竜也の親父が死んだ。竜也の父、西本恭一は世襲が伝統の家族会社を経営していた。量販店や不動産、ホテル業にも手を広げている西本グループの総帥だった。
竜也の実家は都内の一等地にあるにも関わらず料亭のような大きな家で、まるでヤクザ映画に出てくるような風貌があった。実際の所、ヤクザとの繋がりも噂されいる。竜也も何度かそのような男達が自宅に上がりこんで父と話をしているのを見たことがあった。
竜也はそんな家の一人息子だった。
自分の意思に関わらず弱冠十八歳の竜也は、社長兼オーナーとして西本グループのトップに就任することになった。
竜也は何度目かになるため息を漏らした。梅雨。墨を溶かしたような空から音も無く雨が流れていた。都内のホテルで総帥就任を披露する。会場には千名を超える関係者があつまり、マスコミの姿もあった。
「社長。そろそろお願いします」
「森崎さん。社長はやめてよ」
「いや、竜也くんは今日から西本グループの社長兼総帥ですよ」
森崎という背の高い男は、黒いスーツを着ていた。短い黒髪をきっちりと後ろへ流し、白銀の縁のメガネをかけていた。
竜也は彼から視線を外し、壁一面の大きな鏡を見た。頼り無さそうな華奢な男が映っていた。線が細く色も白い。祖母がポーランド人で竜也はクウォーターだった。そのせいだろう、髪は日本人のように黒いのに瞳はうっすらと灰色をしていた。光が入ると銀色に輝く。
竜也はもう一度ため息をついた。スリーピースの白いスーツ。窮屈な襟の高いシャツに銀のネクタイ。これでは映画に出てくる香港マフィアか怪しいギャラリーの店主だ。
「これ、誰の趣味です?」
「伝統です」
「うちにはいくつ伝統があるんだ」
竜也は誰に言うでもなく呟いた。
冠婚葬祭から風呂の入り方まで、生まれてから事あるごとに細かく躾けられていた。そんな窮屈な生活のせいか、竜也は高校を実家から離れた田舎の県立高校を選んだ。今年で最後を迎えるその生活も社長になってしまったら途中で辞めなければいけないかもしれない。
「よくお似合いですよ」
森崎は表情を変えない。いつも無表情で、竜也が物心ついたときから傍にいた。
竜也は彼のことを兄のように慕っていた。西本グループで竜也のことを「竜也くん」と呼べるのは彼しかいない。本当はそれも許されないのだが、二人だけの時はそう呼ばせていた。
控え室にノックの音が響いた。ドアの外で「京子様でございます」と女の声がする。返事をするまでもなく、大きな扉が開き黒いドレスに身を包んだ中年の女性が入ってきた。
「竜也さん。お支度はできて?」
「はい。お母様」
竜也の母、京子は十八歳で竜也を生んだ。父恭一とは二周りも違う。三十六歳となっても女性の魅力を持ち、体の線が出るドレスも似合っていた。他人からは母というより少し歳の離れた姉と見えるかもしれない。
「森崎。遅いわよ」
森崎は無言で頭を下げた。
会場は数百人の参加者で埋まっていた。壇上から見るその光景は黒い虫がごそごそ動いているようで気持ち悪い。竜也は用意された原稿を左手にぎり、短く挨拶をした。
スピーチが終わると竜也の周りに数十の人が集まった。マスコミからカメラを向けられ、まったく知らない女性から食事を誘われる。用意した名刺はあっと言う間になくなった。
「森崎さん、僕ちょっと」
竜也は疲れたから少し休みたいと森崎に言った。
「わかりました。しかしまだ挨拶する人がいますのでなるべく早くお戻りください」
「はいはい。わかりました」
竜也は会場の隅の入り口から出て控え室の方へと歩いた。
「まったく。あんなに大勢の名前を覚えられるわけが無い」
綺麗な刺繍が施された絨毯の上を歩きならがら、胸に溜まった鬱憤を言葉と共に吐き出した。手には百を超える名刺の束を握っていた。
竜也は、控え室の近くあったトイレに入った。用は足さず、顔だけ洗い洗面台の上にあるミントの香りのタオルで、呼気に曝された顔を拭った。
「西本竜也さんですね」
顔からタオルを下ろした竜也は、自分の直ぐ後ろに立つ女性を鏡越しで捉えた。
「え?」
なぜ男性用トイレに女性がいるのか考える暇もなく、竜也は軽い首筋の痛みと同時に意識を失った。
「う、ううん」
竜也は軽い頭痛を感じた。
「気がついた?」
耳元で聞こえた女性の声にゆっくりと瞼を開ける。移動中のようだ。セブンシーターのミニバンに乗せられていた。両手は後手に手錠がかけられている。
誘拐だと直ぐに理解できた。
「あなたは……?」
隣に座った二十代後半に見える女性に向かって竜也は静かに口を開いた。
「ずいぶん落ち着いてるのね」
「そうですか? まあ……こう言うのは慣れていますから」
小学校高学年の時、竜也は一度誘拐されている。中学二年の時にも一回。一回は身代金誘拐で、一回は競合会社の嫌がらせだった。自分が社長になってまで誘拐されるなんて、よっぽど誘拐しやすいように見えるのだろう。それは否定しない。しかし……。
今までの誘拐とは質が違うように竜也は感じた。薄く茶色に染まった黒い髪に綺麗な白い肌。ミニのスカートからのびる長い足。足元は白いピンヒールを履いている。隣に座っている女性はどう間違えても普通のOLのような格好をしている。誘拐犯なのに顔も隠そうとしない。
「なーんだ面白くない」
極めつけはこの軽い口調だった。
「あの、お金ですか? それとも同業者の人?」
「んー。どっちも違うかな。言うなれば私怨かな。あなたに対して個人的な」
私怨? 竜也は考えた。こんな女性に恨まれることってあっただろうか?
