序文
この研究では男性用不妊治療薬として開発されたZ201rk-4(図1−Z201rk-4組成モデル)の人体治験における評価及びこの薬品の新たに確認された効果についてまとめる。
化学汚染における人類の生殖細胞の劣化は近年悪化の一途を辿っており、Dr. H.モナハンの2056年の研究(参考文献a−『縮小再生産』)によると、無作為に選ばれた被験者の精子の40%、卵子の25%が10年前のサンプルと比べて劣化しており、受精に至る能力を持たないことが報告されている。
元々Z201rkは、Dr. K.ラウゼンJr. が2022年に発明した脂肪に吸収された重金属を排出する方法(参考文献b−『工業汚染の治療研究』)、いわゆるラウゼン分離法の副産物であるが、近年の研究(参考文献c〜e−『ラウゼンZ廃棄物の効用』『精子活性化物質』『テロメアの人為的再構築』)によって、男性生殖細胞である精子の活性化を促す効果が注目され、開発に至ったものである。
Z201rk-3までの試薬による動物実験(参考文献f〜h−『Z201rk-1動物実験』『Z201rk-2の理論的矛盾について』『Z201rk-3動物実験』)においても一時的な精子の生産量の増加、原精細胞の活性化は確認されたものの、過剰な分裂の副作用による生殖細胞の早期老化、異常な性欲昂進による衰弱など、人体投与までには課題の残るものであった。しかし、このZ201rk-4は、従来のような致命的な過剰反応の連鎖を抑制するために、構成分子そのものに時限式の自壊酵素(図2−ヨシノmk2自殺酵素組成モデル)を組み込んだ。これまでのコンセプトでは、根本的な不妊治療薬としての設計が成されていたが、今回の試薬は、性行為の直前に投与することによって短期間の効率的な精子生産を促す、妊娠補助薬として意義を見直すことで、安全性を確保したものである。
これによって生産時におけるコストは従来の2.75倍(表1−Z201rkシリーズ生産コスト比較)となり、薬品の効力を維持したままの保管も困難(参考文献e−『n型有機酵素の変質を防ぐ低温保存法』)となったが、必要な時点にのみ効果を調整できる点で、バースコントロールの手段としては優れていると言える。
Z201rk-4の時限酵素はマウス及びアカゲザルへの投薬において正確に作用し、充分に安全であるとの結論(参考文献i〜j『Z201rk-4動物実験』『Z201rk-4より高位な動物による臨床実験』)を受け、今回の治験へと繋がった。
治験概要
今回の治験対象者は、医療用クローン4体、志願者2名による、複数の年齢層、人種にまたがる6人の男性である。それぞれのデータは以下の通り。
・治験者A(写真1−A全身裸体正面)
人種−白人/年齢−22/血液型−O/備考−ロバート型クローン(精子減少症)
身長−195.2cm/体重87.5kg/体毛の色−くすんだ赤
陰茎勃起時(写真2−A勃起ペニス)長さ19.5cm/亀頭周囲12.6cm/根部周囲10.8cm
陰茎沈静時(写真3−A沈静ペニス)長さ12.1cm/亀頭周囲 7.6cm/根部周囲 7.2cm
睾丸(写真4−A陰嚢)重さ右4.2g左5.8g/直径右6.3cm左7.0cm
精液(写真5−A精液顕微鏡)2.6ml/精子含有率0.5%/正常(受精可能)精子率0.1%以下
治験者は薬効確認のために培養された遺伝的精子減少症患者のクローン(参考文献k−『クローン使用の手引き−ロバート・ホフマン型』)である。
・治験者B(写真6−B全身裸体正面)
人種−黒人/年齢−18/血液型−A/備考−β型クローン(感染型無精子症)
身長−210.6cm/体重102.1kg/体毛の色−黒
陰茎勃起時(写真7−B勃起ペニス)長さ24.7cm/亀頭周囲15.1cm/根部周囲14.6cm
陰茎沈静時(写真8−B沈静ペニス)長さ16.0cm/亀頭周囲10.5cm/根部周囲10.7cm
睾丸(写真9−B陰嚢)重さ右8.7g左9.1g/直径右10.4cm左10.8cm
睾丸感染後(写真10−B陰嚢[※炎症がある時点のため数値測定時とは大きさが異なる])重さ右3.1g左4.7g/直径右5.0cm左7.2cm
