港区の監禁童貞キラー
ここは…どこだ?
朦朧とした意識の中、目を覚ますとそこは打ちっぱなしのコンクリートに囲まれた、六畳ほどの一室だった。
無機質な壁に似つかわしくない、白くてふわふわな丸いカーペットの上に倒れていたようだ。
辺りを見回すと、LED照明で装飾されたガラスのショーケースがピンク色に光っており、中には、ディルドらしき健康的な肌色〜茶褐色のオブジェが十数本ほど直立不動で陳列していた。
女の子の部屋……だろうか?
足元を見たときに、ようやくこの状況の異常性を認識する。
鉄製の足枷が両足に取り付けられて、そこから伸びた鎖は背後にあった柵の高いベッドに繋がれていた。
ベッドがそもそも相当重いのか、びくともしない。
鎖の長さも中途半端で力が分散してしまう。
更に両手首も後ろ手に、手錠らしき鉄製の腕輪で繋がれているようだ。
しばらくガチャガチャと脱出を試みていると、鉄扉が開いて長身細身の女が近付き屈んでこちらの顔を覗き込む。
「目、覚めたんだね。おはよう♡」
ゆるふわのウェーブがかった茶髪ロングで、体のラインがくっきり浮き出る薄いセーターと、黒いミニスカを着た、港区女子のような女だった。
当然面識は無い。
見た目通りの猫を撫でるような甘ったるい声…ではなく、ほわりと包み込むような甘くて優しい声。
「あれぇ?もう覚えてないのかな。昨夜はあんなに激しかったのに♡」
そんな記憶は無い。
「あはは!固まってる。冗談だよ〜するわけないじゃん笑 私と君は初対面。……ではないかもしれないけど。それを君が知る必要は無いからね」
それ以上のことは教えてはくれないようだった。
ギリギリ思い出せるのは、昨夜は飲みの帰りで歓楽街を歩いていたことぐらいだった。
「じゃー始めよっか♡」
女はこちらに近付いて、スリ…と頬を寄せて唇に口付けした。続いて恍惚な……あるいは値踏みするような目でこちらをしばらく見つめてから、抱き寄せる形で目を閉じてキスをする。理由は分からない。
シナモンとバニラが混ざったような、甘ったるくてどこか刺激のある匂いが鼻をつく。
女は撫でるようにこちらの体を上から下へと触り、その度に女の体も軽微なくねりを見せて、こちらの体はとうに反応しきっていた。
「あはっ、もぅすっごいビンビン♡ ホント童貞くんってすぐ反応しちゃって可愛い〜♡」
「やめてください…」
「どうせこんなことする相手、他に誰もいないのにね笑」
「…何がしたいんですか?」
目的はなんなんだ。
この女は何がしたいんだ。
このまま体をいいように弄ばれて、悦ぶべきか抵抗すべきか判断しなければ。
「ん〜そうだなぁ。じゃあ先にネタバレしちゃった方が楽しいかもね? あそこにたくさんおちんちんが並んでるでしょ? 君のおちんちんも、これからあのコレクションに並ぶことになるからね♡ 麻酔無しでたぁくさん痛め付けてあげるからね♡ 楽しみだね♡」
血の気が引いていく。
「うんうん、元気無くしちゃったね…よぉしよし、可哀想だね♡ でも大丈夫だよぉ、お姉さん慣れてるから、綺麗に防腐処理して飾ってあげるから♡ それに君はトクベツだから、おちんちん失くしちゃう前に、たぁくさん可愛がってあげる♡」
「意味が分かりません、僕が何したっていうんですか…」
「さぁね♡ …うふふ、いい顔になってきた♡ さっきまではこういうのも悪くないかもーってちょっと思ってたでしょ?でも今は恐怖と絶望が混ざって戸惑ってる。一生懸命ここから出る算段を立ててるんだよねぇ♡ そんな事しても無駄なのにっ♡」
そう言って女は服を脱がせてくる。
明らかに誘拐な時点で嫌な予感はしていたものの、体が否が応でも反応してしまうのは、快楽からか、防御からか。
女は脱がせた服を周囲にほっぽってから、裸になったこちらの目の前でスカートを脱ぎ、下半身だけ下着姿になる。
そしてゆっくりこちらの膝に腰を下ろしてから、ゆさゆさと前後に動いた。
動きを止めたかと思えば、こちらの体をまじまじと見て、痕が残った傷に触れてくる。
「どうしたの?これ。可愛い傷だね♡」
そう言って傷の部分をぺろぺろ舐め始めた。
