女の子っていい!
第一章
由美は女に生まれて本当に良かったといつも思っている。言葉を変えて言えば男になんて生まれなくて絶対正しかったと確信している。股間に金玉がぶら下がってなくてホッとしているといった感情が適切かもしれない。
彼女が育ったのは酪農の盛んなとある地方だった。こういう所では当たり前の事の様に去勢という行為が日常茶飯事で行われている。だから誰もが違和感無く「金玉」って言葉を口にする。むしろ女たちの方が好んで使っている。
とりわけ自分の息子を躾ける時に有効のようだ。泣いていう事をきかない場合、「そんなに泣いていると金玉切って女の子にするよ!」とか「金玉ぶら下げてるんでしょ? 泣かないの」って具合に使うのが効果的だ。
また、同級生の女の子が男の子をシュンとさせる時にも役に立つ。口喧嘩や暴力を振るわれた時、「おまえの金玉を蹴ってやる」とか「金玉潰す」などと脅せば大抵の男の子は平身低頭で謝る。たまに自分が男だということを忘れてしまっているお間抜な男の子がいて、謝らないで更に暴力を振るっていると本当に金玉をイヤというほどおもいっきり蹴られたりする。へたれこんでいるところを女の子達に大笑いされる。自分は金玉の有る生き物だと痛感させられる。女の子たちはそのブザマな姿を見て、自分達の股間に金玉の無いことを誇りに感じる。Yの部分にひとすじのワレメが入っている身体に優越感を持つ。
この地域には古くからの恒例の儀式がある。男の子が大人の男の仲間入りをするための儀礼だ。それは少年達にとってあまりにも過酷な試練であった。10歳になる少年達は夏になると肝試しをさせられるのだ。もしここで悲鳴を上げたり,腰を抜かしたりすると即去勢されるのだった。
ことの始まりは,この地域出身の兵士が前進命令に従わずに逃げ出してしまったことによる。脱走兵は銃殺と相場は決まっていた。そしてその2等兵も処刑された。が、それでは済まないのが地域の気持ちというものである。特に女達はよその地域に恥ずかしくて嫁に行けないと切実に思った。こんなことの無い様にダメな男の子は金玉を切り取られることになってしまった。
由美には幼馴染の勇【ゆう】君という男の子がいた。勇君は弱虫だった。体も小さい方だった。由美も体は小さい方だった。それで気が合ったのか良く遊んでいた。
小学4年のある日,勇君が同級生にいじめられて泣いているところを由美が見かけてなぐさめていると勇君が突然「僕女の子になりたいな」って言いだした。由美はそんな勇君の気持ちが解ったのか
「だったらわたしのブルマをはいてみる?」
と言ってカバンの中から由美が今日体育で使ったブルマを取り出して勇君に手渡した。勇君は少しうろたえた風だったけどやがて意を決して半ズボンを脱ぐと由美のブルマをはいてみた。
『よく似合っている』と由美は心の中で思った。ただ1点を除けば…それは股間の膨らみだった。
由美は勇君にその点を指摘して勇君のおチンチンを股に挟むように促した。由美はそうすれば女の子のまたみたいになれることを男子から聞いて知っていた。
勇君は言われたようにおチンチンを股に挟み由美に見せた。
「ブルマ姿の勇君本当の女の子みたい」
おもわず由美の口から洩れた。勇君もまんざらでもない様子だった。
「勇君,いえ,勇ちゃん女の子になれたじゃない。良かったね」
由美は喜んでこう言った。
『勇ちゃんはきっと男の子検査で不合格になって金玉を切られるわ。でもきれいな女の子になれるのだから良くってよ』
こころでまた思った。
夜、風呂に入ろうとして服を脱いでいた由美は,パンティのうえから自分の股間に手を当ててみた。ペッタンコだった。そこには煩わしい膨らみは皆無だった。鏡に映すとパンティにうっすらとワレメがくい込んでいた。“おんなでよかった”とつくづく思った。
そこへ2歳年下の弟の明【あきら】が裸で入ってきて「ほら姉貴とおんなじ」と股間をみせてきた。見るとそこに有るべき筈のおチンチンは無くてまるで女の子のようにツルンとしていた。明はおチンチンを股にはさんでいた。明はなおも
「ほら姉貴と同じワレメになってしまったの。わたしおんなのこなの,イヤーン」
と女の子のようなしぐさをしていた。よく観ればちょうどワレメに相当するあたりにマジックで一本線を書いていた。
由美は『なんで男の子はこうも女の子に成りたがるのだろうか』と不思議な気がした。それと同時に明に対して女をバカにされてるような気がしてむかついた。
「ねぇ明,そんなに女の子に成りたいのだったらママに云って女の子にしてもらおうよ!ママ,ママ早く来て!」
そう言いながら由美は明の体に抱きつき動けないようにしてママの来るのを待った。
明をひと目見たママは事情を察ししたらしく,明の手を引いて台所へと連れ込んだ。明は恐怖を感じたのか泣いていた。明はまだおチンチンを股間に挟んだままだった。ワレメが見えるのでまるで女の子が泣いているようだった。由美は後からしてやったりといった顔をしてついてきた。
「まぁ明ちゃん泣いてるの。でももういくら泣いてもかまわなくってよ。これからは女の子になるのだから。あなた女の子に成りたいのじゃなくって?」
そう言ってママは包丁を握って「さぁ明,これであんたの金玉を切るからね。男らしく潔く金玉出しなさい!」
明は泣きじゃくりながら股を開いておチンチンを右手で持ち上げて金玉をママの前にさらけ出した。
「えらいわねぇ,明ちゃんは男ねぇ。金玉をぶら下げてるだけあるわ」と言いながらママは明の金玉を左手でわしづかみにして付け根に包丁をあてがった。明はヒンヤリしたものを感じて少し腰を引いた。
「明,覚悟はいい?ママがあなたの金玉を切り捨ててあげるわ。」
明はもう諦めたのかコクッと頷いただけだった。
由美は何だか明に申し訳ない気持ちでいっぱいになっていた。何とかしなければと思った。
「ねぇママ、明も反省してるみたいだから今回は許してあげましょうよ。それに明は弱虫だからきっと去勢検査に引っ掛かって金玉を取られるわ。今日のところは罰を与えるっていうのはどう?」
「罰って?」
ママは興味をみせたので由美はニヤッと笑って「おんなの子の真似をしてバカにした侮辱罪として、金蹴りってどうかしら?」
「それッいいわ。」
とママが同意してくれた。
由美は明に向かって言った。
「あんたの金玉をイヤというほど思いっきり蹴ってあげるわ。金玉をぶら下げた男に生まれてきたことを後悔なさい。」
明は台所の壁に向かい立たされ、刑は施された。由美のスラリと伸びやかな白い足が後ろから明の股間へめがけて突き上げられた。
フフフフフ。ハハハハハ。二人のおんなが股間をおさえてのたうちまわってる一つのおとこを見下して笑っていた。彼女たちの顔には明らかに優越感が表れていた。
“痛そう。ミジメね。き・ん・た・ま って。”(つづく)
女の子っていい!