精液(写真11−B精液顕微鏡)3.1ml/精子含有率24.3%/正常(受精可能)精子率92.8%
精液感染後(写真12−B感染後精液顕微鏡)1.4ml/精子含有率0%/正常(受精可能)精子率0%
治験者は一般的に医療用に普及している黒人タイプのクローン(参考文献l−『クローン使用の手引き−β型・黒人男性』)である。今回の治験の目的は不妊治療であるため、人為的な細菌感染(参考文献l−『流行性耳下腺炎と急性精巣炎』)による無精子症を発生させた。
・治験者C(写真13−C全身裸体正面)
人種−アジア人/年齢−18/血液型−B/備考−γ型クローン(被爆型精子減少症)
身長−210.6cm/体重102.1kg/体毛の色−黒
陰茎勃起時(写真14−C勃起ペニス)長さ16.4cm/亀頭周囲12.1cm/根部周囲 9.6cm
陰茎沈静時(写真15−C沈静ペニス)長さ 8.0cm/亀頭周囲 9.5cm/根部周囲 8.2cm
睾丸(写真16−C陰嚢)重さ右12.6g左13.5g/直径右14.2cm左15.0cm
睾丸被爆後 重さ右12.4g左13.5g/直径右14.1cm左14.8cm
精液(写真17−C精液顕微鏡)4.2ml/精子含有率28.1%/正常(受精可能)精子率96.1%
精液被爆後(写真18−C被爆後精液顕微鏡)3.7ml/精子含有率16.4%/正常(受精可能)精子率12.5%
治験者は一般的に医療用に普及しているアジア人タイプのクローン(参考文献m−『クローン使用の手引き−γ型・アジア人男性』)である。今回の治験の目的は不妊治療であるため、人為的な放射線被爆(参考文献l−『放射線による生殖腺異常』)による無精子症を発生させた。
・治験者D(写真19−D全身裸体正面)(写真20−D陰部拡大)(写真21−D生殖器CT)
人種−白人/年齢−14/血液型−Orh-/備考−エミリ型クローン(先天性半陰陽)
身長−152.1cm/体重51.6kg/体毛の色−淡い金
陰茎勃起時(写真22−D勃起ペニス)長さ5.7cm/亀頭周囲4.1cm/根部周囲3.6cm
陰茎沈静時(写真23−D沈静ペニス)長さ4.2cm/亀頭周囲3.8cm/根部周囲3.0cm
睾丸(写真24−D下腹部CT)重さ右−左−未確認/直径右2.7cm左2.9cm
精液(写真25−D精液顕微鏡)0.7ml/精子含有率0%/正常(受精可能)精子率0%
治験者は薬効確認のために培養された先天性性ホルモン異常患者(参考文献n−『クローン使用の手引き−エミリー・スミス型』)のクローンである。治験開始時点でほぼ購入時の状態のままであるが、作業効率化の為に、二日間性教育を行ったことのみ、記録しておく。
・治験者E(写真26−E全身裸体正面)
人種−白人/年齢−46/血液型−AB/備考−志願治験者(勃起障害)
身長−190.4cm/体重162.5kg/体毛の色−濃い灰色
陰茎勃起時(写真27−Eペニス伸展)長さ17.4cm/亀頭周囲−/根部周囲−
陰茎沈静時(写真28−E沈静ペニス)長さ14.1cm/亀頭周囲 7.1cm/根部周囲 6.8cm
睾丸(写真29−E陰嚢)重さ右6.1g左6.0g/直径右10.3cm左 9.8cm
精液(写真30−E精液顕微鏡)0.4ml/精子含有率0.3%/正常(受精可能)精子率36.2%
治験者は内容を熟知した志願男性である。糖尿病の罹患歴があり、結果として勃起障害を起こしている。理論上、インシュリンとZ201rk-4の拮抗は起こり得ない(参考文献o−『腎機能におけるインシュリンの役割』)為、主治医Dr. フランク・ミュラーの許可(付記1−医師同意書)を得て治験に参加。勃起陰茎の計測は単純に引き伸ばすことによって、精液採取は前立腺への電気的な刺激(写真31−E精液採取)によって行っている。
・治験者F(写真32−F全身裸体正面)
人種−アジア人/年齢−38/血液型−O/備考−志願治験者
身長−176.5cm/体重81.2kg/体毛の色−黒
陰茎勃起時(写真33−F勃起ペニス)長さ12.5cm/亀頭周囲10.1cm/根部周囲 6.4cm