何度も執拗に、舌を強くねじ込むように傷跡に押し付けてくる。
言うつもりなんて無かったのに、気付いたら自分の口から傷の経緯を喋っていた。
女は指で自分の髪をくるくる弄びながら、それを聞いている。本当は興味なんか無いのだろう。
しかし聞き終えれば、再び女は指で傷跡をなぞると、くちゅっと音を立てて口付けし、傷跡も、傷の周りも丁寧に舐めた。
やがてその唇は亀頭に宛てがわれる。
「もうこんなに我慢汁濡らしちゃって♡ これからおちんちん切断されるんだよ? こんなに興奮してていいのかな〜? お馬鹿さん♡」
女は、ぶぢゅるるるる!と汚い音を立てて我慢汁を啜り、陰嚢を片手で包み込むように握りながらフェラをした。手先はそれを早く握り潰したいのか、力が籠っている。
陰嚢を強く揉まれながら、ペニスは女の唾液でぢゅるぢゅると音を立て吸い込むように刺激される。
自身の手以外で陰部を刺激されている事実に興奮を抑えきれず、「ぁ゛、」と声が漏れた直後、勢いよく女の口腔内に射精した。
女は頬を窄めながらゆっくりと顔を上げ、ぢゅっ、と音を立てて唇を離す。
「…………あ〜あ…逆レされて射精しちゃったね♡ そんなに気持ちよかったのぉ?童貞くん♡」
まだまだお楽しみはこれからだよ、と女は笑って、フェラしたその口で唇にキスをした。
唇を合わせるだけの軽いキス。ディープキスまでしてくれたら、女の舌を噛みちぎれたかもしれないが、凡そ自身の危機感が、そうはさせてくれないと悟る。普通にディープキスがしたい。
その後も、女に後ろから密着されたまま手で扱かれて、短時間の内に、2発、3発と射精してしまった。
その間も女は耳元で「出していいよ♡」「頑張ったね♡」「よく出来ました♡」「可愛い♡」などと囁いてくる。
栄養バランスの良い食事を、あーんして食わされる。
そして、瓶ビール一本を体内に流し込まれた。
排泄は黒いポリ袋の中でしろと命令されて、その一部始終を観察された。
これらの出来事が異常だと感じる。
一日目、脳はまだ正常だった。
体が濡れタオルで拭かれる頃には眠気が来て、一日が終了する……はずだった。
「ああ、そうだった。眠るときはこれを傍に置こうね」
女はピンクに光るショーケースの中から一本のディルド……もとい誰かから切り取った陰茎のオブジェを取り出すと、こちらの口元に宛てがった。
「っ……!? ぅ゛、ぶ…!」
臭いは無いが、嫌な想像をして噎せた。
勃起時の形状を保ってはいるものの、オブジェ自体は乾燥しきっており、とてもディルドとして扱えるものではないと分かる。
「素敵でしょ?君もそのうち、早くこうなりたいって思うようになるよ。その時は教えてね、お願いします、僕のおちんちんを切り落としてくださいって」
首を横に振り、少しでも目の前の陰茎から遠ざかれるようにとベッドの柵に顔を埋めた。
「じゃあ、今日は寝よっか♡ ほら、こっちおいで♡」
言われるがままベッドの上に足を乗せ、横になると枕元に先程の陰茎のオブジェを置かれる。
「おやすみ……〇〇くん♡」
こんなはずではなかった。何がいけなかったのだろうか。何か恨みを買うことがあっただろうか。見ず知らずの女に。
考えるのも疲れて、そのまま眠りに落ちる。
ビールに睡眠導入剤でも入っていたのだろうか。想定より早くに寝入り、目が覚めた時には女が朝食のトレーをローテーブルに置いて、こちらを覗き込んでいた。
「おはよう♡」
「おはよう…ございます」
「昨日はゆっくり眠れたみたいだね♡ こっちも元気にむくむくしてる♡」
女は朝勃ちしたペニスを触りながら、こちらの唇にキスをした。
「ねぇ……出したい? でもダメ〜♡ 私が帰ってくるまでたくさん溜め込んでおいてね♡ 今日は帰ってきたらこのストッキングの上とか中に、たぁくさん射精してもらうからね♡」
そう言って、女は朝食を食わせた後、部屋を出て行ってしまう。
退屈なまま何時間かベッドの上で過ごしていると、突然灰色の壁に映像が映し出される。
天井に吊るされたプロジェクターが光り、サイドのスピーカーから音がする。
ギュイィィィィン!