第二章
いよいよ、去勢検査の日が来た。由美はこの日を心待ちにしていた。普段強そうに見せている男の子たちがふるいにかけられて男を廃業させられる日だった。
これは由美ばかりではなくて全ての女の子の考えだった。男の風上にもおけない奴が判る。女の子達はみんなこう言い合っていた
『金玉をぶら下げる資格なんてない!わたし達女子の前で金玉を切り捨てられればいいのに』
と。
今年テストを受けなければいけない男の子達は23人いた。一方同学年の女の子は17人。おとこのこが3人おんなのこになれば20人と20人で数が合う計算になる。そういうムードがあった。
恵【けい】という気が弱く色白の男の子がいた。よく失神していた。特にヘビやカエルに弱かった。おそらく失格して去勢されるだろうとここら一帯の評判だった。恵自身も諦めていた。今日も行きがけに姉のクミが
「けい、スカッとキンタマを切り捨ててあげるから。おねえちゃんみたいにスッキリするよ。」
そう言って自分の股間に視線をおとした。恵もつられて見入った。ピッタリしたジーンズのその▽部分はスムースそうだった。
クミは恵の羨望の眼差に気づいた。女に生まれた優越感と男に生まれていたら…という絶望的な恐怖感を同時に味わった。
クミは色白で栗色の髪は肩に掛かる程度に軽くながしていた。18になるクミは今年の去勢検査で執行官に任じられていた。だから弟の恵があまり見っともない醜態を演じなければいいのだけれど・・・と案じていた。
去勢検査の執行官は2名いて必ず女性が選ばれる(男だとどうしても情が入り込んでしまうからだ)。しかも美人だ。28歳のおんなと18歳の女の子がコンビを組む。この場合女の子とは処女という意味である。18歳で執行官を務めた女の子はほとんどが10年後の28歳に再び任命される。28才の先輩が指導役で18才の後輩が実際に執り行う。
午後9時いよいよ検査が開始された。言うまでもないがその前にお決まりの「怖い話」がひとけのない学校の体育館であった。
コースはその体育館から裏山の中腹にあるお宮までの往復、約30分だ。
懐中電灯一個のみ持つことが許されている。襟と袖口に紺のラインがはいっている白の半袖シャツと白の半パンをみんな着用させられる。 出席番号順にスタートして行く。伊藤、上田、岡、黒木…。どの男の子も緊張しきっていた。顔は青かった。それでも「何てことないや」とか「こんなのバカバカしいや」とか言ってうそぶいていた。でも腰はおっかなびっくりだ。
それを聴いていて由美は可笑しくなった。
「強がりばっか言っちゃって。本当はすごい怖いくせに。男に生まれてきたばっかりに…こんなこわい目に遭わなければいけないなんてね。フフフ。やっぱ女で正解ね!」
女子は二つのグループに別れる。9人と8人のそれぞれ仲良しグループだ。一方が物陰に隠れていて肝試しの男の子を脅かす役。これはみんなエンジのジャージの上下を着る。もう一方は男の子の後をつけるいわゆる監視役になる。こちらは半袖の白シャツを着て紺のブルマーをはく。この監視役の女の子たちが男の子が泣いたり腰を抜かしたりすると執行官に報告するのだ。執行官はこの報告を基に男の子の金玉を処分する事になる。
由美のグループは前半は監視役だ。監視役は男の子1人に3人付く。由美は桜井マリと飯田梨絵とまず岡君に付いた。岡君は小柄な男の子でかわいい顔立ちをしている。ちょっと気が弱そうでいじめてやりたくなるタイプ。
お宮までの道中も女の子たちに脅かされてこわいのはこわいが、もっともおそろしいだろうと云われているのがお宮の奥の祠の中にはいり箱の中にある自分の名前の書かれた木札を取ることだ。祠には木の戸が嵌められてかんぬきが掛けられるようになっている。其処に錠を2重にかけていて普段は誰も入れない。だから中がどうなっているのか経験者しか知らない。祠の入り口はひと一人入れるかどうかの間口だけど中は結構広い。おまけに蝙蝠がいる。箱の中に女の子たちが虫や蛙をいれたりもしている。兎に角女の子たちがここで色々な趣向を凝らしてぐすねを引いて待ち構えている。
