厚い雲に覆われた南の島に、かつて男性が社会的に必要の無い国があったという。
その国で人として暮らしているのは女性のみであり、男は存在しない。と、いうより、男性という存在の概念が彼女たちには無いのだ。
彼女たちの主な生活方法は、狩猟だった。それぞれ得意な武器をふるい、女同士で結ばれた家庭の中で家族を養うのだ。
狩りの他にも、工芸、牧畜、作曲など様々な職に手をつける者もいたが、小さな女の子の憧れの仕事と言ったら、やはり狩人が一番人気だった。
神話に登場するアマゾネスのような文化形態を為すこの島国では、しかしながら他の文明に手を出すようなことはしなかった。そもそも彼女たちは島の外を知らないのだった。
彼女たちがどうやって子孫をつくってきたのか、その答えはおそらく外の者からしてみれば常軌を逸したものであろう。
ここで紹介するのは、まだ成人を迎えていない可愛らしい少女、リンキだ。
リンキの家族は代々狩猟一家だったが、それとは別に牧畜の副業を持つ珍しい一家だった。
毎朝、狩りに向かうので忙しい母や姉に変わり、家畜の世話はリンキが全て承っている。
本当は自分も武器を振りまわして獲物を追いたい。そんなことを思いながら、リンキは今朝も渋々家畜小屋に向かった。
「かーさんもねーちゃんも、私には牛の世話しか出来ないって思ってるんじゃないかしら? ふん、見くびっちゃ困るわ!」
家畜小屋用の箒を鉈のように構え、リンキは幼稚な軌道を描いて振りまわす。その踊りのような舞姿に、小屋の奥で何かが動いた。
「なによ、なんか可笑しいわけ?」
リンキが目をやったのは、彼女達が飼っている牛だった。だが、外の人間がこれを見ても到底牛には見えなかっただろう。それどころか腰を抜かすに違いなかった。
それは紛れもなく人間であった。四つん這いで藁の敷かれた土間に立ち、首輪で柱に繋がれた、人間の雄に間違いなかった。
可憐な少女の前だというのに、男は全身何も纏ってはいなかった。惜しげもなく牛のような肉張りの身体を晒し、太い鼻輪の通された顔を飼い主に向けている。
「はあぁ…牛に私の気持ちなんてわかる訳ないか…。」
リンキが牛と呼んでいる目の前の生物が人間の男でなかったなら、なるほどこれは思春期の悩みを抱えた少女のつぶやきを聞いてあげる家畜、といった感じの微笑ましくなる風景だと言ってもよいだろう。
だが洒落でもなく狂気でもなく、この男が牛であるというのは、この世界において紛れもない事実なのである。
『女しか暮らしていない国』という表現は、言ってしまえば中途半端な説明である。
厳密に言い直すならば、『女しか人として認められていない国』とでも表した方がより正確ではあった。
この国の女性は、流石に女しか産めない訳ではない。中には雄の性器を持って生まれてくるものがちゃんと存在した。しかし彼らはこの国において人間とは認められないのだ。
男の出生児は生まれてすぐに家畜小屋へと放り込まれるのが決まりだった。
男の世話は基本的に彼女たちは行わず、この社会では牛と呼ばれる同じ男たちに任される。
ある程度育ってくると、四つん這いで歩くよう女たちによる調教が始まり、男たちはどんどん牛として従順性を身につけさせられる。しかし逆らう男はほとんどいなかった。
立派な家畜として成長することが、ここでは男たちの存在理由だからだ。
「そんな調子でいい牛でいられると思ってんの?」
リンキは鞭を振るって牛の一人を叱りつけた。リンキの号令によって牛男たちは筋力トレーニングをこなしていく。
リンキの鍛錬は非常に上手で、彼女の牛男たちはここ一帯で飼育されている牛男の中で一番の品質を保っていた。
一連の鍛錬が終わり、くたくたになった牛男たちの前に、赤ん坊が寝られそうな大きさの桶をリンキが運んできた。
「今日も順番にやってくからね。」
皮の手袋を両手に装備したリンキを見て、牛男たちの疲れ切った顔が興奮で綻んだ。
これから彼ら牛男たちの楽しい時間が始まるのだ。
リンキは四つん這いになって待ち焦がれる一人の牛男の下に、桶を置いた。ちょうど真上には牛男のペニスがだらりとぶら下がっている。
茎のサイズこそ並みクラスだが、全て割礼が済まされ亀頭を覆うものはない。
さらにその睾丸は異常に発達しているのが見て取れた。
母乳を溜めこんで腫れあがった乳房のように赤く腫れて、足すら閉じれそうにない程膨れ上がっている。
「おーお、溜まってるねえ。辛いでしょ? 今出してあげる。」
リンキは牛男のペニスを軽く水で清めた後、親指と人差し指で囲み、ゆるゆると伸ばすように扱いた。
牛男はおうっおうっと嬉しそうに鳴き、徐々に血流が生まれた彼の肉棒は、リンキの指の輪をこじ開けるような太さの勃起体へと変貌した。
「濃いのをびゅーっびゅーっと、頼むよポンタ♪」
彫りの深い顔立ちの牛男には似つかわしくないような名前で呼ばれた彼は、自ら盛んに腰を振り、リンキの絞り上げる動きにペニスを硬くした。射精と見間違えるような量の先走りが、桶の中にどんどんと垂れていく。
