何故か翌日、スレイは独房から出された。
ボロボロになったスレイの心も体も癒えてはいない。
昨日受けた傷の数々が膿んでいるにも関わらず手首を後ろ手に枷で戒めながら看守が笑う。
「喜べスレイ、今日は拷問も休みのうえ領主様の【妾】に相応しい体にしていただけるのだぞ」
「領主……妾……」
体の奥まで穿たれたおぞましい記憶が甦りスレイの背にぞくっと寒気が走った。
「オレは魔女でも妾でもない!」
体は衰弱してはいるが言葉は力強い。
「ふん、まずは生意気なその態度に仕置きを与えてやろう。」
領主はろうそくをスレイ自身に近付ける。
「くっ……」
嬲るように何度かスレイ自身に近付けるが、突然淡い飾り毛にろうそくの火をかざした。
「っ!……くっ……」
淡い飾り毛が焼け嫌な匂いが漂う。
「うぅ…こんな事をしても無駄だよ。オレは魔女でもないし妾にもならない」
敏感な部分に火傷を負い痛みを堪えながらもスレイは毅然と言いはなった。
領主の後ろにいた見知らぬ男が不躾にスレイの裸体を眺め感心したように言葉を紡ぐ。
「ほほう、威勢が良いですな。こんなに元気ならご注文通り全て綺麗に取り除けるでしょう。」
「取り除くって?何を?」
「ふむ。青年らしい良い声です。私も声変わり後の施術は始めてですが、本当に宜しいのですか?」
「カストラートにするのではないから声はどうでも良い。
まあ、私は未完成のこの状態が好みでね。体が男性として完成するのを避ける為なら後々女性化するのも仕方ない」
「!」
スレイは絶句したあと飛びすさり発作的に扉に向かって走ったが足枷についた鎖に邪魔されて逃げられなかった。
カストラート……成人してもボーイソプラノを保つ歌手たち。彼等が美しい声と引き換えに何を犠牲にしているのかをスレイも知っていた。
「嫌だ放せ!放せえ!いやだああ!」
拷問官たちが青い顔で取り乱すスレイを取り押さえ小声で話しかける。
「お前頑張ったよ。もう十分頑張った。だから今すぐ魔女だと認めちまえ。な、今なら少なくとも男として死ねる」
「領主は竿まで取る気だ。そこまでやられると感染症でほとんどの奴が死ぬ。どっちにしても死ぬなら。分かるな」
拷問官たちは優しい口調で諭してきた。
魔女審判とは全く関係ない理不尽な処置を強いられるスレイに同性である彼らは心底同情しているようだ。
魔女だと認めれば生きたまま焼かれ、認めなければ……
しかし領主はスレイに自白させるつもりはないらしく医師に素早く合図を送る。
「…オレは……」
スレイは何かを言おうとしたが、医師が薬剤を染み込ませた布でスレイの鼻と口を覆う。
「んん!?」
しばらくもがいていたが、やがてぐったりとしたスレイを拷問官が支えた。
領主のスレイとセレンへの憎しみは深く、スレイが魔女として処刑されるだけでは満足出来なくなっていた。
スレイの心をへし折る為にも男性としてのスレイをまずは処刑しようと考えたのだ。
男性器を全て完全に取り去る手術は術後感染症で死ぬ率が高いが、それはスレイから男性としての機能と器官を全て奪うという究極の屈辱を与えた後の事だ。死んでも構わないと領主は思っていた。
スレイは完全に意識を失ったわけではないらしいが声も出せず抵抗は出来ないようだ。
「妾には男の機能など必要ない。だから取り除くのは当然だろう。
まずは……もう2度と味わえなくなる快感を与えるとするか」
「!?」
領主はスレイの肛門にまた蜂蜜を塗り込んでいき指で体内を広げながら何かを探る。
『…いやだ……もうあんなのはいやだ…』
朦朧とした意識の中でスレイは領主の指から逃れるべく必死に体を動かそうと無駄な努力をしている。
体内のある場所に触れた時、朦朧としているスレイがピクリと反応した。
領主は自身を強引にスレイに押し込み流血しているのも無視して好き勝手に扱い、反応した部分を自身で突き刺激しながらスレイ自身を弄び無理に性を吐き出させた。
『く、悔しい……』
「男としての最後の快感だな。」
領主はそのあとは遠慮なく抜き差しを繰り返しスレイの体内に体液を吐き出す。
吐き出した体液を漏らさぬように牛の角で作られた大きな張り型を傷付いた肛門に無理矢理押し込む。
『い、いやだ…何を入れているんだ!?痛い!裂ける!もう無理、もう無理だから!…あっ……』
蜂蜜を絡ませた張り型がぬるりと侵入し腸をはち切れんばかりに拡張し続ける。
根本が窪んだその張り型はそれ以上は奥には入らないが今のスレイでは抜く事は出来ない。
「こんなに強く締め付けてよほどコレは美味いんだろう」
嘲笑う領主が頷くと医師はスレイに特殊な麻酔を施した。
意識はそのままで痛みは感じなくなる薬剤だ。
「今からお前の名前はスレイではなくセレンだ。母の身代わりのお前に相応しい名前だろう?