十年前には女の子があらかじめ祠に隠れていて木札を捜すのに夢中になっている男の子の背中にムカデをいれた。そしてその男の子がムカデに咬まれてびっくりして腰を抜かしておまけにワンワン泣きだす始末となった。結果はその男の子に「おとことして相当みっともなかった」というので金玉を切り捨てるよりも厳しい処分が下された――執行官は男の子の金玉を潰した。
由美たちは岡君の後をついていった。腰をひいておそるおそるだがなんとか祠の前までは辿り着いた。由美は脅し役は今どの子たちかしらと考えていた。
貴子と弥生はおもしろがっていた。普段はオトコだからといって強そうにしている男の子たちがこの祠に入ってくる時は心底ビクついているからだ。キョロキョロあたりをみまわしてオドオドと足を交叉させながらまるで女の子のようだ。いや女の子はここまではびびらないと思った。
貴子は祠の入り口の横の凹みに体をいれて獲物=男の子を待ち受けていた。
「次は岡君か。岡君耐えられるかしら」
一方弥生は箱の置いてある奥の方へ隠れていた。
岡君が来た。まず手を入り口からいれてきた。次に顔が覗き込んだ。懐中電灯をかざし祠のあちこちを照らす。と、一点で止まる。弥生を見つけたのだ。仕方ないなぁという感じで弥生は祠を出て行く。これで少し安心したのかフーッとためいきがした。でもこれは弥生をおとりにして相手を安心させる貴子たちの作戦だった。そうとは知らずに岡隆志君は自分の札を探して見つけていた。帰ろうとした時貴子が大きく腕を上に伸ばしてキャーと叫びながら岡君にせまった。
貴子は、
「岡君立って」
と言った。でも岡君は立ち上がろうとしない。貴子は続けて、
「立てないのだったら、監視役の女の子を呼ばないといけないわ」
岡君は焦っていた。腰を抜かしてしまっていた。立てなかった。
「貴子、わたし監視役の女の子を呼んでくる」
そう言って弥生は外へ出て行った。
「伊藤君も上田君もびっくりしてしりもちはついたけど腰は抜かさなかったわ」
貴子は由美たちに言った。
「そう、でも岡君は腰を抜かしちゃったんだ。規則だから仕方ないもの執行官に報告しないと」
由美はそう言いながら青くなって震えているまだ腰を抜かしたままの岡隆志君を見下ろした。 由美は岡君の方へ寄った。由美のブルマーの ▽地帯が岡君の目元に来た。
「岡君、オトコなら潔くするものよ。腰を抜かしただけなんだからおそらくあなたはキンタマを切り捨てられるだけで済むわ」
桜井マリが続けて、
「そうよ、たかがキンタマ切り捨てられるだけじゃない。わたしたちも金玉がないわ。由美も梨絵も貴子も弥生も」
他の4人が照れて少し笑った。
岡君に近寄りながら、
「股の付け根にジャマな物がないからブルマーをはいてスッキリキレイだわ。岡君もキンタマを切り取られたらスッキリするわ」
マリもここで少し笑った。
「ほら岡君見て。マリと由美のブルマー姿。岡君の目の前。マリも由美も前のところがつるんとしてきれいだわ」
梨絵が言った。言われた二人は恥ずかしいのか足を少し交叉させた。
「あら梨絵はスッキリでしかもワレメがはいってるわ」
今度は由美が言った。キャと梨絵が声をあげ股の部分を両手で隠した。女の子たちはワッと笑った。
だけど男の子の方は違ったリアクションをとった。
「やだよ、ぼくやだよ、おんなのこになんかなりたくない」
と幼児のように泣き出してしまった。「やだよー、おんなのこになんかなりたかないよー」
女の子たちの目つきがかわった。由美は監視官としてこの事を報告しようと決めた。
「岡隆志君、わたしたちは執行官の藤井しのぶさんと野田クミさんに言うわ。腰を抜かした上にめそめそ泣いちゃったてね。あなたのキンタマは切捨てじゃなくてきっと潰されるわ。でもいい気味。男の子として失格した癖に『女の子になんかなりたくないよー』とか言っちゃって。金玉を潰される恐怖を味わって、オトコに生まれたことを心の底から後悔するといいわ」
由美は言い放った。
他の子も同感っていう顔をして岡君を見下ろしていた。(つづく)
女の子っていい!
