黒き冷笑の魔女
あの日から、私は色を失った。
周りにいる人間達は、学生生活を、青春を、恋を、謳歌している。
私のことなど気にも留めず、夢や希望に満ち、輝くような色彩を放つ。
世界は美しく、豊かな色に満ち満ちている。
その中で、ただ、私だけが色を失った。
上月凜は完璧な少女だった。
美しい銀灰の髪に、造形物のように整った顔。
成績も常にトップを維持し、まさに才色兼備な、15歳の女子高校生。
そして、それを鼻にかけることもなく、性格は物静かで真面目であり、何事にも努力を怠らない。
家は、あまり裕福ではなかった。
父親が六年前に他界し、母子家庭だったが、凜は母親と二人で、支え合いながら生きていた。
「ただいまー。お母さ…」
玄関を開け、靴を脱ごうとして、動きが止まる。
無造作に履き捨てられた、草臥れた男物の靴。
また…あの男が来ている。
私は、死んだ表情でリビングの扉を開ける。
ボサボサの髪に、無精髭を生やした不清潔な男が、脚をだらしなく放り出し、椅子に腰掛けている。
男は、音に反応してこちらを見た。
「うーっす、凛ちゃん。相変わらずかわええなぁ。おっぱいも、またでかぁなったんちゃうか」
男はおぞましい事を喋りながら、舐め回すような視線を送ってくる。
私は男を射殺すように睨み付け、早足で自分の部屋へと飛び込んだ。
すかさず鍵を掛ける。
あいつは以前、逃げるように部屋に向かう私を追いかけ、そのまま部屋の中へと入ってきた事があったのだ。
思い出して、怖気が走る。
「………死ねっ!」
気持ち悪い。
母は、私と二人で生きていく為に、夜遅くまで必死に頑張って働いてくれている。
そして私も、勉学に勤しみながらも、少しでも助けになればと週三日、バイトを入れている。
…なのに、あいつは働きもせず、ギャンブルに明け暮れ、こうして気紛れに、金の無心にやってくる。
苦労して稼いだ私達のお金を奪っていく。
あの男は母の、血の繋がらぬ弟だ。あいつを叔父などと呼びたくない。
同じ男でも、父とはまるで別の生き物だ。
父は大学の准教授だった。威厳があり、優しく、しかし、決して間違ったことを許さず、人を正しく導く。
私はそんな父親を、心から尊敬していた。
そんな父の様な人間になりたくて、私は将来、立派な教師になることを夢見ている。
それに比べてあの男は…。
私は、あの男の存在全てが、気持ち悪かった。
ある夜。
私は、その日に限って、部屋に鍵を掛け忘れていた。
ベッドの上で、私の意識が目覚める。
暗い視界の中、目の前に蠢く大きな影。
すぐ近くから聞こえる、自分以外の息使いと、酒の匂い。
直前まで夢の中にいた脳が、急速に、現実を認識し始める。
はだけられた自分の胸。脱がされ、露出させられた下半身。
そして、自分に跨る醜悪な男。
自分の危機的状況に気付き、私はとっさに叫んだ。
「いやあああああっ!!!んぐぅっ!?」
大きく、無骨な手が、強い力で私の口を塞ぐ。
「やかましいて、凜ちゃん。通報されたらどないするん…。
大人しいに黙っとったら、おじさん、そない、痛い事せえへんから…」
男の醜悪な手が、私の乳房を乱暴に揉みしだく。
私の顔が、痛みに歪む。
私は、口を塞ぐ手を引き剥がそうと、両手で爪を立て、握りしめ、精一杯の力で藻掻いた。
「チっ、やめえやっ。ったいのお…!」
口がほんの僅か、自由になった隙を逃さず、噛み千切る勢いで男の手に歯を立てた。
「ぐわぁっ!!?…っの!クソガキがっっ!!」
男が怯み、口から手が離れる。
「お母さんっ!!!お母さんっ!!!誰かあっ!!!助け…ぐぅっ!?」
男の拳が振り下ろされ、意識が飛びそうになった。
視界がちらつき、金属音の様な高音の耳鳴りが、脳内に響き渡る。
抵抗する為、全力で暴れていた私の身体から、一瞬で抗う力が奪われた。
「あっほやなぁ…。大人しいにせえへんから」
「…ぁ…?…あぁ…あ……?」
「次ぃ、何かしよったら、殺すで…。大人しいに黙っとったら、痛いことはせんといたる。
…何なら、気持ちええかもしれんでぇ…?」
私の両脚が、男に捕まれ、大きく広げられる。
そして、男の大きく醜悪な陰茎が、一切湿り気のない私の膣口にあてがわれた。
男の強い力に組み敷かれ、恐怖で声を出すことも出来ず、私はその絶望的な状況を、ただ嗚咽を上げながら、見ている事しか出来なかった。
「ぅぅ……ぅああぁっ…」
頬に涙が伝う。
誰か…、誰か…。助けて、助けてぇ…。お願いっ…!
自慰すら経験の無い、私の小さな秘穴に、巨大な陰茎が無理矢理ねじ込まれた。
「がっ!?うぐうううううぅっ!!」
「うおおっ、きっついのぉ!こら名器ちゃうか?ほんま最高やで、凜ちゃんよぉ…」
痛い、痛い、痛い、死ぬ、死ぬ、死ぬ…!
