• 去勢師
• 奴隷
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これは今から千年以上の昔のことである。この大陸では、平原を支配する２つの大国と、山岳地帯を中心とする多数の小国が長年にわたって争っていた。
ある日、連合に属するひとつの小国が、大国ひとつからの前触れのない奇襲攻撃により大敗し、ついに降伏した。

戦士だったものが捕虜として捕らえられただけではなく、小国の国民は、足手まといで役に立たない女と老人と幼児がその場で殺され、残った全員が故郷を追われて、大国の領内に連れ去られた。
俘虜の悲劇の始まりであった。

捕らえられた者は、全員いままで着ていた服は下着まで剥ぎ取られ、俘虜服１枚にさせられた。
これは、誰か他国の捕虜が何人も着古したもので、１枚の布を首から被って腰ひもを締めるだけという代物だ。

戦士であったものは大国に逆らった重犯罪人として、もし指揮官がいれば拷問の末に処刑され、普通の兵士は去勢された上で大国の囚人として生涯労役をさせられる。

一方、未成年者は、大国に連行されてから一般の商人に引き渡され、奴隷として売りさばかれる運命が待っている。
戦士だった年長者がどこかに連れて行かれたあと、まだ戦場に立つには早い未成年者の男子が、足に鎖を繋がれ、大国に曳きたてられた。
大国の領内の目的地の街に入ると、なぜか俘虜服の着用も許されなくなり、少年たちは全裸で、街中を連れられて行った。
当然、街中の人々が集まってくる。
これは、のちに奴隷として市場で売りさばくための宣伝で、生きのいい奴隷が入荷したという合図となっている。

少年たちは、肉裂（にくざき）屋と呼ばれる去勢専門職人の店に連れていかれる。
肉裂屋は医師などではなく、その名のとおり肉屋を兼ねた職人である。肉屋は家畜の解体もやれば去勢もやる。
そして人間の去勢も彼らの仕事となっていたのである。

店内には、大きく分厚い木の板が何十枚も斜めに立てかけられていて、たいていは既に半分以上の板には先客が大股開きで拘束されている。
彼らの股間からは突起物が消えていて、真っ赤に染まっているか、どず黒いかさぶたとなっている真ん中から、排尿のため」と思われる管だけが突き出ている。
肉裂屋に来るお客はいろいろいるらしく、縛り付けられている者は少年だけではなく、青年や中年の者も混じっている。
新たに連れてこられた少年たちは、空いている板に一人づつ大股開きで板に拘束される。

やがて、肉裂屋がやってくると、手伝いの徒弟に少年たちの股間を洗わせてから、細くて丈夫な糸で、少年の男性器の根元を、サオもフクロも一括りで縛る。
少年たちのイチモツの根元は細くくびれて、糸が殆んど見えなくなると、自然に弛まない特殊な結び方でしっかり止められる。

この日に店に引き渡された少年たち全員の準備が終わると、肉裂屋は去勢刀を持ってきて、次々と少年たちの男根を無造作に切り落としていく。

部屋中に少年たちの叫び声が充満するが、既に股間の陽物を切り落とされて板に縛られている者たちは、またかという表情でその光景を見ているだけである。

さて、この街の広場で開かれる奴隷市場は性奴隷用市場と、労働用奴隷市場の二つがある。
出品された奴隷には、先日の全裸の行進のときにあった股間の突起物は綺麗になくなっている。
見物客の中には、そのときの捕虜の姿を覚えている者もいて、あの立派な一物がなくなっているぞとか、ちょっともったいなかったのにとか囁いている。
後ろ手に拘束された少年たちは、奴隷市場の台の上で、高値で売れるようにアピールすることを強要され、後手で上半身を縛られたまま様々な姿勢を取らされている。