第三章
由美たちは岡君をつれて体育館へと戻ってきた。
帰路、他の女子たちから
「あっ、岡君、失格したんだ。え、え、それって、うそー、岡君タマ取られちゃうんだー。かわいそー」
「由美もマリも梨絵もカッコいいー。犯人を捕まえた刑事みたい」
「え?だれだれ? 誰が泣いちゃったの? ……えー?岡君!あーそうなんだ。やだー、かわいそう。キンタマ切りおとされるんでしょ? わー痛そう」
「腰を抜かしたの? あはははは。男のくせにねー。みっともない。あんな奴はすぐにでも男をクビにしちゃえばいいのよ。キンタマ引っこ抜いてやればいいのに」
などといろんな感想がきかれた。当の岡君は俯いたままでこれから僕はどうなってしまうんだろうと考えていた。そして逆らわない方がいいと思い由美たちに従うままとなっていた。
男子たちの姿は見あたらなかった。とばっちりを畏れてどこかにひそんでいるのだ。
体育館のステージには執行官の藤井しのぶと野田クミが控えていた。二人とも紺ジャージ上下のいでたちだ。由美たちは執行官の所まで岡君を連行した。そして梨絵が
「ごくろうさまです。わたしたち3人の監視役はこの岡隆志君がテスト中に腰を抜かして号泣したことを報告します」
と言うと
それを受けて執行官の藤井しのぶが
「はい、ごくろうさま。岡隆志はこちらで厳正に処置するわ」
というなり、野田クミが縄で岡君の上半身を縛り身動きできないようにしてしまった。さらに岡君の半パンをするするとずり下げ脱がせてしまった。
岡君はそのはずみでひっくり返ってしまった。手が使えないので体をしたたかうった。「いたい、いたい」と呻いている。
そのせいで岡君のおチンチンがプルプルとふるえた。キャアと由美、マリ、梨絵が叫び声をあげた。
「岡隆志!なに寝ころんでんの!早く立ちあがりなさい」
藤井しのぶは厳しかった。
ひとりで立てそうもないので由美とマリが手伝ってようやく岡君を立ち上がらせた。またおチンチンがプルンとしたので二人はキャッと小さく叫んだ。
その間に藤井しのぶと野田マリはジャージを上下共脱いでいた。二人とも野田クミの通う高校の白の半袖シャツとエンジのブルマー姿になっていた。このかっこうには、失格者が逃げだした時に追いかけるのに動きやすいという理由と男の子は下半身をはだかにされるのでそれに対し執行官の女性も少しぐらいは準じようという意味があった。それにしても二人のブルマ姿はとてもなまめかしかった。
体育館には貴子と弥生を除いて15人の女子が集まってきていた。貴子と弥生は祠の中で次の犠牲者をだそうとがんばっていた。
藤井しのぶが
「岡隆志、キミは本日の去勢検査で失格しました。よってキミを去勢します」
と告げた。続いて
「三原由美さん、桜井マリさん、飯田梨絵さん3名の証言ではキミは泣いたあります。そうなの?」
岡隆志は決まり悪そうにうなずいた。
「わかりました。それでは岡隆志の処置方法は」
ここで間合いを置いた。
女の子たち、岡隆志本人、野田クミが固唾をのんで藤井しのぶの言葉を待っていた。
「通常の処置で執り行います。岡隆志のキンタマは切り捨てます」
えー!なんでーと不満のこえがいっせいに湧いた。
「静かになさい」
藤井しのぶは凛として応えた。
「確かに岡隆志は泣いてみっともなかったわ。オトコとしてサイテイよ。だから重い罰としてキンタマをつぶすのがふさわしいはずだわ。
でもね男の子のキンタマをつぶしてやるのはもっとひどい事をした時だけのほうが効果的だと思うの。例えば女の子に暴力をふるったとか逃げ出したとか」
一同黙っていた。それは納得したという沈黙だった。
岡隆志はステージ上で後ろ向きに立たされた。股をひらかされ上半身は前へ傾かされている。野田クミが特製のハサミを持ってきた。これは毛抜きばさみを大きくしたようなものでアメリカなどでは牛の去勢用としてよく使われていた。
ステージ直下に女の子たちが集まっていてこの瞬間を待っていた。いよいよこの弱虫な男の子のキンタマは切り捨てられるんだわという期待。でももしわたしが男の子にうまれてたら…わたしも岡君みたいにタマを取られるのかしらという不安。だけどわたしは現実には女の子だから、キンタマ無いから大丈夫だわという安心感。どの子もこんな感情が入り混じっていた。
「執行します」
野田クミはそう言ってすぐに左手で岡隆志のキンタマをわしづかみにすると去勢バサミを玉袋のつけ根にあてがいシュッと切ってしまった。
野田クミは左手にのっかってるキンタマのはいった袋を女の子の前に見せた。そして
「いま岡隆志のキンタマを切り捨てました」
そう言ってステージの上へキンタマの入った袋を文字通り捨てた。
フロアーに落ちたキンタマ袋から半白色の2個のキンタマがコロッとはみ出た。女の子たちが叫び声をあげて引いた。が、やがて
「男子ってこんな変なもん必死こいてぶら下げてるんだ」
っていうさげすんだ笑いに変わってしまった。
岡隆志はあまりにも一瞬に事が終わってしまったので最初何がなにやら解らないという顔をしていたけれど、時が経つにつれて泣き出してしまった。
藤井しのぶが優しく声をかけた。
「あなたにはもう金玉が無いからこれからはいくらでも泣いていいのよ。これで徴兵義務もなくなったわ。つらい経験をしなくてもすむわ。男の子をやめさせられて良かったって思う日がきっとくるはずよ」
そう言いながら藤井しのぶは岡君の股間の手当てをはじめていた。
「岡君、おチンチンはどうする? もういらないわね。わたしが切っといてあげようか?」
と尋ねた。
「うん、もういらない」
岡君が小さく返事をした。
藤井しのぶは医療用のハサミを救急箱から取りだし左手で岡君のおチンチンをつかみシャッと切ってしまった。
あっという間のできごとだった。女の子たちはただ呆然とながめていた。いいようのない優越感を身体で感じていた。殊にあそこがジーンとしてなんともいえないくらいいい気持ちだった。オンナでよかった。ここの全員がそう思った。(つづく)
女の子っていい!
