「皆の衆。これを御覧あれ。」
仁王立ちの修験者通称山伏殿が錫杖を一突きすると虚空に映像が現れる。テレヴィジョン受像機すらまだ東京の実験室で実験段階であった時代のこと、一同はざわめいた。それが内務省の検閲に一発で引っかかるような淫乱破廉恥極まる内容であるとあれば猶更である。
「これは、どうしたことだ。ええ?」
「谷戸にあるまじき事だ。」
「こだい淫らな・・・。」
「この雁!凄えな。」
激高する名主、久美子の父親、呆れかえる神官、冷笑する名主の息子。裁判を受ける被告人のように立たされた龍雄は、立っているのに針の筵だ。修験者は嗜虐的の笑みを浮かべると、「いま一度御覧あれ!」と錫杖をドンと突いた。
「龍ちゃんのここ、もうこんなに硬くなってる。」
久美子は黒々とおえた龍雄の陰茎を嬉しくてたまらないといった具合で、白魚のような手で握り硬さを確かめる。八寸五分にはなろうかという完全な露茎、雁高の業物で、既に快楽の雫を滴らせ、少し扱かれただけで更に露が溢れるのである。
続いて、龍雄のごつい指が、久美子の玉門へと伸びてゆく場面。「ここ触って…ここ」久美子は自らつびを触り龍雄を誘導する。龍雄もつびを探り当て、優しく刺激する。
「もう我慢できない。」
久美子は龍雄の玉茎を摑み密壺へと導いた。暫く嬌声が続き遂にその時が来た。
「アア、もうダメ。アアン…アア…ッ」
久美子はあられもなく秘所を顕にし、秘所は龍雄の巨根を受け入れながら岩清水のようにいやらしく淫水を流しながら快楽に震えた。久美子自身は両のかいなで龍雄をきつく摑んだまま絶頂に達した。―映像はここで途切れる―
「名主!俺はやってねえ。修験者様、これは飽く迄も久美子の妄想なんだべした。それに俺はこんなにでかかねえよ。」
「如何にも。これは、久美子殿のあられもない妄想である。これは間違いない。しかしである。この谷戸で、あれは、巫女として幼少から慎み深い女になるよう禁欲的に育てられた。普通であればこんな妄想するようなあばずれではないッ。つまりだ。かような妄想をさせる刺戟を与えたものがいる。そう考えるのが自然であろ。」
「しかしこりゃ、完全に桃色映画でねえか。巫女がこんな事を考えていては、村の平安はどうなっちまうだ。龍雄、お前がしたも同じでねえか。」
一通り事情を聞いた後、名主は埒が開かないと見たか、話題を変えた。
「龍雄、まず服を換えい。」
「こ、これは、切装束・・・。」
龍雄は純白で股間の部分だけ穴が空いた白装束を見て顔面蒼白になる。
「巫女を穢すような真似をしおったのだ。それなりの身の処し方があろう!」
「お待ち下さい。名主。」
手を突き懇願する龍雄。往生際が悪いとはこのことである。
「女々しいぞ、龍雄。早う切茎せい!」
「自分が如何に生れ、如何に生きそして、男根を断たれるのか、じっくりと振り返りたいと存じます。何卒、何卒」
平身低頭して哀願する龍雄。もはや身も蓋もなかった。
「それでは、切茎の儀は半刻後に」
名主はギョロッとした目で龍雄を睨むと房間から出て行き以下の出席者もそれに続いた。
結局、龍雄は、切茎を嫌い、名主の屋敷の奥座敷から逃げ出し、久美子の家に居る所を捕縛された。今度は座敷牢に入れられ、近く夏祭の時に沙汰を言い渡す算段となった。
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投稿:2021.02.13更新:2021.02.13
白狐と黑蛇―婬慾
著者 雛咲美保登&長谷福利 様 / アクセス 4357 / ♥ 12