〜プロローグ〜
『超空間ゲートによる惑星間航行技術』
『各国政府の銀河連邦政府への参加』
『地球における銀河連邦捜査局(GalaxyFBI)の設置について』
まるでSF小説の設定書のような言葉が、街中のディスプレイや書籍に当たり前のように並ぶ。
昨年起きた異星人とのファーストコンタクト以降、地球文明は急速に転換して毎日がちょっとしたお祭り騒ぎだ。
俺は地方の警察署から銀河連邦保安官に編入させられることになり、真新しいGFBI地球分署ビルへとやってきた。
警察署内では未知の職場に左遷扱いだが、子供のころ特撮ヒーローが好きだった俺は期待に胸を膨らませていた。
捜査に係る技術等は、彼らのテクノロジーを用いた学習装置によって全てが頭に入るので何も問題はない。
主な業務は、地球周辺での異星人による刑事事件の捜査と摘発。惑星間戦争こそ無いものの、異星人は全員が平和主義というわけではなさそうだ……。
〜事件〜
「男性保安官の方は、Bルームに集合してくださぁい」
学習室を出ようとすると、白衣を纏ったメディカルスタッフと思われる異星人の女性の声が響いた。
その容姿は地球人とほとんど変わらないが、黄色い瞳と銀色の髪の毛が特徴的だ。
どことなく漂う不思議で可愛らしい、そんな小悪魔的な魅力に魅了され、俺は思わず彼女に声を掛けた。
「あの、メディカルチェックは昨日終わったはずでは?」
「はい、でも男性だけの最終検査が残っていますのでお願いしまぁす」
総勢100人の男性保安官が彼女の誘導でゾロゾロとBルームへと集められる。
そこは広い倉庫のような部屋になっており、床に2リットルのペットボトルのようなカプセルが並べられていた。
「こちらに整列してそれぞれカプセルをお持ちくださいね」
俺たちは彼女に言われるままにカプセルの前に整列して、それを手に取った。
そして一体何の検査なのか、まったく見当が付かないままザワザワとどよめく。
「それではー……皆さんのインケイとコウガンを、そのカプセルの穴に入れてください」
「ええっ!?」
俺たちは動揺を隠せず、そろって声を上げる。
「私ははずかしくないから大丈夫ですよぉ、生殖機能のチェックだから大丈夫ですぅ」
先日の全身スキャナーですべてチェックしたはずなのに。そう疑問を感じていると、彼女が俺のカプセルをサッと取り上げた。
「ではお手本を見せますねっ……さぁ、出してくださいね」
「えっ……出すって?」
「はい、インケイとコウガンを出してください」
「ここで?」
「ええ、チャックから出すだけでいいですよ」
白衣姿の異星人の女性にチャックからチンポを出して見せる……逆にGFBIに逮捕されるのではないかと思いオドオドしてしまう。
「もうっ、早く出してください!」
「す、すみません」
何かいかがわしい行為をするような罪悪感を感じながら、俺はズボンのチャックを下げ、チンポとタマをポロン、と取り出した。
すると彼女はニヤニヤと笑いながらそれを摘み上げ、カプセルを近づける。
「フフフッ……じゃあみなさんも、こうやって出してくださいね」
半信半疑になりながらも100人全員が揃ってチャックを下げ、チンポとタマを取り出した。ある意味これは壮観だった。
「フフフ……みなさんちゃんと付いてますねぇ。ではカプセルの穴にインケイとコウガンを入れて、パネルの赤いボタンに触れてくださいね」
彼女はそう言いながら、両手でカプセルを俺のチンポに被せて押し付ける。
すると、スポッ、という音と共に俺のチンポとタマは吸い込まれるようにカプセルの中に収まった。続けざまに会場中にスポッ、という音が響き渡る。
「みなさん、入りましたね〜?」
彼女は会場を見渡し、全員のチンポとタマがカプセルに収まっているのを確認すると、堰を切ったように笑い始めた。
「アッハハハハッ! おっかしいの〜! じゃあサヨウナラ、オマヌケなイナカ保安官さんたち。アハハハハッ!」
彼女はそう言い放ちながら会場を飛び出した、するとカプセルからブンッという音と振動を感じると同時にカプセルが落ちた。
