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それは、千年以上昔、東側の肥沃な平原と、恵みをもたらす西の山岳地帯からなる、広大な大陸で起こったことである。
この地域は、大国と小国が乱れて争っていたが、その中の小国がある日、大国のひとつにより領土を占領され、小国の国民は全員俘虜となった。
それがその小国の国民の悲劇の始まりであった。
敗れた国の男達は、大国の領内に連れ去られ、そこで、年齢や体格によって分けられ、それぞれの牢獄に入れられた。
屈強な戦士が入れられた牢獄。
戦士ではない男たちは、これから使えそうな若い男やもっと若い少年以外は殺された。
労働力にならない女性や老人や幼子も、既に全員殺されているようだ。
このあたりの国々の宗教では、女性を慰み者にすることは重大な背教行為なので、若い女性も使い道がないのである。
未成年の男や少年は、別の牢獄に入れられた。
男達はこれから何が起こるのかを正確には知らないが、生涯奴隷にされる予想はしていた。
この大陸では、力仕事ができる奴隷はどこでも必要とされ、奴隷を手に入れるために戦争をすることもままあったからだ。
しかし、何かそれ以上の恐ろしいことが起こる予感があった。
全員いままで着ていた服は下着まで剥ぎ取られ、誰かが着古した首から被って腰ひもを締める俘虜服1枚の姿だ。
しかも暗い部屋の中は湿っぽく、周囲の壁には、大小さまざまな刃物類、正体不明の薬壺、ベルトやロープなどが掛けられていた。
屈強な戦士のいる牢獄の監房に大国の兵士が入ってきた。それから淡々と命令した。
「おい、準備しろ。」
中央に赤黒い染みがこびりついた台が若者たちの前に現れた。嫌な予感がこれを見た彼らの頭をよぎった。
「おいお前、その服脱いで上に寝ろ。」
兵士が隊長だった1人の捕虜を指さした。その若者は仕方なくぼろぼろの俘虜服を脱いだ。
身につけている衣類はそれ一つだけであったので、必然的に全裸となった彼は、股間に仲間たちの視線が注がれるのを感じた。
そこにある男根は両手でやっと隠せるほどの大きさで、彼が密かに自慢していたものだったのだが。
若者が仰向けに台の上へ寝転がると、ちょうど台に開けられた穴のすぐ上に股間がくるような格好となった。
穴は片脚の太腿ぐらいの大きさだが、何のためにあるのかは見当がつかなかった。
「お前たち、こいつの手足を台のベルトで縛れ。暴れおるからきつくな。」
下働きらしき召使たちが台にのった若者の逞しい手足を拘束した。
舌を噛ませないためなのか、それとも悲鳴を防ぐためであろうか、頑丈な口枷も嵌められる。
こうしてエックスの字の形に四肢を固められた若者は冷や汗でびっしょりとなった。
一体これから何が起こるのだろう。
部屋の片隅では、油の入った皿に召使の1人が火を付け、何かを炙っているのが見える。
若者はおそらく奴隷の焼印でも押すのだろうと予想した。
しかしそれなら何故、服を全部脱がすようなことをするのだろうか謎だ。
その疑問は召使が戻ってきたときに解決することとなる。
召使は、焼印を押すコテではなく、真っ赤に熱された巨大な鋏を持って現れた。
「これからお前さんに奴隷の印を授ける、この国の奴隷は男の象徴を付けててはならないのだ。だから今から切り落とす。」
兵士は若者にそう言った。
周囲の捕虜たちが絶句する。台に寝かされた若者は逃げようとして、ベルトを振りほどこうともがいた。
仲間の捕虜が思わず助けに駆け寄ろうとする。
兵士が叫んだ。
「おい、逃げれるわけないぞ。それにそんなことをすればお前たちはまとめて死罪だぞ。」
召使が鋏をカチカチと開閉させながら言う。
「やれやれ、今回の捕虜は情けない。」
別の召使が答える。
「この前の戦士は覚悟を決めて大人しかったぞ。」
兵士が宣告する。
「いうことを聞いたほうが良い。さもなくば、股間のモノを切られる苦しみよりも、もっともっと酷い地獄が待っている。」
「んむっ!!ふがっ!んんん!!」
若者は絶望で泣きわめいたが、口枷で声にならない。
「あまり泣いて水分は出さん方がええぞ。切ったらしばらくは水を飲めんからな。」
熱気を放つ大きな鋏が、若者の太い男性器を挟みこむ。
「ぐぎゃぁ!わあぁ!わああぁ!あああっ!」
じゅうじゅうと肉が焼け、若者は全身の筋肉を暴れさせた。しかしぴくりとも身動きが取れない。
使い込まれた去勢用の鋏は熱したり冷ましたりしているせいか、切れ味が極端に悪いようだ。
刃物というよりは、挟んで力任せに引きちぎる道具のように見える。
その鋏が傷口を焼き塞ぎながらゆっくりペニスをちぎっていく。
自慢だった男のものを無残に刈り取られる。精力満ち溢れる若い男にとってこれほどの屈辱はないだろう。
それが完全に斬られた瞬間、男の目から、鼻から、口から体液が顔を伝って地面に垂れた。
切断された股間からは血が溢れ、台と床を朱く染める。
そしてまだ女の中も知らなかったペニスが、台にぽっかり開いた穴の中へと落ちて行った時、若者は意識を失った。
最後に召使が、慣れた手つきで処置を施し、焼けた傷口から尿道を探し出し、栓をつめた。
そして召使がベルトと口枷を外し、失神した全裸の若者を別の部屋へと運んでいく。
その部屋では、さきほど若者が予想した焼印を、顏と尻に押された。
顏の焼印は大国の囚人の印で、尻に押されたのは囚人を識別する文字や数字であった。
たが、若者は失神したままで、それに気づくのは目が覚めてしばらく経ってからになるであろう。
男性器を切断された傷の痛みは、焼印などものにならない苦痛だからだ。
この若者が床に残した俘虜服はまたいつか別の捕虜が着ることになるのであろう。
ただし、それはこの若者の小国の民ではない。
若者の小国は根こそぎ絶やされ、地上から消滅したからだ。
兵士は残された口枷を拾ってから、両手を性器に当てて隠していた別の若者を指さし、
「次はお前だ。」
と冷酷な声で命令した。
やがて時間がたって下腹部の傷が回復した若者たちは、大国の宦官奴隷として、それぞれこの大国の中の別々の苦役場に送られているのである。
それは国家の奴隷というよりは終身刑の囚人であり、実際の取扱いは家畜以下であった。
未成年者やもっと若い少年たちの運命は、また別の機会にお話ししようと思う。
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投稿:2015.09.27更新:2022.08.19
戦士の宮刑
挿絵あり 著者 Charon 様 / アクセス 25329 / ♥ 210