「少しドライブするから何か話ししようか?」
「え? はあ」
「そうだ、竜也くんは彼女いるの? 有名人だから週刊誌で騒がれてるけど、やっぱりあのアイドルの……なんて言ったっけ」
「相沢美紀さんですか? あの子は違いますよ。うちがテレビCMのスポンサーをやってるから、彼女の方から近づいて来るんです」
「へえ。結構もてるんだ」
「もてないですよ」
竜也は投げ捨てるように言った。
高校に通っている竜也は、女子から人気はあったが付き合う対象には見てもらえなかった。その一つが女性より女性ぽい顔つきだった。色恋に関して自分からけっして動こうとしない竜也も、一度だけ好きになった子に告白したことがあったが、同性と付き合うようで無理と断られた。
ラブレターの類を女性から貰ったこともある。しかし内容はラブレターというよりファンレターだった。同級生からもかわいがられるタイプで好かれるタイプではなかった。
男らしくなりたいと思ってはいるが、歳を重ねてもまるで変わらない自分の姿に半ば諦めていた。
竜也を拉致した女は美咲とだけ名乗った。車が高速に乗り首都圏を抜ける。
彼女は竜也がどんな生活を送ってきたか、服はいつもどこで買うのかなど誘拐実行中としてはなんともありきたりの事を聞いてきた。
高速道路を少し走った後、海沿いの街まで連れてこられた。小高い海岸が見渡せる場所に建つ白いレンガ造りの家だった。竜也はその家の地下にある部屋に連れて行かれた。抵抗はしなかった。することは意味の無いことだと分かっていた。周りには4、5人の男がいて、竜也にはとうてい勝ち目がなかった。
地下に降りると真っ暗だった。バンと大きな音がして、まぶしいほどの光が部屋に満ちる。
目が慣れると竜也の前には緑色のビニールを張った一人がけの椅子があった。まるで歯医者にあるような椅子で、足置きが付いていた。その椅子を無数のハロゲンランプが照らしていた。
男達が竜也の両脇を抱えて、その椅子に座らせる。手は胸で組むように拘束され、足も半開きで固定された。椅子は浅く腰を引っ掛ける程度だが、少し後ろに倒れているので苦ではない。
「あの。なにをするんですか?」
「うーん。撮影よ」
人質が生きている証拠を取るのだろうかと竜也は思った。
男達が三脚に固定されたビデオカメラを竜也の正面、顔の近く、そしてなぜか下腹部を狙うように設置した。
「これから君の運命はこれが握ってるからね」
プロジェクターに映し出され、壁いっぱいにコンピュータのデスクトップ画面が映った。ブラウザが立ち上がり、ネット上のとある掲示板が映し出された。毎日数千万アクセスがあると言われる有名なサイトだ。
「このカメラで撮った映像はライブで海外のサーバーから配信されるの」
「え?」
そんなことをしたら、誘拐を全国に知らせているようなものじゃないのか?
