学寮
(Part6~10はこちら)
▼ 写真~新寮生の公開集団去勢
PART11 - PART12 - PART13
Part11
石倉君は、退院してからも休学していたので、顔を見たのは、僕の手術の日以来、実に9ヶ月ぶりだ。
説明会が終ると、学科試験の会場に移っていってしまったので、話をしている暇がなかったけど、歩き方なんかを見ていると、事故の怪我は、もうすっかり良くなったようだ。
明誠学寮の入寮試験は学科だけで、面接はない。適性は3ヶ月間の仮入寮で分かるからという理由だ。
だから、入寮選考委員といっても、昨年のように、急に合格者を増やす決定をしたりするようなことがなければ、それほど重要な仕事ではないはずだった。
採点が終って、6人の選考委員が、研修室に集まった。
選考委員は、新4年生の前委員長、新3年生の4人、そして僕だ。
まず、今年も、仮入寮の合格者は24人、英語と数学のそれぞれ上位12人づつとすることが決まった。
そうなると、今年の1年生も、仮入寮の3ヶ月間は、2人で1つのベッドに同衾だ。多少気の毒だけど、今は寮も、財政面でゆとりがあるから、入寮者は多い方が良いというのが、委員会の意見だ。
なにせ、200人以上の志願者がいるのだから、優秀な人材は、1人でも多く採りたい。これも、手術の見学会などの企画が効を奏して、賛助会員が増えたから、できることのようだけど。
去年の新入生だった僕に、
「昨年の経験者として、2人1ベッドはどうだった。」
と、聞いた先輩がいた。
僕が、
「別に、気になりませんでした。」
と、答えたら、あっさり決定してしまった。
僕が気にならなかったのは、実は相方が、高校時代からよく知っている矢野君だったことが大きいんだけどね。
入寮定員が決まったところで、副委員長が、入寮希望者全員の名簿と、英語と数学の採点結果表を、選考委員に配布した。
名簿を見た前委員長が、口火を切った。
「石倉芳則というのは新入生じゃないようだが。」
委員長が、
「昨年入学ですが、怪我で休学して留年したそうです。ですから新年度も1年生です。」
と、答えた。
すぐに、新3年生の選考委員の間で、議論が始まった。
「彼は、昨年も受験していたのですか。」
「いや、今年初めての志願ですね。」
「1年目は、なぜ来なかったんでしょう。」
「留年した1年生が、入寮した前例はありますか。」
「聞いたことないですね。でも募集要綱をよく読むと応募できそうにも読めますね。」
「年齢的には、一浪と変わりませんし。」
「でも、浪人ならともかく、在学生が何でいまさら。」
4年生の前委員長がいるから、3年生の先輩たちも、一応丁寧語を使っている。
石倉君が留年した事情ぐらいなら、僕も知っているけど、先輩たちの話に口を挟むのもなんなので、じっと黙っていた。
すると、それまで黙っていた委員長が、前委員長の方を向いて、口を開いた。
「彼については、特別な話が来ているので、お伝えします。
石倉芳則は、石倉重工業の創始者の一族で、専務の石倉芳明氏の三男です。石倉家は、代々の当主が啓林ボーイということで有名で、ウチの大学の有力な後援者なのですが、それだけじゃなくて、明誠学寮の創設時にも、関連企業から多額の寄付を戴いたようです。