陰茎沈静時(写真34−F沈静ペニス)長さ 7.1cm/亀頭周囲 6.8cm/根部周囲 5.2cm
睾丸(写真35−F陰嚢)重さ右8.2g左−/直径右10.1cm左−
精液(写真36−F精液顕微鏡)4.2ml/精子含有率18.7%/正常(受精可能)精子率72.1%
治験者は内容を熟知した志願男性である。治験直前の事故によって左睾丸を摘出しているが精子生産能力に問題は無く、今回の治験では対照ケースとして扱う。
各治験者には、医学的安定状態を確認した状況で、同等の栄養価の食事(付記2−治験期間中の食事一覧)を与えた上で以下の投薬と観察を行った。治験期間中の自慰は禁止しており、筋肉の萎縮を防ぐための運動療法中以外は、性器に接触出来ないよう四肢を固定(写真37−A拘束)してある。また、治験者の睾丸の状況を観察しやすいように、ABCの三名に陰嚢皮膚の大幅な切開を行い、乾燥を防ぐために透過性の人口膜をかぶせた(写真38−Cの露出した睾丸)。EFの志願治験者2名は社会生活復帰が前提であるため、この処置は行なわなかった。なお、治験者Dの精巣への投薬は内視鏡操作(写真39−D陰部への内視鏡挿入)にて行っている。
・#1右睾丸への偽薬注入。観察期間二日。
・#2右睾丸への直接注入5ml。観察期間三日。
・#3右睾丸への直接注入10ml。観察期間三日。
・#4経口投与10ml。観察期間三日。
・#5前立腺への直接注入5ml。観察期間二日。
・#6陰茎根部への直接注入5ml。観察期間二日。
・#7陰茎亀頭部への直接注入5ml。観察期間二日。
・#8右及び左睾丸への直接注入それぞれ15ml(治験者Fのみ片側)。
治験対象者の体力回復を待つため一週間の経過観察。
・#9両睾丸への直接注入それぞれ10ml(治験者Fのみ片側)。前立腺への直接注入5ml。
予後の確認のため一週間の経過観察。
切除した生殖組織の剖検及び全身解剖(志願治験者を除く)。
治験経過及び所見
#1の投薬は、治験の予行演習と体調管理の準備期間を兼ねた偽薬投与である。用いたのは生理的食塩水であるため医学的に何ら影響を及ぼし得ないが、事前に実験概要の説明を受けていた志願治験者2名のみ、性欲の昂進と睾丸部の疼痛を訴えており、Fの放出した精液量は投薬一週間前と比べて実際に増加している(表2−実験期間中の全精液放出量の推移)しかし、明らかにこれは暗示によるものである。
#2より、実際の投薬を開始した。志願治験者2名に#1の時点で実験の開始を通告してある以外には、特別な説明は加えていないが、投薬後の5分間で、勃起障害のEを除く5人が勃起、射精に至った(写真40−投薬#2直後の被治験者)。Eは勃起を伴わない断続的な精液の放出のみを記録している。全員が射精後も数時間に渡って欲求不満と右睾丸の熱さ、尿道部位の疼痛を訴えており、Z201rk-4の性欲昂進効果は問題なく発現している。精子の状態については、各治験者によってばらつきがあった(表3−投薬#2直後の精液に含まれた精子量)。元々精子生産を全く行っていなかったBDの2名においては、投薬後も精子含有率0%のままであるが、以前の研究(参考文献f〜j)時の精子生産量の推移と比較して予想された結果である。
今回の注目すべきは効果の持続時間であるが、いずれの治験者も6時間以内には興奮状態を脱している(表4−投薬#2時の陰茎海綿体の血圧の推移)。勃起障害のEにおいてのみ、判断は問診による。Z201rk-1及びZ201rk-3において投薬を受けた動物が死亡するまで勃起及び射精を継続させていたことと比較すると、自壊酵素は狙い通りの効果を示していると言える。
三日間の経過観察を経て、副作用による問題が生じていないことを確認し、量を増やした#3の投薬を行った。
前回と同じく5分間以内にEを除く5人が勃起、射精に至り、Eの陰茎にもわずかな血圧の変化が起こっている(表5−投薬#3時の陰茎海綿体の血圧の推移)。今回の投与により、治験者BFの2名が欲求不満を原因とする暴力的発作を起こし、結果として拘束された四肢末端部への裂傷を負った(写真41−壊れた拘束具)。そのため、治験者全員の固定をより頑丈で、治験者の肉体を傷つけないものに変更した(写真42−B新拘束具)。