今からセレンに必要ない部分を根こそぎ取ってやるからな」
領主の言葉はスレイに届いたのだろうか?
『や、やめて本当に!やめてぇ!』
意識は保たれているが動けないスレイは拷問官の手で牛乳風呂に入れられ温められた。
施術しやすいように性器を柔らかくする為に十分温められたのを確認されると木の台の上に乗せられ、体を拭かれていく。
拷問官はスレイを見た。
顔は幼く見えるが、僅かに隠してくれる毛を焼き払われ剥き出しにされている男性の器官はあどけなさを残しながらも発達しているのが伺える。
術中に薬が切れる事はまずないだろうが念の為に手を固定し足を大きく開いた状態で戒めた。
『放せ!嘘だろ!本当にオレからアレを』
こうしてスレイから男性としての要素を全て奪うための準備が完了した。
医師がスレイの足の間に立ち刃物を手に念を押した。
「本当に宜しいのですね」
「構わない。男性としての機能も器官も全て綺麗に取り除け」
医師はスレイの左の鼠径部に刃を滑らせ切れ目を入れた。
「手術がはじまったぞ嬉しいだろうセレン」
『いやだ!やめろ!』
日に焼けていないスレイの地の色の健康的な肌に真っ赤な血がじわりと滲みだした。
予め領主から
「始めにスレイから生殖能力を奪ったのち性器を全て切除しろ」
と指図を受けているのだ。
まず左側の男性の器官と機能を抜き取るべく作業が開始されたが領主がそこで注文をつけた。
「待て。本来なら片方ずつやるのだろうがそれでは面白くない。両方一気にやれ」
医師は領主の残酷さに呆れつつも右の鼠径部も切り裂いていった。
領主の注文のせいで傷がかなり大きくなってしまったが作業は続けられ、とうとうスレイから生殖能力を奪う時間が来てしまった。
「これで彼は生殖能力を失います」
『やめろ!やめろおお!』
その言葉に拷問官たちがスレイを痛ましげに見つめ、領主はひどく興奮した。
医師は作業を進めようとしたが、廊下がにわかに煩くなった。
「やめてください!今スレイは治療中です!治療が終わりしだい会わせますから」
「それなら僕も治療に立ち合う!」
医師は困惑して領主を見た。
これ以上、手術を進めれば取り返しがつかなくなる。
スレイの機能を元に戻せなくなってしまうのだ。
医師は思う。【正直、厄介事はごめんだ】と。
「本当に宜しいのですね。」
「いいから早くやれ!」
医師は渋々ながら頷くと手術を再開した。
『ミクリオ!来てくれたのか!オレはここだ!助けてミクリオ!』
医師の手の動きに傷口からまた新しい血が溢れ滴った。
それはスレイの涙のように思えて拷問官の一人は見ていられず目を伏せた。
体内から何かが引きずり出される感覚がスレイを襲う。
『ミクリオ!ミクリオ早く!』
スレイは唯一の神のようにミクリオに祈った。
「これが精子を運ぶ管か?」
「はい、これを切断すれば彼は生殖能力を失います」
『ミクリオ!』
ちょきん…ちょきん…
痛みすら感じなかったが何かが切られる音が響いた。
『そんな…』
「呆気ないものだな。痛くなかったろうセレン」
『……』
スレイは気力すら失った。
「よし、完全に不要になった出来物を取り除いてもらうからな」
『これ以上オレに何をするんだ…』
袋状の器官に切れ目が入れられ中身が抜き取られる
「白く美しいな。もう一方は抜かずに切り取れ、外見をそのまま残したモノと中身を保存してセレンの体が完成した後で見せてやるからな」
ボチャ、ボチャンと何かを水に投げ込む音がした。
『……』
スレイの閉ざされた瞳から涙が溢れ頬を濡らした。
「セレンが嬉し泣きしているな」
領主は涙を指で拭った。
「よしよし、今すぐにセレンに一番不必要な部分を取り除いてやるからな」
「しかしカストラートでもそこまで取り除く者は稀ですが」
「可愛いセレンの願いが聞けないとでも?」
「いえ、では」
「まて切るだけでは駄目だ。どうせ女性化がさけれないなら提案した第二案を始めろ。分かっているだろうな」
「はい」
『…切るだけじゃないのか……もう、好きにしろ』
どちらにしてもスレイには抗う術はない。
ペニスの皮と組織を一部残し、医師はペニスを切り取った。