男の陰茎に、処女の血が纏いつく。
「おおっ、おおっ。ええ感じに、滑りようなってきた…。感じてきたんか、凜ちゃん」
「ううううううう!!」
私は歯を食いしばり、涙を流しながら、屈辱と痛みに耐え続ける。
男の舌が、私の顔、首、胸を、舐め擦り回る。
まるで、ゴキブリが身体を這い回るようなおぞましさに、肌が粟立った。
「あかんっ、気持ちよすぎて、もう出そうやわ。いっぱい、中に出したるけぇのぉ」
中に出す…。その一言に背筋が凍り付く。
「いやっ!いやっ!やめてっ!?!中は駄目っ!絶対に駄目っ!やめてぇっ!!」
「うおおおおっ!いっ、いくでっ!…おらっ!!」
男の精液が、私の膣内に解き放たれる。
私の中で、男の醜い陰茎が、何度も脈動し、おぞましい液体で満たされていく。
「ぅああぁ…。いやだぁ…いやだああぁ…。…あああ、ああ……」
夢であって欲しかった。
しかし、体内に注ぎ込まれる確かな感覚が、私の悲痛な願いを否定する。
逃れられぬ現実に、私は、只々、絶望の涙を流すしかなかった。
しかし、男は、一度の射精で、満足しなかった。
地獄の様な時間は、終わらなかった。
その後も、射精を求めて、何度も何度も、男の腰が打ち付けられた。
そして、私の中の、何かが壊れた。
私の叫び声を聞いた隣人の通報により、男は警察に取り押さえられ、身柄を確保された。
それは、全てが終わった後だった。
私は病院へと搬送され、怪我の治療を受け、アフターピルを処方された。
性犯罪被害者の対応に慣れた女性警察官から、優しく丁寧に事情を聞かれ、私は自分でも驚くほど冷静に、事細かく事実を説明した。
家に帰った後、私は風呂場で、何度も何度も身体を擦った。
割れてしまった爪の先が、真っ白になるまで、何度も何度も擦り続けた。
しかし、穢れた感覚は、ずっと私の身体に纏わり付いたままだった。
翌朝、何事もなかったかのように制服に袖を通した。
学校に行き、授業を受け、黒板の文字を写した。
身体は、これまでの日常を踏襲し、勝手に動く。
しかし私は、もう、何もかもが、どうでもよかった。
私は敬愛する父に憧れて、将来、教師になる事を夢見ていた。
しかし、もう、教師になりたいなどとは思えなかった。
私はその為に努力し続けてきた。
他の生徒が遊び呆けている間も、恋愛に現を抜かしている間も、ずっと。
なのに、私だけが何もかも失った。夢も、青春も、密かに憧れていた恋愛も。
夢見ていた。
好きな人と、手を繋いで、色んな場所へ行き、色んな物を見て…、気持ちを共有しあう。
二人の時間を幾重にも積み重ね、時に困難を乗り越え、愛を育んでいく。
やがて…、二人は唇を重ねあう。
そんな、少女の様な恋愛を。
なのに、なぜ、なぜ、なぜ…。
どうして、私だけが…。
私は仮面を被りながらも、内心では、努力しない周りの連中を、ずっと見下していた。
そんな連中が、この私が失った、夢や希望を抱いて、恋愛を楽しみ、幸せな未来に向かって進んでいく。
誰よりも優れた、この私が失ってしまった物を、こいつ等は、何故か持っている。
黒い感情が、私の心を支配していく。
私を蹂躙した、男の穢れた性。
私が失った物を、これ見よがしに見せ付けてくる馬鹿な連中。
そして、それを許す、この世界の不条理。
全てが許せなかった。
あの男を殺す。そんな粗陋な復讐では済まさない。
この間違った世界を壊し、私が奪われた以上の物を、奪いたい。
私は、私の中で蠢く黒い衝動に、身を委ねた。
この時の私は、自分が目指すべき場所が、まだ明確には定まっていなかった。
しかし、何を成すにも力がいる。
そして、力を得る為には努力が必要だ。
夢の為に努力してきた私が、これからは復讐を糧に、努力する。
復讐の為に、私は生きる。
上月凜は、執念の化け物だった。
二年後、凜は飛び級で大学へ進学する。
認知心理学と社会工学を専攻し、学内の研究室で才能を開花させた。
凜が掲げたテーマは、人格形成と遺伝的適性の相関。
そして、社会にとって危険な個体は、どの段階で排除すべきか。
やがて凜は、教育制度庁附属の育成機関である、国家教育政策学院にスカウトされ、数年で中枢へと上り詰めた。
凜が最初に提出した教育改革案の中にある一文。
男性の攻撃的傾向と支配欲求は、進化論的に見ても不安定因子であり、
その過剰な自由は、社会的に制御されるべきである。
その一文が、後に凜が創りあげる、制度の原型、生殖能力剥奪処分へと繋がっていく。
世間を騒がせた、朝霧あやかによる、連続少年陰茎切断事件。
あの事件が、私の進むべき道に、指針を示してくれたのだ。
私は生まれてこの方、性的絶頂というものを経験したことが無かった。
喪失する以前は、僅かに高揚する…という事はあった。
例えば、過激な表現の少女漫画や、友人から勧められた同性愛の小冊子。(同人誌というらしい)
モデルや俳優など、見目麗しい男性の裸体などを見て、身体がじんわりと熱くなる。
性への関心が希薄だった私の、性への反応とは、その程度の物だった。
そして、喪失後には、そういった性的な物に対して、一切の関心を失っていた。
そんな私が、激しく昂ぶり…、濡れたのだ。
「陰茎…切断……」
口にしただけで、胸が高鳴り、下腹部が熱を持った。激しく興奮した。
男が、陰茎を失う。
それが、何を意味するのかを考えた時、今まで感じたことの無い大きな何かが、身体の奥底から込み上げてくるのを感じた。
もう永遠に女性を犯すことは出来ない。快楽も得られない。先に待つのは辛く、惨めな人生だけ。
…何と甘美なのだろう…。
男の穢れた性を憎む私に、それは凄まじい愉悦をもたらした。
私は事件記録を読みながら、生まれて初めて、自ら秘所に手を伸ばし、性の快楽を味わった。
私の輝かしい人生から色彩を奪った、男の穢れた性の象徴を、今度は私が奪う。
これこそが、私が成すべき復讐だと、教えてくれた。
復讐を実現させる為、私は、使える物を全て使った。
己の身体すら。
心的外傷による障害も、私には一切無かった。
否。男の性に屈服し、怯えて震えるだけの少女には、私は断じてならなかった。
既に穢れてしまった身だ。私は躊躇無く使った。
自身の美貌を武器にし、権力者達を罠に嵌め、誘惑し、籠絡し、脅迫し、その力を次々と我が物としていく。
そして、ついに私は、大いなる権力を手にした。
誰かの可能性を、引き出せる人になりたい。
教師を夢見ていた自分が、かつて語った事を思い出す。
あの頃の自分が、今の自分を見たらどう思うだろう。
「ふふふっ」
想像して笑いが込み上げた。
この私が、私の意志で、私の欲望のままに、他人の可能性を踏みにじり、未来を蹂躙できるのだ。
私は、人間の尊厳を剥奪する、選別教育制度を創りあげた。
生徒達から恋愛を奪い、自由を奪い、劣等な者達からは、生殖の権利すら奪う。
そして最終的には、全生徒の前で、公開的に、屈辱的に、陰茎を切断する。
しかし、それを実現するには、倫理的な問題もあり、まだまだ障害が多かった。
人間は適応能力の高い生物だ。
過酷な環境であろうと、状況に応じて柔軟に思考や行動を変化させ、周囲と調和し、順応し、やがてストレスを感じなくなる。
しかし、急激な変化は、適応能力の限界を越え、時に深刻な問題を発生させる。
ゆっくりでいい。冷静に、慎重に、環境を整えていく。
それを受け入れられる精神を、価値観を、倫理観を大衆に植え付けていく。
今はまだ、男の象徴を、公開的に切断する事は出来ない。