「わたしの目的は貴方に対する復讐だからね。人前に出れなくなるくらい辱めてやるの」
まるで人事のように話す単調なせりふだった。
「僕にはあなたから恨まれるようなことをした覚えがないんだけど」
「そりゃそうよ。あなたが知らないからむかつくんだもん」
「まったくもう」といった風に頬を膨らませる彼女は、やっぱりどこか人事のようだ。
「あの、あなたはいったい誰?」
「私? 私はあなたの妹の姉ってところかしらね」
「それって僕の姉って言えばいいんじゃ」
「違うのよ。私と妹は血が繋がってるけど、あなたとは繋がっていないの」
つまり竜也とその妹は腹違いの関係だということになる。だからと言って義姉であることには違いないはずだが。
「それにしても、僕には妹なんていないはずです」
美咲はふうっ大きなため息をついた。
「だからそれは貴方だけが知らないの。まったく」
だんだん感情が高まってきたのか、冷静だった彼女の態度が少しずつ荒くなっていった。 妹……。
竜也は自分に妹がいるなんて知らされていなかった。
「まあ良いよ。どっちにしても今日で君が西本グループの跡取りじゃなくなるんだから」
「どういうことですか?」
「知ってる? 西本家って天皇家並みの世襲を重んじる家なのよ」
「それは知ってます」
だからまだ成人にも満たない竜也がグループの長とならざる負えなかったのだ。
「じゃあ分かるでしょ」
「こ、殺すんですか」
自分がいなくなれば、その妹が跡取りになる。竜也は額に浮き出る汗を感じた。まさか誘拐犯が身内の人間だったなんて思っていなかった。しかも向こうは血の繋がった妹を担いでいる。
「私はそれでも良かったけどね。妹が殺すなって言うからさ。だから考えたの。簡単なことよね。跡取りじゃ無くさせれば良いんだから」
画面上に新規スレッド作成画面が映し出された。
「ライブで参加する玉抜きプレイ」という題目だ。誘導用のアドレスが一つだけのシンプルなものだった。
「え! たまって……」
「そうタマタマのこと。君の股間にある二つの睾丸を潰しちゃおうってこと」
「そ、そんな!」
竜也は拘束されていることも忘れて椅子から降りようと試みた。しかし体はがっちりと椅子に固定され身動きが取れない。竜也の顔から血の気が引いていった。
「ふふふ。君は生殖機能を失って、西本家にとって不要な人間になるの。子供が残せなくなった君の代わりに子供が産める血の繋がった妹が現れるとどうなるか……簡単よね。西本家の総帥は血さえ継いでいれば男も女もないし」
「そんな」
「でも誰も知らないうちに取ってもつまらないでしょ。だからネットを通して、あなたがタマを抜かれてしまう様を大勢に知ってもらうの。しかも、あなたは自らタマを潰されて興奮するっていう設定」
「い、いやだ。やめて! そ、それに、そんなの興奮しないよ」
「大丈夫。ちゃんと興奮させてあげるから」
黒服の男達がハサミで竜也の着ているものを剥いでいった。
竜也の色素の薄い肌が暴かれる。股間にはピンク色にそまった亀頭と少し皮の余った陰茎が垂れていた。
「あ、さっそく書き込みが始まったよ」
『ゲッ2。 つり? 業者?』
『なんだこれ?』
『うほっいいチンポ。まじっぽくねw』
『祭りの羊羹』
巨大スクリーンに投影された掲示板に次々と書き込みが加わっていった。
その隣にあるテレビに竜也の痴態がライブで映っている。なにも隠すことのない股間がインターネットを通じて全世界に配信されてしまった。
「うああ! やめて! やめてください!」
竜也はカメラから顔を背けた。しかし三方の固定カメラの他に、二つの手持ちカメラが死角を無くす。
「それじゃ下の毛を剃ってあげる」
美咲は道化師のような仮面をかぶり、露出度の高い黒い皮のショートパンツに同様のビキニのトップに着替えていた。プロポーションの良い体にびっちりと張り付いたコスチュームが淫猥な雰囲気を掻きたてた。
映っている映像はSMプレーそのものだった。
美咲は手に持ったリモコンを操作した。すると竜也の座っている椅子が静かに動き出した。両足がどんどん離れていく。
「あ? あああ! やめて! やめてよ!」
次に股間を突き出すように腰の部分が前へせり出していく。
『寺エロスー!!!』
『男の股間イラネ』
『なんだこれ。まじ? 日本人?』
『肌白いね。外人ぽいけど』
『あれ? こいつどっかで…』
これ以上広げられないほどに股が開くと、さらに背後から腰を押し出される。股間を頂点にブリッジするように体が反っていく。正面から見るとまるで自ら腰を突き出しているような格好だった。
苦しさと恥ずかしさで竜也の顔がどんどん熱くなっていった。