その石倉芳明氏が、明誠学寮に御子息をよろしくと、話を持って来られたのです。」
意外な話にみんなびっくり。僕だって、同じだ。
だいたい明誠学寮そのものが、石倉君のようにブルジョア階層出身者で、しかも東京在住の学生が、入りたがるような寮じゃないはずだ。、
「調べてみたら、石倉芳則は、明誠学寮の賛助会員だったようで、多少の縁はあったようですが、今回の入寮志願の理由は、どうも交通事故が直接の原因のようです。
彼には、両親公認の恋人、事実上の婚約者がいたのですが、その事故で、別の女性との夜遊びがバレて、婚約者の親、これも有名企業の社長だそうですが、その人が怒鳴り込んで来る、同乗の女性は、法外な補償金を要求して来る、自分は6ヶ月も入院する、もう大変だったそうです。
石倉芳明氏も、息子に散々恥をかかされたので、もう見放して、見舞いにも行かなかったそうです。」
クラスの中で、石倉君は勘当状態といううわさだったけど、あれは本当だったんだ。
「これには石倉芳則も、よっぽどこたえたのか、12月になって、父親に、明誠学寮に入寮して、勉学をやり直ししたいと言い出したそうです。
芳明氏も驚いたようですが、本人がそこまで思っているならと、了承して、勘当を解いたそうです。
それから、本人に名誉回復の機会を与えてやってほしいと、芳明氏が伊藤先生のところを訪ねられました。伊藤先生は、入寮生を決めるのは寮生だからと、委員長の私のところへ連絡してきました。」
伊藤先生は、言うまでもなく、明誠学寮の創設者の、伊藤明彦啓林大学名誉教授のことだ。
前委員長が、
「いろいろありすぎて、女嫌いになったかな。」
と、ぽつりとつぶやいた。
ジョークのつもりだったと思うけど、誰も笑わない。
シラケドリが飛び去るのを待って、話し合いが再開された。
「それじゃ、受験させないわけにはいきませんね。」
「入寮応募資格あり、それでいいでしょう。」
「彼の成績は、どうだったんです。えーと、表をみると。」
「英語が12番で、数学は140番。」
「英語が12番目なら、合格で問題なしですね。ぎりぎりですけど。」
というわけで、僕が何も言わないうちに、石倉君の合格が決定してしまったわけだ。
入寮選考委員会が終って、掲示板に、合格者の名前が貼り出された。
マジックインキで手書きしたのは、僕だ。こういう雑用が、一番下級生に回ってくるのは仕方がない。でも、明日からは、後輩がやってくれるだろう。
そう思いながら、僕が掲示板の名前を見ていると、しばらくして、その掲示板の前に、石倉君がやってきた。
すぐにそこに、自分の番号をみつけて、
「やったーー。」
と、ガッツポーズをした。
それから、初めて掲示板の横にいた僕を見つけて、
「えへへ。」
と、苦笑いしてから、
「片岡・・・先輩、よろしく。」
と、言った。
こうしてみると、石倉君は、本心から入寮を希望していたようだ。はっきり言って、僕は、あの話に半信半疑だったんだけど。
それにしても、石倉君から先輩と呼ばれるのは、何とも奇妙な感じだった。
「もう、身体は良いのかい。」
「大丈夫、今日もアパートから普通に歩いて、電車乗り継いで来たし。」
石倉君が答えた。
そうか、アパートから・・・・エッ?