第四章
野田恵はあまりプレッシャーがなかった。もう諦めていたからだろう。それに執行官が姉のクミだから、自分が失格になって金玉を切り捨てられることになっても痛くないように切ってくれるだろうと信じていた。
貴子と弥生はがんばっていた。ほかの女の子たちが岡君の処罰を見に行ってしまったのでずっと二人で男の子たちを脅かしていた。岡君から以降の黒木、黒田、佐藤、鈴木…と男の子たちはやってきた。が、どの男の子もびっくりしてこけてしまうのだけれど腰までぬかすことはなかった。
「次は野田君ね。本命ね」
「でも貴子、野田君本命すぎておもしろくないわねぇ」
「それもそうね。ほかの女の子は岡君がタマを切られるのを見に行っちゃってまだ戻ってこないし。ねぇ弥生、ちょっと裏切っちゃおうか?」
「どういうこと貴子、それってもしかして」
「いや、ただ、野田君を見逃しちゃおうかなってことよ」
野田君は祠に入ってきた。聞くところによるとここが一番おそろしいところとか。あーあ僕はここで失格の烙印をおされるのかーと呟いた。野田君は懐中電灯をてらしてあたりを窺がった。弥生さんを見つけた。弥生さんは見つかっちゃったと言って穴から出て行った。野田君は自分の名前の書いてある札を捜しにかかった。
貴子は野田君を脅かすかどうかを迷っていた。結果がわかっているだけにおもしろみがなかった。だも何もしないというのでは不公平になってしまうし…。ちょっとおどかす程度にしようと思った。野田君が自分の札を見つけて帰ろうとしていた。
キャーと貴子が前にでた。
「野田君立てる?」
弥生が訊いた。野田君はなんとか立とうともがいていた。手をついて歯をくいしばって全力で立ち上がろうとしていた。
「立てそう?」
こんどは貴子が尋ねた。野田君はまだ立とうと努力していた。こんなに気の弱い男の子がこんなにがんばっている。貴子と弥生は野田君の根性に打たれた。
「ねえ弥生、外に監視役の女の子たちいる?」
「みんな岡君の玉切りを見に行っていていないんじゃない」
「そう、じゃあ仕方ないわね。監視役がいないんじゃ執行官に報告できないもの。わたしたちは監視役じゃあないから」
「そうね貴子、それに野田君は腰をぬかしたんではなくてよ。ちょっと足をくじいただけ」
と言って貴子にウインクをしてみせた。
「軽いねんざでしょ?」
と貴子も合わせた。
弥生と貴子は顔を見合わせた。二人は野田君に肩をかしてやって外へ連れ出し人目につかないところで休ませてやることにした。
野田君の助けてくれてありがとうという声がふたりの耳にはいってきた。
由美の目はまだうつろだった。さっき見た光景が信じられなかった。岡君は由美たち女の子の目の前で本当にキンタマを切り捨てられてしまった。それこそアッという間に岡君は女の子にされちゃった。岡君を次に見るときは岡さんか隆【たか】ちゃんになってるの? スカートをはいているのかな? 体育のときはわたしたち女子の列に並ぶの? ブルマーをはかされるのかなー? 由美はそう考えていると股のところがジ――ンと熱くなって気持ち良くなってきた。男の子にうまれなくて正解ね。女の子でよかったわ。
広田誠【まこと】の番になった。女の子たちが体育館から持ち場へ戻りはじめた。由美とマリと梨絵がやってきた。
マリが言った。
「広田君、わたしたちが監視役よ。それにわたしたちどうも今夜は魔女がとりついているみたい。さっきも岡君を執行官へ引き渡してきたの」
「え、あれおまえらのしわざか?」
「人聞きの悪いこといわないでくれる。わたしたちは任務を忠実にまっとうしただけ。執行官に真実を伝えただけよ」
梨絵がすこし抗議した。
「そりゃおまえらオンナだからいいよなー、テスト受けなくてすむんだから。だけどおれたちオトコにとっちゃぁキンタマ取られるかどうかの一大事だからな。あーあ、おれも女にうまれればよかったよ。そしたらキンタマを切られる心配もないしさ。ダサいブルマーを履けばいいんだろ。そいでもって監視役になってさ。オトコどもを執行官に引きわたす。なーんちゃってね」
「そう。広田君そんなにオンナがいいの?だったらあなたを必ずオンナにしてあげる。わたしたちが協力してあげる。たったいま岡君を女の子にしてきたばかりだし。あんたはこれから去勢検査で腰をぬかすの。そして執行官にキンタマを切り捨てられるの。ついでにわたしがあなたにブルマーをプレゼントするからそれをはいて監視役になればいいわ……オンナをバカにして。絶対に執行官のところへおくりこんでやる」
由美は一気に言ってやった。オンナをバカにする発言は絶対に許せなかった。
広田君は失敗した。女の子を敵にまわしてしまった。もともとお調子者でかっこうしいでもあった。女の子からあまり好かれてはいなかった。が本人はモテルと思っていた。
「貴子、やっとほかの女の子たち戻ってきたみたいよ」
「じゃあ岡君の処罰おわったのかしら? わたしも見てみたかったなぁー。岡君が女性執行官にキンタマを切り捨てられるところ。男の子にとったらすごい屈辱よねー。それも同級生の女の子の見ているまえでしょ。もしわたしが男の子で岡君みたいなめにあったら……ゼッタイいや、こわいわ。…女の子で良かった」
