第1話
「ねえねえ、フェラチオって知ってる?」
学校の休み時間、後ろに座ってる佐々木佳子が僕に声をかけてきた。
「佳子ちゃん、フェラチオって何?」
僕はこの子と同じクラスの中学1年生。みんな性に関して興味を持ち出す年頃。
佳子ちゃんとは、小学校入学以来ずっと一緒で、一応幼なじみっていうのかな。
小さい頃から、僕なんかよりずっと大人っぽい佳子ちゃんは
いつも僕を子供扱いする。背なんか僕の方が2センチも高いのに。
でも、僕は佳子ちゃんに「お姉さん」のような憧れがあった。
子供の頃の僕は、なんでも正直に言うタイプだったので、一緒に遊んだり
した時は必ず「佳子ちゃん、大きくなったら僕のお嫁さんになって。」って
しょっちゅう言ってたっけ。いつも断られるんだけど。
大人っぽい佳子ちゃんは、性の知識も豊富。こんないやらしい話より、
僕は友達と外で遊んでる方が好きだなぁ。でも、知らないって言ったら
エッチなこと色々教えてくれるんだ。僕はこう言うの疎いから、やっぱり
ちゃんと話聞いた方がいいのかな。
「フェラチオってね、女の子が男の子のおちんちんをキャンデーみたいにくわえるんだって。」
なんだそりゃ。女の子も物好きな人がいるんだね。汚く思わないのかな?
「くわえてどうするのさ?楽しいの?」
「うーん…私もやったこと無いからわかんないけど。でも、私いくら好きな人でも
そんなものくわえてカルピスなんか飲めないよ。」
「カルピス?」
「え?もしかして樋口ってまだ、出したこと無いの?」
「何をさ。」
「だからね…男の子の部分から…カルピスみたいなの」
「そんなもの出るわけ無いだろう!何言ってんだよ。」
「でるもん!前に授業でやってたもん!」
「授業って…あっ」
僕たちが体育の授業やってる時、そう言えば女子は視聴覚室で何か別の授業やってた。
内容は知らないし(佳子ちゃんも教えてくれない)、あまり興味もないけど。
「お前等、体育さぼってなんかエッチな授業受けてたの?」
佳子ちゃんはイタヅラっぽく笑ってるだけ。
「樋口ってさあ、その…夜したりしないの?」
「何を?」
「その…大事な部分擦ったり…とか」
「え?しないけど」
「女の私が言うのもなんだけど、そろそろそういう事するもんじゃない?男って」
「だって、そんな事いま佳子ちゃんに初めて聞いたんだもん。」
「ほんっと、樋口って子供ね。」
「中学1年なんて、子供じゃん」
「あはっ、何かかわいい。じゃ、私が大まかに説明してあげるから、おうちに帰ったら試しにやってみると良いわ。今日がもしかして、樋口が『男』になる日かも知れないよ?」
「変なこと教えたら絶好だからね!」
「変じゃないもん。大人になるためには絶対みんなする事なんだから。」
「じゃあ、教えてよ。どうやるの?」
「耳貸して…(ゴニョゴニョゴニョ…)」
「そ、そんな恥ずかしい事するの??」
「みんなやってるの。」
「なんで佳子ちゃん女の子なのに男の僕より詳しいのさ!」
「(かぁぁぁっ)い、いいでしょ!興味あるんだから。それより今夜、絶対教えたとおりにやるのよ。分かった??」
「…うん、わかった。」
女の子にオチンチンのいじり方教わるなんて思っても見なかったよ。
僕は何だか暗い気持ちで帰路についた。
第2話
佳子ちゃん、あんな事言ってたけど…
僕のことからかってただけかも。
だって、オチンチンからおしっこ以外のもの出したことなんて無いし。
でも、なんで僕にそんなことさせるんだろう?
やっぱり女の子も気になるのかな。男の体の事って。
佳子ちゃんの事、ガッカリさせたくないし…やってみようかな…
その夜。
布団に潜り込んだ僕は、教えてもらったとおりオチンチンをまず大きくした。
(大きくなったら、手で一生懸命擦るの)
擦るって言っても、どうするんだろう?握って上下にって事かな?
