PART1 セールス
「大森地区公民館にお集まりの大森西婦人会の皆さん。今日はお料理教室の前に貴重なお時間をいただきましてありがとうございます。これから皆様に、当社が自信を持って輸入しました新製品を一つ、ご紹介いたします。」
公民館に集まった50人の婦人会員に、私は話し始めた。婦人会長にコネを使って分けてもらった時間は10分。この間にいかに売るかが私たち営業担当の腕の見せ所だ。
「皆様はご主人様のご両親とは仲よくお過ごしでしょうか? ご夫婦の関係は円満ですか? お子さんは健やかですか? それなら結構です。でも世の中、何が起こるか分かりません。そんなご婦人方に今日はすばらしい商品をお持ちしました。こちらをご覧下さい。」
私は鞄から箱を取り出して中を開ける。中から大きなペンチのような道具を取り出す。
握り手の形はペンチに似ているけど、支点の先はリングになっていて、支点の握り手側はギザギザが付いている。
握り手も単純な形ではなくて、いろいろなレバーやボタンが付いているし、一端からはコンセントに繋ぐコードが伸びている。
「これをご覧下さい。これは当社が自信を持ってお薦めする男性去勢器具、『アメリカン去勢デバイス』です。アメリカでは、嫁さんに色目を使う舅さんにお悩みの奥様はじめとして、セックスレスのご夫婦、ご主人の浮気が直らなくてお悩みの奥様、性欲過多のご主人にお悩みの奥様に大人気です。」
50人の婦人会員は皆一様に注目してくる。10人ぐらいは明らかに相当な関心がある反応。出足は上々だ。
「これだけだはよく分からないでしょうから、皆様の前でこれから実演します。ご協力いただくのは助手の青山くんです。」
青山くんは25歳の好青年。売上高の歩合でアシスタント契約なのでわが社の助手たちは大変だ。その上チャンスは1回しかないし。
「青山くーん、下半身を全部脱いで、そのテーブルに横になってください。今日は念のため汚れ防止のビニールシートを敷きますが、このデバイスは本来はご覧のように特別な設備はいりません。コンセントが1つあればOKです。」
そう言ってコンセントに差し込む。
青山くんが下半身すっぽんぽんになると、ご婦人方から歓声があがった。明らかに、青山くんの一物の大きさに感心している。助手の人選は大成功だ。
青山くんはそのままテーブルに仰向けに横になる。
「皆様、よく見えるように周りに集まってください。このデバイスは、陰嚢だけ取り去ることも、陰茎だけ切断することもできます。もちろん両方一度に済ましてしまうことも可能です。今日は、皆様へのご説明にために、順番にやってみます。まず、陰嚢だけ切除する場合は、このデバイスのココの部分を使います。」
私は、握り手の根元にあるギザギザの部分を指差す。そして、デバイスの先のリングに青山くんの陰茎を通す。
「陰嚢だけを取るときは、リングは位置決めの役割だけです。位置が決まったらこの取っ手を握ってください。陰嚢の根元がぎゅっと押さえられました。睾丸が2つとも陰嚢に入っていることを確認して下さい。いいですか、じゃあ行きますよ。レーザーメスが作動して切断して、傷口は高周波電流で止血・縫合します。はい、一瞬です。」
私が握り手にある黄色のボタンを押すと、ジュッと音がして煙が上がった。
青山くんの陰嚢は、見事に切り離されて、テーブルの上に落ちた。
ご婦人方から「ほ~」という声があがる。
「睾丸だけ除去したい場合は、これで終りです。5分したらデバイスを外してください。傷口はしっかり電気的に縫合されていますから、歩いても大丈夫です。今日は時間がありませんから、続いて陰茎の方に行きます。まず、尿道に付属品の金属製のカテーテルを通します。この潤滑ローションの瓶に浸してから、尿道口にそのまま差し込んでください。」
私は青山くんの陰茎にカテーテルを差し込む。膀胱に達した瞬間に先端から尿が出てくるので、そこで止める。
「準備完了です。それではまずここの青色のボタンを押します。デバイスにセットした麻酔薬が6本の針で陰茎の根元に注射されます。陰茎の場合はちょっと痛みますので、麻酔を使用します。次にこのレバーを引きますと、仕掛けられたワイヤーが陰茎の根元をギューと締め付け、血流を遮断します。いいですか。準備できましたね。いよいよここの赤いボタンを押します。先ほどと同じようにレーザーメスが作動します。」
私が勿体つけて赤いボタンをぎゅっと押すと、レーザーメスが作動して青山くんの陰茎をカテーテルを残して環状に切断した。すぐに高周波電流が止血する。
私は、切断された青山くんに陰茎をカテーテルに沿って引き抜いて、テーブルの上に並べた。
「傷口も焼き終わったようですので、デバイスを外します。カテーテルだけは尿道が塞がらないように残します。どうですか。きれいな傷口でしょう。去勢した男性は、温泉やアスレチッククラブなどでセクハラに遭う事もありますが、これなら恥ずかしくないでしょう。」
ここからが正念場だ。
「さあ、定価10万円のこのデバイス、今日は特別に49,980円でご奉仕します。何人かで共同購入される方もお見えですので、麻酔薬、カテーテル、ローションを5人分お付けします。サイズはアメリカンサイズですので、陰茎が太い方でも大丈夫です。もちろんご主人様だけじゃなくて、エロ本にふけったり、マスターベーションが止められなくて成績が落ち目のご子息の去勢処置にも使えます。ご希望される方はお申し出ください。」
少し躊躇しいながらも、3本の手が上げる。よし、もう一押しだ。
「今日、この会場で5人以上お買い上げいただいた場合は、ここにあります青山くんの陰茎と睾丸、今日のお料理教室の材料として、そのまま差し上げます。新鮮さ保証付きの食材です。お友達とご相談して共同購入いかがですか。」
これは効いた。結局、婦人会長が取りまとめて、あと2台買ってもらうことができた。大成功だ。
ノルマ達成で、青山くんのアシスタント料も5万円確保で、めでたしだ。
結局、時間オーバーで20分掛かってしまったけど、いつものことで文句は出ない。それどころかどこでも喜んでもらえる。
さあ、今日はもう1ヵ所の会場に行かないといけない。次の会場は朝日公民館で、助手の田辺くんとは朝日駅前で待ち合わせだ。彼の陰茎は仮性包茎でちょっと短小気味だから、売り込みは苦戦するかもしれない。
-
投稿:2004.01.10更新:2022.08.27
アメリカン去勢デバイス
著者 名誉教授 様 / アクセス 21487 / ♥ 81