「あらやだ、貴子ったらなに変なことかんがえてんのよ。わたしたちは女の子だから、こうして去勢検査の脅し役ができるんじゃない。弱い男の子を失くそうってやってるんじゃない。ねえねえところで次誰だっけ?」
「弥生のきらいな広田よ」
「あいつ時々わたしの胸さわってくるのよね。穢れのないオトメに対してゆるされない痴漢行為よ。もう二度と出来ないようにしてやりたい。あいつこそ執行官にキンタマを切り捨てられるべきだわ」
「弥生、マジ!?」
「マジよ!」
広田は祠の前まで来た。ここが難関か。ここさえ通過できたらあとは大丈夫さ。三原由美たちは悔しがるだろうな。おれを女にできなくて。そんなことを考えつつ祠の中へとはいっていった。祠のなかを懐中電灯でさぐる。なにかいると感じたとき何ものかがギャーと叫びながら向かってきた。一瞬ひるんだ。が、塚原弥生だと判った。
「見つかっちゃった」
言って弥生が傍までやってきた。
「塚原、ここんなかにいるのおまえだけ?」
小さな声で広田が尋ねてきた。
「そうよわたしだけ。でも見つかっちゃったから外へでるけどね」
「なあ塚原さんちょっと教えてくれない。坂井貴子はどこへかくれてんの? あいつだけまだ見かけてないんだ」
広田が優しい声で訊いた。
「だめよ。秘密だもん。おしえたら不公平よ」
弥生が少しむくれてみせた。
「なぁ、頼むよ。ここさえクリアしたらおれオトコでいられるんだ。な、わかってくれよ。このとおり。ね」
広田もしつこくすがる。
弥生がしかたないなーって感じで、小声で言った。
「あのね。この祠を出た左の茂みにかくれてるわ。ここから男の子がでてきたところをワッておどかすの。岡君もそれで腰をぬかしちゃったの」
「なんだそうか。ありがとな。おしえてくれて。やっぱ塚原はいいやつだ」
「じゃぁわたし行くから。気をつけてね」
弥生は舌をだした。そして外へトットとでて行った。広田はさっそく自分の札を見つけにかかった。
自分の札をしっかりつかみ祠から出ようとして広田は立ち止まった。ここを出たところに坂井がかくれてておれを脅そうとしてるんだったな。幼稚っぽい。女の子の考えそうなことだなまったく。だったらこっちはいっきに駆けぬけてやる。そう考えて息を吸い込んでまさに走ろうとしたその瞬間、フォフォフォフォという声がして宇宙人ダダが現れた。
広田、貴子、弥生が祠にいる。貴子は手にダダのマスクを持っている。
「さあ立ちなさいよ」
貴子が広田に言った。
「立てないんでしょ。腰が抜けて」
広田は弥生をにらんでいた。「このうそをつき女め」そればかり繰りかえしている。
「あなたがズルしようとしたんでしょ。自業自得よ。いい気味ね。 わたし監視員の女の子を呼んでくる」
そう言って弥生がかけていく。
まもなく由美、マリ、梨絵が来た。
「またあなたたちのグループなの」
貴子は驚いた。
「そう。今夜はわたしたち小悪魔なの。意気地なしの男子をみつけて魔女サマに引き渡すの。そして魔女サマはその子の弱虫キンタマを切ってしまうの。ねー由美、梨絵」
とマリが答えた。
「広田君、このことは執行官に報告するわね。規則だから」由美が改まった。
「そうよ。規則だから仕方ないわ。オトコはあきらめが肝心よ。それに腰をぬかしただけなら軽い処罰ですむはずよ」
と梨絵が続いた。広田がそれにつられて
「軽い処罰って?」
梨絵が答えた。
「広田君はねキンタマを切り捨てられるだけですむってこと。腰をぬかしてしまったけどキンタマをつぶされることはないはずよ。男の人ってキンタマをつぶされたら死ぬかもしれないんでしょ? 死ぬ思いはしないですむわ。岡君はシュッて一瞬のうちにキンタマを取られたわ。それで終わったわ。それだけよ。なにもこわがることないじゃない」
「おまえオンナだからそんなこと言えるんだよ。俺はキンタマを切られたくないよー。やばいよー。助けてくれよ」
広田は哀願した。
「広田君あなたも一応男でしょ?いさぎよくしなさいよ。意気地なしな男子はキンタマをぶら下げてる資格なんてないわ。男をやめさせられるの。女の子になるの。あなたはこれからわたしたち女子の見ている前で金玉を切り捨てられるのよ。ブルマーがはけるわね。よかったわね」
由美が冷たく言い放った。
「ねえねえ、キンタマって邪魔なんでしょ? あんなものぶら下げててちゃんと歩けるの? わたし無いからぜ~んぜんOKよ。わたしは金玉なんていらないわ。ほらここにいるわたしたちみーんなキンタマなんてぶら下げないですむ女の子だもん。ねー、由美」
マリがちゃかした。
「もーうマリったら」
由美が困ったもんねって感じで言った。
女の子たちは爆笑した。
それはわたしたちはキンタマのない優れた生き物よという勝ち誇った笑いだった。
広田は追いつめられた。広田は這いずりながら弥生の足をつかんだ。このうそつきおんなめーって言いながら弥生をたおした。そしてそのうえに覆いかぶさろうとした。が、急に広田の体がくずれた。うめいている。由美がうしろから広田の金玉を思いっきり蹴り上げたのだった。
由美はうめいている広田に言った。
「女の子にぼうりょくをふるってあんたはおとこのクズよ。クズはクズらしい処罰を受ければいいわ。執行官はきっと厳罰に処すわ」(つづく)
女の子っていい!