「あはは。良い格好。これでやり易くなった」
美咲がシェービングクリームを手に出し、股間に塗っていく。そして丁寧に一本残らず陰毛を剃っていった。シェービングクリームを拭き取られると、そこにはうっすらと赤く染まったのっぺりとした股間にペニスと陰嚢が隠れることなく露出した。
『これ日本語だけど海外から配信してるから、向こうの人じゃないか? つかホントライブ?』
『わかった! こいつ西本グループの社長だ。
西本竜也(18)
県立大代広陵高校3年
西本グループ総帥兼社長
やばい。鳥肌立ってきた』
『ええええ!?』
「あら? もうあなたのこと分かっちゃった人がいるよ。困ったね? こんなみっともない格好を曝したら、もう外も歩けないよ」
「お、お願いします。もうやめてください」
竜也の願いも空しく書き込みは加速度をつけて増えていく。『おまいら祭りだ。板という板、スレというスレに布教しろ!』といって煽る人まで現れた。その内の何人かは、ここからアクセスしている黒服の男だった。竜也の痴態は一瞬で掲示板全体に知れ渡ってしまった。
『社長がこんなプレイをしてたらやばくね? つかホントにプレイか??』
『プレイだとしても、嵌められたんじゃない? ふつう会員制のサイトでこっそりやるだろう』
『犯罪の悪寒』
『どっちにしても俺らには関係ない。通報しても、鯖が海外じゃ手遅れだ』
『別にここでヲチするなら構わないだろ。せっかくだし生暖かく見守ろうw』
黒服の男が竜也の左腕に注射した。
「元気になるやつを打ってあげる」
シリンダー内の透明な液体が体内に入った瞬間、竜治の身体が熱くなった。
美咲が竜也の乳首をつまみあげる。
「ああああ!!」
竜也は自分でもびっくりするくらい大きな声で喘いだ。
体が熱い。乳首を触れられるだけで全身が激しく反応した。
「どう? 感度が良くなったでしょ?」
美咲は竜也の胸を撫で、ゆっくりと手のひらを下腹部へと滑らせていった。
それだけで竜也の体はびくびくと痙攣を繰り返した。
美咲の細い指がペニスを掴み、亀頭を親指で擦った。
「んあああ!」
「どうしたの? 恥ずかしい声を上げて。そんなにきもちいいの?」
竜也のペニスは勃起し、亀頭が爆発するほどパンパンに腫れあがった。
美咲の手が、しゅっしゅっとペニスを擦り上げる。
「いいいいぁ! ダメ。 出ちゃうう」
手が上下する度、ペニスの先から粘液が溢れた。
カメラがアップでその様子を捉える。竜也にその気が無くともスクリーンに映っている男はこのうえない快感に悦んでいるようだった。
「きもちいいでしょ? これをやって5分ともった男はいないから。ほら、世界中に観られながらいっちゃいなさい」
「やだ! やだよ! ああう! ああああ!」
どんなに頭の中で拒絶しようとも竜也の下半身は言う事をきかなかった。
「でるぅぅ」
竜也はカメラの前で、そしてその向こうにいるであろう大勢の前で射精した。
『イッタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!!』
『早すぎ。つか流れも速すぎ』
『こいつやばい。どういう神経してんだ?』
『イイ…惚れた。はぁはぁ』
『なんか女みたいな男だな。でもチンポデカー orz』
『こいつクウォーターなんだって。だから肌も白い』
「一回や二回じゃ治まらないないよ」
美咲の言ったとおり、竜也のペニスは射精してもなおビンビンと脈動した。
竜也は何度も扱かれ、射精させられた。ペニスは真っ赤になり精液も徐々に濃度を薄くなっていく。しかし勃起が収まる様子は一向に無い。
「そろそろかな。精子を出し尽くした上にタマを取れば完璧だからね」
黒服が近寄り、陰嚢をつまんでちょうどペニスの付け根から袋へと繋がる辺りに注射針を刺した。
「皮膚の麻酔。これで少し切っても痛くないから」
「やだ。やだあああ」
竜也は顔を振った。
『サイトにアンケートが出現』
『この男性は睾丸を除去して去勢したいそうです。あなたのアドバイスをお待ちしております。※どんな結果でも責任は被去勢者にあります。先着100票で終了です。
A 考え直したほうがいい。
B 問答無用で去勢。
C 本人がしたいなら文句は言わない。』
『考え直して欲しいが、文句は無い』
『B』
『D 俺のタマも去勢』
「ふふ。どう? あなたのタマタマの運命は彼等が握ってるの。少しだけチャンスをあげたんだけど……。なんだかみんな真剣に考えてくれないみたいだね。まあ匿名の投票じゃこんなものかな」
美咲は竜也ペニスを摩りながら語りかけた。
「ほらもう80票入った。ねえ知ってる? 君のライブのアクセス数が5000人を超えたみたいよ」