よーし、やってみよう。
こしこしこし…
(全然何も感じないよ。ちょっとくすぐったいだけ)
こしこし…
(オチンチンが大きくなって痛くなってきた見たい…)
ふう。
出ないじゃないか、佳子ちゃんの嘘つき!あー腕痛くなって来ちゃった。
明日会ったら、ちょっと怒ってやる!!
キーンコーンカーンコーン。
「お早う樋口、昨日どうだった??」
「佳子ちゃんの嘘つき!教えてもらったとおりしたけど、何も出なかったよ?」
僕の話を聞いた佳子ちゃんは、急に真面目な顔になった。
「この事、私以外の人に話してないでしょうね?」
「うん…。どうしたの?深刻な顔して」
「え?ええ…もしかしたら、樋口、病気かも知れないよ」
「えええっ??」
「私、面白半分で樋口にあんな事させちゃったけど、傷ついてたら…ごめん」
「まってよ佳子ちゃん!僕、何か凄い病気なの?」
「そこまでは分からないけど…屋上に行って2人キリで話そうよ」
「う、うん」
「佳子ちゃん、いったい僕何の病気なのさ!」
佐々木佳子は黙って外を見ている。
「樋口…昨日、オチンチン擦ったのに何も出なかったんでしょ?」
「う、うん」
「多分…多分よ?それって精子が流れてくる管の部分が詰まってるって事だと思う」
「でも、おしっこは普通に出るよ?」
「どっちにしても、男の子にとっては大変な事よ。どう?知り合いの外科医が
いるんだけど、一度見てもらった方がいいよ。このままじゃきっと精子が行き場を失 うから、タマがだんだん大きくなって、最後は破裂の可能性だってあるかも知れない わ」
「そ、そんなぁ」
「今まで言わなかったけど、私と樋口ってずっと一緒だったでしょ?一緒にいるうちに ね…私…樋口のこと好きになってたみたい」
「えっ…佳子ちゃん…そりゃあ、僕だってずっと…」
「うん。それは気づいてたけどね。だから、私心配なの。樋口が病気なんて…」
佳子ちゃんは泣き出してしまった。
「わかったよ。僕、佳子ちゃんのために病院行って検査する!」
「樋口…」
「でもさ、心細いから…僕と一緒に付き添ってくれるかな?」
「…うん。いいよ。」
オチンチンの話がきっかけで、僕らは急接近した。ちゃんと治療してもらって
佳子ちゃんに「精子出たよ!」って早く言ってあげたいな。
第3話
「樋口さーん、どうぞ。」
佐々木泌尿器科の待合室。オチンチンの検査をしてもらうため
佳子ちゃんと一緒に診察を受けに来たんだけど、やっぱり怖いかも…
「ちょっと樋口、呼ばれてるよ?」
「う、うん…あのさ、佳子ちゃんいっしょに来てくれる?」
「ええっ?だってアソコの検査するんだから、私に大事な所見られちゃうんだよ?」
「いいんだ…佳子ちゃんになら見てもらっても、全然恥ずかしくないし。」
「まぁ…樋口がいいなら、私はかまわないけど。」
「本当?ありがとう!あとね、検査の間不安だから…手…握っててくれる?」
「もう、どっちが女の子か分からないわね(笑)いいよ、手つないでてあげる。」
不安な気持ちでいっぱいだけど、佳子ちゃんが付いててくれるなら
きっと大丈夫。僕たちは一緒に診察室へ入っていった。
「失礼します。」
「はい、樋口真樹さんですね。今日はどのような事でいらっしゃったのですか?」
優しそうな若い女の先生だ。でも、こんな綺麗な人にオチンチンの話するのって
恥ずかしいよ…俯きながら佳子ちゃんを見ていたら、彼女から説明してくれた。
