第1話はこちら
さて、場所は変わってハリス国の草原。ここにハリス国のガス攻撃を受けて、全員昏睡状態になってしまったポナール国の一部隊25人が横たわっていた。国境からハリス国の奥深く、気づかれずに侵攻したものの、前線司令部がある都市まであと少しというところで、敵に発見されてしまった。民間人に偽装するため、運悪くガスマスクも防護服も着けていなかったのである。
遠くでハリス人の声が「こっちだ、こっちだ」と叫んでいる。やがて到着したハリス人の兵士は、眠ったままのポナール人をどこかへ連れていった。身に着けていた軍用品もすべて回収された。これはやがてハリス国の対ポナール国用の秘密兵器として使われるのだろう。
指揮官であったピエタが目覚めたのは高さも幅も長さも1メートルぐらいの狭い鉄格子の檻の中だった。その檻が天井から吊るされて揺れている。ピエタの身分はとっくにバレているのだろう。部下たちとは全然別の場所に連れてこられたようだ。捕虜収容所はハリス国内に何十箇所もあるとらしいという情報を思い出した。あるいは自分だけが長く気絶していて離れ離れになったのか。
ピエタは、服もシャツも脱がされて下半身の下着だけの姿で、両手首を後ろ手で縛られて窮屈な体育座りの格好だ。自分のビキニブリーフの下着の下には、なぜか六尺褌に似た布がしっかりと巻かれている。これはカルタイの下帯じゃないか、それも使い古しらしいぞとピエタは屈辱感を覚えた。
しかも、口には猿轡が嵌められている。これも前に誰かが使ったものを洗わずに使い回ししているらしく、妙な味がした。
やがて、天井のクレーンが動き始め、狭い通路を通って広い部屋に出た。この部屋の中は、ピエタが入れられているのとそっくりな檻が、横にも縦にも積み重なって並べられている。びっしりと積み重ねられた檻の数ざっと百個ぐらいはあるだろうか。この中のちょうど空いたあたりに、ピエタの檻が運ばれ、下されていく。そのあとからも別の檻が運ばれてきて、ピエタの前後も上下も左側も檻同士が密着するようになった。最初は空いていた右側にも別の檻が運ばれてきた。
上や横の檻には同じの捕虜らしき大勢の青年たちが、同じように閉じ込められていた。ポナール人だけではないようだ。見渡せる限りでは知った顔はいない。
ピエタが声を掛けようとしたが言葉が出ない。猿轡は実に完璧であった。そのうちすぐ上の檻に入れられた捕虜の下着に染みが拡がってきた。どうやら下着の中で失禁したらしい。股間の下着だけそのままだったのはオムツ代わりだったのかとピエタは思ったが、よっぽど我慢していたのか、下着だけでは受けきれず、小水の滴がピエタの顔に上からポタポタ落ちてきた。
このまま2日ほど過ぎただろうか。なにも飲まず食わずでピエタは喉の渇きと空腹がもう限界、下腹部も失禁でもうグチョグチョで、このまま死ぬのかなと思い始めた頃、ハリス国の獄吏らしき人が何人かやってきて、周囲の檻を動し始めた。
どうやら先に積まれた檻から順番に作業をしていくらしい。
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投稿:2022.01.09更新:2022.01.10
捕囚の印(第2話-ピエタの捕縛)
著者 Eunuch様 / アクセス 4270 / ♥ 18