「こっちと糸ノコ、どっちがいいの♡」
「こ、こっち…」
「電動の方がいいんだね〜♡ これだと今つけてるのが荒削り用だからちょっと痛いと思うけどぉ〜糸ノコほど時間はかからないだろうね♡」
「大丈夫、痛い方が良い…」
「うんうん良い子だね♡ じゃあまずはおっきくしよっか♡」
映像の男は女にペニスを扱かれて勃起させ、その根元を女が紐で括り、コックリングを装着させた。陰嚢も同様に紐で縛ると、温感ジェルのようなものを全体に塗りたくってマッサージした。
「ぁの、僕の…!ヤスリで扱きながら、落として…ください…!」
「え〜いいの? 痛いよ♡」
「痛くしてください…!たくさん傷付けて特別にしてください…!いっぱい傷がある方が、可愛がってくれるんですよね…!」
「そうだねぇ…♡ たくさん耐えてきた方が偉いから、生皮が抉れて真っ赤になっても勃ってたら、これまでで一番大切にするね♡」
映像の男は頷いて、嬉々として去勢を受け入れた。
映像は暗転し、次に映ったのは白衣を着た女と、切り取られた陰部だった。
「いっぱい耐えてて偉かったけど、途中で萎えちゃったな…。でも、私のために頑張ってくれたから、大事に私の枕元に飾っておくね♡」
女は陰嚢にキスをしてからマスクをつけた。
映像が終わってから、気になってショーケースを見てみるが、全体が赤くなったオブジェは見当たらない。
女の言う通り、女の枕元で飾っているのだろうか。
映像から分かったのは、男女の狂気と、女は傷が好きというぐらいで、目新しい情報があったわけではない。映像の男のその後が気になったが、知る由も無いのだろう。生きていると良いのだが。
「ただいま〜♡」
夕方、女は帰ってくるなりこちらの体を抱き締め、おでこにキスをした。
「お腹すいたでしょ? ご飯にしようね」
薬を盛られるかもしれないのに、言いなりになって夕食を食わされる。
だんだん体が熱くなり始め、望んでもいないのにペニスが勃起した。
「媚薬が効いてきたみたいだね。じゃあ始めよっか♡」
女はスカートをたくし上げてこちらの体に跨り、黒いストッキング越しに、ペニスが女の股に触れる。
女がゆっくりと腰を振り始め、その姿があまりにも官能的で、「──ッは!ぁ…」と声を上げて射精した。
黒ストッキングに白濁液が付着して、少しも経たない内に冷たさを帯びる。女はその間も、艶めかしく腰を振り続けた。
「待って、無理、無理だって……」
何発か射精した直後も女はペニスを擦り続け、こちらの要望を聞くことは無かった。女は飽きるまで扱き続ける。
「くるし? くるしいね♡ 見て、私のお股もストッキングも君の精液でぐちゃぐちゃだよ♡ 気持ちぃね♡」
異常だ。
休憩を挟みながらではあったものの、擦られ続けて精液には少し血が混じり始めた。ペニスもうっ血し、捲れた生傷に消毒液をかけられ続けているようなヒリヒリとした断続的な痛みが続く。
「…めて、痛…ぃ…ぅ゛、はぁ…」
「ん、ここまで耐えられて偉いね♡ よく頑張ったね♡ とっても愛おしいよ♡」
女はこちらの体を抱き寄せて、頭を撫でる。腕が縛られていなければ、とっくに突き飛ばしていただろう。
まだ、脳は正常だ。
正常だと思っていた。
「傷……、傷、舐めてくれませんか」
「いいよ♡」
女はこちらの要求を呑んで、愛おしそうに、こちらの体の傷に口付けをすると、舌を少し出して音も立てずに舐め続けた。
こんな要求をしたのは、女がからかわずに承諾すると思ったからだろう。実際そうだったことに安堵した。
……5日目。
女は毎日、こちらのペニスを虐めては楽しそうに微笑み、最後には「頑張ったね♡」「偉いよ♡」と抱き締めるのだった。
女の承認欲求に使われていることは明白だったが、それもだんだんどうでもよくなってきた。
「今日はこっちも気持ち良くしてあげようね♡」