性奴隷とは、他国では娼婦にあたる者たちであるが、この大国では厳格な宗教上の理由で、男女の交わりは夫婦間で子供を作るときに限られている。
もし万一違反が発覚すれば、宗教裁判所の厳しい詮議と過酷な罰が待っている。
そこで、この大国の娼館で、男性の性の慰み者となるのは、生身の男か去勢された男に限られている。
小国が占領されたときに、若い女も全員殺されたのは、このような理由で使い道がないからなのである。



女装した男より、去勢した男の方が人気が高く、声変わり前の美少年いわゆる上玉は、確実に性奴隷市場に出品される。
この市場で奴隷を買うのは、娼館の主人か、自らの性欲処理のはけ口のために少年の口や肛門を使う貴族層や富裕商人層である。

稀有な例として、声変わり前の少年が、寺院関係者に献上されることがある。
これは、聖歌隊の歌手として使うために、大金持が献金の代わりに奉納するものであるが、その実態は神官たちの性の慰み者であるとも言われている。

一方、容姿が普通以下なら労働用奴隷市場で売られる。
落札価格は、体力次第で、知能はあまり求められない。
元々言語が違うから、高度な仕事には適さず、単純労働をしてその生涯を終えるのが普通である。
また、性奴隷として売られても、年齢とともにその役割が果たせなくなったとき、運が良ければ労働用奴隷になることもある。

性奴隷にしても労働用奴隷にしても、少年奴隷たちが次第に年齢が高くなり、やがてその勤めが果たせない日がやってくる。
敗戦国の国民は根絶やしにするために、戦士から少年までことごとく去勢したのであるが、主人のもとを追われた奴隷が、勝手に国内をうろつくのはあまり好ましいことではない。
奴隷が不要となった場合、本来は所有者が責任を持って奴隷を殺処分すべきであるが、長年働いていた奴隷を処分するのは、なかなか荷が重い。

そこで、国家直営の不要奴隷処分場が設けられており、主人が奴隷をここに連れていけば、不要奴隷専用の焼却炉に入れて、生きたまま火葬してくれる。
不要奴隷焼却炉は三段式で、下段で火を焚き、中段には焼却灰を取り出すための扉がある。
そして一番上には不要奴隷を閉じ込める鉄でできた円筒があり、その上には煙突が付いているのが普通である。
奴隷を中に入れるのが難しそうに見えるが、実は一般の奴隷服には、引っ張るだけで主人が奴隷の手足を拘束できる紐が取り付けられていて、奴隷を連れてくるのも、焼却炉に放り込むのも実に簡単にできるのである。



円筒の中に奴隷が入れられて外から鍵を掛けられると、下から火を焚かれて高熱で炙られる。
円筒の底は鉄の格子の上に木製の蓋がされており、やがて熱で木製部分が焼け落ちると、焼き尽くされ灰となった奴隷の身体は、格子の間を抜けて中段に落下する仕組みとなっている。
この灰は売却されるが、去勢奴隷の灰は発散されなかった生命力がそのまま残っているとされ、その満たされなかった力が灰に宿っていると言い伝えられているため、肥料として人気絶大である。
去勢奴隷をわざわざ生きたまま窯の中に閉じ込めて焼くのも、その不思議な霊力を逃がさないためであるという。

なお、寺院に献納された少年は、比較的若くして不要奴隷とされることが多いが、寺院が責任をもって祭の生贄として捧げて、お焚き上げなどで処分しているようだ。

敵対民族を断絶する徹底した血統管理により、この大国は強大な力を維持していたが、すべてを人力に頼るこの大国は、200年後には騎馬戦と火薬を得意とする別の大国にあっさりと滅ぼされることになったという。

前作「戦士の宮刑」はこちら
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※注
旧作「俘虜の悲劇」はひとつのストーリーで発表しましたが、発想の元となった文献やネットのサイトが複数ありました。
その結果、まとまりがないストーリーとなっていましたので、改めて分割して「戦士の宮刑」と「少年宦官奴隷市場」として投稿させていただきます。