第五章
「みてみて、また由美たち男の子連れてるよ。えーまた誰かタマ取られちゃうの? 今度は誰?」
「あれ広田君じゃない。うそー、広田君は合格すると思ってたのにー。広田君もタマなくなっちゃうんだ」
「今夜の由美、マリ、梨絵は男の子にとっては死神ね!」
「広田の奴ちゃらちゃらしてわたしたちオンナをなめてたからいい気味ね。キンタマもぎ取られてザマーミロね」
由美と梨絵がそれぞれ広田の両腕をかためてマリが先導して歩いてきた。マリが体育館の扉を開けた。執行官がこちらを見た。広田はステージへと連れて行かれた。
梨絵が腰をぬかした事、塚原弥生に暴力をふるった事を報告した。二人の執行官の顔つきが変わった。
広田を執行官に引き渡すと野田クミは岡君の時と同じように上半身をしばり、下半身をはだかにした。おチンチンがプルッとした。けれど今回は誰も叫び声を出さなかった。広田はばたっと倒れたが由美もマリも梨絵も助けなかった。クミは倒れている広田の両足に割ってはいった。そして先端がワッカになっている細いひもを広田の金玉袋の付けねに通してワッカを閉じてしまった。広田のキンタマは逃げ場をうしなった。そしてその細いひものもう一方の端に分銅をむすびつけた。それから野田クミは広田をしゃがませないようにうしろから抱き上げて立たせた。ひもの長さが足より短かいのでおもりがキンタマにすべてかかった。キンタマがおもりに引っ張られてちぎれそうになっている。広田がヒーッと悲鳴をあげた。
「うるさい」
と野田クミはそのおもりをゆすった。おもりがゆれるとキンタマはますますひっぱられてゆれる。恐怖のため広田はふるえていた。
キンタマに分銅を下げられた広田の姿は情けなかった。広田がふるえているのでおチンチンもいっしょになってプルプル振れている。タマは千切れそうでおもりと共にブラブラしている。おもわず梨絵はブルマーに手をあてていた。“ない”事を無意識のうちに調べていた。
マリは前かがみになりブルマーの股の部分を見た。それからチラッと由美と梨絵のブルマー姿も見てみた。更に藤井しのぶさんと野田クミさんのブルマー姿も眺めた。みんな股間がなめらかな流線型をしている。それはムダのないきれいで完璧なフォルムといえた。
由美は広田に同情した。広田は男の子だから去勢検査を受けなければならなかった。そして失格してしまった。おまけに八つ当たりをしてその挙句女の子に暴力までふるった。たぶん極刑に処せられキンタマはつぶされるはずだ。
この地方では男にうまれる事は不幸だと由美は実感した。
そこへもう一組女の子の監視員がはいってきた。相田佳代、水野安奈と中田千代の3人だ。つれてこられた男の子は村井佑だった。身長は中ぐらいのやさしい顔立ちの少し痩せた男の子だった。
村井佑も貴子によって失格させられたのだ。
「こっちへ来なさい」
藤井しのぶが声をかけた。
佳代と千代と安奈は広田誠を見てキャッと飛び跳ねた。
「おどろくことはないわ。弱虫で卑劣な男の子には重い罰をうけさせるわ」
藤井しのぶが佳代たちにここまでの事を話した。
気が落ちついて佳代が村井佑はこわくて腰をぬかした事を報告した。
村井君はステージに上げられて腕が使えないよう上半身をしばられて下半身をはだかにされた。おチンチンがプルルンとした。女の子たちはクスッと笑った。
このぶんなら村井君はキンタマを切り捨てられるだけですみそうねと由美は思った。
「いつまでも男の子がびくついてんじゃないの」
藤井しのぶが叱りつけた。
「広田誠、キミは本日の去勢検査に不合格となりました。よってキミを去勢します。なお、キミは塚原弥生さんに暴力をはたらき怪我を負わせました。その罪は重いです。広田誠の金玉はつぶすこととします」
女の子たちはおもわずヤッターと歓声をあげた。藤井しのぶは苦笑いした。
広田は
「許して下さい。金玉をつぶさないで下さい。執行官のかた、おねがいです。金玉をつぶさないで下さい。おねがいします。・・・どうしてもダメなのならせめてキンタマを切り捨てるだけにして下さい」
と大声で懇願した。
が、野田クミは
「キミのように女の子に暴力をふるった男子は決して許されないの。塚原弥生さんは傷を負ったわ。アザが残るかもしれない。女の子の肌にキズをつけたらただではすまないの。重罪よ。そして男の子はその罪を金玉でもってつぐなわされるの。キミは今から罰を受けるの。容赦しないわ。キミの金玉はつぶすわ」
と広田に引導をわたした。と同時に金玉をはたいた。
広田は股間をおさえてへたれこんだ。女の子たちがいっせいに嘲笑した。女の子全員が“広田は金玉をつぶされて罪をつぐなうべき”と思っていた。
やがてどこからともなく“きんたまつぶせ”コールが起きた。
「きんたまつぶせ」「きんたまつぶせ」「きんたまつぶせ」「きんたまつぶせ」
大合唱となった。
広田は自分が女の子に嫌われていたことをここで初めて知った。奈落の底へ突き落とされた。オンナの恐ろしさをイヤというほどおもいしらされた。
悔しかった。何か言ってやろうと思った。しかし何も思いつかなかった。その時ブルマー姿の三原由美、桜井マリと飯田梨絵、相田佳代、水野安奈と中田千代が目に入った。手を打ちコールしているその姿、股間のラインがきれいだった。すると突然『女の子がうらやましい』と頭に浮かんだ 広田の気持ちが伝わったのか、野田クミが
「さあ、みにくいキンタマはさっさとつぶして女の子になろうね」
と声をかけてきた。
広田は絞りだすような声をだした
「罰をうけます。僕のきんたまをつぶして下さい」
きんたまつぶせコールはたちまちやんだ。代わりに一斉に拍手が沸き起こった。それは去勢後、広田を女の子の一員として迎え入れるという歓迎の拍手だった。
野田クミはステージの裏から万力を台車に載せて運んできた。
野田クミは広田を体育すわりにさせた。
それから後ろから広田のひざを持って抱きかかえた。同時におもりも宙に浮く。するとキンタマはお尻より下の位置へグイんと引き伸ばされた。そのままの姿勢で万力まで連れていった。万力は大きく開ていた。その空間にキンタマをいれた。藤井しのぶがレバーをまわして万力をせばめていった。万力の鉄の塊がキンタマにあたったところで藤井しのぶはレバーをまわすのを止めた。
広田誠は事態が切迫してきたのを感じた。万力でつぶされるのだ。つぶされることを覚悟したとはいえ怖ろしかった。どんな苦しみが待ちうけているのか?ここに居る自分以外の人間はこの恐怖を一生涯知らずにすむオンナたちばかりだ。好奇心くらいでしか同情してくれない。オンナだけの中でたったひとりこの恐怖を体験させられるオトコの自分が奇妙な存在に思えた。
「誰かレバーをまわしたい人?」
藤井しのぶが女の子たちに訊いた。
「わたしやります」
由美が手をあげた。
いい、ゆっくりまわすのよ。藤井しのぶが指導した。由美はレバーに手をかけた。野田クミが「執行」と言った。
ゆっくりまわしはじめた。広田誠がうっと唸る。ひるまずまわしていく。ううううーと呻く。広田は舌をかまないように口の中いっぱいに脱脂綿を詰めこまれていた。広田の身体が震えはじめた。野田クミがからだをしっかりおさえている。由美はひるまなかった。ここでやめては広田のキンタマを赦してしまう。弥生に傷跡をつけた広田のキンタマに罪をつぐなわせたかった。広田の身体がガクガク揺れだした。キンタマをつぶされるのってこんなにもすざましい苦しみなの。男ってなんでこんな危ないもの股にぶら下げてるの。でももう二度とこの苦しみは味わうこともなくなるのでしょうけど…つぶしちゃっていいの・・・。由美に迷いが生じはじめた。・・・このキンタマは許さない。
そうだわ、こんな痛いおもいをもう決してしなくてすむように確実につぶしてあげなくっちゃ!