「えー、石倉は、今アパート住まいなの。」
「そうだ・・・ですよ。親に勘当されまして、仕方なく借りたんです。」
「敬語使わなくてもいいよ。同じクラスだったのに不自然だよ。で、アパートはどこに。」
「ここでは新入生ですけど、本当にいいのです・・・かい。じゃあ、まあ遠慮なく。
それで何だったっけ、ああ、アパートね。狭くて古くて、まあ、勘当の身で、贅沢は言えなかったけど。場所は千歳船橋。」
「チトセフナバシ・・・、あの千歳船橋かい。」
「あの、も、そのも、千歳船橋は1ヵ所しかないと思うけど。そこの、朝日ハイツというところ。」
「朝日ハイツ!。そこの真向かいに弥生荘というアパートがあるだろ。」
弥生荘というのは、去年入寮前に、矢野君が借りていて、僕も一時居候していたアパートだ。
「知ってるよ。弥生荘。木造2階建のボロボロのアパートだろ。弥生時代から立っていたような。俺のアパートもボロだけど、あそこは人間が住むところじゃなかったな。」
石倉君は、矢野君がそのアパートに居たことや、僕も寝泊まりしていたことを知らないから、実に正直だ。もっとも、本当に弥生時代から建っていたら、世界遺産になってるはずだけどね。
ん?。ところで今、「なかった」って言ったよな。と、いうことは。
「弥生荘、今は無いの?。」
「うん。2月に火事で全焼しちゃった。日農大の学生が1人、大火傷で重傷だったよ。」
知らなかった。あのまま住んでなくて良かった。
新寮生24人が、全員食堂に集合すると、ガイダンスがスタートした。それから、去年の僕たちと同じように、寮内の見学会が始まった。
その間に、僕たち新2年生は、全員が大浴場の隣にある倉庫の入口で、待機することになった。この倉庫に何があるかと言うと、実は新1年生用の貞操帯が保管されているんだ。
去年、僕たちも、ここで貞操帯を着用した、いわば思い出の場所だ。良い思い出かどうかは別にしてだけど。
その日から手術の日まで、僕たちが、3ヶ月間着用し続けた貞操帯も、ここに再び保管されている。
大浴場で、前も後ろもしっかり剃毛終った新寮生が、素っ裸のまま、倉庫の中に案内されてきた。
風呂上りの24人が、全裸で1列に並んだ姿は、なかなか壮観だ。身長も体重も様々で、体格も、筋肉質あり、小太りありだ。
そして、無毛のアソコも、巨根から粗チンまで、千差万別。中には、この逸物を、本当に3ヶ月後に切り落としちゃっていいのと、聞きたくなるようなモノも並んでいる。
新寮生1人に、2年生が1人づつ担当する。不足する3人は掛け持ちだ。
奥から順番に、1人づつ割り当てとなるので、僕も矢野君の後ろについて、倉庫に入っていった。担当する新寮生の前に来て、ふと見たら、何と石倉君に当たってしまっているじゃないか。
石倉君は、これから何があるか知らないので、
「あっ、よろしく。」
なんて言っている。
なんとなく、と言うより相当やりにくいけど、仕方が無いので、計測の7つ道具を取り出す。
石倉君のオチンチンは、プレイボーイだったという評判の割には、どちらかと言うと僕と同じ短小だ。でも僕と違って包茎じゃなくて、亀頭は完全露出、しっかりと剥けている。
緊張を解そうと思って、亀頭を指差して、
「ここ、なかなか立派じゃない。」
と、言ったら、
「高校3年のときに、新横浜クリニックで包茎手術したんだよ。」
という、意外な返事が返ってきた。
高校生で包茎手術とは、驚いた。石倉君は、やっぱりプレイボーイだったんだな。
手順に従って、巻尺でウエストや股上を測ってから、定規でペニスの長さ、ノギスでペニスの太さなどを測る。ペニスについては、萎縮時と勃起時の両方のデータが必要だけど、石倉君は、なかなか勃起してくれない。
僕が、
「もうちょっと、膨らませてよ。」
と、言っても、元クラスメイトの男が目の前にいては、なかなかそのとおりになってくれない。
しょうがないので、僕が石倉君のペニスを掴んで、ぎゅっ、ぎゅっと圧迫したら、ようやく勃起してくれた。