ゴロン、ゴロンと床に転がるカプセルの中は空だ。しかし……股間にもチンポとタマは付いていない。
「なっ!? チンポが消えたっ!?」
あちらこちらから悲痛と怒りの声が上がる。一瞬にして会場から100本のチンポと200個のタマが消え去ってしまったのだ。
チャックの奥に残ったのは、銀色のリングに縁どられたチンポの切断面。まるでMRI画像のように蠢くその断面に俺は卒倒しそうになった……。
〜GFBI捜査官〜
銀河連邦指定第774号、『男性生殖器の強奪及び惑星間密売』事件。
地球が辺境の地とはいえ、GFBI機関内でその事件が発生してしまった。これはGFBIにとっても大失態だったようだ。
言うならばGFBIお墨付きの健全な肉体から、空間切断リングとミニ超空間ゲートを使って、健康な男性生殖器を強奪されてしまったのである。
犯人の女性はメリンダと呼ばれる広域指名手配の大物。事件の詳細を知らなかった俺たちが責任を問われることはなかった。
もちろん責任を問われるなんてとんでもない。それどころかチンポとタマを……男の全てを奪われた屈辱と絶望は大きく、多くの者はそのまま寝込んでしまった。
俺ももうろうとしながら電子被害届を出し、そしてマンションに戻った。トイレに入りいつものように排尿をする、しかしその出口は空間切断リングの先だ。
確かにそこから出ているのを感じるが目の前には何も出ない……何とも言いようのない気持ち悪さが全身に伝わる。メリンダは出された物をどう処理しているのだろうか?
そしてリアルに動くその断面を恐る恐る指先で触る、しかし、そこは全く何も感じない。救いようの無い絶望感に襲われ、俺はそれ以上考えるのを止め、そのままベッドに潜り込んだ。
「こんばんは、シン様のお宅でしょうか?」
夕食も取らずにウトウトしていると、玄関から女性の声が聞こえ、それから程なくしてドアのチャイムが鳴り響く。俺は怠い体を起こし玄関を開けた。
そこには赤いスーツを纏った黄色い瞳と銀色のセミロングヘアの、美しい異星人の女性が立っていた。
「あっ、はじめまして。私はGFBI捜査官のレミンと申します」
「そ、捜査官ですか?」
「はい、このたびはGFBIのミスで、大変辛い思いをさせてしまいまして。大変申し訳ございませんでした」
「いえ……って! そんな、土下座までしなくても!」
その女性はそのまま玄関に土下座してお詫びをし始めた。俺は慌てて止めに入った。
「あの、地球のこちらの国ではこうやって謝罪すると学んだので……」
「それは、昔の習慣ですから」
「え? そうなのですか? 調査不足ですみません」
多少ぎこちない言葉は別として、何か頼りない彼女は、本当にこの壮大な銀河を飛び交うGFBI捜査官なのだろうか? 何となく不安を感じた。
取りあえず部屋に上がってもらい、彼女の手土産の不思議な味のするクッキーを食べながら話を続けた。
彼女、レミンはメリンダ専属の捜査官で、すでに2年以上追跡をしているらしいが逮捕には至っていないそうだ。
銀河系内には300以上の有人惑星があり、あらゆる種族の生殖器がその闇市場で性的娯楽、観賞用、あるいは薬や食用として高価で売買されるという。
まるで中世の地球のような、野蛮な市場が宇宙に存在する。俺の中の夢のある宇宙観が大きく揺らいでしまった。
「相談なのですが……保安官ではなく捜査官になりませんか? データ的に資質には問題ないので大丈夫ですわ」
「え? 僕が捜査官に?」
「メディカルデータで見るとあなたの……その、チ……生殖器はメリンダのお気に入りのはずなので直接追跡が可能なのです」
「お、お気に入り?」
「ええ、メリンダは異常性欲があるので、必ずお気に入りの生殖器を、カーゴに入れずに手近に置くのですわ」
変態窃盗犯のお気に入りになってもあまり嬉しくはなかったが、自分の手で“男”を取り戻せるチャンスを逃す手はないと思った。
「ぜひ、お願いします」
「ああっ良かったですわ! あなたの悲劇と勇気ある決断は地球人初のGFBI捜査官として地球史に残りますからね!」
「……いえ、恥ずかしいので頼むからそんな仰々しく残さないでください」