そう言って女はアナルファック専用の温感ジェルを取り出し、コンドームを着けた指でそれをこちらの尻穴にねじ入れ解していった。
「はい、深呼吸して〜吸って〜吐いて〜」
「すぅ……は、ぁ……」
「ゆっくりだけど開いてきたよ♡ このまま今日はディルドが入るくらい拡張するからね♡」
「……ぅ、はい……」
今更、尻穴が拡張される程度の痛みでは動じなくなっていた。むしろそれが心地良い。
「痛い?」
「痛いけど…おかげで、正気でいられます」
「これは?」
「あ゛ァ゛ッ…!イ゛、ゥ゛…」
ディルドではない、女性用の長いバイブでぐさりと奥まで刺され、振動を最初からMAXにされる。
「イ゛、ク゛ッ…!」
射精して、床に白濁液をぶち撒けた……と思ったが、射精感に対して、量が少ない。
「今日初めて射精したにしては、ちょっとしか出せなかったみたいだね♡ このまま限界まで搾り取ろっか♡ シコシコしながらアナルファックするね♡」
女は宣言通り、片手でペニスを扱き、片手でバイブを揺らしながら奥まで突くのと前立腺を刺激するのを交互に繰り返す。
自分の口からメスのような声がして、2発、3発…と射精した。しかし尿道口からは雫程度の精液が漏れ出るばかりで、勢い良く発射されることは無かった。
何が起きているかも分からないまま、尻穴に極太ディルドを挿入される。
拡張される痛みと、奥へと連なる異物感に堪らず嗚咽を漏らすと同時に、尿道口から勢い良く液体が発射された。
黄色みがかった透明な液体に、本来混ざるはずのない乳白色が紛れている。
「え……何……?」
「射精した後の尿に精液が混ざっちゃったみたいだね♡ それに勃起時に尿道が開いてるなんて、体がとうとうおかしくなっちゃったみたいだね♡ おめでとう♡ 素敵だよ♡」
「は、ははは…」
明日には治ってるといい、などと考えながら夜を過ごすことになった。
今日は体を完全に固定される代わりに、女が添い寝するようだ。
「君がここに来てから、今日で5日が経過したよ。明日の朝は何が食べたい?」
「健康なやつ…」
「じゃあ、ホットミルクとパンを用意するね。今日は寝れそう?」
「…うん、ビール飲んだから…」
「そうだね♡ じゃあおやすみ♡」
女はこちらを抱き締めた。
7日目。
拘束さえされていなければ、同じ境遇の人が今ここにいれば、まだ脱出の希望を持てたのかもしれない。
そんなのはフィクションの世界だが。
ここでの生活はだんだん居心地が良く感じてきた。そうあるべきだと脳が切り替えようとしている。
一日二食、朝と夜。排泄は最悪だし風呂にも入れないが、体を女のいいように扱われながら可愛がられていることで頭が、帳尻合わせだと思い込んでいた。
「おはよう♡ 今日は一日中たっぷり可愛がってあげられるよ♡ 何かして欲しいことはある〜?」
女はそう言ってこちらを抱き締めながら耳朶を舐める。
「一日中、こうやって可愛がっててくれませんか」
「ふ〜ん? いいよぉ…♡ じゃあ今日は痛いこと無しで、朝から晩までずっと可愛がるね♡ 1週間頑張ったご褒美だよ♡」
女に、耳、唇、首、胸…とキスをされ、傷の部分を強く舐められる。性器に触れていないのに、気持ちよくて声が漏れる。
女はペニスの亀頭を優しく舐めた後、自身のワイシャツの下の方のボタンを少し開けて、その臍に亀頭の先端を宛てがった。ぐりぐり押し付けてから、臍の周りを何周か亀頭で撫でる。
女の下腹部には横一文字の赤い傷跡があった。
「その傷、どうしたんですか」
「ん?どの傷〜?」
「お臍の下にある、それ」
「あぁ、帝王切開の痕だよ♡」
「え、子供いるんですか」
「いたね〜♡」
それ以上のことを聞こうとすると、話を逸らされた。
その日はひたすら愛でられ続けて、お風呂にも入れてもらい、手枷を前につけ、自分の手で食事をさせてもらった。