しかし、秘密裏に行うことは出来る。
再教育施設。
最下位層へと転落し、剥奪措置を受け、教育制度外の人間となった生徒達が収容される隔離施設。
此処で行われることは、一切、公にされることは無い。
この中には、法の光は一切刺し込まない。完全なる無法領域。
私はこの場所で、裁定者として、哀れな男子達を支配し、断罪し、自身の復讐心と欲望を満たしていた。
施設内では、生徒達は男女共に、生地の薄い、白い制服を着用する。
生徒というよりも、病人や、囚人に近い印象だ。
彼らは最早、教育制度外の人間だが、ここでも以前と変わらぬ水準の教育を受けることが出来る。
そして、施設卒業後は、殆どの生徒が国家直属の公的下層労働者となり、インフラ整備、廃棄物処理、危険区域での作業など、社会の底辺を支えつつ、外部との接触を最小限に抑えられる。
優秀な生徒に関しては国家直属の研究機関などへ送られることもあるが、いずれにせよ、情報漏洩を防ぐため、常に国の監視下に置かれ、情報統制が行われる。
施設内での陰茎の切断は、基本的に、私の相棒であり親友でもある、朝霧あやかが行ってくれている。
23名にも及ぶ、幼い少年達の未来を奪った、連続少年陰茎切断事件。
彼女は、その歴史に残る凄惨な事件を引き起こした張本人だ。
彼女がいなければ、恐らく、今の選別教育制度は存在していない。
私は彼女の処置が大好きだ。
相手を誘惑し、期待させ、悦ばせ、そして最期に絶望させる。
彼女の「魅せる処置」は、私に凄まじい興奮と快感をプレゼントしてくれるのだ。
そんな彼女が言っていた。
「凜ちゃんもやってみなよぉ♪…すっごく興奮するし、楽しいよ?」
当然、私にも、その欲望はあった。
制度を創り上げ、断罪される男の絶望を、ただ観ているだけではなく、自分自身の手で罰を下す。
あやかの、恍惚の表情と、快感に震える姿を思い出すと、胸が高鳴る。
正直私には、彼女の様な素晴らしい処置は、真似出来ないだろう。
しかし、私もやってみたい。私自身の手で、男に絶望を与えたい…。
絶望の様を間近で感じ、ペニスを切り離す感触を、この手で味わいたい。
私は次の処置を、初めて、私自らの手で行う事を決意した。
施設では週に一度、金曜日の20時から21時までの一時間、マイクロチップによる制御を完全に解除し、若い思春期の男の子達に、性欲の開放、つまり、自慰行為を許す時間を設けている。
自慰の権利が開放される、15分前から、それぞれ自室に設置された映像端末から、様々なAVの視聴が可能になる。
幅広いジャンルが取り揃えられており、男子達はそれぞれの趣味嗜好に合わせて、使うおかずを、慎重に吟味する。
20時になると、自室にて待機していた男子達が、映像端末に張り付きながら、一斉に陰茎を刺激し始める。
若くフレッシュな陰茎達が、それぞれ、思い思いの方法で、熱く、熱く、愛される。
スタンダードに手で扱く者、ベッドへと押し付け、厭らしく腰を動かす者、無言で手を動かす者もいれば、喘ぎ声を上げながら致す者もいる。
一貫して言える事は、皆、この行為に対し、真摯で真剣だということだ。
高校生の男子にとって、オナニーとは、極めて大切な行為なのだと分かる。
全ての部屋に取り付けられた監視カメラによって、全男子の自慰行為が、私の私室にある巨大モニターへと映し出されている。
私はモニターを操作する。
すると、私がピックアップした、私好みの、見目麗しい数人の男の子達が、大画面へと映し出された。
「ふふっ、素晴らしい光景ね…。まるでアイドルグループのオナニーライブを観てるみたい」
私は自分で口にして、吹き出しそうになった。
私は、愛用の性具を手に取る。
これは、特殊な防腐加工を施した、切断された男子生徒の、勃起した陰茎だ。
私はこの施設内で切断された、お気に入りの男子生徒達の陰茎を、性具として加工処理し、コレクションしているのだ。
情けない姿で、綺麗な顔を、凛々しい顔を、淫らに歪める様子を、私は秘所に性具を挿入しながら楽しむ。
あやかに感化されてしまった。
かつてあれほど憎んでいた陰茎が、今の私には、とても愛おしいと思える。
彼らがあれほど愛している陰茎は、私の意思によって、自由に選択され、無残に切断され、私の愛玩具にされてしまうのだ。
そんな儚く、哀れな陰茎達が愛おしい。
「さあ…次は、どの子を選んであげようかしら…」
どの男の子も魅力的で、迷ってしまう。
私の視線が誰に留まるかで、その男の子の運命が決まるのだ。
そう考えると、胸がときめいた。
そして、一人の男の子に視線が留まる。
いつも、女教師モノのAVを選択している、堂坂絢都くん。
とても可愛らしい顔立ちで、あやかのお気に入りだが、譲ってもらおう。
ベッドに仰向けになりながら、綺麗な顔を歪め、乳首を弄り、長く立派な陰茎を、情熱的に愛する姿がとても扇情的だ。
精々楽しんで、気持ちよくなりなさい。
これがあなたの、人生最期のオナニーなのだから…。
絢都は、これが最期だなどと露にも思わず、その長く、雄雄しい陰茎から、白濁した大量の花火を打ち上げた。
私は自分の手で切り落とす、若い陰茎の最期の輝きを看取り、絶頂した。
堂坂絢都は、衣類を全て脱ぐよう命じられ、全裸で通路を歩かされている。
股間にぶら下がった長い陰茎が、足を踏み出す度、左右に情けなく揺れる。
絢都の前を歩く、二人の女性職員が、チラチラとその様子を盗み見ている。
絢都は、自身の長すぎる陰茎が、コンプレックスだった。
平常時であっても、ズボンが盛り上り、勃起を疑われてしまう。
よく、クラスメイトにからかわれた。
授業中に勃起してしまうと、大変だった。
狭すぎる空間に膨張する余地が無く、ポジションも変えられず、痛みに耐える辛い時間を過ごす。
そんな恥ずかしい場所をチラチラと見られ、絢都は顔を赤らめる。
職員達が大きな扉の前で止まり、一人が端末に手を翳した。
生体認証により扉が開く。
広い部屋の中には、様々な医療器具、手術台、モニター等が並び、その中央には、学校の教室で使われる椅子が一つ、そして、それと向かい合う様に教卓が置かれていた。
その教卓の横に、胸元を大きく開けたシャツ、丈の短いダークカラーのタイトスカートを身に着けた、美しい女性が立っていた。手には指示棒を持っている。
まるで女教師の様な風体だ。
絢都は驚く。
よく見るとその女性は、国家育成庁長官、上月凜だった。
彼女はその美貌ゆえに、多くの国民からかなりの人気がある。
絢都も例に漏れず、彼女の人気を支持する者の一人であった。
凜は、戸惑った様子の絢都の顔を、まじまじと見つめた。
大きく、純粋そうな瞳が、とても可愛らしい。
そして、その視線が、徐々に下がり、彼の恥部で静止する。
そこには、そんな彼に、不釣合いな陰茎がぶら下がっていた。
勃起している時も思ったが、平常時でもかなり長い。とても立派だ。
これから憂き目にあう、その陰茎を、凜は情熱的な目で見つめた。
絢都は、コンプレックスを持つ恥部に、またしても熱い視線を感じ、顔が真っ赤に染まる。
彼は手で隠そうとしたが、長い陰茎は手に収まりきらず、指の先からしっかりと、亀頭がこんにちわしている。
「ふふふ、初めまして、堂坂絢都くん。」
「あっ、は、はいっ。初めまして、上月…凜…さん」
「あら、私の事を知ってくれているのね。嬉しいわ…」
にこっと微笑む表情がとても優美で、絢都は見取れてしまった。
「さて、何故あなたが此処へ連れて来られたのか、気になるでしょう?