俺はその場でレミンの持つ端末機を介し、正式にGFBI捜査官として任命された。
地球人初のGFBI捜査官として宇宙へと飛び出す。そんな夢のような展開だが、チンポもタマも無くしたせいなのか俺の心はあまりときめかなかった。
「それではシン捜査官、出発しましょう」
「はい、えっ? 今から?」
「ええ、メリンダはすでに地球を離れて超空間ゲートに向かっていますわ、急ぎましょう!」
俺は取るものも取らず、レミンに連れられマンションの自室を出ると、派手な赤と青の閃光を放ち、ディスプレイにGFBIの文字が輝くド派手なレミンの小型宇宙船が空中に係留されていた。
近所には大勢の見物人が集まり大騒ぎになっており、その人々の間から「あれって、宇宙人にチンチン取られた事件と関係あるのかな?」といった会話が聞こえる。俺は頭がクラクラした。
「まあ、どうしてこんなに大勢の人が?」
「あの、地球ではまだ宇宙船は珍しいから……」
「うかつでしたわ……ごめんなさい」
俺とレミンは宇宙船に乗り込むとそのまま宇宙へと急上昇した。ご近所に俺がチンポを取られたマヌケな男だと知られるのは時間の問題だろう。
下部モニター越しに離れていく自宅マンションを見ながらそう思った。
〜追跡〜
宇宙船の中は白色で統一されスッキリ洗練されており、各方向の大型モニターがある。レミンが操作するパネルはパソコンほどの大きさしかない。
船体の大きさから予想は付いていたが、そこは1DKほどの狭い空間だった。職務とは言え、若い女性とこの空間で共に過ごす……俺は少々困惑した。
「あの、レミン捜査官?」
「はい? あ、レミンでいいですわ」
「レミン、僕と君はここで一緒に生活を?」
「あっ、規則ではこのサイズの宇宙船は、交配関係でない男女の共用は禁止ですわ、でも……言いにくいのですが……」
「何?」
「シンは……その……今は“男性”ではないので問題をクリアしていますわ」
「…………」
「ご、ごめんなさい! 傷つきましたか?」
レミンの言う通り今の俺は男ではない。改めて現実を思い知らされた俺は、軽いショックを受けた。
レミンが心配そうな表情をして俺の傍へと駆け寄ると、手を握り語り始めた。
「本当にごめんなさい、でも、私はシンと一緒に捜査できて嬉しいの」
「えっ?」
「銀河辺境に配属されて以来、ずっと長い間一人ぼっちだったの……だから、すごく嬉しいのは本当ですわ」
超空間ゲートを使った光速を超えた航法とはいえ、広い銀河系を舞台に繰り広げられる追跡劇は孤独との戦いなのだと知った。
いくら捜査官とは言え、若い女性が宇宙で一人ぼっちで過ごす、それは大変過酷に感じた。彼女を支えてあげたい、俺はそう思い居た堪れない気持ちになり彼女を抱きしめてあげた。
「シ、シン!」
「心配かけてごめん、僕は……俺は大丈夫だから」
最初は突然の抱擁に驚いて緊張していたレミンもそっと俺の背中に腕を回し、二人はしばらくの間抱擁していた。
しばらくすると、静寂を切り裂くように船内にアラームが鳴り、知らない言語でインフォメーションが流れた。この言語がレミンの母国語なのだろう。
レミンは俺からそっと離れると、パネルの前に座り操作を始めた。
「メリンダの宇宙船が今、超空間ゲートを通過したみたい。こちらも加速しますわ」
「え? もう追跡出来ているんだ」
「カーゴ内部だと追跡出来ないけれど、コックピットに置いてある物は追跡可能ですわ」
「それって……俺の?」
「ええ、メディカルチェック時にトレーサーを埋め込んでありますわ」
「えっ!?」
レミンはメディカルチェック時に、すでにこの事態を見越して俺のチンポにトレーサーを埋め込んだのだろうか? 俺は疑心暗鬼に陥った。
しかし、今はまだレミンを問いただす気分にはなれなかった、まずは俺のチンポを取り戻すのが専決だ。程なくして正面モニターに真四角の巨大な建造物が見え始めた。
「あれが超空間ゲートか、凄い……」
銀河連邦の手によって、地球と月のラグランジュ点に突如開かれた巨大な超空間ゲート。その大きさは一辺が500kmもあり、周囲には何隻かの大型宇宙船が目視できた。
