生殖政策 DNA管理
1. 国家の制度
西暦2047年――独裁国家「新光連邦」は、最新の遺伝子編集と人口管理政策を誇る「高度医療技術の国」として知られていた。この国には、自由恋愛は存在しない。
* 10歳から男女別学校の寮生活
* 18歳から2年の徴兵制
* 政府の意向に反すると重刑
人口減少を口実に、政府は市民のDNA情報を国家AI研究所で解析。
知能・記憶力・創造性に関わる数百の遺伝子パターンを抽出し、国民をA〜D階級に分類した。
A階級は選手や高IQ保持者、政府要職者など。D階級は劣級と判定された者。
また、同国では基細胞から精子の元となる生殖細胞を作る技術が完成しており、
顔立ち・体型・髪や目の色・病気のリスクまで高精度で予測・調整が可能だった。
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2. A君の徴兵生活
A君は男女別学の環境で育った童貞だ。
監視付きの相部屋寮で生活してきたため、マスターベーションの概念すら知らない。
徴兵後、軍隊の寮も同じく監視付きの相部屋。
そんな中、週2回「生殖政策」の一環として個室に呼び出されることになった。
看護兵が無言で指示する。
「ベッドに横になれ。」
彼の手にはカテーテル。その先端には小型磁石が付いている。
A君は下着を下ろされ、カテーテルが尿道へ挿入される。
同時に肛門には細い金属棒が差し込まれた。
電磁石のスイッチが入ると、尿道内の磁石付きカテーテル先端が前立腺に吸い寄せられたり、反発したりと位置を変える。磁波だけなので、音もしない振動もない前立腺のみを刺激によりメスイキの気持ち良さを感じてしまう。その刺激は徐々に性欲を呼び起こし、やがてA君は前立腺から精液を吐き出す。
精液はカテーテルを通じて検体瓶に集められる。というか吸い取られる。
週に2回もとるため亀頭部通過する精液の排出感の男のイクはないのである。
DNA鑑定されて階級が登録される。
結果――A君はD階級に分類された。
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3. 隠された処置
その日から、精子採取のたびにA君は終了後に睡眠薬を飲まされるようになった。
眠っている間、睾丸に特殊な薬を注射される。
さらに数回に分け、A階級の生殖細胞が注射された。
この「生殖細胞乗っ取り処置」によって、A君の睾丸は本人由来の精子を作らなくなり、代わりにA階級の遺伝子を持つ精子を生産するようになった。
目覚めたA君は何も知らず、いつも通りの日常を送った。
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4. 女性徴兵部隊
女性徴兵部隊でも同様にDNA鑑定でA〜D階級に分類。
男女別学で育ったため、ほとんどが処女だ。
20歳になると、個室で睡眠薬を飲まされ、
* D級は人工受精卵を移植
* A〜C級は精子検体を子宮に挿入
健康診断と称して極秘に妊娠確認を行い、「少子化対策法令」に従って妊娠を継続させる。
妊娠しなかった者は紛争地域に派兵され、男女同室の部屋で生活する。
戦場のストレスは性欲に変わり、男は求め、女は妊娠すれば帰国できる――当然、関係は生まれる。
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5. 退役と真相
A君は任期を終え、同年代の男女が暮らすシェアハウスに入った。
この国は多夫多妻制で、共同子育てが奨励されている。
DNA鑑定で国家はすべての子の親を把握している。
そこでA君はB子と秘密裏に関係を持ち、子ができた。
その子はA君に驚くほどよく似ていた――髪の色も顔立ちも、まるで血を分けたように。
しかし、国家のデータベースによれば、その子はA階級の遺伝子を持つ。
A君の睾丸はすでに乗っ取られており、自分の遺伝子を残すことはできなかったのだ。
見た目が似ているのは、国家が意図的にA階級の中からA君に近い特徴を持つ遺伝子を選んだからだった。
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A君はその事実を知らないまま、子どもを抱きしめた。
だが、遠隔監視カメラの奥では、国家の生殖管理官がその光景を静かに見つめていた。
すべては計画通り――睾丸乗っ取り。
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6. 潜入と拘束
A君は、ある日ふと疑念を抱いた。
――なぜ、あの子は自分に「似ている」のか?