この施設で生活する生徒達は、日々、異性との接触と、性的欲求を抑圧されて、満たされない毎日を過ごしているわ。
…これは、あなた達に課せられた罰」
凜は語りながら、絢都へと、ゆっくりと歩を進める。
「…だけど、過ぎた抑圧は、活力を奪い、心を蝕み、やがては歪を生む危険性もある。
よって私達は、日々を正しく生きる優秀な生徒に対して、ご褒美を与える事にしているの」
凜が、絢都のすぐ目の前で静止する。
元々の長身にヒールの高さが加わり、絢都の視界に、胸の谷間が大きく飛び込む。
「……ご、ご褒…美…?」
「……そう、ご褒美よ……。
今から私が、あなたに特別授業を行います。
もし、あなたが私の授業を、正しく、真摯に、清らかな心で、最後まで受ける事が出来たなら……」
凜の指先が、絢都の頬に触れる。
「私と、…セックスをさせてあげましょう」
絢都の心臓が激しく高鳴った。
…セックス…本当…に?上月凜さんと、セックス…。
自分は、生殖の権利を剥奪された。もう、永遠に出来ないと思っていた性行為。
…それを、憧れの上月凜さんと…。
想像した絢都の陰茎に、急速に血液が集まり、垂れ下がった長い陰茎の先が、徐々に起き上がり始めている。
凜は、絢都の陰茎の変化に気付き、注意する。
「ふふふ、絢都くん。言ったでしょう。正しく、真摯に、『清らかな心で』、と。
いやらしい事を考えて、ペニスを勃起させては駄目よ。
…少し、時間をあげるから、落ち着かせなさい」
「うあっ、す、すみません…」
絢都は深呼吸を繰り返し、何とか勃起を抑えることに成功した。
「もし、授業が終わるまで勃起しなければ、あなたは、私とセックスできる…。
しかし、もし途中で勃起してしまった場合には、あなたに罰を与えます。
…準備はいいかしら?」
「……はい」
絢都は、不安そうな面持ちで頷いた。
「それでは、席に着きなさい」
言われて、絢都は椅子に腰を下ろす。
「では、今から保健体育の授業を始めます。今日の授業は…女性の…身体と、性交渉について。
絢都くんには特別に、…先生の身体を…つ、使って、…レクチャーして、あげるわね…」
凜の身体が羞恥で熱くなる。
女教師の格好をして、淫らな性教育を始めようとしている自分を、ふと、客観的に捉えてしまい、急速に恥ずかしさが込み上げてきたのだ。
自分は、一体何を言っているのだろう…。恥ずかしい…。
凜に若干、後悔の念が込み上げる。
「そ、それでは…、まず。…えっと、…胸の、乳房の説明から、し、していくわね…」
絢都は、冷徹で、威厳を感じさせる凜の、恥ずかしげな仕草によるギャップが、とても魅力的に感じた。
それだけで、危うく陰茎が反応しそうになる。
傍から見ているあやかが、口元を押さえ、必死に笑いを堪えている。
うう…、駄目だ…。
イメージしていた通りにいかない。
教師は生徒を導く立場だ。自信を持ち、父のように、威厳のある態度で振舞わねばならない。
「んんっ!」
凜は軽く咳払いをし、羞恥心を振り払った。
凜は教卓へと腰掛け、シャツのボタンを外していく。
白い両の肩と、フロントホックの黒いブラが露わになる。
絢都はごくりと唾を飲み込んだ。
細く美しい指により、ブラが静かに外される。
そこから現れた魅惑の景色が、絢都の目を奪った。
形の整った、美しい二つの乳房に、薄桃色の乳首が、ピンと立っている。
絢都は、陰茎が反応せぬよう、歯を食いしばり、必死に耐える。
「絢都くん、これが大人の女性の乳房よ。実際に見るのは初めてでしょう?
どう……かしら?」
「…う…あ?…あっ、すごく綺麗で、素敵だと思います…」
絢都は、耐える事に必死で、返答が遅れてしまった。
「ふふっ、ありがとう。その反応だと、嘘じゃないみたいね」
凜は教卓の上に置いてた指示棒を手に取り、その先端を乳首に押し当てた。
「んっ…。ここが、乳頭よ。一般的には乳首と呼ばれているわね…。
赤ちゃんがお乳を吸う為の場所だけど、性交渉においても、女性の性感を高める為の、大切な場所なの」
凜は自分の指で、乳首を優しく押し、刺激する。
「あ…、んんっ…、乳首は繊細で敏感な場所だから、こんな風に…、優しく刺激するのよ…。摘んだり…すると、人によっては痛みを感じる場合もあるから、気を付けて扱うように…。
舐めるのも、…とても効果的よ…」
絢都は苦しい表情を浮かべ、身体からは、汗が滲み出ている、。
「さあ、次は…、女性の、一番大切な場所よ…」
凜はショーツに指を掛け、長く美しい足から、ゆっくりと脱ぎ下ろしていく。
ショーツが絢都の足元へと落ちる。
落ちたショーツの中央には、縦に楕円形の染みが広がっていた。
絢都の心臓が脈打ち、呼吸が荒くなる。
大きな期待と、それを上回る恐怖で、拳が強く握り締められる。
凜は、上体を後ろに倒し、両の脚を、絢都の目の前で、大きく広げて見せた。
すごく、恥ずかしい…。
凜は、権力を手にする為、これまで多くの男の前で、股を広げてきた。
しかし、これまで羞恥心を感じた事など、一度もなかった。
だが、彼は違う。
奴等とは、全く持って別の生き物だ。
自分より一回りも若く、可愛らしく、女を知らぬ無垢な少年。
私服を肥やす、醜悪な豚共とは訳が違う。
彼の情熱的な視線が、恥部へと注がれている。
…身体が、熱い…。
絢都は、その、あまりにも強烈過ぎる光景に、歯を食いしばり、苦悩の表情を浮かべていた。
そこには、憧れの上月凜の、成熟した女性の秘部が、惜し気もなく晒されている。
絢都は全身に力を込め、男の性の反応に、全力で抗う。
このままではまずいと、その場所から、目を背ける。
「ん…絢都くん、ちゃんと…見なきゃ駄目よ。…授業を、『正しく、真摯に』…。そう言った筈よ…」
凜の言葉に、絢都は、はっとする。
そして、勇気を振り絞り、震える拳を握り締め、もう一度、その場所へと立ち向かう。
しかし…。再び視界に収めた瞬間。
(あ…、あ…、もう…、もう…、)
彼の陰茎は、限界を迎えてしまう。
(いやだ、…いやだ…)
陰茎が、ピクン、ピクン、と、小さく脈打ちながら、少しずつ、起き上がっていく。
(凜さんと…、凜さんと…。セックス…したいっ…!)
血管が浮き出し、角度が水平を越え、なお、持ち上がっていく。
もう、彼には止められなかった。
(したい!したいっ!うああああ……!)