精液量に関しては前回の2倍(表2)含まれる精子の量については個人差はあるものの、おおむね上昇の結果が出た(表6−投薬#2直後の精液に含まれた精子量)。前回精子生産効果が得られなかったBDの2名も、受精に適さない未熟な形ではあるが、少量の精子を放出しており(写真43−#3後B精液顕微鏡)(写真44−#3後D精液顕微鏡)、継続投与による効果が期待された。
また、投与量を倍にしたにも拘らず、興奮状態を脱するまでの時間は、各#2時のものとほぼ同じであり、どのような量のZ201rk-4を投与しても、酵素の自壊時間がくれば、全て効力を失うことが確認された。薬効の継続時間の個人差(表7−全投薬における各治験者の反応継続時間と平均)については、それぞれが持つヨシノ酵素への代謝力の差によるものと推察される。
#3の投与後、志願による治験者EF2名が、睾丸への直接注入を薬効が強すぎるとして不快感を示し、また他の治験者も睾丸への接触に恐怖を見せるようになったため、投与の形態を、錠剤による経口投与に変更。#4の投与を行なった。
結果、ACEの3名が胃液の分泌過多による吐き気を訴え(胃酸ブロック剤により解消)Fが唾液の過剰分泌による呼吸困難を引き起こした(写真45−#4後F顔面)。問診により、Fは錠剤を飲み込まず舌下に逗留させていたことが確認された。なお、Fへの治験継続の意志確認に対しては、続行の返答が得られた。
従来通りの性欲亢進作用も観察されたが(表8−投薬#4時の陰茎海綿体の血圧の推移)、精子への影響は比較的少なく(表9−投薬#4後の精液に含まれた精子量)、他器官への副作用から、影響を及ぼす箇所を制御できないとして、経口投与は現実的に直接注入の代替手段としては不適当であると判断される。
しかし、Z201rk-4が、接触した器官それぞれに反応促進の効果を与えていることから、他の生殖に関わる器官に直接注入することによって、それぞれの機能を活性化させることが出来るのではないかとの、推測がなされた。
そこで#5の投与では、内視鏡操作による前立腺への直接注入を試みた。投与量に関しては、前回の反応を鑑みて、5mlに減量すべきであるという結論に至った。なお、内視鏡挿入は基本的に肛門部位より行なったが(写真46−A肛門への内視鏡挿入)、Fは肛門への異物挿入に関して強い抵抗感を示したため、Fのみ陰茎尿道部からの内視鏡操作を行なった(写真47−F陰茎への内視鏡挿入)(写真48−内視鏡によるF前立腺画像)。
この投与においては前立腺の分泌する体液量が上昇しているため、相対的に精液における精子の含有率が下がっているが、(表10−投薬#5後の精液に含まれた精子量)精子自体の正常率は向上しているため、睾丸も僅かながら活性化していることが伺える。Cのみ、受精に適さない精子を同じ割合で生産しているが、これは放射線によって、生産能力では無く、根本的な生殖細胞のDNA設計図自体に傷がつき、それを量産している為と思われる。残念ながらZ201rkによる不妊治療は、Cのようなケースには効果を発揮しない可能性が高い。
対照的に、ABDの3名においては、継続的に精子の生産能力に有意な差(表11−各治験対象者の受精可能精子生産能力の推移)を見せており、炎症によって硬化したタンパクであっても、修復できる可能性を示唆している。
Eにおいても挿入可能とはいかずとも、勃起と呼べるだけの陰茎海綿体の膨張が確認された(表12−投薬#5時の陰茎海綿体の血圧の推移)が、過剰な興奮による心臓への負担を考慮すると、勃起障害への治療薬としては、実用に至るまでにはかなりの改良が必要になると思われる。
その代わり、Eの勃起状況を調べる目的で陰茎の長さを計測していた結果、全治験者において陰茎組織が僅かながら増大していることが確認された(表13−各治験対象者の治験前と#5投与後の勃起時ペニスサイズの比較)。これは、Z201rkが、不妊治療薬としてだけではなく、単純に男性性器増大薬として作用する可能性を示唆しており、商業的商品としても莫大な利益を期待できるものである。