「先生。この子精子が出ないんです。」
「あら、あなたは樋口さんのガールフレンドかしら。」
「ま、まあそんなところです。それで、自分の大事な人が大事な部分に傷害を持つ
様なことになると、私も困ってしまうので、この子を連れてきました。」
「そうよね。将来樋口さんのお嫁さんになった時、精子が出ないんじゃ…」
僕の深刻な話をしてるのに、佳子ちゃんが将来のことまで考えてくれてるって
話を聞いて、何だか天にも昇る気分になっていた。
「それじゃあとりあえず、樋口さんに質問しますね。」
「はい、よろしくお願いします。」
「自分のオチンチンを擦ったことはありますか?」
「…2回ほど、あります。」
「その時はそんな感じでしたか?」
「何かオチンチンが大きくなってドキドキして…怖くなってやめました。」
「そう。オチンチンから何かわき上がってくる様な感じはしなかった?」
「そう言うのは…無かったです。」
「じゃあ、オチンチンいじってるときって、どんな事考えながらするの?」
「うーん…早く精子を出して、佳子ちゃんを喜ばせてあげたいなって。」
横で手を握っていた佳子ちゃんは真っ赤になって照れ笑いをしてた。
「本当に2人とも仲良しなのね。お似合いだわ。」
「先生、どうなんですか僕の様態は?このままじゃ一生精子出せないんですか?」
「うーん。確かにこのままでは駄目ね。樋口君、ちょっと軽い手術なんだけど、受けてかない?1時間くらいで終わるから」
「え?どんな事するんですか?」
「オチンチンの管の部分にメスをいれて、精子の流れを良くするって手術なんだけど」
「あ、1時間くらいで終わるンなら、もうここでお願いしようかな。」
「うん。そうしなよ。私も今日はひぐちにずっと付いててあげるから。」
「本当?ありがとう佳子ちゃん!」
フン、中学生のくせに、もう夫婦気取り?
一緒の女もさっきからオチンチンだの精子だの。
あんた達には10年早いのよ!!
大した性知識もなくこんな所でいちゃついたのが運の尽きね。
「じゃあ、善は急げよ!すぐ済んじゃうんだから、そんなに不安そうにしないの。
これからむこうの手術室に行くから、病衣に着替えて。彼女の方はどうするの?」
「樋口…私樋口のいい方に従うよ。」
「じゃ、じゃぁ…手術室の前まで手をつないでて。そこからは、僕一人で行く!」
「樋口、男らしくなったね。私も好きになって良かった。じゃあ、私はご褒美に
手術が成功したら、私の最初の男にしてあげる。」
「え?それって…僕が佳子ちゃんの初めてを…」
「恥ずかしいからそれ以上言わないでよ!!」
「ごめん、…じゃ、行ってくるね。」
「うん。私、待ってるよ?」
そう言って僕は、あの女医が待っている、手術室の中へ入っていった。
第4話
僕は手術台の上に乗った。
なんだか股をめいっぱい広げさせられるベッドのようなモノに。
僕は上衣以外何も着ていないフリチンの状態になっている。
胴のあたりにカーテンが掛けられていて、向こうの様子を伺い知ることは出来ない。
しばらくして、先生が手術着を着て現れた。
「どう気分は?あまり緊張しなくて良いからね。」
「は、はい。何か、下がスースーしますね。」
「この部屋寒くってゴメンなさい。あ、そうだ。先におしっこしてきた方がいいよ。
始まってからじゃ行けなくなるから」
「そうですね、ちょっと行ってきます」
僕は手術室から1番近い男子用トイレに入った。