彼の陰茎は、本人の意思に反し、大きく膨張し、直立し、凜の女性器に対する、性の悦びを表現してしまった。
最早、言い逃れは出来ない。
絢都の陰茎は、誰がどう見ても、完全に勃起している。
凜は、自身の身体に反応した陰茎に対し、愛おしさを覚えた。
そして、同時にほっとした。
無垢な少年にとって、自分の穢れた性器は、醜悪に映ってしまうのではないかと心配していたのだ。
勃起してしまった彼は、目に涙を浮かべながら、懇願の表情を向けてくる。
その子犬の様な表情に、凜は、ときめいた。
そんなに…、私と…、したかったのね…。
「ふふっ…、絢都くん…。勃起…しちゃったわね…」
「…すみま…せんっ…。僕っ、僕…もうっ…」
絢都の目から涙が零れた。
そんな絢都に、凜が優しく声を掛ける。
「…絢都くん、立ちなさい。まだ授業は終わってないわ…」
絢都は両手で涙を拭いながら、ゆっくりと立ち上がった。
「絢都くん。先生のここを、舐めて…、気持ちよく…して?」
その言葉に、絢都は目を開き、顔を上げる。
許されたの…だろうか…?分らない…。
…でも…舐めていい。
目の前にある、蜜溢れる、魅惑の場所を…。
絢都の長い陰茎が、ピクンと揺れる。
絢都は吸い寄せられるように、顔を秘所へと近づけた。
初めて嗅ぐ、女性の性の香り。絢都はその魅惑の香りを、目一杯、鼻から吸い込む。
言いつけを破り、既に勃起してしまった陰茎は、最早、抑圧から解き放たれている。
自由を手にした喜びに、彼のそこは大きく脈動した。
そして、凜の、濡れそぼった熱い秘所を、舐め上げた。
「ひゃんっ!?」
凜は、その快感に、まるで少女の様な可愛らしい悲鳴を上げた。
自身から発せられた、思いがけぬ声に、凜の顔が真っ赤に染まる。
絢都はその可憐な声に、胸をときめかせ、もっと聞きたいと、激しく舐めまわした。
「っ…!?ひぅっ!あっ…!ああっ!あんっ、やっ…」
かつて、教師を夢見ていた自分が、生徒の目の前で淫らに脚を開き、己の恥部を舐めさせ、喘いでいる。
この姿を、父が見たら、どう思うだろう。
凜は、背徳感で、身を振るわせる。
秘所から、愛液が次々と溢れ出る。
初めて味わう女性の味。その魅力的な蜜を、絢都は無我夢中で味わった。
「ひぅぅっ!?やっ、やっ、待って…!待って!待ってってば…はあっ!んあっ!あっあっあっ…」
大量に溢れ出す蜜を、絢都は美味しそうに、ごくごくと喉の奥へと送り込んでいく。
はち切れそうな程膨張した絢都の陰茎が、悦びに打ち震えた。
熱い秘所への、情熱的な愛に、凜の快感が絶頂へと導かれていく。
「あっあっあっあっ!やっ!もうっ!もうっ!!…いくっいくっいくっ、いくいくっ!あっ…あっ…、ああああああああっ!!」
凜は絶頂と共に、激しく潮を吹いた。
「んんんっ!!?」
絢都の口内に、凜の、大量の潮が、勢いよく吹き出してきた。
一瞬で頬が膨らみ、口から溢れ出そうになる。
絢都は、次から次へと吹き出してくるそれを、懸命に飲み込み続けた。
潮吹きは、長く、長く、続いた。
しかし、絢都は驚く事に、その神秘の水を、一滴も溢すことなく、全て飲み干した。
「…っはあっ…はあ…!」
凄まじい興奮に、亀頭の先からは、先走り汁が溢れ出ていた。
凜は体制を維持できず、教卓の上に、横向きに倒れ込んでいる。
肩で呼吸しながら、身体がビクビクと、激しく痙攣している。
絢都は、自身の呼吸が落ち着いた後も、しばらくその様子を見守っていた。
しかし、いつまで経っても動かぬ凜が心配になり、声を掛ける。
「…あ、あの、り…、先生…。大丈夫…、ですか…?」
その声に、凜がむくっと起き上がる。
頬を膨らませ、ジト目で絢都を睨み付けた。
「待ってって…、言ったでしょ…」
「あ…、す、すみません…」
「もう…。駄目よ?…ちゃんと言うことを聞かないと。
…個人差はあると思うけど、女性の快感は、男性の10倍と言われているの。
絶頂すると、身体の自由が利かなくなる事もある。
教卓の上で、バランスを崩したら、…危ないでしょう?」
絢都は、叱られてしまい、申し訳無さそうに項垂れる。
「…だけど、気持ちよかったわよ。ありがとう…」
凜は、絢都の頬に両手を添え、キスをした。
「ん…」
絢都の唇をこじ開け、舌を挿入させる。
舌と舌が、触れ合い、絢都の反り勃った陰茎が、ヒクヒクと揺れる。
そして、お互いに、激しく舌を絡ませあい、愛し合った。
絢都の表情がとろける。
絢都は、硬く反り勃った陰茎を、凜の太ももへと、ぎゅっと押し付けた。
押し付けられたそれに、凜が熱い吐息を漏らす。
こんなに硬くして…、期待しているのね…。
絢都は、あまりの気持ちよさに、陰茎を押し付けたまま、艶かしく腰を上下に動かした。
まるで猫の、愛情表現の様な動きに、凜の愛欲が高まっていく。
「あん…。…さて、そろそろ、ベッドに行きましょう…」
凜が、女性職員達に合図する。
凜と絢都の元に、高水準の機能を搭載した手術台が届けられた。
「…さあ、ここに仰向けになりなさい…」
明らかにベッドではなかったが、恐らくこの部屋に、代わりになる物がこれしかなかったのだろうと、絢都は特に疑問に思わず、素直に従った。
手術台に横になると、女性職員達が、絢都の両手足をベルトで固定し、手足を大きく開脚させた。
「あっ、えっ…?あのっ、どうして、縛るんですか…?」
「絢都くん…。人には様々な性的フェチズムが存在するの。軽いものから、人には言えないものまで…。
縛る、という行為は、その中でも比較的軽いものよ。
もしあなたのパートナーが、特殊なフェチを持っていたなら、それを尊重し、受け止めてあげる事も、セックスに於いては大切な事なの。
これは、それに馴れる為の、練習と思いなさい…」
凜が少し意地悪な笑みを浮かべる。
「…それに、あなたにもあるでしょう?…そういう性的な嗜好が…」
絢都は、少しぞくっとした。
もしかして、知っていたのだろうか…。自分が、女教師が好きだという事を。
「…絢都くんが、先生の事をたくさん気持ちよくしてくれたから、今度は先生が、あなたの事を気持ちよくしてあげる番ね…」
凜は、絢都の開かれた脚の間に移動し、局部へと顔を近づける。
「セックスは、一方的にではなく、お互いに高め合う事も大事なの。自分がされて嬉しい事を、相手にもしてあげる…。そうする事で、愛や絆が、より深まっていくの…」
まず、ぶら下がっている陰嚢を口に含んだ。
そして中の睾丸を、優しく、優しく、口の中で転がす。
「ふああっ…」
可愛いらしい反応をしばらく楽しみ、視線を陰茎へと移す。
彼の勃起した陰茎は、とてつもなく長かった。
「…絢都くん…。とっても立派よ…」
「…すみません…、長くて…。気持ち…悪いですよね…?」
「ふふ、そんな事ないわ…。もしかすると、中には怖いと思ってしまう女性もいるかもしれないけれど、先生は短いよりも、長い方が、ずっと素敵だと思うわよ」
…本当に。この立派なものを「使う時」が、今から楽しみだ…。
「ほ、…ほんとですか?…僕、…自分のが、長すぎて、ずっと嫌いだったんです…」
「そうだったのね…。でも大丈夫よ。何も気にすることはないわ」
そう、何も気にしなくていい。これから、あなたの嫌いな長いペニスはとても短くなる。
自慰も、性行為も、不可能になる程に。
凜は、張りのある亀頭を口に咥え込む。溢れ出していた先走り汁の塩味が、口内に広がった。
凜は、口の中で亀頭全体を、淫らに舐めまわした。
「うあああっ…!」
初めて味わうのフェラの快感に、絢都が身体を悶えさせている。
その姿が、とても愛おしい。
しかし、凜の、絢都に対するその愛は、歪んでいる。
まるで肉食獣が、捕食対象の小動物に抱くような、歪な愛。
私は彼に、何をしても許される。
彼に対する、どんな残虐非道な行いも、私には許されるのだ。
例えばこの、快感に喘ぐ敏感な亀頭に、突如、歯を突き立て、食い千切ったとしても、何も問題はない。
今この瞬間、彼の二つの大切な、命を産む卵を、思いっきり握り潰す事だって、できるのだ。
私はその力を、権力を、血の滲む努力と、執念の果てに掴み取った。
私には、その力を行使する権利がある。
愛液が、ぽたぽたと、滴り落ちる。
私の気分次第で、…この愛らしい生き物に、どんな可哀想な事だって、…できる…。
息が、荒くなる。心臓が、激しく高鳴る。
いよいよだ…。初めて…、私自身の手で…。
「あっあっあっ!せっ先生っ…!もうっ…、もうっ…出そうです…!」
小動物が、可愛い声を上げ、限界を訴える。
凜は陰茎から口を離した。
「…十分に快感が、高まったようね…。
…お互いに準備が整ったら、次は、いよいよセックスよ…。勃起したペニスを…女性の膣の中へと挿入するの…」
セックス。その言葉に、絢都の心臓が高鳴る。
上月凜さんと…セックス…。陰茎が、期待し、鈴口から涎を垂らす。
…しかし。
「以上で、保健体育の授業は終了よ…。絢都くん、…お疲れ様」
………え………?
