不思議な輪っか
大学一年の春。
佐伯 恒一は、大学近くのフリーマーケットで奇妙な輪っかを見つけた。
銀色の輪っかが二つ。
店番の老人はニヤニヤしながら説明する。
「Aの輪っかに入れた物は、Bの輪っかから出てくる」
最初は半信半疑だった。
だが、ペンを入れると本当にもう片方から出てくる。
「え、やば……」
恒一は勢いでそれを買った。
そして、その夜。
最低なことを思いつく。
「……これ、絶対バレないよな」
*
翌日。
彼女の結城 真奈は、女友達二人と大学を歩いていた。
「次の講義だるー」
「カフェ行かん?」
そんな話をしていた時。
真奈のカバンが肩から滑り落ちた。
「あっ!」
中身が地面に散らばる。
ノート。
財布。
ポーチ。
そして——。
「……え?」
女友達の中島 彩花が固まる。
カバンの中から、男のちんちんそっくりなものが飛び出していた。
「ちょっ!? なにこれ!?」
もう一人の友達、川瀬 美優が吹き出す。
「真奈、ちんちん持ち歩いてんの!?」
「ち、違うって!! 私知らない!!」
真奈は本気で混乱していた。
だが、状況が状況すぎて否定しきれない。
彩花は興味津々でつつく。
「リアルすぎん? これおもちゃ?」
一方その頃。
大学の男子トイレ。
恒一は個室の中で顔を真っ赤にしていた。
「うぉっ……!?」
輪っか越しに感覚が全部伝わってくる。
「やば、真奈……っ」
完全に勘違いしていた。
実際には友達二人が面白半分で触っているだけなのに、恒一は“彼女がイタズラしてくれてる”と思い込んでいた。
その時。
美優が突然言った。
「……なんか元カレのちんちんに似てる」
「は?」
「いや、形とか」
そう言いながら、悪ノリでさらに触り始める。
恒一は個室の中で頭を抱えた。
「ちょ、待っ……!」
だが数秒後。
「っ——!」
向こう側から突然液体が飛び出し、女子三人が悲鳴を上げた。
「きゃああっ!?」
「ちょっ!? ちんちんからなんか出た!!」
真奈は顔を真っ赤にする。
「だから私知らないってばぁ!!」
彩花はパニックになりながら叫ぶ。
「なんか止めないと!」
その時、美優が手に持っていた綿棒を見る。
「ちんちんの穴塞げば止まるんじゃない?」
「え?」
次の瞬間。
男子トイレの個室で、恒一が絶叫した。
「いっっっっ!?!?」
激痛。
「な、なんだこれ!?」
輪っか越しに、とんでもない痛みが伝わる。
慌てて引き抜こうとする。
だが痛すぎて動けない。
女子側も完全にパニックだった。
「抜けない!?!?」
「ど、どうしよう!?」
真奈は半泣きで周囲を見回す。
その手には、たまたま筆箱に入っていた小型カッター。
「え、真奈!?!?」
彩花が止めるより早く。
パニックになった真奈は、それを振り下ろしてしまった。
*
——病院。
真奈は青ざめた顔で病室の前に立っていた。
電話で聞かされた。
“彼氏が救急搬送された”と。
病室へ入る。
ベッドには眠る恒一。
股間には大きな包帯。
真奈は震える。
友達二人も顔面蒼白だった。
「……どうしよ」
誰も答えられなかった。
*
一ヶ月後。
退院した恒一の部屋。
久しぶりに二人きりになり、真奈はベッドに座る。
「ねぇ」
「……ん?」
恒一はどこかぎこちない。
真奈はニヤッと笑う。
「なんか隠してる?」
「いや……別に」
その反応が怪しい。
真奈は突然、彼のズボンを引っ張った。
「ちょ、待っ——」
だが遅い。
真奈の動きが止まる。
そこには、もうちんちんはなかった。
恒一は気まずそうに目を逸らす。
静かな沈黙。
——数秒後。
真奈の口元がゆっくり吊り上がる。
「……やっぱり♡」
恒一が顔を上げる。
真奈は彼の耳元で囁いた。
「大事なちんちんなくなっちゃったね〜♡」
そして、意味深に微笑んだ。