「お尻もキモチイイでしょ? ほらほら。」
先走りで濡れた指をポンタの肛門に突きいれると、もうそれだけで彼は腸内を引くつかせ、太い己の象徴を弾けさせた。
「おっ、おおぉおおぉーーーーーんっ!!!!」
腰をがくがくさせて、ポンタはとんでもない量の精液を桶にぶちまけた。ヨーグルトのような白い塊をリンキの慣れた指使いが絶え間なく噴きあげさせる。
跳ね返った濃いスペルマがリンキの頬に付いた。リンキはそれをぺろり、と舐めてみる。
甘く、濃厚な喉越しなのをリンキは確かめ、更に手を動かすペースを速める。
男特有の青臭さなど微塵もそれは匂わせない。桶の中は既に、しぼりたての牛乳のような香りを漂わせ始めていた。
牛男たちの精液は一般の男子が出すものとは少し違っていた。
それには子孫を残す精子が含まれていない。その代わり、栄養には非常に優れていて、脂肪やたんぱく質がたっぷりと詰まっているのだ。
塩辛い普通の精液とは違い、味わいもまろやかで口当たりがよいのが特徴である。
「いっぱい出したなぁ。一瓶いくらで売ろうかしら?」
彼ら牛男がどうやって乳しか飲めない生まれたての赤子を育てることができるのか。その答えはこれだった。
牛男は生後間もない男の子を育てるときにも、この精液を使う。皆で代わる代わるに己の肉棒を頬張らせ、精を与えて育てるのだ。
時には後ろから精液を注ぐこともある。おかげで彼らは幼いころから菊門での快感を知っているものがほとんどなのだった。
「んーー? あれ、出ないなぁ・・・。」
何人かの牛男から精液を絞りつくしたリンキが、ある牛男の搾乳にてこずっていた。
一際長いペニスを絞るもなかなか射精が始まらない。肛門には全ての指が埋まって前立腺を直に掴んでいる筈なのに、その牛男は気持ちよさそうに身を振るわせるばかりで一滴の体液すら出てこなかった。
「参ったな、これじゃまだまだ足りないや……あ、そうだあの手があった。」
急いで厨房から包丁を持ってきたリンキは、波打つ精液で重たくなった桶をどかすと、牛男の大きな睾丸を一つ、むんずと掴んだ。
周りの牛男たちが怯える。彼女が何をするのかがちゃんと彼らには分かっていたからだ。
玉の根元に縄が巻かれ、真っ赤だった金玉がどす黒く変色を始める。にわかに牛男が吠えだした。体外に飛び出た敏感な部分が悲鳴をあげているのだ。
「どうしても乳が出ないときは、一つ切り取れば、乳の出が良くなるっておばあさまが言ってたわ。うん、やってみよっと。」
ふぐりの付け根に包丁を当て、リンキは玉を引きながら刃を押しつけた。
「ぎゅぉおおおおおおっーーー!!」
ぶしゅり、と血が噴き出し、途端に牛男が絶叫して暴れ出した。リンキは一旦離れ、鞭で牛男を滅多打ちにする。すると牛男は大人しくなった。
「これくらい我慢しなさいよ。足や手を落とすわけじゃないんだから。」
牛男の四肢を柱に縛りつけ、宙に浮かせたリンキは作業を再開した。細かく前後に刃を動かしながら、紫色の睾丸を陰嚢と共に千切っていく。牛男の苦しそうな息の匂いと、したたる脂汗の匂いがリンキの鼻を付いた。
「もう少し……ほら、取れたぞ!」
最後は引きちぎられるようにして、金玉が牛男から失われた。それまで口が裂けんばかりに吠えていた牛男は急に声を失った。
そして次の瞬間、彼は溜まった小便を出した時のような開放感あふれる顔つきで、びゅうびゅうと射精した。その勢いたるや他の牛男の比ではなく、今まで出なかったのが不思議なくらいに長大な陰茎を震わせながら、彼は白い水たまりを作ろうとしていた。
「ああっ! ちょ、待って! 桶桶っと…。」
凄まじい勢いの射精はリンキが手を触れずとも長い間続いた。睾丸を切除されたことにより、潜在的な種の保存意識が目覚め、彼の男性器を暴走させたためだった。
同時に全身を駆け回る絶頂感が牛男を襲い、彼は柱に括りつけられたまま中空で舞い踊った。
出すに出せず悶えるだけだった牛男は、リンキの行動に感謝して精一杯桶に熱い汁をぶちまけた。
しかし、何故玉を片方とればこれだけ乳の出が良くなるのか、男ではないリンキにはわからなかった。
リンキにはどうでもよいことだった。家畜の身体の仕組みなど、いちいち考えても仕方の無いことだと彼女は考えているからだ。
本来なら自分の兄や弟に当たる牛男たちに対する彼女の認識は、家畜以上でもそれ以下でもないのだ。
桶を全て満たした牛男たちの精液は小分けされ、川の冷水で冷やされた後、狩りを終えた女たちに販売された。それでも余ってしまった分は、家に持ち帰った後家族で新鮮なうちに飲まれたという。
(2)へ続く
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投稿:2010.11.07更新:2010.11.07
男の不必要な世界(1)
著者 モブ 様 / アクセス 20235 / ♥ 5