そこで、#6の投与においては、陰茎根部の海綿体へのZ201rk-4直接注入を行なった。(写真49−B会陰部注射)それによって、通常の性欲亢進のみならず、陰茎深部の張り裂けるような激痛や、尿道の閉塞感を訴える被治験者が多かったが、結果として明らかな陰茎組織の増大が確認された。(表14−各治験対象者の治験前と#5そして#6投与後の勃起時ペニスサイズの比較)性器の痛みは組織の急激な成長によるもので、大きな害は無いと思われた。
#6の投与においては、陰茎深部の組織が主に膨張し、結果として全体的に円錐形に似た形へと性器が変形(写真50−#6後の治験者6人のペニス)していた為、#7の投与においては陰茎先端が対象に選ばれた。
亀頭円周部を中心に、尿道の埋没を防ぐため尿道口辺縁及び尿道海綿体へ#7の投薬を行なった結果、全員の陰茎組織が治験開始前の1.5倍の長さを超え(表15−各治験対象者の治験前と#7投与後の勃起時ペニスサイズの比較)、Dに至っては、4倍を超えた。これは、Dが元々性的に未熟であったこと、年齢が若く体内環境が整えば、性器の著しい成長を容易に引き起こせる状態であったことも関係していると思われる。(写真51−#7後の治験者6人のペニス)記録写真によるとFの亀頭下部から出血が起こっているが、これは急激な海綿体組織の成長により、陰茎表皮が裂けたものである。ただし、Fは包皮切除手術を受けて人工的に陰茎先端に余裕の無い状態になっており、通常の包皮を持つペニスであれば、そのような問題は起こらないことが予想される。なお、Fには、簡易的な包皮再建手術と止血措置が行なわれた。
陰茎組織の増大という点では劇的な効果が見られたが、生殖細胞の活発化の観点から見ると、やはり精巣部への注入には劣っている。(表16−投薬#6#7後の精液に含まれた精子量)だが、いずれの投薬においても、性欲亢進と射精する精液自体の量については、一貫して顕著な効果が見られる(表2)ことが興味深い。しかしながら、治験者それぞれの投薬に対する反応は沈静の傾向にあり、心臓への負担(表17−投薬毎の心拍、腕部血圧の変化)も比較的軽減されている事から、肉体のZ201rk-4への慣れ、または薬効への耐性の可能性も指摘された。
そこで、#8の投薬において、投薬量を15mlに増やし、再び精巣への直接注入を行なった。これまでの投薬では右部の睾丸のみを対象としてきたが、今回の投与では、両睾丸へそれぞれ注入している。なお、治験者Fは事故によって左睾丸を摘出している為、この段階でも右のみを対象としている。
結論から述べるとこの投薬は失敗である。15mlの投与量が多すぎ、全員が酵素自壊までの期間(最長で5時間27分)、断続的に精液を放出し続けることになった(表18−表2のグラフ範囲に収まらない投薬#8後の精液放出量)(写真52−#8後に放出されたBの精液瓶)(写真53−射精による脱水症状防止の為点滴投与を受ける治験者)。勃起障害のEも、確実に挿入が可能な硬度の勃起状態が得られたが、その後の疲労衰弱の様子から、全員に投薬の一時中止及び経過観察を行なうことが決定した。
ただし、期待された効果自体は損傷したCの精子の質を除いてそれぞれ顕著(表19−投薬#8後の精液に含まれた精子量)であり、各自の負担も、強すぎる刺激というよりは、長すぎる最大効果の連続に問題があると考えられる。その為、より自壊時間の短い型の酵素を組み込んだ試薬を使えば、より安全で、より効果的な薬剤が完成すると予想された。
治験者の体力回復を待ちながら一週間の経過観察を行なったが、その中で懸念されたのは、Z201rk-4に対する依存性である。#2の時点で睾丸への接触に恐怖感を示していた治験者たちが、大幅に衰弱した#8の後でも抵抗せず、むしろ投薬を期待している傾向があり、志願治験者2人も、投薬量は減らす必要があるとしつつ、治験の継続自体にはむしろ積極的な態度を見せた。