絢都の思考が停止する。
「では、授業の前に言ったように、ペニスを勃起させたあなたには、罰を受けて貰います…」
絢都は、放心しながら、凜の言葉を聞いている。
「罰の内容は…、ペニスの切断よ…」
「…っ!?」
絢都が目を見開く。
「え…、嘘…、ですよね…?」
「…いいえ、残念だけれど、本当よ。嘘じゃないわ」
凜が、職員達に合図を送る。
職員によって口を広げられ、医療用のマウスピースが装着される。
勃起したままの陰茎の根元に強度の高い縫合糸が、ぐるぐると強く巻き付けられ、止血される。
「ううっ…!」
凜の手が、冷たい銀色の医療器具をそっと持ち上げ、うっとりと目を細め、眺めている。
冗談だと思った。しかし状況が、どんどん現実味を帯びてくる。
背筋が凍りついていく。
「男性がペニスを失うことは、その後の人生において、極めて重大な意味を持つわ…。
あなたは陰茎から得られる悦びを、もう二度と味わえなくなる。
愛する人と交わる幸せを、永遠に知る事が出来なくなる。
自慰行為、性行為、今までの様に立ちながらの排尿が、不可能な人生になるわ…。
それによる、精神的な苦痛は計り知れない。
ペニスを失っても、楽しいことは幾らでもある、幸せは見つけられる、だなんて、そんなものは唯の綺麗事よ…。
あなたも、失えば解ると思うわ。
ペニスは…男性にとっての、全てなの。
とっても……辛いわよ」
絢都は、その恐ろしい言葉に全身が震え上がる。声を発そうとしたが、呼吸すら上手くいかない。
目に涙が滲み、身体から汗が噴出す。
凜は、メスを置き、代わりに局所麻酔薬を含む注射器を手に取った。
それを陰茎の根元へと近付ける。
「凜ちゃん…、ごめん…。ちょっといいかなぁ…?」
一人の綺麗な女性職員が、おずおずと、割り込んできた。
もしかして、この人は、自分を助けてくれるのだろうか。
絢都は、縋る様な目で、その女性を見た。
「ほんっっっとに、ごめんなんだけど、麻酔の前にちょっとだけ…!ほんのちょっとだけでいいから、味見してもいいかなっ…?どうしても…、我慢できないのぉ…!」
あやかは両手を合わせて、必死に、凜にお願いする。
凜は額に手を当て、大きく溜め息を吐いた。
折角いい所だったのに、この子は…。
けれど元々、絢都は、あやかのお気に入りだ。文句一つ言わず、私に譲ってくれたのだ。
それぐらいは良しとしよう。
「もうっ…、しょうがないわね。…いいわよ。するなら早くしなさい」
「やったぁ!ありがとう♪」
あやかは、会話の成り行きを祈るように聞いていた絢都に振り向く。
「あはっ。…あーやとくんっ。キミの、えっちなおちんちん…。お姉さんにも味見させてねぇ…?」
「あのっ!あのっ!!お願いしますっ!!どうかっ!助けてくださいっ…!お願いです……」
「あははっ、…今のキミ、すっごく可愛い…。…そんなに、泣かないで…」
あやかは、絢都の顔にぐいっと近付き、頬に伝う涙を、べろんと舐め上げた。
「はあぁ…、可愛い男の子の涙って…、ほんとに美味しいな…」
絢都は、冷たい印象の凜とは対象的な、あやかの優しい声と、柔らかな香りに、ほんの僅か、心が安らいだ。
そんな絢都の口を、突然あやかの唇が塞ぐ。
舌が進入し、猛烈な勢いで歯を、歯茎を、舌を、口内の至る場所を蹂躙される。
豊満な、二つの柔らかな膨らみが、ぎゅっと身体に押し付けられる。
「んんっ!?」
あやかに延々と口内を犯され続け、絢都の呼吸が苦しくなる。
口を塞がれている絢都は、あやかの荒い鼻息を、目一杯、鼻から吸い込む。
止血され、充血した陰茎が、激しく興奮し、何度も跳ねまくる。
恍惚の表情を浮かべる絢都から、あやかは顔を離した。
そして今度は、絢都の股の間へと移動し、そこへ顔を埋め、陰嚢の匂いを嗅ぐ。
「あ…うーん…。殆ど、凜ちゃんの唾液の臭いだなぁ…。…嫌いじゃないけど、ざーんねん…」
「ちょ、ちょっと…!失礼なこと、言わないでっ」
凜が顔を赤くする。
「さぁて…キミのおちんちん…、お姉さんにも、…食べさせてねぇ?」
あやかは大きく口を開け、絢都の立派な陰茎にしゃぶりついた。
激しく音を立てて、長い陰茎を亀頭の先から根元まで、余す事無く舐め上げていく。
「ふああっ…!」
絢都の、股間に存在する、男性の特徴の全てを、秘所を激しく愛撫しながら、味わい尽くしていく。
それは、凜とは比較に為らぬ程に、激しく、情熱的だった。
巧みな舌使いによる、凄まじい快感に、恐怖に怯えていた陰茎が、再び絶頂へと押し上げられていく。
「んあああっ!!出るっ…」
そして、その直前で、唾液の糸を引きながら、あやかの顔が股間から離れた。
「んはぁっ…!はぁ…はぁ…。…すっごく、美味しかったよ…」
絶頂に達せなかった陰茎が、絢都を残酷に悶えさせる。
息を整えたあやかが、淫らに陰茎をヒクつかせ、苦しむ絢都に優しい表情で語りかける。
「…ごめんねぇ。お姉さん、キミのおちんちん、助けてあげられないよ…。
だって、お姉さん、男の子のおちんちんが無くなっちゃうの、大好きなんだ…。
でも…、きっと大丈夫。
キミよりずっと小さい、たっっっくさんの男の子達が、お姉さんに、おちんちん切られちゃったんだよ…?