『投票結果キター』
『おまいら…』
『A1票、B80票 C19票』
『どうすんよ。こいつが無理やりされてたら』
『むしろその方が面白い』
『だな。俺らの指先に奴の運命が…ってだけで萌える』
「ざんねんでしたー」
美咲がわざとらしく肩を落とすふりをした。
緑の手術衣を着た女性が近づく。仮面を被っていて何歳かわからないが、胸が大きく張り出していて若い人というのは分かった。黒服が銀色のトレイをもって傍に立った。彼女はその中からメスを取り出した。
竜也の口には大きなボールがはめ込まれる。
声が出せなくなってしまった竜也は「ううう!」と呻きながら股間にのびるメスの先に恐怖した。
メスは陰茎と袋の境を頂点に逆V字を描くように入れられた。
「んんん!」
竜也は恐怖のあまり叫んだが、皮膚の引っ張る抵抗感を感じただけで痛みは無かった。三角形の頂点がペニスの付け根から切り離され、ちょうど底辺を軸にめくれた。勃起した陰茎の白い海綿体の下に白い睾丸が見えた。
『( ;゚Д゚)ガクガクブルブル 』
『グロ』
『いっきに冷めるな』
『綺麗と思ってしまう俺は変態でつか?』
『いや私も綺麗だとおもう。なんか神秘的だよね。こんな繊細で壊れやすいとこに男としての機能が凝縮されていると思うと』
『こんなの滅多に見れないぞ。録画しる』
女医は淡々と作業をこなす。袋を引っ張り、右の睾丸を取り出した。
「んんんんん!!」
竜也はお腹の奥を直接引っ張られるような痛みに悶絶した。
「ふふふ。苦しい? 男って弱いね。こんな小さなものを引っ張られるだけでまるで死じゃいそう」
左の睾丸も陰嚢から取り出される。女医が手を離すと精索を限界まで引っ張られた二つの睾丸が股から垂れ下がった。
美咲が右の睾丸を手に取る。手に取られただけで竜也の体は激しい鈍痛に襲われた。
「あははは。汗びっしょり。剥きだしたのタマを人に触られるってどいう感じ?」
美咲は手のひらに睾丸を乗せ、空いた手の人差し指でつんつんと突いた。
「んんいいいい! んんんんあああ!」
つめ先が当たる度に竜也の腰が跳ね上がった。腰を抑えているベルトが軋む。
『うはっ。痛そうw』
『お、新しいアンケートだ』
『私はタマを虐められると興奮します。どのように虐めてみたいですか?
A 強く握る
B 洗濯ばさみで摘む
C ろうそくを垂らす
D かわいそうだから戻してあげる』
『あいたたたた。考えただけでダメだ。と言いつつC』
『生のタマにロウソクなんて垂らしたら死ぬな。かわいそすぎ。よってC』
『タマ取り出されて、勃起してる奴だからなこれぐらいないと』
『つうか生のタマって ワロス』
「結果が出たよ。ロウソク責めだって。ほんと人の気も知らないで酷いこと言うよね? あはは」
美咲は赤いロウソクに火を灯した。
睾丸は引っ張り出され、股間の高さに合わした台に置かれた。そしてU字の釘で睾丸に繋がる管を打ち付けられる。股間から引っ張り出された白い管が二本、まな板の上におかれたうずらの卵のような白い睾丸に繋がっていた。
「んんん! んんん!」
竜也は必死に声を上げて抵抗した。
美咲はそれを楽しむように溶け出したロウが一杯に溜まる様子を竜也に見せ付けた後、ロウソクを睾丸の上へと持っていた。
ロウソクはゆっくりと傾く。表面張力でゆらゆらと液体がこぼれそうなのがわかった。
「垂れるよー。垂れちゃうよー。ふふふ」
「ん! んん!」
怯える竜也の瞳の前で、美咲はロウソクを傾けていった。
張力の限界を超えた液体が寸分たがわず右の睾丸に落下した。
「んひいいいい!」
竜也の細く白い腹が反り返った。首を何度も振り、唯一自由な手首と足首の先を懸命に動かした。
美咲は構わずぽたぽたと蝋を垂らした。蝋が垂れる度に、竜也は体が折れてしまうほど激しく仰け反る。
「あはは。バッタみたい」
「んんんあああ!! んんん! ひいいい!」
『ちんこ勃ってきた』
『おそっ!w』
『こいつ神。これだけ責められてビンビンじゃないか。苦しそうだけどw』
『よっぽど好きなんだろうな。白め剥いて悦んでまつ』
『精子は熱に弱いらしいから、こんなことしたら絶望的だよ』
美咲は一つの睾丸が蝋でべたべたに覆われると、もう一つの睾丸を責めた。
「ぽたぽた。ぽたぽた。ふふふ」
「んんん! あがああああい! ばづいいいいい!」
竜也の睾丸は真っ赤な蝋で多い尽くされる。すると美咲は冷えた方の蝋をべりっ剥がすと再び蝋を垂らした。
「んひいいいいいいい!」
竜也のお腹がなにか違う生き物のように激しく脈打った。
『アンケトキター
睾丸を除去するにはどんな方法が良いですか?