凄まじい血が溢れまだ温かいそれは保存の為に液体に投げ込まれた。
睾丸とペニスの余った皮と組織で医師は女性器に似た器官をつくりだしていく。
「クリトリスはなるべく大きく、常に快楽を覚えるようにというご注文でしたね」
「そうだ。歩くたびに達する体にするんだ」
『クリ?って何だ…』
スレイには意味が分からない。
仕上がったばかりのプリプリとしたそこに医師は怪しげな媚薬をたっぷりと注射器で注ぎ込むとマッサージするように表皮にも丹念に塗り込んでいく。
睾丸の皮を利用した陰唇にもそれを塗り込む。
媚薬を注がれたせいで一回り大きくなったクリトリスに領主は目を細めた。
「素晴らしい大きさだ」
『素晴らしい大きさ?オレのあそこ切られたんじゃないのか…』
スレイはやはりペニス切除は脅しだったのだとほっとした。
「気が変わった。いますぐに女の穴も今作れ。セレンに何度も負担はかけたくない」
「はい」
睾丸があった部分にメスが当てられ切り裂かれる。
何度もそれは繰り返され深くなったそこに余った睾丸の皮が当てられた。
こうして仕上がった新しい器官が癒着しないように領主のペニスを再現した象牙の張り型が押し込められた。
『苦し、何?何をしてるの?』
痛みはないが内臓が圧迫され上に押しやられ吐き気がする。
『えっ?何?』
男とは思えない初々しい色の乳首に怪しい薬剤が注射されプクリと膨らんだ
「美しいものだ」
目立たない脇の下に切れ目が入れられ怪しい塊と薬剤が無理矢理押し込まれ、医師が領主の好みを聞きながら領主の望み通りの大きさと形に成形していく。
『胸に何かしたのか?』
スレイは再び不安を抱いた。
医師は後の処理を終えた。
「これで終了です」
「素晴らしい!予想以上の出来だ!報酬は倍額払おう」
『終わったのか…オレどうなってるんだ?』
目を開けてすぐに確認し不安を拭い去りたいが目が開かない。
「ですからスレイは治療中で!」
「だから僕も立ち会う!」
しばらくして争う声が近づいてきた。
派手な音を立て扉が開け放たれ、ミクリオの絶叫が響いた。
「スレイ!!!…なんて酷い!!!」
「ミクリオ司祭丁度よい、スレイの弔いと再誕したセレンに是非とも祝福を」
「こんなすまないスレイ…」
『ミクリオ?泣いてるのか?オレは大丈夫だから泣かないで…ミクリオ』
ミクリオの目の前にいるのは顔こそはスレイだったがミクリオの知るスレイではなかった。
豊かな胸
足を大きく開かれた無慈悲にさらされている秘部には淡い色の女性器、元々体毛が薄かったスレイは男性としての要素を全て女性のそれにすり替えられていた。
象牙の張り型で痛々しいほど広げれた器官を領主が撫ぜた。
「処女膜を人工的につくれますかな」
「初めての試みですが、やってみましょう」
「前も後ろも楽しめるように後ろにも手を加えたいが
」
「やってみましょう」
医師と領主のやり取りはスレイの耳にもミクリオの耳にも入っていない。
「スレイ…ごめん、遅くなってごめん」
ミクリオの涙がスレイの頬に滴る。
『泣かないでミクリオ。助けに来てくれただけですげー嬉しい。オレどんなに変えられててもミクリオが居れば、ミクリオがオレを「スレイ」だと思い続けてくれれば生きていけるから』
ミクリオの流した涙がスレイの涙の跡を辿りスレイの髪を塗らし続けた。
【完】
気付いた方もいるかもしれませんが、これはRPGゲーム「テイルズオブゼスティリア」のパロディの焼き回し。
ピクシブではスレイが去勢される寸前にミクリオが阻止しましたが、間に合わなかったバージョンを書いてみたくなりました。
キャラの名前と性格以外はテイルズオブゼスティリアとは関係ないのでオリジナルの作品として読めるとは思うのですが
興味がある方は「スレイ」と「セレン」の顔をググってみても面白いかもしれません。
どうしてこんなアホ話を思いついたか察していただけると思います
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投稿:2022.01.05更新:2022.04.24
誰が為に鉄槌は下されるのか 2
著者 雛衣 様 / アクセス 7055 / ♥ 53