国家のデータベースでは「A階級の遺伝子」とされているのに、髪の色も瞳の色も、幼い仕草さえ自分に酷似している。偶然にしては出来すぎている。
夜、B子が眠ったあと、A君はひとり端末を開き、国家のデータベースを検索した。閲覧権限のない領域には厚い電子の壁があったが、かつて軍に属していた経験から裏口の存在を知っていた。
「自分の遺伝子は、本当に失われたのか?」
確かめなければならなかった。
国家施設のDNA鑑定所は、首都の地下にある。公には「健康診断センター」と呼ばれ、外部の者が自由に立ち入ることは許されていない。
A君は夜間清掃員の身分証を偽造し、B子には「出張」と告げて家を出た。
冷たい蛍光灯に照らされた廊下を進むと、足音がやけに大きく響いた。
奥に並ぶ無数の透明カプセル、その中には「生殖細胞データ」が光るコードとして保存されている。
A君は心臓の鼓動を押さえながら、自分と子どものDNAサンプルを検査装置に通した。結果が出るまでの数秒が、永遠のように長く感じられた。
――画面に浮かび上がったのは、「親子関係なし」の文字。
指先が震えた。
やはり自分の精子は乗っ取られていた。
それでも、子は自分に似せて「作られた」。
国家の計画は、血縁さえ演出して人間を支配するものだったのだ。
背後で、微かな空気の動きがあった。
「身分を明かせ。ここは立入禁止区域だ」
振り向くと、黒い制服の保安官が二人、無言でこちらを見ていた。
A君は逃げようとしたが、すぐに腕をねじ上げられた。手首に冷たい拘束具がかかる。
「あなたの行為は生殖管理法第七条に違反しています」
電子音声が淡々と罪状を告げる。
鉄扉が閉まる音が耳に残った。
独房は、窓もなく、薄い光だけが上から差し込んでいる。
壁に備え付けられた監視カメラの赤い点が、獣の目のように彼を見つめていた。
A君は膝を抱えながら、初めて自分の国が本当に「独裁国家」であることを骨身にしみて感じた。
――この国は、血と家族さえも国家の道具にするのだ。
--- 7. 審問と告発
独房の扉が重々しく開き、二人の保安官が無言でA君を引きずり出した。
金属製のベッドに押し倒され、両腕と両脚を厚い革のベルトで締め上げられる。
冷たい鋼鉄が肌に食い込み、わずかな身動きさえ奪われた。
「――なぜ禁域に侵入した?」
無機質な声が頭上から降ってきた。
白い仮面をつけた審問官が、無表情のままA君を見下ろしている。
声は拡声器を通したように加工され、性別さえ判別できない。
A君は唇を噛んだまま沈黙を守った。
だが、隣の保安官が無言でスイッチを押すと、ベッド下から微弱な電流が走った。
全身の筋肉がひきつり、喉から声が漏れる。
「再度問う。なぜ侵入した?」
「……自分の子の、DNAを……確かめたかっただけだ」
かすれた声で答えると、審問官はしばし沈黙し、やがて冷ややかに言った。
「お前の子ではない。我らが選び、設計した生命体だ」
A君の胸に焼け付くような痛みが広がった。
「なぜだ……なぜ、そんなことを……!」
審問官は淡々と告げる。
「国家は偶然を許さぬ。子どもは国家の資源であり、血筋は秩序を乱す要因となる。お前の遺伝子は不要と判断された。それだけのことだ」
革のベルトが食い込み、汗が頬を伝う。
A君は必死に声を振り絞った。
「だが、あの子は……俺に似ている!」
審問官はわずかに肩を揺らした。
「似せただけだ。お前に希望を抱かせ、忠誠を深めさせるために」
その瞬間、A君の叫びが独房に響いた。
「人間を、ただの部品にするのか!」
返答はなかった。
ただ、ベッド下の装置が再び唸りを上げ、電流が容赦なく彼の身体を貫いた。
光が遠のく中、A君の耳に最後に届いたのは、冷徹な審問官の言葉だった。
「お前の反抗は記録された。次は、処分の段階に移る」
---8. 処分
尋問の翌日、A君は独房から連れ出された。
「処分」とだけ記された命令書が、一枚の電子端末に浮かんでいた。
薄暗い処置室。
「生殖能力を剥奪する――お前に、もはや未来はない」
ベットに寝かされ局部麻酔をかけられた。
睾丸袋にメスが入れられ、睾丸を次に使用できるように丁寧に取り除いた。
A君は局部麻酔なので痛みは感じないが、軍医師が、睾丸を取り出す会話を聞いて涙が落ちる。
即、冷凍保存され、無精子症の人の生体移植用に輸送された。
また、しばらくたった日、
白衣の医師と呼ばれる者たちが無言でA君を台に横たえ、麻酔を注射した。
最後に彼が聞いたのは、冷たい声だった。
「生体移植の相手が高額だして待っているので海綿体の摘出を行う」
A君は麻酔で記憶は無い。
メスイキで感じる前立腺も含めて根こそぎ生殖器を切り取った。
海綿体はマイクロペニスの人のペニス増大手術の材料として使われた。
A君が次に目覚めた時、下腹部には鈍い痛みが残っていた。
ペニス跡にはなにもない
「男でなくなった.......ハ--嫌だ」
しばらくの期間は個室で尿漏れが多いので、
ノーパンでスカートというものでもないビニール腰巻きで過ごした。
自分で尿の始末もさせられた
その後、軍医部から作業場へと移動さされた。
腰には革のベルトで縛られたまま、そこにかつての「自分」が存在しないことを悟った。
国家は反逆罪で「労務者」として扱われた。
名前も消され、番号だけが呼び名となった。
収容所のような工場で、朝から晩まで機械を動かし、鉄と油の臭いにまみれて生きる。
仲間と呼べる人間もおらず、家族の元に戻ることも決して許されなかった。
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