A 切り取る
B 徐々に力を加えて押しつぶす
C 揚げて食べてみる
D このへんで許してあげる』
『揚げて食べてみる <ワロタ』
『西本竜也って確か唯一の跡取りだろ。こんなことしたらやばいんじゃ?』
『奴のタマには一千億円の資産を受け継ぐ種が詰まっている』
『と言うことはやっぱ嵌められた説が濃厚だな。ご愁傷様』
『一千億円のタマ食べてみたーい』
『タマってところでどんな味だ?』
『白子と同じじゃない?』
「あれ? 潰すのと揚げるが同じ票を獲得しちゃった。どうする竜也くん」
竜也は既に考えることができなかった。激しい痛みが睾丸から腹の中へ突き刺さっている。もうやめてと何度も首を横に振った。
「そうね。それじゃ両方してあげるね」
「んんん!?」
美咲は楽しそうに指示を出す。黒服の男がU字の釘で押さえられた右タマの上から透明の板を置いた。そして台と板を挟むように万力を固定する。
「どう? 電動でミリグラム単位で重さが変えれるの。どのくらいまで耐えれるかな? ふふふ」
美咲の手にはカード型のリモコンが握られている。
ピピという音が鳴り、僅かなモーター音が聞こえた。
「ん! んんん!」
デジタルの測量計が一気に500グラムを表示した。竜也は圧迫される睾丸に苦しみから体を硬直させた。
白い楕円が徐々に広がっていくのがクリアボード越しに分かった。
ピッピッピと単調な音をさせて徐々に万力の力が増えていく。
「んんんがぁああああ!」
グルっとタマが鳴った。その瞬間耐えられない痛みが体を突き抜ける。
竜也は腰を振って痛みから反射的に逃げようとしたが、固定されているためかなわない。もし腰を引けたとしても釘で固定されたタマをどうすることも出来ない。
「ふふふ。なさけないね。こんなタマ一つで大暴れして。この管を切ればすぐ楽になるんだろうけどね。切ってあげようか?」
竜也は切って欲しいと思った。例えそれが男の機能を失う行為だとしても、こんな苦痛には耐えられなかった。竜也は懇願するように何度も頭を下げた。
「なに? 切って欲しいの? じゃあ皆に聞いてあげる」
『すみません。もう限界です。早く楽になりたいので切っても良いでしょうか?
A いいよ
B ダメ』
『一度決めたことはやり通す。お父さんに教えられた』
『やばいここまで来たら最後まで見ないと気が治まらない』
投票は95票がBだった。
「まあ結果は分かってたんだけどね」
その間も万力は力を強めている、2キロを超えるとタマが鏡餅のように平らになった。
「んんんん! んんん!」
竜也は永遠に続く痛みで狂ったように叫んだ。汗が体中を濡らしハロゲンの強い光を反射させる。それでもペニスは大きく勃起したままで、尿道からは透明の粘液がまるでタマから押し出されるように溢れていた。
「タマタマって結構丈夫なんだね」
美咲は左のタマを指で弾いた。
びくんと竜也の腰が跳ね上がる。
万力は10キロの表示を超えた。するとアクリル板に張り付いたタマの表面に赤や青の線が無数に走っていった。
中の組織がゆっくりっと崩壊したのだ。竜也は壊されていく睾丸を感じた。お腹のそこにブツッブツッという振動が伝わった。
「ん! んんああ! んひいいいいい!!」
痛みは頂点を超え既に麻痺していた。ただ股間から伝わる感触が竜也を追い込んでいった。
タマが潰れていく。
まるでスロー再生をしていくように、達也の睾丸は押しつぶされていった。
「ふふふ。上から見ると良く分かるよ。ひび割れが広がってくみたいに赤くなってる」
『(´・ω・`)破裂しなかったね』
『スピードが遅いからかな』
『これはこれでイイ! 中の組織が真っ赤になってアクリル板に張り付いてる』
『これで一個目終了 チーン』
右の睾丸はハサミで切り取られ黒服の持ったトレイに乗って何処かへいってしまった。竜也を苦しめたのをあざ笑うように切断自体は数秒で終わった。
黒服が黒い液体の入った透明のビニル袋を美咲に手渡した。
「どう? 自分のタマタマが料理されていくって?」
そう言って左のタマ摘み上げ、ビニル袋入れる。袋の口から精索が伸び竜也の股間に繋がっている。
「んんん!」
むき出しのタマを触られるだけで耐え難い痛みが竜也を襲うが、美咲はそんなことを気にすることもない。袋越しに睾丸を掴むとギュッギュッと揉み始めた。
『タマのから揚げキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!! 』
『袋の中身は、おろしニンニク、おろしショウガ、醤油、ごま油だそうです』
『懲りすぎw』
『まるで料理番組見てる気分になってくるな』