8日目。
女性はトングのような形をしたヘアアイロンをコンセントに繋いだ。
「今日はこれで、たまたまの毛を焼き切っちゃうね♡ 大丈夫、一時的に膨れるだけで勃起に影響は無いよ♡」
女性はポケットからナット状の、金属でできたコックリングを取り出して陰嚢の上部に装着した。
ひやりとして気持ちよく、重さで睾丸がよく垂れ下がっていることが分かるが、その後のヘアアイロンのことを想像すると地獄だった。
また、口元にはギャグボールが装着され、足枷の鎖もいつもより短い位置でベッドに繋がれた。
熱したヘアアイロンで玉袋を挟まれ、すぐに抉るような激痛が走る。尻が閉じて後ろへと逃げようとするが、それ以上下がることは出来ない。
呻き声と、短い鼻呼吸を交互に繰り返す。
痛みが一瞬だけ引いたように感じて陰部を確認すると、すぐに強い灼熱感が戻ってきて、陰嚢の皮膚が赤くなる。やがてやや白濁色に膨れて、毛はちりちりになって床へ落ちていった。やや焦げた臭いが漂う。
更にヘアアイロンでリングを挟まれ、陰嚢が根元から焼き切れそうな痛みが走る。
アイロンを離した後も、抉るような痛みが続き、数分は熱が収まらない。継続される痛みによって、熱が収まったかどうかすらも分からないのだった。
このままリングの中で膨れて、リングに膨れた皮膚がくっついてしまうんじゃないかという恐怖もあった。
女性はその様子を見ながら、こちらにキスをしてペニスを指で扱き始めた。当然勃起することは無いのだが、女性に耳元で「大丈夫だよ♡」「頑張ったね♡」「ご褒美だよ♡」と囁かれ、気持ちだけは勃起しろと願った。
その日、射精することは無かったが、夜は陰嚢の腫れが最大化し、痛みが続いて眠れなかった。皮膚から滲出液がジュクジュク溢れてくる。
あと何日続くのだろう。今日の出来事で、ようやく去勢が現実味を帯びてきた。
9日目。
女性の帰りを待つ間も、睾丸は痛み続け、腫れた水疱に今すぐ針を刺してやりたい気分だった。
後ろ手に縛られた状態ではまともに動くことも出来ないため、女性がリモートで操作する去勢の映像を見せられ続けることになる。いずれ自分もああなる。せめて少ない刺激で去勢して欲しいと思う感情と、自分ならもっと苦しい方法でも耐えられると思う感情の、二つに揺さ振られていた。
自分はもうペットなんだ。
飼い主に少しでも喜んでほしいし、記憶に残ってほしいのだ。
あんな風に飾られてはいるが、枕元の陰茎に比べたら、わざわざ手に取って触る価値もないのだろう。
それだけは許せなかった。ここまで痛め付けておいて、何の記憶にも残らない、つまらない生物だと思われるのは癪だ。せめて刻み付けてやりたい。自分の去勢映像がこれからのお手本になればいい。
「ただいま〜♡ 今日は遅くなっちゃってごめんね♡」
女性は仕事着なのか、色気の無いダボダボのニットとズボンの姿で帰ってきて、こちらを抱き締めた。
「会いたかった…」
女性がぽつりと呟く。
「すぐお夕飯作るから少し待っててね♡」
そう言って頬にキスをして、女性は仕事着を脱いだ。
背面しか見えなかったが、髪の毛の間から、丸い幾つもの火傷跡が見えた。肩にはケロイドの治療痕のような赤みが拡がっている。
もっと違う形で出会えていたら、友達ぐらいにはなれていたかもしれない。こんな時に、たらればを考えるなんてらしくないな…と思いつつ夕食が来るのを待った。
躾の時間になり、女性はこちらの股間をまじまじと眺めて満足そうに微笑んだ。
「うんうん。腫れはほんの少し引いてきたみたいだね♡ じゃあ今日はこっちの面倒見てあげようね〜♡」
女性はペニスを指でしこしこして勃たせると、亀頭部分にプラスチック製のカバーを取り付けて、コックリングで締め、カバーが落ちないように錠前を取り付けた。亀頭の先端にひやりとした感触がある。