一つのゲート通過で数百光年分の距離を超越すると言う。学習装置で知識を得たとはいえ、その実物の存在感に俺は圧倒された。
「私も初めてゲートを通過した時は怖かったですわ」
「そうなんだ。レミンはどうして、捜査官になったの?」
「私の両親が捜査官でしたの、だから成り行きで……」
「成り行きでこんな過酷な仕事に就くなんて、レミンは凄いよ」
「シンにそう言われると嬉しいですわ」
レミンは横に座る俺の手をそっと握り、ニッコリと微笑んで喜びを表現した。とてもキュートな笑顔に俺は男ではない状態ながら、甘い恋心を感じてしまった。
ドン! という軽い衝撃と共に宇宙船はゲートを通過した。どのモニターを見ても、それまで間近に見えていた地球と月は見当たらなくなった。
「ここは一体どこなんだ?」
「地球で言う430光年先の北極星、ポラリス付近ですわ」
「ほっ、北極星っ!?」
予想していた以上の跳躍距離に全身に鳥肌が立った。色々と比較対象を考えるが全く実感がわかない。
「メリンダはおよそ10光年先です、しばらくステルスモードで様子を見ますわ」
「このまま強行突入は無理なのか? メリンダは一人だろう?」
「ダメです。もし気付かれれば、みなさんの大切な生殖器をカーゴごと破棄して逃走してしまいますわ」
奪われたチンポを目前にして手が出せない。焦る思いを抑えるのがとても辛かった。
「シン、少し休みましょう。メリンダも少しは眠る筈ですわ」
「ああ、わかった……」
俺とレミンは宇宙船後部の生活スペースへと移り、少し睡眠を取り、休憩することにした。
そこには心地よい香水の香りが漂い、何かの可愛らしいぬいぐるみがあった。傍らには家族や友人と思われるフォトグラフが表示されている。異星人もやはり人間なんだな、と思い少し安心した。
レミンはゆっくりと後ろを向くとスーツを脱ぎ、装飾が施された肌触りの良さそうな下着姿のまま、その美しいセミロングの銀髪を両手で整えた。その色っぽい仕草に俺は思わず視線を逸らした。
当然、一人乗りの宇宙船にベッドは一つしかなかった。俺は服を脱ぎ楽になると端にあるソファへと横になった。
「シンもこっちに来て休んで下さい。ベッドは十分広いですわ」
「えっ!? いや、でもそういうわけには……」
「気を悪くしないで聞いてくださいね……シンは今、男性ではないから問題ありませんわ」
「いやいやいやいや、そういう問題なのか?」
異星人ゆえの感覚の違いなのだろうか? レミンの異性観が俺には理解できなかった。
「本当にいいの?」
「もちろんですわ……シン」
心地よいベッドの上でレミンは壁の方を向き横になり、俺は部屋の方を向いて横になった。しかし、背中越しに体温を感じてどうしても意識してしまう。
しかし、よく考えればチンポとタマを奪われた事件からまだ24時間も経っていない。あまりにも多くの出来事があり、俺は疲れていることを思い出し、すぐに眠りに就いた……。
「シン……」
「ん……ん?」
レミンが静かに俺の名前を呼ぶ。寝過ごしたのかと思い、重たい瞼を開くとそこにはレミンの顔があった。
眠っている間に俺とレミンは、ベッドの上でお互い向き合っていた。
「レ、レミン!?」
「シン……シンの……チ、チンポは大丈夫ですか?」
レミンは恥ずかしい言葉に顔を紅潮させながら、俺の股間に装着された空間切断リングへと右手を伸ばし、その断面を優しく指先で撫でた。
もちろんそこは何も感じないが、このシチュエーションに興奮して俺の断面は勃起して大きく膨らんだ。メリンダの宇宙船にある俺のチンポは大きく起ちあがっているだろう。
「レミン……」
「ごめんなさい……シン、私のせいで……」
「……やっぱり、俺のチンポはおとりなのか?」
「はい……ウウッ、ごめんなさい……グスッ」
レミンは本部の指示で俺をおとりにしたことを白状し、両手で俺を抱きしめて涙を流した。
民間人をおとりにすることは禁止されているが、保安官・捜査官はおとりにしても良い。しかし、合理的な思考に進化した母星で自らおとりになる男性職員は誰一人居ないと言うことを聞かされた。
