(Part11~13はこちら)
◆◆ 学 寮(Part14-完結編) ◆◆
★手術台に載るのを待つ高田君
西瓜様御提供の画像より
委員長の話が途中から耳に入ってきた。
「明誠学寮の伝統は、皆さんが今ご覧のような、ペニスの除去です。オシッコをどこからするのというご質問があるかもしれませんが、ほら」
そう言いながら委員長は、高田君の陰嚢をちょっと持ち上げた。
「尿道の出口が、このようにお尻の穴の近くに移されています。こうしないと、普通のトイレでオシッコができません。」
委員長は、棒の先で陰嚢を指して続けた。
「中には、最初にこの部分も取ってしまう寮生もいます。でも、ほとんどは今皆様の前に寝ている2年生と同じ状態です。ところが彼は、今日残りの部分も取ってしまおうと決意しました。」
来場者の中から、「ほう」というつぶやきが聞こえた。
「1年生からが切り取られた局部は、寮で永久保存されていますが、2年生の場合はそのような決まりはありません。そこで、寮の運営委員会では、日頃のご援助に感謝して、維持会員、賛助会員の皆様に、彼のこの部分を競売形式で競り落とす権利をお譲りしようということにしました。」
委員長は、突然すごいことを言い出した。
でも、考えたら運営委員会では、春先からずーと資金不足についての話し合いを続けていたはずだから、このように決るのも不思議ではない。高田君は、僕の次に2年生の代表で出席していたから、きっとそのときにこの話がまとまったのだろう。
「でも、普通に切り取ったモノを差し上げるだけではありません。フクロの皮は小銭入れに加工しますし、中のタマタマはプラスティネーション加工して、イヤリングに加工してからお渡しします。」
これには、僕も矢野君も驚いた。なんせ美少年の高田君のものだ。高く売れるに違いない。3年生の運営委員が、高田君に狙いを定めて口説いたのかもしれない。
「さらに」
委員長が続けた。
「今回の手術で、彼の股間にメスを入れる権利も競売いたします。もちろん、隣りで医師が補助しますので、安心して入札してください。」
客席から、
「へぇ、そんなことできるの。」
という声が聞こえる。
僕は、競売を見るのが何か忍びなくなり、トイレに立った。小用だがトイレはもちろん男性用に入り、個室を探す。男性用個室はどこでも数が少なく、満員のことが多いが、今日はガラガラだ。
洋式便器に腰掛けながら、高田君もずいぶん思い切ったことをと思ったが、よく考えてみれば、矢野君と同じ股間になるだけだから、たいしたことないのかもしれない。
すっかり瞑想してしまって、ようやく席に戻ると、競売は終わっていて、矢野君の話だと、高田君の「陰嚢革財布」は120万円、睾丸イヤリングは200万円で売れたそうだ。そして、メスを入れる権利は415万円の価格がついたとか。
その金額に驚いているうちに、高田君の手術が始まった。普通の除睾手術と違って、陰嚢の皮膚を丸ごと残すため、陰嚢の付け根に沿ってメスが運ばれていく。医師が横で付き添って、細かく指示を出しているようだ。
切り口が高田君の陰嚢の周囲を一周すると、執刀していた男性は横に退き、今度は医師が、陰嚢の皮膚を丁寧に剥がし始めた。やがて、陰嚢の皮膚がスポッと剥がれ落ちて、高田君の二つの睾丸が剥き出しになった。医師はその睾丸を丁寧により分けると、横の男性に精索の部分を示して、
「どうぞ。」
と、声をかけた。
男性は、メスをまず右の精索に当てて、ちょうど俎板の上の刺身を切るように、一気に押し切った。離れた睾丸は、医師がピンセットで摘み上げ、保存液が入った瓶の中に落とした。続いて左の睾丸も同じように処理されると、男性は一礼をして姿を消した。
医師は、高田君の精索を処理し、残った皮膚を縫って傷口を閉じた。観衆から拍手が上がった。
こうして別室でのセレモニーが終わり、見物人は本番の手術を見るために、ぞろぞろと移動し始めた。僕と矢野君は、高田君のところに駆け寄った。
「いったいどうして君が。」
と、矢野君。
「ああ、見ていたの。寮にお金が必要だから。」
高田君の返事は、思ったとおりだった。
確かに高田君でなければ、あの金額は付かなかっただろう。
★手術後の高田君
西瓜様御提供の画像より
このあと、例年のとおり、1年生の去勢手術が行われた。僕たちは、今回はガラスの外から見る番だ。ほとんど去年といっしょなので、多くを語る必要はないけど、石倉君の男性としての最後の姿も、なかなか立派だったと付け加えておこうと思う。
それから3年たって、僕は無事卒業し、ある商社に就職した。最初の赴任地は京都支社で、月に何回も東京との間を新幹線で往復した。
そして、東京を後にするとき、右の車窓に東京タワーが見えると、何年も前の自分の手術の日、それまでそそり立っていた男根が無くなった日を思い出すのだった。そのタワーの麓のあたりには、手術を受けた母校の医学部の校舎が、今でもそのまま残っている。
明誠学寮の増築は無事完成し、今年も啓林大学の新入生がたくさん入寮したと聞く。そして、入寮対象を、法学部、商学部にも拡大するらしい。
皆さんも、もし啓林大学に入学したら、是非寮生になりませんか。きっと新しい人生が待っていますよ。
(それからの学寮Part1につづく)
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投稿:2005.11.06更新:2023.05.11
学 寮(Part14-完結編)◇≪西瓜さん画像提供≫◇
挿絵あり 著者 名誉教授 様 / アクセス 36732 / ♥ 158