カバーには尿道口用の穴が空いており、そこから尿道口にシリコン製の短い管を軽く挿入される。カバーからは黒くて細い管が伸びて、小型の機械と繋がっていた。
「しこしこしながら楽しもうね♡ スイッチON!」
「ぅぁ゛…」
カバー内側についた電極から微弱な電流が流れてくる。動きは様々なパターンがあり、左右交互に流れるものと、緩急やリズムをつけて流し続けるものなど種類がいくつかあるらしく、女性は機械のボタンでそれを操作し、だんだん電流の強さも強くしていった。
「ぁぁ、これ、っ…良い…」
「これ? あはは、なんのリズムも無い、左右流しっぱが好きなんだね♡ じゃあしばらくこのままにしとこっか♡」
女性は機械をそのままにして、こちらの隣に座って片手で耳を塞ぎ、もう片方の耳に舌を入れて舐めた。
もう片方の手はペニスを、先端に行くにつれてぐっと指で絞るように扱き続ける。気持ちの良い射精をした。地獄はここからだった。
射精した直後の亀頭に、女性は電流を流し続け、更に電圧を上げた。扱かれ続ける表皮も擽ったいどころではなく、亀頭のピリピリとした感触が下まで降りてきているみたいに、ペニス全体が震えていた。
そのまま、ぴすっぴすっと小さく射精する。
電流が止められることは無く、苦しいのに、落ち着いたらまた射精して、を繰り返して、その度に電圧を少しずつ上げられていく。
射精直後の、もう無理、もう死ぬ、というタイミングで女性は電圧を3段階一気に上げる。
「ふーっ…ふーーっ…」
「どう? 気持ちいい?♡ これでしかイケなくなっちゃいそ?笑 返事もできないくらい苦しいみたいだね♡ 可愛い…♡」
ガシャガシャ足枷の音を鳴らして猛烈に体を逸らそうとすると、口元にギャグボールが取り付けられる。
涎まみれになりながら、快楽と痛みが過ぎ去るのを待った。
「はい、お疲れ様。終わりだよ♡」
女性はコックカバーを外し、一通り片付けると、こちらの体を抱き寄せて「今日も頑張ったね♡」と頭を撫でる。堪えきれずにこちらからキスをすると、女性は「欲しくなっちゃった?」と微笑んで、キスをして、こちらの舌を吸うように舐めた。
「〇〇くん…可愛いね。そろそろおちんちんにお別れしよっか♡ 特別な傷になるように、いっぱい痛め付けてあげるね♡ お別れできたらいっぱい褒めてあげる♡」
10日目。
女性の帰りを待つ間、落ち着かず、ペニスをベッドの柵に擦り付けていた。今日でお別れになるなら、その快楽を堪能していたかった。
しかし、女性は帰ってきても、こちらに構うことは無く、淡々と夕食を食わせて、瓶ビールを一本飲ませ、布団をかけて寝かしつけた。
「今日は何もしないんですか…?」
「何もしないよ」
女性はそれだけ言って部屋を後にする。
戻ってきたかと思えば、ペニスに尿道カテーテルと貞操帯を取り付けて去っていった。
そんな日が2、3日続いた。
その分強制的にオナ禁になった。
13日目。
監禁生活ももう2週間経とうとしている。
猛烈にちんこを触りたくて、貞操帯が着いた状態のまま、ベッドに擦り付けて腰を振るが、大した快感は得られなかった。
そんな姿を、帰宅直後の女性に見つかってしまう。
「…………わぁ」
まるでゴミでも見るような目でこちらを一瞥して、恥ずかしさと動揺で「…ごめんなさい」と口にしていた。
女性は「いいよ」と小さく呟いてこちらに近付く。
「おちんちん苦しかったね♡ 辛かったね♡ 弄りたくて仕方ないでしょ? でもだぁめ、今日は我慢してね♡」
楽しそうに意地悪なことを言うのだった。
「代わりじゃないけど…私とキスする?」
「…します」
こちらから求めるように激しくキスをすると、女性はこちらの肩を抱き寄せて、倒れるようにベッドに寝転がった。