軽度の躁状態と、射精に至らない頻繁な勃起(Eを除く)が観察された(表20−投薬#8後一週間の陰茎海綿体の血圧の推移)が、専門医の診断によると、今回の治験の持つ性的な性格を起因とする興奮状態であり、問題視するほどのものではないと意見が出された。
そこで治験終了の区切りとして、最後の投薬#9を行なった。#9においては、前回と同じく両方の睾丸に#2と同等に減量した10mlの直接注入が行なわれ、一部の器官のみが活性化することによる負担増を軽減するため、#5と同じ方法で前立腺への5mlの注入が行なわれた。なお、今回の投薬に当たってFは肛門への内視鏡使用に異議を申し立てなかったので、全員直腸側からの挿入による投与を行なっている。
#9の投薬によってこれまでの結果を裏付ける生殖細胞の活性化が精子生産量によって確認された(表21−投薬#9後の精液に含まれた精子量)。治験者の興奮状態に対する反応も、概ね落ち着いたものであり、長時間に及ぶ射精の連続にも一定の理解が得られた。また、排卵中女性クローンを用いた性交実験においても、C以外は相手を妊娠させることに成功している(写真54−#9後の性交実験)(参考文献p−『クローン使用の手引き−α型・白人女性』)。
しかし、この#9の投薬の酵素自壊時間に至ると、治験者全員が生殖器全体に鋭い痛みを訴え始め、複数名の尿道から出血を確認した(写真55−A尿道からの出血)。出血量自体は生死に関わるほどのものではないように思われたが、酵素自壊から15分後に治験者Dが心肺停止(表22−投薬#9酵素自壊前後の血液成分の推移)。同様にEが意識不明の昏睡状態へと陥った為、EF両名への対応を治験から救命に切り替え、同時にDを解剖に回して原因を探った。
最終的にEF共に生命の危機は免れたが、治験者全員の睾丸、陰茎海綿体、前立腺を含む生殖器全体がネクローシスを起こした(写真56−治験者達の融解したペニス)。
解剖によって、Dの死因は崩壊した内性器が腹腔内に散逸したために起こった急性腹膜炎であることが確認されており、これはDの特殊な性器構造によるものである(付記3−解剖所見D)(写真57−D下腹部解剖)。Eの昏睡については、激痛による気絶と推察される。
また、摘出されたA〜Fの性器海綿体の残骸から、結晶化したケラチン質の繊維が多数発見されており(写真58−Bの海綿体に突き刺さるトゲ状の結晶)、治験者が苦痛を訴えた原因は、海綿体内部に形成されたこの結晶が、陰茎の血管を突き破ったからだと思われる。
結晶の形成及び生殖器自体の崩壊の理由については、いくつかの仮説が考えられるが確認は今後の研究が待たれる。
最も可能性の高いものとして、本来生殖腺を活性化させる目的で設計されたZ201rk-4に組み込まれたヨシノmk2の自殺酵素が、陰茎増大効果を狙った海綿体への注入の際に、治験者の生殖器構造に転写され、#9の時限式自壊と共に、生殖器そのものを道連れにしたという推論が成り立つ。崩壊が#8の時点ではなく、#9の時点で起こった理由については、転写された自殺酵素の生体組織への定着までに、時間が掛かった、もしくは、#9の時点で使用した試薬自体に何らかの細胞の崩壊を誘発しうる変質が起こっていた可能性が挙げられる。ただし、#9で使用したものと同じ試薬を治験者ABCの肉体の別の部位に投与しても、同様の細胞崩壊は起こらなかった。
#9後一週間の観察の後、治験に使用したクローンABC3体の生体解剖を実施。また、EF2名の精密検査を行なった。(写真59−Cへの心停止液の注入)(写真60−A解剖風景)(写真61−B脳髄計量)(付記4−解剖所見A)(付記5−解剖所見B)(付記6−解剖所見C)(付記7−精密検査所見E)(付記8−精密検査所見F)
各クローンにおいて生殖組織崩壊以外の異常は見受けられない。最も重点的に観察すべきであった対象の各生殖組織が原形を留めていない事は、まことに残念な結果である。志願治験者2名において、崩壊した前立腺摘出の際に尿道が損傷したため、カーボンファイバーを用いた人口尿道への置換手術が行なわれている。(写真62−E人口尿道を使用した排尿)