このあと、ベルトの位置からお尻の穴までの長さとか、陰嚢の体積とか、専用の計測器具を使って採ったデータを、全部クリップボードに書きつけた。
これを持って、倉庫の片隅にあるノートパソコンのところに行く。このパソコンには、明誠学寮にある、全ての貞操帯のデータが入っていて、必要な数値を入力すると、一番フィットする貞操帯の番号が表示される。ぴったり適合する貞操帯がないときは、パーツの組み合わせが示される。
これは、去年、貞操帯がちょっとだけ合わなくて、3ヶ月間不快な思いをした川原君が、得意のパソコンを駆使して作り上げたソフトだ。
ソフトを立ち上げてから、去年の1年生のデータで、シミュレーションしてみたところ、4人に1人の貞操帯は間違っていたとか。でもフィットを追及するあまり、既製品利用が減って、個別パーツの組み立てが増えるのが、担当の2年生から見ると、ちょっと面倒だ。
さて、僕が石倉君の数値を入力すると、ディスプレィに貞操帯番号が1つだけ現れた。と、いうことは、どうやら既製品で済みそうで、やれやれだ。
その番号は「23」。
この番号、何か、心の片隅に記憶が・・・・・あっ、これは僕が去年、そして昔、田川先輩が嵌めていた、あの貞操帯の番号だよ。
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Part12
考えたら、僕と石倉君は、体格も似ているし、もし、石倉君が包茎手術を受けなければ、ペニスだってそっくりなんだから、コンピュータが同じ番号を選んでも、全然不思議じゃないわけだけど。
もっとも、似ているのは体格だけ。顔は石倉君の方が断然二枚目だ。まさか顔は、下の方みたいな整形手術じゃないだろうから。
既製品の場合、画面の履歴ボタンをクリックすると、この貞操帯を、今まで使用した寮生の名前が表示される。
僕の名前も、田川先輩の名前も出てくる。これによると、僕は6代目、石倉君は7代目になる。意外に多い。こういうクラシックタイプの貞操帯は、融通が効きにくいはずだけど、よっぽど平凡な寸法なのだろうか。
それにしても、こんなデータまで入力しておくなんて、川原君の執念も、相当なものだ。
僕は、棚のところに行って、懐かしい23番の貞操帯を手に取った。
番号が23番ということは、1学年の定員がずっと12人以下だったことから計算すると、仮入寮中の新寮生の貞操帯着用制度が、1986年に始まってから、2年目か3年目に購入した貞操帯ということになる。
最初の頃の貞操帯は、全部オーダーメイドで、新寮生の身体に合わせて一つ一つ制作していたので、寮生の数だけ貞操帯が残っているはずだからだ。
持ち上げると、最新のタイプに比べて、ずっしりと重い。長年の使用で、ステンレスの輝きも無くなっている。
あの手術の前日に、3ヶ月分の垢や臭気と共に、脱ぎ捨てたままだったので、どんな状態になっているかちょっと心配したけど、このあと誰かが洗ってから、仕舞ってくれたらしく、心配した汚れは見当たらなかった。殺菌もされているようで、微かに消毒薬の臭いがする。
僕は、23番の貞操帯を持って、石倉君の前に戻った。
僕が、その貞操帯を、石倉君に見せて、
「これ、コンピュータが選んだんだけど、実は、去年、僕が使っていた貞操帯なんだ。どうする?。気分悪ければデータをちょっと入れ直して、別のを選び直してみるけど。
クラシックタイプで、はっきり言って履き心地もそんなに良くなかったし。」
と、言うと、石倉君は、
「そのままでいいよ。片岡の使った貞操帯なら、身に余る光栄だ。」
と、返事した。
何が光栄なのか、良くわからないけど、とりあえず貞操帯のペニスケースを本体から外して、石倉君のペニスを、このケースの中に挿入する。
ペニスケースに余裕がありすぎると、使用中にペニスがスリップアウトするので、ぎりぎりの寸法が選ばれている。ところが、石倉君は、さっきまで萎縮していた局部を、なぜか今度はガチガチに勃起させてしまっていて、入れるのに苦労した。