そこで開拓されたばかりの地球の新米保安官のメリンダの好みのチンポに最新式のステルストレーサーを仕込み、警備の手薄な分署をわざと襲わせたのだ。
「どうして一言、相談してくれなかったんだ……」
「相談したら……協力してくれたのですか?」
「それは、絶対とは言えないけれど。君の為なら協力したと思う……もうこの話はやめよう」
普通ならチンポとタマを餌にした相手を許さないだろう。しかし常識を超えた色々な出来事のせいか、あるいは特別な感情なのか、俺はこの件でこれ以上レミンを責める気にはなれなかった。
「ありがとう……ですわ、シン」
俺が許したことで、レミンは更に強く抱きついてきた。下着を着けているとはいえ、その女性らしい肉体が俺の肌に直接伝わる。
「ち、ちょっと待ってレミン、銀河連邦規則で契約のない交配行為は禁止されてるはずだろう?」
「これは交配ではありませんわ、だって、シンには今、チンポとキンタマは無いのですから」
「そ、それはそうだけど」
「お願い、シン……私を強く抱きしめてください、ずっと寂しかったのです」
今までの寂しさが爆発したのだろうか、レミンは俺との接触に顔を紅潮させ軽く興奮状態になっているようだ。しかし……チンポの無い俺にとってこれは生殺し以外の何物でもない。
俺の状況に反して、レミンの息遣いと表情は、先ほどまでの賢くもオットリした彼女とは思えない魅力を発しているのが辛い。
「ああっ、シン……私、おかしくなりそうですわ」
「レミン……」
ここまで来たら仕方がない。俺は観念してレミンと唇を重ねキスをすると、その体を強く抱きしめた。
すると次の瞬間、レミンは俺をベッドに押し付けると馬乗りになり、下着越しに大事な部分を勃起した断面へと擦り始めた。
「アァン……シンのココ、コリコリ……コリコリして気持ちイイ……アァッ」
レミンは激しくも色っぽく俺の断面を愛し続ける、しかし……そこは全く何も感じない。
何ということだろう。異星人の美しい女性と性的な行為を行っていると言うのに、俺はまるで聖人の様にそれを見守るしかなかった。
俺はせめてその乳房を見せてもらおうと思い、美しい生地のブラへと手を伸ばした、すると……。
「ヤァン、恥ずかしいからダメですわ……アァン、コリコリ気持ちいいですの、アァッ……ンッ」
伸ばした手をピシャリと叩かれた俺は、全てを諦めてベッドの上でレミンに身を任せた……。
〜逮捕、そして奪還〜
激しい行為の果てに、俺の断面で絶頂を迎えたレミンが可愛い寝顔のまま俺に覆い被さる。しかし、俺の断面は固く勃起したままで成す術はない。
悶々とした気持ちのまま空しく、俺は優しくレミンの美しい銀髪を撫でてあげていた。
「シン……」
「レミン、まだ寝てていいよ」
「アァッ……シン、恥ずかしい……ですわ」
満たされたせいなのか、激しく色っぽかったレミンは消え、またおっとりしたレミンに戻ってしまったようだ。
「私のこと、嫌いになりましたか?」
「え? どうして?」
「だって……あんなに激しくシンのココを……キャッ、恥ずかしいですわ」
「嫌いになんてならないよ、気にしないで良いよ」
「ありがとう、シン」
軽く唇を重ねキスをするとレミンは起き上がり、俺に目を閉じるように言い、濡れてしまった下着を履き替える。俺がチンポに異変を感じたのはその時だった。
「あっ!?」
「キャッ! 見ないでくださいっ」
「ご、ごめん。いや、違うんだ……俺のチンポを誰かが触ってるんだ、確かに握ってる」
「メリンダだわっ!」
「俺のチンポで遊んでるのか? そうか、勃起してるからか!」
「どうですか? チ、チンポをどうされてる感触ですか?」
「わからない、何か柔らかい感触がする……ヤバい、気持ちイイ」
「そんな……シンがメリンダで感じるなんて私、嫌です! 絶対我慢してくださいね!」
レミンはそう言い放つと慌てて収納庫を開き、そこから銀色の銃のようなものを取り出してきた。そしてその銃口を俺の断面へと向ける。
「ちょ、それは一体? あっ! ヤバい、気持ち良すぎる……」
「我慢してくださいね、ごめんなさいっ!」
(パァンッ!)