…それでもみんな、つらくても、必死に戦ってるの…。
キミは、その子達よりもお兄さんなんだから…、みんなのお手本になれるように、ちゃんと頑張って、生きていかなきゃダメだよぉ…?」
あやかは最期に、絢都の亀頭に、お別れのキスをして、彼から離れていった。
彼女から、自分に対する強い愛を感じた絢都は、救いを期待していた。、
しかし、彼女は、助けてはくれなかった。
そんな取り残された絢都に、凜が、終焉を告げる。
「…さあ、最期のお楽しみも終わったようだし…、そろそろお別れにしましょう」
冷たい凜の言葉が、ほんの僅かに希望を抱いていた絢都に、再び絶望を与える。
絢都は悲痛な表情で、首を何度も横に振る。
凜は、氷の様に冷たい表情で ペニスを見つめた。
この様な状況であっても、絢都のペニスは、未だにはしたなく脈打っている。
自分よりも、遥かに情熱的に、より巧みに愛された陰茎は、まるで興奮した犬の尻尾の様に、品が無く、判り易く、悦びの感情を露わにしていた。
先程まで激しく私を求めて、私の為だけに興奮し、振られていた尻尾。
それを簡単に、他の女に靡かせた。
天使の様に可愛いらしく、純粋そうな顔をしていても、人間の男の性とは、常に欲望や利己心に満ち、穢れている。
生まれながらにして、その本質は「悪」なのだ。
だからこそ、男は獣のように、平気で女を犯す。そして私を陵辱したのだ。
あれ程、愛おしく感じていた陰茎に対し、黒く冷たい感情が込み上げてくる。
私は手にしていた局所麻酔薬を、ステンレス製のトレイへと、そっと戻した。
あやかの寵愛により、彼の運命は、より過酷で、残酷なものとなってしまった。
「随分と、気持ちよさそうだったけど、残念ね…。射精できなくて…」
私は、メスを手に取り、その背で、長い陰茎を撫で上げる。
「射精したくて、堪らないでしょう…。
だけど、あなたはそのもどかしさを、生涯抱えながら生きていくのよ。
先生が絢都くんを、永遠に射精が出来ない、とっても辛い身体に、してあげるわね…」
「い、いや…です…、やめて、やめて…!ど、どうして…、何で…こんな酷い事を…」
「…何故、先生がこんな酷い事をするのかというと…、これが先生の持つ、性的フェチズムだからよ。
男性を苦しませて、絶望させる事が…先生の生き甲斐なの。
…だから、あなたがいくら泣き叫んで、必死に許しを請うても、ただ、私を悦ばせるだけ…。
もう、あなたは助からない」
涙を流しながら、絢都は必死に懇願した。
「やめて下さいっ!!やめてっ…!お願いしますっ…!!それだけはっ…!それだけはやめてぇっ!!お願いっ…します!」
助かる為に、必死に叫び、藻掻き、絶望に抗おうとする絢都の姿。
かつての自分の姿が、そこにあった。
男の力に組み伏せられ、絶望的な状況を成す術なく、嗚咽を上げながら、見ていることしか出来なかった自分。
助けを求めても、誰も助けてくれない。男に蹂躙されるだけの、か弱い自分。
愉悦が込み上げる。
今の私は、立場を逆転させ、権力という圧倒的な力で、男を組み伏せ、大切な場所を摘み取ろうとしているのだ。
メスを、陰茎の根元に当てる。
「あっ!…いやだ…。いやだぁ…!」
「…絢都くん。覚悟はいい?陰茎は大切な器官だから、神経がたくさん集中しているの。
麻酔をしていないから、それはもう……地獄よ。
…男なら、耐えなさい」
「あっ………!!」
直後、室内に絶叫が鳴り響く。
メスが進入し、ピピっと鮮血が飛び散る。
絢都の身体が、獣のように暴れまくる。しかし拘束は決して外れない。
私は、その様子に、冷笑を浮かべながら、メスを進入させていく。
あえて苦痛が長引くように、ゆっくり、ゆっくりと、刃を往復させる。
溢れ出た愛液が、脚を伝う。
耳を劈く絶叫と、涙、鼻水、唾液を撒き散らしながら、惨たらしく苦しみ藻掻く姿が、私の快感を頂へと押し上げていく。呼吸が浅く、早くなる。
私がメスを、ほんの少し、悪戯に動かすだけで、彼に地獄の苦しみを与え、彼の喉は素敵な音色を奏でるのだ。
凄まじい興奮と、快感が込み上げてくる。
熱い身体に汗が噴き出し、快楽で、手元が狂いそうになる。呼吸が、異常な程激しくなる。
頭が、おかしくなりそうだ。
私との交わりに夢をを馳せていた陰茎。私の太ももに熱く押し付けられ、愛を懇願していた陰茎。
その陰茎は大部分を切り裂かれ、血を流し、最早、風前の灯火となっている。
嗚呼…。お父さん…。私は…、凜は、凜は…、悪い…子です…。
そして私は、凄惨な光景の末、ついに、男の命とも言えるその場所を、この手で摘み取った。
かつて無い絶頂に、私は襲われた。
私は壊れてしまったのだろうか。
身体の感覚がおかしい。手足が痺れ、痙攣する。
自分の呼吸の音が、やけに大きく響く。
視界が真っ白だ。
その白い世界に、父の姿が現れる。
優しく、威厳のある、私が敬愛した、父の姿。
父の表情は、とても悲しそうで、その眼差しからは、私に対する失望の念が感じられた。
私は恐れた。
父は、私から目を逸らし、何も告げず、立ち去ろうとする。
もう…叱る事すら、してもらえない。
いやだ…。いやだ…。
叱って欲しい。
私が間違った行いをすれば、決して父は許さなかった。
私の為に、厳しく叱ってくれた。
行かないで…!
もう一度、叱って欲しい…。
幼かった、あの頃のように、もう一度、私を叱って欲しい。
私は、必死に、父の背中を追い、手を伸ばそうとする。
倒れそうになる私の身体を、あやかが優しく受け止めてくれた。
「…凜ちゃん。…気持ち…、良かったぁ…?」
「おね…がい…。おしり…、おしり……たたいて…」
「へ?…おし、お尻?何で?」
「…おねがいっ、たたいてっ…!…おもいっきり、おねがいっ…!」
あやかは、突然の、思いがけぬ凜の懇願に困惑したが、すぐに優しい表情を浮かべた。
「…うん、…いいよぉ…」
あやかは、凜の透き通るように白い臀部に向かって、大きく掲げた掌を、思いっきり振り下ろした。
乾いた大きな音が、室内の静寂に響き渡り、赤みを帯びた余韻が 柔らかな白い丘に咲いた。
私の意識が現実へと戻る。
…気持ち…いい…。
「あ…あやか…わたし、はじめてペニスを…」
私は大事に握り締めていた、血塗れたペニスを、震える手で、あやかに差し出す。
「…凜ちゃん、違うよ。ペニスじゃなくて、…おちんちん…、だよ?」
あやかが意地悪な事を言う。
私はペニスの事を、おちんちん、と呼ぶ事に抵抗があった。
その響きが、どこか下品で、卑猥に感じていまい、口にするのが恥ずかしいのだ。
でも…、何故か今は、そう、口にしたくなってしまった。
「…お、…おちん…ちん…」
直後、全身から力が抜け、私は、あやかに全体重を預けた。
「おっとと…!ちょっと、大丈夫っ?」
あやかが、「あ、これ過呼吸だ」と、呟くのと同時に、私は意識を手放した。
凜自身の手による、初めての陰茎の切断は、彼女の人生において、最大最高の快楽をもたらし、輝かしく幕を閉じた。
手術台の上で、男の意識が目覚める。
まず視界に映ったものは、見慣れぬ、白く無機質な天井。
天井灯が規則的に並び、冷たい光を放っている。
どこか病院のようでいて、しかし、何かが違う。
瞬きを試みようとするが、瞼さえ重く、自由が効かない。
わずかに眼球を動かして視界を流す。視界の端に見えるのは、銀色の器具、ステンレス製のトレイ、無機質な壁、天井から吊るされた無数のコード。
(…どこやねん、ここ…)
身体を動かそうと意識を送る。
しかし、腕も足も、首さえも動かない。まるで全身が粘土で固められたように、言う事を聞かない。
否。
視線を下げ、自分の身体を確認すると、全身がベルトで完全に固定されている。
しかも、全裸だ。
(おいおい…、どないなっとんねん。裸やないか。…うおっ!シモの毛ぇも、剃られとるやんけ!