また、EF両名にフラッシュバックともいうべき突発的な興奮状態が繰り替えし見られることが報告されている。この報告において、全性器を切除している両名共に、股間部に自慰に似た摩擦刺激を加える姿が確認(写真63−街中で生殖器痕に摩擦を加えるF)されているが、二名の該当部位からはあらゆる性感帯が失われているはずであり、過去の記憶を元にした暗示に近いもの、一種のファントム現象と思われる。
血液成分の状況を見ても(表23−EF治験後一ヶ月の血液成分の推移)Z201rk-4は確実に薬効を失い排出されていることが明らかであり、直接の原因とは成り得ないが、二名の臨床所見からは麻薬の禁断症状に近いものが感じられる。
クローン母体によって培養された受精卵は、胎児段階で流産したD’を除いて正常に分娩された(写真64−誕生した乳児)。A’B’E’F’の四個体全てが男性体であったが、性別の偏りについては偶然である可能性が強いと指摘されている。各乳児の男性性器の大きさが、それぞれの父親の乳児時点のデータを上回っているという示唆もある(表24−ABEF及びA’B’E’F’の誕生時点でのペニスサイズ比較[EFのデータは自己申告による])が、サンプル数の規模やクローン母体系列の影響なども考えると、Z201rk-4の影響を判じるのは困難である。健康面において、乳児群全員において薬効に起因すると思われる異常は確認されなかった。(付記9−解剖所見A’)(付記10−解剖所見B’)(付記11−解剖所見F’)(付記12−精密検査所見E’)F’性器において尿道下裂(写真65−F’ペニス先端)が確認されているが、Fへの問診により、Fの家系に頻繁に見られた症状であり、F個人の遺伝的体質に基づく畸形であるとされる。A’の遺伝情報から将来的にAと同じく精子減少症を発現する因子が確認されている。なお、治験者Eの強い希望により、E’への解剖は行なわれていない。
結論・評価
結果としてZ201rk-4は、確かに画期的な男性用不妊治療薬としての効用を発揮しうるが、人体に使用する薬品としては致命的な欠陥を抱えていると言わざるを得ない。
少なくとも、人体構成細胞の自壊に至るプロセスが解明されるまでは、クローンを除く人間の治験者への投与は自粛すべきである。しかし、この副作用は、Z201rk-3以前の試薬では全く見られなかったこと、その発生状況と症状から、ヨシノmk2自殺酵素に由来するものであることが強く予想される。そして、治験中の別の理由からも代替作用を持つ酵素が求められていたことから、Z201rkの研究自体を凍結させる要因にはならないと考えられる。
Z201rk系薬品の問題として重要視すべきはむしろ今回の人間への初めての投与で懸念された依存性の問題であり、これは性交直前に男性が各自使用する妊娠補助薬の性質としては非常に危険である。
また、明らかな男性性器の増大という効果も確認された以上、用法を誤った乱用の危険は常に付きまとう。どちらにせよ、より一層安全な新薬を追求すべきであることには代わりがない。
また、A’やF’が父親の遺伝情報に起因する病状を発症・保有していること(D’の流産もDの遺伝要素によると予想される)、Cの精子の状態は回復されなかったことから、Z201rkは、確かに生殖細胞の活動を活性化させるが、DNA損傷や、そもそもの遺伝情報に含まれる異常を修復するものではないことが明らかである。
昨今の不妊治療において、染色体異常、損傷を基にすると思われるケースの割合は決して低いとは言えず(参考文献q−『不妊治療の今』)、Z201rkが、不妊に対する万能薬であるようにもてはやす風潮は、民間に対して誤解と過度の期待を与えると憂慮される。
生殖は、未だ知られざる要素を多分に抱える極めてデリケートなシステムであることを忘れてはならない。
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投稿:2012.04.06
新薬Z201rk-4の男性生殖器組織に及ぼす反応
著者 自称清純派 様 / アクセス 14532 / ♥ 4