切り株の秘密
拓哉はどこにでもいる普通の高校生だった。
部活には入らず、放課後は友達と駄菓子屋に寄って帰るか、まっすぐ家に帰るかのどちらか。
特別目立つタイプでもなく、クラスでは静かに過ごすことが多かった。
そんな彼の日常が、ある日突然、崩れ去った。
その日はいつも通り、学校からの帰り道。
夕暮れ時の薄暗い路地を歩いていると、後ろから強い力で口を塞がれ、意識が遠のいた。
目が覚めた時、拓哉は知らない部屋にいた。
コンクリートの壁、錆びた鉄の椅子、そして鎖で繋がれた手足。
拉致されたのだと悟った瞬間、心臓が早鐘のように鳴り始めた。
そこから始まったのは、想像を絶する日々だった。
何者かによって監禁され、奇妙で屈辱的な「調教」が繰り返された。
エロティックで異常な行為を強いられながら、決して最後まで解放されることはない。
寸止めと羞恥の連続に、拓哉の精神は徐々に擦り減っていった。
1ヶ月ほど経ったある日、異様な雰囲気が部屋に漂った。
男たちは拓哉を縛りつけ、冷たい器具を手に持った。
そして、激痛とともに全てが終わった。
そう彼のペニスは切断され、ただ玉だけが惨めに残された。
激痛と悲しみ、絶望の中で意識を失い、次に目覚めた時には傷はすでに回復していた。
学校からの帰り道の公園のベンチで彼は寝かされていて、解放された。
自由の身に戻った拓哉だが、心は自由ではなかった。
警察や家族にも何があったか根掘り葉掘り聞かれた。
拓哉は「知らない人に拉致されて拷問を受けたが、いつの間にか解放された」とだけ伝えた。
周りに竿無し玉ありにされてしまったことを知られたくなかったのだ。
誰にも言えない秘密を抱え、毎晩鏡の前で自分の変わり果てた姿を見つめる。
ズボンを下ろすたびに、切り株のような跡が目に入り、胸が締め付けられる。
それでも、学校生活を続けなければならなかった。
誰かにバレるわけにはいかない。絶対に。
だが、そんな願いは脆くも崩れた。
ある日の水泳の授業。着替えの最中、同級生の翔太がふざけて拓哉のタオルを引っ張った。
隠していたはずの秘密が露わになり、教室にいた数人の男子が一斉に目を丸くした。
「お前…ちんこねえじゃん!どうしたの!?」
「うわっ、マジかよ!?お前、ちんこがない!?何!?何!?どういうことだよ!?」
「マジかよ、玉だけって何!?」
「えーっ!?何!?ちんこがない!?うそでしょ!?お前、ほんと!?」
驚きの声が教室に響く。そして次第に驚きから、興味・好奇心の声に変わっていき、拓哉の耳に突き刺さる。
拓哉は顔が熱くなり、足が震えた。嘲笑と好奇の視線が全身を刺すようだった。
「ちんこが無いって…男として終わりじゃん…」
「いや、でも…玉はあるんだな?あいつ、どうやって生きてんだよ?マジで興味深いわ」
「ちょっと見てみたいわ...。ちんこが無いってどうなるの?触ったら何か感じるの?気になる!」
周囲の同級生からコソコソと囁かれながら、拓哉は逃げるように教室から出てトイレに駆け込んだ。
帰宅後、自室に閉じこもり、布団の中で泣き崩れた。
切り株に触れると、わずかに漏れるガマン汁が虚しさを増すだけだ。
もう何も感じられない。何もできない。
自分が自分でなくなったような感覚に襲われ、涙が止まらなかった。
悪夢はそれで終わらなかった。
次の日、学校の廊下で突然、悪ノリの男子たちに囲まれた。
拓哉が抵抗する間もなく、パンツを下ろされ、近くにいた女子たちにまでその姿を見られてしまった。
「え、何!?」
「うわっ、気持ち悪い…」
「可哀想に…」
侮蔑と同情、嘲笑が入り混じった声が飛び交う。
女子の一人、いつも優しかったはずの美咲さえ、目を逸らして小さく呟いた。
「信じられない…」
その言葉が、拓哉の心に深く突き刺さった。
教室に戻っても、視線が痛い。誰もが知っている。誰もが笑っている。
拓哉はただ俯き、机に突っ伏した。切り株を隠したズボンの中で、虚無感だけが広がっていく。
夜、再び部屋で一人。切り株を触りながら、拓哉は思う。
「もう、終わりだ。」
だが、どこかで別の声が響く。
「生きてやる。見返してやる。」
涙を拭い、拓哉は立ち上がった。屈辱にまみれたこの体で、どうやって立ち直るのかはわからない。
それでも、ただ泣いているだけの日々を終わらせると決めた。
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