど、ブルマになってコソコソと男湯に入ったあんたも悪い」って。それに、もうこれに懲りて男の子のマネはしないということも約束させられました。それにこれからは自分のことを「ボク」ではなく「ワタシ」と言うことも。
そしてワタシも学校を転校することになりました。そう、ブルマとしてもう一度新しい出発をするために。
(おわり)
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投稿:2011.11.17
ブルマの屈辱
著者 やかん 様 / アクセス 24541 / ♥ 9