女性に押し倒されたみたいに見下ろされる。
少し切なそうに笑って、女性はワイシャツを脱いだ。
肩のケロイドの痕と、胸元から腹部にかけて、無数の丸い火傷跡が蓮コラのように咲き乱れている姿が視界に入る。火傷跡は陥没した乳首の周りにまで及ぶ。
「醜いでしょ。誰にも触らせるつもりはないの」
「僕のは舐めたのに…?」
「それとこれとは別♡ 君が私をどう思ってようと構わないけど、私にとって君は家畜♡ 君の体をどう扱おうと私の勝手だよ♡」
「もっと、別のところで出会ってれば…ん」
そこまで口にしたところで、唇を塞がれた。
「忘れちゃったの? 私は犯罪者だよ♡ 明日はお昼からお待ちかねの去勢タイムだからね♡ どんな風に痛め付けられたいか、考えておいてね♡ そしたら明後日はほんとのお別れだよ♡ 歓楽街まで帰してあげるから、そこからは自力で帰ってね♡」
「…嫌です…」
「わかるかな? おちんちんの無い家畜に興味は無いからね♡♡ 文字通り誰にも必要とされなかった童貞の君を去勢して元に帰したら、そのまま誰にも必要とされない生活に戻るだけだよ♡ 何も問題ないでしょ? 何も怖くないよ♡」
「…僕にはお姉さんが必要なのに、酷いです」
「……。〇〇くん、それは違うよ。君は一時的な防御反応と生存本能から私に好意を寄せているだけで本当の愛着ではないんだよ。ストックホルム症候群って聞いた事があるでしょ? 君は今ストレスで病気になってるの。お家に帰ったらちゃんと病院に罹るんだよ」
「わかってますよ…迎えに行きますから…」
「あはは〜警察とじゃないことを祈ろうかな〜笑」
女性は自分の話は一切話してくれなかったものの、ベッドの上でこちらを抱き締めながら、元の生活に戻ったら何がしたいか、等の話を聞いてくれた。
その後、口移しでビールを飲ませられて、ゆっくり眠りについた。
14日目。
貞操帯と尿道カテーテルが外される。
「目隠しはいる?♡」
首を横に振って、物欲しそうに勃起している自分のペニスを見張った。
ブルーシートが張られたベッドに座らされており、両脚は開脚状態で固定され、手首も暴れないように後ろ手で、腰と一緒に縛られている。
勃起したペニスと陰嚢は紐で縛られた上にコックリングで固定され、しばらく勃起は続きそうだ。
「さて、ご要望がなければこのまま電ノコか糸ノコで切り落としちゃうけど、どうして欲しい?♡」
「…痛く、たくさん痛くしてください…!扱いて引っ張って圧力かけて、釘打ってヤスって炙ってから、糸ノコでゆっくり切ってください…!」
「聞いてるだけで痛そうだね♡ いいよ、全部叶えてあげる♡ その代わりちゃんと勃起しててね♡」
「…ぅ、はい…」
口元にギャグボールを装着され、足元に腰を下ろした彼女は愛おしそうに亀頭を口に含み、指でゆっくりペニスを扱いた。
射精しそうになって腰をビクつかせると寸止めされて、亀頭用のコックリングを装着され、カリ裏で紐を縛られて、反対側は部屋の鉄製のドアノブに括り付けられた。
扉が開く度に引張が緩まり、自動的に閉まろうとする力で紐が強く引っ張られる。
「圧縮する機械が無かったから、これで許してね♡」
電極パッドが玉袋の左右に取り付けられ、外れないように布でぐるぐる巻きにされる。
擽ったいような電流を流された後に、「左右ずっと流しっぱが好きなんだよね?♡」と電圧を一気に上げられて、体がビクンと跳ね上がり、その後も足がバタついた。呼吸が苦しい。視界の、焦点が定まらない。
「こぉら、そんなに動いちゃ危ないよ♡ これからおちんちんに、ハンマーで釘を刺していくからね♡ とびきり可愛くしなくちゃね〜♡」
細い釘が一つずつ丁寧に、血管を避けてトントン打ち込まれていく。先端が皮膚を突き破る瞬間、痛みはあるが、その後は痛いというより、響く感覚がした。