貞操帯の中では、ペニスは折り曲げられた格好で固定されるから、勃起中だとちょっと都合悪いんだ。
石倉君が、何とか萎えるのを待って、ペニスケースの上に、貞操帯本体を被せた。前部で2ヶ所、後部で1ヶ所施錠すれば、装着が完成する。
ウエストベルトを両手で持って、前後に揺すってみたけど、フィット感は、概ねOKのようだ。ペニスの上の位置のステンレス板を、手でコンコンと叩いてみたけど、多少の振動が伝わるだけで、全く感じないとのこと。
石倉君に
「完了だよ。」
と、言うと、石倉君は、なぜか僕を見つめて、目をウルウルさせているので、
「どうした。」
と、聞いたら、
「いや、片岡・・・・先輩に、嵌めてもらえて、嬉しくて。」
との返事。
僕の呼び方が、また、先輩に戻っている。
いったい、どうしちゃったんだろ。
それから1ヶ月後の4月23日。明誠学寮の研修室では、運営委員会が開催中だ。
運営委員は、3年生6人だけど、会議には2年生も1人、オブザーバーで出席するのが慣わしだ。
今夜の運営委員会の2年生は、僕が出席する番に当たっていたので、仕方なくここに座っている。だいたい、2年生なんて、会議に出ても聞いているだけだし、どうでもいい存在なんだけど、欠席するわけにもいかない。
今回の議題は、寮の財政問題、というより、手っ取り早く言うと、寄付金をどうやって増やすかの話だ。
とにかくアイディアを出し合おうということで、会議が始まった。
まず委員長が、
「手っ取り早いのは、賛助会員を増やすことだな。」
と、切り出した。
「やっぱり去勢手術の見学会が、決め手ですか。」
「でもあれもちょっとマンネリだ。飽きられると、次の年からは会員になってくれない。」
「新趣向を考えますか。」
「儀式的要素を加えましょうか。インディジョーンズの魔宮の伝説みたいな舞台装置にして。」
「インカ帝国の太陽神殿も、いいかも。」
「あっ、そっちの方が、明るくて良いですね。」
何か、夢見たいな話が進んでいくので、委員長が、
「おいおい、言うのは簡単だけど、あの手術室をどうやって改装するんだよ。」
と、牽制した。
ここで、話の方向が変わった。
「自分の手で切らせてくれるなら、100万円でも200万円でも出しても良いという、有力賛助会員が何人もいますが。」
「ペニス切断なんか、素人には無理だよ。外科医でないと。」
「マリーアントワネットのギロチンみたいなので、切断させたら。あれなら紐を引くだけでしょう。」
「それ、なかなか儀式っぽくていいかも。」
「名前は、ギロチンコかな。」
「ギロチンだと、どうしても陰茎の外に出ている部分だけの切断になる。腹腔内に残った陰茎根が勃起すると、自慰ができてしまうから、ダメだな。」
「最初にギロチンで切ってから、手術でペニスの根元も切除するのは、どうですか。」
「プラスティネーション処理するときに、バラバラでは困るだろ。」
「1年生の身体への負担も、大きすぎると思う。回復まで時間がかかりそうだ。」
「でも、100万円の寄付は魅力ですねえ。良い方法は無いかなあ。」
こんな議論が延々と続いて、この日は結論が出なかった。
狂歌で、どんな上の句にも付くという、
「それにつけても、金の欲しさよ。」
状態だね、これは。
次の運営委員会の2年生のオブザーバーは、高田君が当番なので、このあとどうなったか、僕には分からない。
翌朝、トイレに入ったら、石倉君と一緒になった。
僕は、大は和式、小は洋式を使っているので、朝は和式でしゃがむのが習慣だ。和式は、あの、仕切りだけで扉がないタイプだ。
しゃがんでからふと見ると、目の前に向き合って、石倉君がいる。丸見えの股間には、貞操帯をしっかり着用している。
石倉君が、
「片岡先輩、おはようございます。」
と、あいさつしてきた。
たまたま僕が、石倉君の貞操帯を嵌めたわけだけど、それ以来、石倉君と僕の関係は、先輩と後輩に逆戻りしている。