レミンがトリガーを引くと空気を切り裂くような轟音と共に閃光が光り、全身を巨大な鞭で打たれたような衝撃と激痛が走り俺は気を失った……。
「シン、シン、シン……大丈夫ですか?」
「……う、んんっ」
「ああっ良かったですわ! 気が付きましたね、シン!」
朦朧とする意識の中、俺はゆっくりと先ほどまでの状況を思い出した。
「はぁ……本当に酷いよレミンは……一体、どういうことなんだ?」
「ごめんなさい、相談しようと思っていたの……でも間に合わなくて」
レミンは、空間を超えて俺のチンポとメリンダが触れ合った状態で電磁パルス銃、スタンガンで俺ごと電撃を食らわせたのだ。
空間を超えた先のメリンダも電撃を受け失神したところを逮捕したと言うことだ。俺が気が付いた時にはすでに仲間の宇宙船が到着して、事件処理をしていた。
そして俺は思い出したように股間を確認した。すると断面は綺麗に皮膚で塞がれ、空間切断リングも消え去っていた……何らかの医療処置を施されたようだ。
「俺の、俺のチンポとタマは?」
「…………」
「レミン?」
「それが……その」
「え? 何かあったのか?」
「メリンダは、生殖器ではなく。お口にあなたのチンポを含んでいたのですわ」
もし俺のチンポがメリンダの大事な部分で密着していれば、電流が均一に流れたはずだった。
しかし、それが口の中で遊ばれている状態だったので、異常に強い電流が流れ、俺のチンポとタマは黒焦げになったと言う。
「そ、そんなっ……俺はもう男に戻れないのかっ!」
「いいえ、大丈夫ですわ」
「え?」
「今、シンのチンポは母星のメディカルセンターに搬送していますの、そこでなら完全に再生可能ですわ」
「本当に?」
「はい、シンは私の交配相手ですもの。必ず元通りにさせますわ」
「俺がレミンの交配、いや結婚相手って……」
「ええ、私はシンを愛しています。だから交配してください」
俺の脳内に学習した銀河連邦規則が呼び起される。
『交配決定権は女性に与えられる。基本的に男性はこれを拒否出来ない。不服申し立ては3日以内に銀河連邦裁判所に申し立てること』
「私との交配は嫌ですか? シン……」
「嫌じゃないよ。こちらこそよろしく、レミン」
「ああっ、嬉しいですわ!」
レミンは喜び無邪気に俺に抱きつく。男としてこのシチュエーションは決して悪い話ではない。ただここに、俺のチンポとタマが無い事がとても残念だった。
「これから一体、どうすればいいんだ?」
「メリンダの逮捕と300万人分の生殖器の回収で、私たちは10年以上の休暇と高額の報酬を貰えますわ」
「さっ、300万っ!?」
「ええ、メリンダはあらゆる手段を使って80以上の種族から合わせて300万人分の生殖器を強奪していましたの」
俺は80以上の種族の男性から英雄扱いされるのかも知れない。何より地球の同僚たちのチンポを奪還できたのは嬉しかった。
「シン、私の母国に来てもらえますか?」
「君が良ければ、ぜひ行きたいな。それに、俺のチンポの搬送先もそこだろう?」
「はい、勝手に決めてごめんなさい……ですわ」
「ところでレミンの母国がある星まで、どのぐらいかかるの?」
「最大船速で直行して1年ほどですわ」
「いっ、1年も!?」
一回の行為でも生殺しだったのに、1年もあの状態が続くことを考えるだけで俺は気が狂いそうだった……。
そして事件処理が終わると、俺たちは最大船速でレミンの母星を目指し、次の超空間ゲートへと宇宙船を飛ばした。
「ねぇ、シン……もっとコリコリ……お願いですわ」
この1年間は、俺の人生の中で最も長く感じた1年となった。苦痛があるほどその先には幸福を感じるだろう……その一心で俺は耐え続けた。
(END)
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投稿:2012.11.25更新:2012.11.25
銀河の彼方で幸福を
著者 いち 様 / アクセス 8107 / ♥ 1