電流を流され続けて感覚が鈍っているのだろうか。
全ての釘が打ち込まれると、彼女は粗めのヤスリを取り出してペニスに巻き付け、扱き始めた。
扱かれ続けてヒリヒリしたあの感覚とは比にならない、直接的な痛み。抉った表皮を更に抉るのだから、生傷に対してすりおろし器を使っているようなものだろう。
血塗れになって、床のブルーシートにはぽたりぽたりと血液が落ちている。彼女の着けていたゴム手袋も真っ赤に染まっていた。
彼女は頃合いを見てコンセントに繋いでいたガスバーナーを取り出し、ペニスを炙っていく。
やすった部分の血液が固まり、出血は収まった。
熱を持った釘がじわりとペニスの内側を熱くする。
「痛かったね〜♡ あとこっちは糸ノコで切っちゃうから、これは外すね♡」
彼女は陰嚢から電極パッドを取り外すと、ブルーシートに並べていた糸ノコに手をかける。
コックリングを目印に、想定よりもすんなりと切り落として、こちらの尿道に管を通して、それ以外は焼コテで止血された。声にならない悲鳴が漏れる。
次に彼女は調理用ハサミを手に取って、陰嚢のリングを目印に切り落とした。
内側から体液と血液が漏れ出ており、それも焼コテで止血される。
彼女は切り取った陰嚢を広げて中の精策を指差した。
「見て♡ ここでずっと無駄な精子作ってたんだよ♡ これからは無駄な性欲に振り回されることもなくなって良かったね♡」
楽しげに笑う彼女を見て、安堵し、意識が落ちる。
そう時間は経っていないのだろう。次に目が覚めた時は、ベッドに寝かされており、腕の拘束は解かれていた。気になって陰部を触ると、もうそこにペニスも玉袋も無い。枕元には透明な袋が置かれており、中には未使用のピンセットと包帯、ガーゼ、クリームが入っていた。
清潔なのはベッドの上だけで、床のブルーシートや機材などは最低限の処置しかされておらず、シートに貼り付けられた白い紙に、赤いマーカーで「ふれるな危険」と手書きされていた。
一通り向こうの処置が済んだのか、夕方頃に白衣を着た彼女が部屋に戻ってきて、この惨状を片付けてから、着替えてベッドに座り、こちらを抱き締めてキスをする。
「お疲れ様、よく頑張ったね♡ 痛かったでしょ、もう大丈夫だからね…♡ 〇〇くんはおちんちん卒業出来て偉いよ♡ 100点満点だね…♡」
彼女は何度も褒めながらこちらの手を取って繋ぎ、唇や耳や首にキスを落とした。
「あと、君のおちんちんは特別に頑張ってくれたから、枕元に置いて、これから毎日寝る前にキスするね♡ あと今日のために特別なお夕飯用意したから、ちょっと待っててね♡」
そう言って彼女は夕食の支度をして、ローテーブルにステーキとシーザーサラダ、サーモンのカルパッチョと、スープとフランスパン、高そうなワインが並ぶ。
美味しそうな料理だが、なぜか食欲が全くわかなかった。
「食べないの?」
食べませんよ、犯罪者が用意した料理なんて。と言いかけて口を噤む。
女はワインを飲みながらこちらをじっと、観察するように見つめた。
「ねぇ、まだ夢は終わってないよ。もう少しだけ私のこと、好きでいてくれないかな? その方が、楽だよ」
感情がぐらついて、テーブルを叩いて立ち上がった時、女も同時に立ち上がって部屋を出て行った。
女が戻ってくる気配は無く、一人で泣きながら部屋に残った料理を食べ、ワインを飲み、猛烈な眠気に襲われて…………次に目が覚めたとき、そこは朝の歓楽街の路地裏だった。服装と持ち物は、2週間前にここに立ち寄った時のまま。
ポケットの中には未使用のピンセット等が入った透明な袋があった。
大きな喪失感を抱えたまま、帰宅し、方々に謝罪した。
漁船に乗せられたと嘘をついて。
時々、夢にあの女が出てくる。
一緒にステーキを食べて笑う夢を見る。