いや、石倉君の方は、先輩後輩というより、ご主人様と奴隷に近い感覚みたいだ。貞操帯一つが、こんな風に主従関係を作ってしまうとは、ちょっと思いがけなかった。
僕は、
「あ、おはよう。」
と、返事をした。
石倉君の大便が、白い和式便器の中に入っている。石倉君は、それを水で流してから、トイレットペーパーで、お尻を拭き始めた。
僕も去年経験したわけだけど、この貞操帯は、お尻側にも金属の保護板があって、その保護板に開いている排便用の穴に、紙を入れて拭くので、見ていてもやり難そうで気の毒だ。
新しいタイプだと、かなり改善されているんだけど、それでも、ウォッシュレットが欲しくなることもある。
もっとも、貞操帯を付けた場合、大は和式の方が便利という1年生が多いのと、洋式でもウォッシュレットだと貞操帯全体が水浸しになって、すぐにパンツが履けないのでいらない、という意見も多くて、ここのトイレには、結局取り付けられていない。
僕も、大便をボトンと和式便器に落とした。
すると石倉君が、僕の股の間を見ながら、
「早く、片岡先輩みたいになりたいです。」
と、言った。
僕は、
「あと、2ヵ月の辛抱だ。そうしたら、その鬱陶しい貞操帯も、邪魔なペニスも、一緒にさようならできるよ。」
と、答えておいた。
それにしても、お互い見られながら大便して、しかも普通に会話しているなんて、1年前には考えられなかったな。
ひょっとしてペニスを失うと、羞恥心も無くなっていくのかも。
さて、6月23日、1年生の去勢手術の前日となった。
今年の仮入寮生は去年と同じ24人、その中で22人が、正式入寮を志願した。もちろん、石倉君もその中に入っている。
この日、3ヶ月ぶりに貞操帯を外された1年生は、「ファイナル・ナイト」の一夜を迎える。
この日だけは、オナニー解禁。オナニーどころか、フェラチオ、アナルセックスなど、1年生同士は乱交状態となることが多いけど、それらもすべて黙認だ。
一見美少年風の高田君なんかは、去年、5人の1年生から、相手を求められたそうだ。
僕と矢野君が、1年前の自分たちのファイナル・ナイトを思いだしながら、部屋で本を読んでいたら、ノックの音がした。
ドアを開けると、そこに石倉君が立っていた。素っ裸で、今日、貞操帯を外してから、もう一度剃り直したばかりの、パイパンの股間を晒している。
まあ、このファイナル・ナイトの晩は、全裸で廊下を歩く1年生の姿は、全然珍しくないけど。
石倉君は、僕を見ると、思いつめたような表情で、言った。
「片岡先輩・・・。ボクを抱いて・・・ください。お願いします。」
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PART13
「と、とりあえず、中に入って。」
僕は、あわてて、石倉君を部屋の中に入れた。
扉を閉めてから、矢野君の目を見て、
「どうしよう。」
と、視線で合図したけど、矢野君は、両腕を広げて、
「わからん。」
と、いう表情を返してきた。
とりあえず、話を聞いてみることにして、石倉君に、ベッドの縁に腰掛けるように言った。
僕が、
「1年生と一緒には、やらなかったのかい。」
と、聞くと、石倉君は、
「最初は同室の3人と、見せ合いながらのオナニーをしました。それから、2人づつペアになって、手と口で相互オナニーをしました。
でも、それが終っても、やり残したものがあるような気がして。」
と、返事をした。
「どうして、僕のところへ?。」
「片岡先輩が、ボクの貞操帯を、嵌めて戴いたからです。ボクのココは、全部先輩のものです。」
わー、やっぱりそう来たか。石倉君の顔を見たときから、何となく予感はあったけど。
石倉君が、続ける。
「片岡先輩に、どうしても抱いて欲しくて、もう今夜が最後のチャンスなのです。お願いします。」
僕も、服を脱いで素っ裸になって、自分の股間を石倉君に見せて言った。
「ここを見てくれ。僕のこんなチンチンじゃ、君を慰めることなんかできないんだよ。」