用を足そうと思ったところへ、佐々木先生が入ってきた。
「せ、先生!?何してんですか!ここ男子トイレですよ?」
「驚かせちゃってゴメンなさい。ちょっと貴方の症例からみて、おしっこの出方を
データとして残しておきたいの。別に誰かに見せたりしないから。ちょっと写真を
取らせてくれないかしら?」
「おしっこしてる所なんて、恥ずかしいよ。」
「他の樋口さんのような症状の人たちを救う為なの!分かって。」
「…そこまで言うなら、いいけど…」
その後、僕は立ち居でおしっこをする写真と、研究のためだと言われて
勃起したまま真っ正面を向いた写真、さらに勃起したオチンチンに手提げ袋を
かけられた写真の3枚を取られた。
これが、後に何を意味するか…僕には皆目見当が付かなかった。
「さあ、準備は整ったわ。」
「先生、僕痛いの弱いんですよ。出来れば全身麻酔で…」
「あらそう?見てるのも勉強になるのに。ま、良いけどね。」
「じゃ、始めるわよ。」
「お願いします。」
そう言って先生は僕の腰にちょっと痛い注射を打った。
等の区意識の中で、うっすらと先生の声が聞こえた。
----樋口くん、もうすぐオチンチンともさよならね-----
何いってんの…僕はただ…精子が出せる…ように…
ここで僕の意識は途絶えた。
第5話
(樋口、樋口。)
遠くから聞き慣れた声がして目を覚ました。
僕は個室のベッドで寝かされていて、横を向くと佳子ちゃんが
不安そうに僕の手を握ってくれていた。
「よかった、気が付いて。」
「佳子ちゃん…僕、手術終わったの?」
「ええ。ちょっと時間がかかったみたいだけど、上手くいったそうよ。」
「ほんと…よかった。」
程なくして、病室に佐々木先生が入ってきた。
「あら樋口さん、気が付いたのね。具合はどうかしら?」
「まだ少し体がだるくてボーっとするけど、平気です。」
「彼女、君がここに運ばれて来てからずっと付いててくれたのよ。
感謝しなくちゃね。」
「そうなんだ…ありがとう、佳子ちゃん。」
佳子ちゃんが少し赤くなって俯いてる。
「そ、それより先生。樋口の病状ってどういうものだったんですか?」
「その事なんだけど。」
先生は少し難しそうな顔をして、ゆっくりと話し出した。
「樋口君のオチンチンはね、精子の通る管が普通の人より狭かったの。
だから自分で擦っても何も起きなかったんだと思うわ。」
「ほら、やっぱり私の言ったとおりでしょ?」
「だけど、大人になってくるとタマタマの部分がたくさん精子を作るの。
男の子は精子がいっぱいになっちゃう前に外に出さなくちゃならないのよ。」
「でも、僕は何度擦っても出てこなかったよ?」
「そうね。管が細すぎて精子が詰まってしまうのよ。」
「そのままにしておくと、僕どうなっちゃったのかな?」
「タマの中で精子を溜めきれなくなって、最後は割れてしまったでしょうね。」
先生の話を聞いて、僕はゾッとした。
佳子ちゃんが気づいてくれなかったら、今頃僕は死んでいたかも知れない。
「先生。それで、樋口にはどんな処置をしたんですか?」
佳子ちゃんが不安そうに話をきり出した。
「まず、管を広くする手術を試みたんだけど…樋口さんのは思った以上に
狭すぎたの。だから、管自体を取ってしまわないと危険な状態だったの。」
「先生…その管って言うのは…もしかして…」
「気を落とさないで聞いてね。ペニス…つまり、オチンチンを取ってしまったの。」
いま、何て言ったの?