『注意:あれは金玉です。鶏肉ではありません』
『揉まれるたびに悶絶』
『どんな感じだろう。なぜか気持ちよさそうに見えてくるのが不思議』
『↑は女だな』
『コケて怪我したとこに醤油をたらしてみた。イテ━━(≧∀≦)━━!! 』
美咲は執拗に睾丸を捏ね上げた。
「紐の付け根ってコリコリしてて面白いね。ここって痛いでしょ?」
美咲は副睾丸を指で押さえつけ、グリグリと抓った。
「んんん!! んんんぁあああ!」
あまりの痛さに黒目が上を向き竜也の意識が遠のく。しかし強烈な痛みが断続的に体を覚醒させてしまう。
美咲は袋に片栗粉と溶き卵を追加してさらに揉んだ。竜也の苦しみを気にする様子はまったく無い。黒服が油の満たされた底の深いフライパンを運んでくる。ガスコンロの上に置かれたそれは既に程よく熱せられていた。美咲がから揚げのタレを垂らすとパチパチと軽快な音を立てて揚がっていった。
美咲はさえ箸で袋から睾丸をつまんで取り出す。とろっと衣のついた竜也の睾丸がフライパンの上に移動した。
「んんんん!」
竜也は涙を流していた。顔を懸命に横に振った。
「あははは。分かる? 熱いよー。死んじゃうかもよー」
竜也は股間全体が油の熱気で焼けるように感じた。温度計は180度を指している。美咲が少しでも箸の力を緩めれば、睾丸は熱せられた油の中へ落してしまう。竜也は熱いフライパンを前に体は完全に硬直し、身動き一つとれなかった。体がガタガタと震え、冷や汗が体中から染み出た。
「あと五センチで男の機能が無くなるよ。ふふふ。男って簡単に終わっちゃうんだね。これで西本の跡取りも贅沢な暮らしともお別れね」
美咲はゆっくりとさえ箸をフライパンへ沈めていった。どんなに逃げようと力を入れても体は拘束され動かない。まるで自ら睾丸を捧げるように足を広げ股間を突き出した竜也に逃げ場はなかった。
「んひいいいいいいいいいいい!!」
ジャッという油が撥ねる音と共に、竜也は背中を硬直させた。
睾丸が一瞬にして気泡に包まれる。
竜也の体が何度も跳ね上がった。激しく悶える竜也の姿は、男として最期の生存本能をみているようだった。
「あ……ぁ……」
頭が垂れ、意識は完全に途絶えていた。しかし体が硬直し反り返ったまま力を抜こうとしなかった。油がパチパチと跳ねる度にびくびくと足や手が痙攣したが、それも徐々に収まっていった。
『壮絶な最期に黙祷!』
『むちゃしやがって(AA略』
『略かい!w』
『きつね色になるまで揚げます』
竜也が意識を失っていたのは数分だった。一瞬自分がどこにいたのか思い出せなかった。焦点がぼやけて目の前にあるこげ茶色の球体が何であるか分からない。
「気が付いた?」
女性の声で竜也の頭が覚醒する。
「うあああああああ!」
美咲の顔を見た竜也は反射的に叫んだ。そして口を押さえつけていたボールが取り外されていることに気づく。
「ふふ。これなんだか分かる?」
股間から伸びた白い紐がその先にくっついた茶色い塊に繋がっている。
「あ……あ……」
言葉にならなかった。それは変わり果てた自分の睾丸だった。
「どう分かる? 見た目はから揚げそっくりでしょ? でもまだ繋がってるんだよ」
こげ茶色の衣はどうみても鶏のから揚げだった。そこから伸びた白い精索が竜也の股間へ繋がっていなければだが。
美咲は笑いながら揚がった睾丸を箸でつまんで引っ張った。
「あ! あうっ!」
左の下腹が引っ張られる感触。痛みはそれほど強くなかった。
「君の大事なタマタマだって分かった? そうだ! かわいそうだから元に戻してあげようか? でも中で腐ったらやだね。どうする? 食べてほしい? ははは」
「ひ、ひどいです。なんでこんな……」
「食べてって言わないと、戻しちゃうぞ」
「そ、そんな」
ついさっきまで体の一部であったはずの器官。竜也は変わり果てた自分睾丸を見た。今更こんなものを体内に戻されてもしかたがない。竜也に選択肢は与えられていなかった。
「勝手にしてください」
精一杯の強がりだった。
「食べてくださいお願いしますでしょ。じゃないと戻すからね。自分で切って取り出しなさい」
美咲は箸で摘んだ揚げタマを袋に戻そうとした。
「や、やめて」
「じゃあお願いしなさい。僕の睾丸を食べてくださいお願いしますって」
竜也は目頭が熱くなるのを感じた。
「……た、食べてください」
「え? 聞こえない」
「お願いします……。僕の睾丸を食べてください!」
「あはは。しょうがないなぁもう。そんなに食べて欲しいの?」
美咲は箸で睾丸をつまみあげた。
竜也の前で、まだ繋がったままの睾丸が美咲の口の中へと運ばれた。