もちろん、そこには陰嚢しかない。
でも、石倉君はあきらめない。
「できることだけでいいんです。お願いします。」
僕は、再び矢野君を見た。
何とか言ってくれ、という意味を込めたつもりだったんだけど、矢野君は、
「ちょっと、自習室に行ってくる。」
と、言って、出て行ってしまった。
こうなったら、仕方が無い。
「じゃあ、こっちのベッドに、横になろうか。」
まず、石倉君に寝てもらってから、僕もその横にもぐりこむ。2人の両腕がお互いの背中を、しっかりと抱き合った。
唇を重ねてから、男女の間のセックスのように、股間を密着させてみたけど、石倉君のペニスが、僕の何も無い前陰部に当たるだけで、何も起きなくて、2人とも不満だ。
「逆になろう。」
僕は、そう言ってから、シックスナインの体勢を取った。
僕の陰嚢を、石倉君の舌が舐める。僕は、石倉君のペニスを咥える。
石倉君の舌が、下の方へ移動して、僕の人工の尿道口に触れると、すごい快感が走った。前立腺も切除した僕も、尿道海綿体が残っているこの部分は、残された唯一の性感帯なんだ。
僕が、歓んでいるのが分かったらしく、石倉君はその部分を、執拗に舐め回す。僕も、石倉君の、剥き出しの亀頭を舐める。
突然、
「あー、あああー。」
と、叫んで、石倉君が、僕の口の中に、生暖かい大量の液体を発射した。
それと同時に、僕にも、1年以上味わったことが無かった、不思議な感覚が襲ってきて、気がついたら僕も、尿道口から、ネバネバしたものを放出していた。
それから2人とも、しばらく放心状態で、手だけを握り合って、仰向けに寝ていた。
「片岡先輩・・・・・、ありがとう・・・・ございました。」
「いやあ、僕こそ、ありがとうを言わないと。楽しかった。いや、嬉しかったよ。」
余韻が醒める前に、石倉君は、自分の部屋に帰って行った。
この、ファイナルナイトでは、最近は1年生同士、みんな、お尻を貸したり、逆にアナルに自分が挿入したりしている。
それに比べれば、ささやかなひとときだったけど、貴重な思い出になったようだ。
* * * * * *
一夜明けると、さあ手術の日だ。
2年生以上で、見に行く寮生は少ないけど、僕と矢野君は、医学部まで出かけることにした。
現役の寮生は、入場無料だし。
会場に入ると、今年は手術見学の前に、賛助会員を対象にした、学寮生活の説明会があるという。
そんなの今更聞いても、と思ったが、賛助会員の申し込みをした来場者は、なぜかみんな、あの手術室見学ルームには向かわずに、特別料金5000円を払って、別室の方へ先に入っていく。
僕と矢野君はパスするつもりで、見学ルームに一度は座ったけど、こっちはガラガラだ。結局、気になったので、途中から引き返して、別室の方に行ってみた。
この別室は、医学部の階段教室で、教壇あたりを底にして、擂鉢型に学生用の椅子が、100人分ぐらい並んでいる部屋だった。
ちょうど、ギリシャかローマの遺跡にありそうな、半円形の野外劇場みたいだ。
説明会はもう始まっていて、話をしているのは、委員長。
そして、教壇の前を見て、二人ともびっくりした。
そこには、移動式の手術台が備え付けられていて、そこに、同級生の、美少年の高田君が、仰向けに素っ裸で寝かされているじゃないか。
高田君の開けっぴろげの股間部は、もちろん陰茎はなくて、変形したボールのような陰嚢が残っているだけだ。
婦人科で使うような手術台なので、尿道口がちゃんと付け替えられているのも、教室の席からよく見える。
委員長は、ちょうどそこを棒で指して何やら説明している。
いったいどうなっているんだろう。
(PART14につづく)
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投稿:2004.02.25更新:2023.05.11
学寮(PART11-PART13)
挿絵あり 著者 名誉教授 様 / アクセス 37751 / ♥ 182