何やねんこれ、おい!)
ふと、視界の外から、人の気配を感じた。
それも一人ではない。騒がしい。結構な数の人間がいるようだ。
声を発そうとするが、それも叶わない。猿轡の様な物を嵌められている。
あまりにも異常な状況に、呼吸が浅くなる。
(何が起きたんや? 俺はどうしてここにおんねん? 最後、何しよったっけ……何やった…?)
記憶の奥を探ろうとするが、霧がかったように曖昧だ。はっきりしているのは、自分がこの場所に自らの意思で来たのではない、ということだけ。
冷たい汗が、こめかみを伝う。
(ムショ出てからは、何もしとらんぞ…。パチンコ打って、…台パンはしょっちゅうしよったけど…。
…そや…!新台打って、700回転ハマって、やっと入った思たら、93%の継続率、初っ端で落としくさって…!くっそはがいましいわぁ…!!
…いや、そないな事、思っとる場合ちゃうやろ…。……これは、ほんまにあかんやつや…)
頭上から、扉が開き、何者かが入ってくる気配がする。
騒がしかった室内が、急に静寂に包まれた。
コツ、コツ、と、響く足音が、自分の元へと近付いてくる。
(…誰やねん、一体…)
足音が止まり、男の視界の中に、女が映り込む。
「お久しぶりね…。十三年ぶりかしら」
男の目が見開かれ、心拍が上昇する。美しい容姿に、銀灰の髪。間違いない。
十三年前、自分が陵辱した女、上月凜がそこにいた。
「長い刑務所暮らしを終えたばかりなのに、申し訳ないわね。こんな所まで来てもらって…。
…ずっと、会いたかったのよ?」
凜は、両手に医療用手袋を着用し、ステンレス製のトレイから、そっとメスを手に取る。
その光沢を放つ銀色の器具に、男の心拍が上昇した。
「もう察しが付いてると思うけど…。これからお前の身に起こる事は、とても痛ましく、惨たらしいものよ。
…一言で言いましょうか。」
凜は、強い憎しみを込め、男の睾丸を全力で握り締めた。
男が目を見開き、完全に固定された身体で、激しく暴れる。
凜は、強く力を込めたまま、ぐりぐりと睾丸を弄び、冷たく歪んだ笑みで言い放った。
「去勢よっ…!!」
凜は、投げ捨てるように睾丸を開放した。
男は睾丸に残る凄まじい苦しみに、脂汗を滲ませながら、苦悶の表情を浮かべ、激しく悶えている。
「…具体的に言うと、まず最初に、この汚らわしい陰茎を切り落とす…!」
凜は冷たいメスの背を男の陰茎に押し当て、往復させる。
「安心しなさい。いきなり根元から切ったりはしない。先の方から、根元へかけて、とても短い間隔で、薄く薄く、輪切りにしてあげる。当然麻酔は無しよ。
意識を失ったら、中断し、戻ったら再開する。陰茎が完全に無くなるまでそれを繰り返す。
どう?素敵でしょう」
男の全身が粟立ち、汗が噴き出す。拘束を解こうと、全力でもがいている。
凜はメスをトレイに戻し、今度は医療用のペンチを手に取った。
「次に、この無価値な、腐った睾丸を圧し潰す。これも簡単には潰さない。
このペンチでじわじわと、ゆっくり、長い時間を掛けて、一つずつ潰していく。
これに関しては、最悪、激痛で死ぬ可能性もある。
けど、安心しなさい。
此処には、優秀な医療技師と最新鋭の医療機器が備わっている。
絶対に、死なせはしない。
私が…満足するまでは……!」
凜は、握り締めた拳を震わせる。
最早、自分の力では、どうすることも出来ないと悟った男は、懇願の眼差しで、凜に、慈悲を求める。
もし口枷が無ければ、耳障りな醜悪な声と、下劣な言葉遣いで、自分が悪かった、もう二度としない、これからは真っ当に生きる、だなどと抜かしていただろう。
この男には口を開く権利も与えない。耳を汚したくない。
凜は強く握り締めた拳を、男の睾丸目掛けて、無慈悲に振り下ろし、叩きつけた。
まだ苦痛の残る睾丸への更なる一撃に、男は狂ったように悶絶する。
追い討ちをかけ、更に叩きつける。
潰れてしまわぬ様に、何度も何度も叩きつける。
それに対して、男は面白いように何度でも、凜の望む反応を返す。
「ははははははっ!」
男の滑稽な姿に、愉悦が込み上げ、凜の下腹部が熱を持つ。
…最高だ…!
私は、ある意味、この男を愛しているのかもしれない。
かつての私なら、吐き気を催したであろう思考。
しかし、私は、復讐の為に生きてきた。
十三年もの間、想い続けてきた。
ずっとこの日を。この手で復讐を果たす日を。
この復讐心が、私に歪な快楽を与え、権力を与え、欲望のままに蹂躙する力を与えてくれた。
今のこの私を創ったのだ。
この男にだけは、一切の罪悪感を感じる事無く、私の黒い感情の全てを、力を、ありのままにぶつけられる。
ありがとう…。
凜は男に告げた。
「さあ…始めましょうか。去勢の時間を…!」
その凄惨を極めた去勢は、実に、9時間に及んだ。
陰茎を、当時の凜の年齢に合わせ、15分割し、両の睾丸を完全に磨り潰し、男を絶命させた。
全てが終わった後、凜は、あの日の夜以来、初めて涙を流した。
その涙がどこから来るものなのか、凜自身にも解らなかった。
凜は、十三年越しの復讐に、決着を付けた。
神谷日向は、凜の、一番のお気に入りだった。
容姿端整で、成績優秀。周りの人間から「未来の種」だなどと呼ばれ、期待されている。
ここまで本当に、長い長い時間が掛かった。
凜が、当初思い描いていた、制度による屈辱的な剥奪措置。
男の象徴である陰茎を、衆人環視の中で、切断する。
凜は、その栄えある一人目の犠牲者を、彼にする事を決めていた。
優秀で、未来ある、希望に溢れた彼の陰茎を、衆目の面前で切断してやるのだ。
「はぁっ……はぁっ……」
想像するだけで身体が熱くなり、蜜が溢れてくる。
私は、愛用の長い長い性具を、秘穴へと挿入する。
彼を選んだのには、もう一つ理由がある。
一ノ瀬梨花。
凜は、彼女の存在が不愉快だった。彼女はあまりにも、かつての自分に似すぎていた。
完璧な少女。
凛直轄の英才校でトップを維持し続け、まさに才色兼備。しかし、決して弛まず、努力を怠らない。
輝くような色彩を放っている。
何より、彼女が私に向けてくる目。
実の兄を、制度によって殺された恨みだろう。憎しみの篭った、あの目が気に食わない。
そんな彼女が、恋する相手。それが神谷日向だった。
彼女の目の前で、恋焦がれる男子の陰茎を切り落とし、その恋愛を踏みにじってやる。
どうやら、よからぬ事も企んでいるようだし…。
彼女がご執心の陰茎が、私の愛玩具へと成り果てる日が待ち遠しい。
「彼の…おちんちん…。どんな具合かしら…」
凜はその使い心地に思いを馳せ、快感に身を震わせながら、冷たい笑みを浮かべるのであった。