確か…オチンチンを取ったって…
佳子ちゃんが真っ青になっていて、震えているのがわかる。
僕は何だか気が遠くなって、そのまま意識を失ったようだ。
「つまり…樋口のオチンチンは、もう…無くなっちゃったんですか?」
「そうじゃないの、良く聞いて。私達はまず管の部分を短くして、
そのほかの組織はちゃんと使える様に採っておいたの。」
「そうなんですか。」
「その後、短くなった管から精子が正常に出るか試してみたんだけど、
残念ながら目詰まりを起こしちゃってて睾丸がパンパンになってたのね。」
「破裂…寸前だったって事ですか?」
「そうなの。このままだと、命に関わってくる状態だったの。分かるわね?」
佳子ちゃんが無言でうなずく。
「だから…こちらも袋の部分だけは残しておいて…切除したの。」
「じゃ、じゃあ!樋口には睾丸が付いてないって事ですか?」
「…残念だけど。」
「残ってる部分は…ちゃんと元通りになったんですよね?」
「尿道の部分を短くしてしまったので、元通りって訳にはいかないの。」
「えっ…?」
「尿道を奥に移動して、ペニスと陰嚢の組織を使って処置しておいたわ。」
「それって、どういうこと…?」
「いま樋口さんは、あなたと同じ女性器を持っているという事なの。」
「そ、そんな事って…」
佳子ちゃんはそこまで聞いて泣き崩れてしまった。
第6話
「悲しいでしょうけど、わかってあげて。今一番辛いのは貴女じゃなくて
樋口さんなのよ。ガールフレンドとしてだけじゃなく、これからは女性の
先輩として支えになってあげてね。」
「私が…私が余計な事言ってしまったばっかりに…樋口は女の子に…」
「それは違うわ。さっきも説明したでしょう?貴女がここに連れて来なければ
樋口さんは命を落としていたかも知れないの。だから、何も気にする事なんて
ないのよ?」
「でも…」
「さあ、もうメソメソしないで。これからも今まで通り明るく接してあげるのよ?」
「…はい。」
そう言って、先生は病室から出て行った。
それからどれくらい時間が経ったかは覚えていない。
私はただ、ベッドの上で寝ている樋口の顔をじっと見つめていた。
まさか、こんな事になるなんて。
目が覚めた時、私…何て言えばいいんだろう。
そんな事を考えていたら、また不意に涙が込み上げてきた。
「…佳子ちゃん」
「…えっ?」
「佳子ちゃん、泣いてるの…?」
見られてしまった。
私はとっさに目を擦って、明るく振る舞おうと努めた。
「なっ、何言ってんのよ。ちょっと看病疲れで眠くなったからアクビを…」
「佳子ちゃん…僕のオチンチン、もう無くなっちゃったの?」
「…」
「僕、女の子になっちゃったの?」
「…ご、ごめんなさい!私がこんな所に連れて来ちゃったせいで…っ」
「ううん、佳子ちゃんのせいじゃないよ。オチンチンは無くなっちゃったけど
僕は死ななくて済んだんだから…だから、もう泣かないで。」
「ごめんなさい!」
私は樋口の胸に寄りかかって泣き崩れた。彼は無言で私の髪を優しく撫でてくれた。
第7話
あれから3週間が経った。
何度か股間に激しい痛みが起きたりもしたが、最近はそれも治まって
今日はいよいよ包帯が外される。
「それじゃ、ゆっくり立ち上がって。」
僕は先生に抱きかかえられながら、壁づたいに立ち上がった。
目の前には、ちょうど前身が映し出される大きな鏡がある。
「樋口…私、外してたほうがいい?」
佳子ちゃんが不安そうな顔で僕の方を見ている。
「ううん、大丈夫だよ。一人じゃ不安だから、一緒に見ててくれるかな…?」
「うん、いいけど…。」
「それじゃ、包帯をとるわね。ちょっと痛いかも知れないけど我慢して。」
「はい…。」
先生が手際よく包帯を外していく。
僕は怖くて真っ直ぐ自分の顔を見つめていた。
頭では分かってたつもりだけど、まだ、心のどこか自分の股間には
男の子のものが付いていて、包帯が取れた後、先生が「冗談でした」
って言うんじゃないかとか淡い期待を寄せていたのかも知れない。
でも、包帯が全て取り去られて鏡に映った姿は…
「ない…」
無くなってる…
男の子の証だった部分には、柔らかい膨らみがあるだけで
真ん中から亀裂が入っている。
頑張って脚をいくら閉じ合わせても、付け根の部分に隙間が出来てしまう。
その光景を信じたくはなかった。これはきっと夢なんだ。
でも、そんな幻想も佳子ちゃんがポツリと漏らした一言で打ち砕かれた。
「ウソ… 私と同じだ…」
佳子ちゃんはハッと気が付いて言葉を継ぐんだが、これで確信に変わった。
「僕…佳子ちゃんと同じ体になっちゃった…」
「樋口…私…」
「もう、男の子じゃあ…」
「樋口!」
僕はその場で気を失ってしまった。
(了)
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投稿:2006.08.03
僕は男の子?
著者 颱風(補完) 様 / アクセス 25821 / ♥ 11