彼女は仮面を左手少し上げると、ぱくっと口に放り込んだ。
「ああ!」
美咲の細い顎が上下する。
達也の睾丸は体に繋がったまま咀嚼された。痛みは無かった。
プツっと振動が伝わり、精索を噛み切ったのが分かった。岬はもぐもぐと黙って睾丸を味わっていたが、人差し指を曲げ黒服を呼ぶと、男の持ったトレイにペッと吐き出した。
「うーん。思ったより美味しくないね。衣は美味しいんだけどさ」
吐き出された睾丸はグチャグチャに噛み砕かれ、原型を留めていなかった。
竜也の去勢ショーはこうして終わった。
掲示板は滝のように流れ字を追うことすらままならない。
陰嚢は完全に切り取られ、素肌の白い股間にペニスだけが残った。縫って閉じた傷口は狭く出血も殆ど無い。大き目の絆創膏を貼っただけで処置は終わった。
「竜也君。これで君は西本家に必要のない人間だ」
モニターの影に一人の男が立っていた。黒いスーツ姿にオールバックの黒髪。それは竜也の良く知る人だった。
「森崎さん! どうして!」
幽霊をみるような顔をした竜也の前で、森崎は喋り始めた。
「竜也君の妹というのはね。実は僕の妹でもあるんだ。母が一緒なんだよ。君のお父さんは好色でね。あんな若い奥様を持ちながら私の母を半ばレイプするように犯したんだ。妹はずっと裏の人生を送ったよ。西本の組織に監視され続けた。君が総裁になって跡取りでもできたら、将来はなかった」
竜也は森崎が何をしゃべっているのか理解できなかった。
「直ぐ理解できないのは無理も無い。そのうち体で理解していくことになるだろう。とにかくだ。私はこの日を待っていたんだ。母をただ快楽の為に犯した男は殺したいほど憎かったが、それでは妹の幸せはない。報復されて終わりだからね。だから君が跡取りになるタイミングを狙ったんだ。本家はすでに私の提案を受け入れたよ。あの男に付いていた連中も固い奴ばかりで、血が繋がっていればなんでも良いらしい。まあ、そう言う堅いしきたりがあったから西本は何百年も続いているんだろうけどね」
「は、母は、お母様は」
竜也が跡を継げなくなったからには、母の存在が邪魔になるはずだ。
「京子さんは君を売ったよ」
「え?」
「静かに暮らせる家とお金を上げたら何も言わないと約束してもらった」
「そ、そんな」
「そこで竜也君には悪いんだが、京子さんが受け取った資産、一億三千万円ほどは君が稼いで返すことになった」
「そんな! 無理です。森崎さん! 冗談でしょう?」
「残念だけど本当だよ。君には風俗店で働いてもらう。幸い君は外見に恵まれている。少し整形すればニューハーフとして売れっ子になるだろう。睾丸が無くなったから丁度いい。西本と関係してるヤクザが、そう言う店をたくさん持ってるから。来週からそこで働いてもらう」
美咲がくくっと楽しそうに笑った。
「や、やだ! そんな、そんなのって酷すぎる!」
「かわいそうだけど君には選択肢は他に無い。これは決まったことなんだよ」
「あはは。大変だぁ。これから毎日、誰とも知れないチンポを何本も咥えてお尻の穴にも突っ込まれるんだよー。かわいそうね」
「明日、記者会見で君はそういう願望を常に持っていたことを発表する。今日の出来事はプライベートで楽しむのが意図だったが、間違って配信されたことにする。表面上は西本家から勘当されることになる。しかし自由になるわけではない。西本のネットワークは警察も動かせることを君も知っているだろう? 無駄なあがきはしない方が身のためだ」
「竜也くんさー。今までが恵まれてたんだからその反動だよ」
竜也は涙を流した。ハロゲンの強い光に濡れた銀の瞳がキラキラと光った。
いつも鳥籠の中のように拘束され、なりたくも無い社長になって。そんな人生のどこが恵まれていたと言うのだろう。
「そうだ美咲。竜也君が働く店をリークしておいてくれ。今日の配信だけで十万人は見たはずだ。しばらく客に困ることはないだろう」
「どこの店か決まったの?」
「ああ、田淵のとこだ」
「ええー。あいつ超サディストだよ。平気で何十人もお客さん取らすんだから。竜也君一ヶ月も持たないかもよ」
「そうなったらそれまでさ」
その後、元々有名人だった竜也は子供も知る風俗嬢の代名詞のようになる。同級生の男子から、政治家などのVIPまで幅広くお客を集め、AV嬢としても活躍。多くの男性を虜にする。本人の意思とは裏腹に…。
終わり
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投稿:2005.09.16更新:2005.09.16
銀の瞳
著者 エイト 様 / アクセス 25205 / ♥ 8