「頼む、この子たちには酷いことをしないでくれ」
「何を言っているんだ、このガキどもはもうお前のものじゃないんだよ」
次の瞬間、ついに首が落とされた。
悔しさ、憎しみ、ありとあらゆる増悪の感情をいだきながら、唯一の肉親は、我らが船長にして祖母のイシュは、その命を落としたのだ。
その昔、地上が汚染され、人間たちは宇宙と地下に逃げた。
それからとてつもなく長い年月が経った今でも、地下へと逃げた人間とは、連絡が付いていない。
きっと全滅したのだろうと、大人たちは口をそろえて言う。
対して宇宙はと言うと、無限の夢と繁栄の希望があり、大昔の理想郷を指した言葉を、この宇宙社会の名前とした。
力によって、全ての人間が平等に希望を持ち、繁栄を目指す社会『エデン』。
「さあ、お前ら二人はこっちに来い」
力ある物は、力なきものを使役する。
法という秩序無き世界では、当たり前の話であった。
「俺たち、これからどうなるんだろう、なあアティス」
「リヒト……あまりしゃべらない方がいいよ……辛くなるだけだよ」
そう、負けた人間の子供たちなど、行きつく先は分かりきっているのだから。
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押し込まれたのは、小さな檻のなかであった。
「うーん……まず一人目だからな……どいつにするか」
「怖いよリヒト……」
「俺もだよ……」
あまりにも狭く小さく、お互いの顔を見ながら体を押し付け合いながら入っているのがやっとのような、そんな檻。
「お、ははは、こいつは面白い、男同士で抱きやがっていやがる、決めたぞ、こっちの奴だ」
指さされたのは、僕だった。
「いや……」
「おい、やれ」
「承知しましたわ」
白衣を着た女性だった。
その女性に羽交い絞めにされながら、無理やり外へと引きずりだされる。
もはや、抵抗する気にはなれない。
放心状態の僕を見つめるリヒトの顔は、安堵と恐怖感が入り混じっていた。
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まるで、母親が赤ん坊を生むときに使う椅子に近い……が、それにしては拘束具があまりにも多い。
足、両手、お腹、腰。
ぼくはその分娩台に似た椅子に座らされ、固定された。
僕のおちんちんは、恐怖で萎縮している。
「それでは、陰茎部と睾丸を落としますわね」
「ああ、やってくれ」
麻酔注射……しかし、全身でなく局部のようで、僕の顔はどうやっても股間を見ることとなってしまう。
「男に生まれてしまって残念だったわね、今から、その余計なものをつぶして取っちゃわないとね」
取りだされたのは、メスのような医療器具ではなかった。
ナイフだ。
袋の部分に、刃があたる。
「こっちは一瞬で終わるわ、まず右からね」
べちゃ
気の抜けた音と共に、強烈な熱を感じる。
怖いと感じる前に、嫌だと思う前に、自身の”だったもの”を目にした。
「はい次」
べちゃ
なくなった、たいせつなものがなくなったのだ。
「あ……ああ、ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
「ははは、やっと気が狂ったか、よし、少しづつやれ」
「はい」
おちんちんは、念入りに。
まず先端から。
ぽと
ぽと
ぽと
中途半端に残ったあそこから、血が滴っているのを感じる。
「ははは、ははは、ははは、ははは……」
「こいつ、絶叫の次は笑いやがったか、これだからやめられない」
最後の根元が、落ちた。
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「で、その後はどうなった」
「はい、女性器の埋め込みは完了、後は回復を待つだけです」
「よし、では回復したら、一緒の檻に入っていたやつに襲わせることとしよう」
「承知しました」
「もしかしたら、襲わせる方のイチモツを食いちぎったりするかもな、それはそれで面白い」
「終わり次第、抜歯を行い例の”産み部屋”に入れますが、よろしいですか」
「ああ、もちろんだ」
「科学が進んだこの宇宙では、負けた男なんぞ必要ない」
「必要なのは強い遺伝子を継いだ子を産む女だけだ」
「そのために、まだ性転換を行える子供の男だけは生かしてあるのだからな」
「しかし、何故1番目にあの二人を選んだのですか?」
「何、もしかしたら”愛”というのを見れるかもと思っただけだ」
「愛、ですか」
「そうだ、汚染前の地球ですらあやふやな存在であった愛、あの二人には、同性ながらも愛を感じたのだ」
「だからこそ、片方のイチモツを切り落としたのだ、愛は性別によって変化するものかどうかをみたかったからな」
「運が良ければ、一番最初に愛した者に孕ませてもらえるかもな、あの二人にとっては、それが最後の希望になるかもな、ははは」
「やはりこの社会は『エデン』だ、希望を持ち続ける者に、これほどの理想郷は他にない」
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投稿:2016.08.26
宇宙完全自由社会『エデン』
著者 ルミナス 様 / アクセス 10161 / ♥ 10