とっ、なにか破裂したような感触があった。
広田はガクンと落ちた。全身のちからがぬけたようだ。白目を剥いて引きつっている。哀れな姿だった。レバーにもう手ごたえはなかった。
由美は手をとめた。
「広田誠のキンタマは三原由美さんによってつぶされました」
野田クミが言った。
藤井しのぶはレバーをゆるめた。野田クミが広田を万力から離してあおむけに寝かせた。去勢バサミを持って袋ごと切ってすてた。それからすぐさま医療用のはさみを持ちだしおチンチンも切ってしまった。
女の子のからだに傷をつけた代償を広田はからだでもって支払わされた。
「うわー、こわいよー。助けてくださいー」
叫びながら村井は出口へ走った。(つづく)
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第六章
村井佑はとにかく逃げた。必死で逃げた。その甲斐あってかなんとか逃げきった。というのも藤井しのぶと野田クミは広田の介抱でそれどころではなかったのと女の子たち全員が先ほどまで行なわれていた処刑のショックで動くことはおろか声も挙げられないでいたからだった。
村井が校舎を駆け抜けて今まさに脱出完了という校門まできた時、坂井貴子と塚原弥生に鉢合わせてしまった。貴子と弥生は今回こそ自分たちが失格にした男の子の処刑を見ようとブルマー&体操服姿で急いで学校へ戻ってきていた。
「あれ、村井君じゃない?もう処刑されたの?」
と弥生。
「裸じゃないの。それにおちんちんもタマタマもまだあるみたいだし…もしかして…逃げ出してきちゃったとか?」
と貴子。
「あー、それって脱走ってことでしょっ? 脱走兵は罪重くなるんだよー、知ってた?」
と再び弥生。
「わたし、それお姉ちゃんから聴いたことある。むかしから脱走兵は死刑にあたいするんだって、だから…」
と貴子は村井の顔の表情を見た。
「おい、だからどうなるんだよ…」
と村井が不安げな顔をさせて訊いた。
貴子が待ってましたとばかりに意地悪く、
「いいこと、お・し・え・てあげる。だから脱走した男の子はキンタマをおもいっきりつぶされるんだって、ねーどうする村井君」
「それ、まさか…うそだろ、坂井、悪い冗談やめてくれよ。おれは只逃げただけじゃないか。誰にも暴力なんて振るってないしさぁ…」
村井が自分を正当化しようとした。
「信じないのなら別にかまわなくってよ。その話チョーおもしろいから弥生に話してあげるわ」
と貴子がまたいじめた。
「村井君も冥土のみやげに聴いていけばいいじゃない」
負けずと弥生も村井にいじわるした。
「めいどのみやげなんて縁起のわるいこと言うなよ」
村井が少しむっとした。
貴子が話し始めた。
「お姉ちゃんが10歳の時だから今から4年前、その年は失格になった男の子は二人だったんだって。それで最初に処刑された男の子は今日の岡君みたいにスパッってあっさりきんたまを切り捨てられたんだって。そしてもう一人の男の子の番になったんだけどその男の子『いやだー。ぼく、おんなのこに成りたくないよー』ってまわりに居た女の子を数人突き飛ばして逃げ出したらしいの。でも怒った女の子みんなにすぐ取り押さえられてしまったの。先輩の執行官が『逃げるなんて卑怯な男の子はひどい目に遭うの。あなたの金玉は一個ずつつぶしてやるわ』って言ってさっそく潰しにかかったの、でもその男の子わんわん、ビービー泣いてたって。それでも執行官は手をゆるめないで一気に潰してしまったって。そしたらその男の子“カクン”って失神したんだって。さっきまであれだけ泣き叫んでた男の子が金玉つぶされた途端に急にシーンってなったものだから女の子みんな大笑いしたんだって。なんかわかるよね。わたしもお姉ちゃんからこの話聞いた時おもわず笑ちゃったもん」
貴子は話しながら少し笑っていた。
弥生も笑っていた。
一方、村井は顔が引き攣っていた。かろうじて尋ねることが出来た。
「で、それからどうなったのさ?」
「やっぱり気になるんだ。そりゃそうよね。これから村井君の大事な大事なタマタマちゃんの運命もわかっちゃうとこなんだもんねー」
貴子がからかった。
「よせやい。おれはそんなことにはなんないさ。ただ、話がおもしろかったから続きを聞きたいだけだよ」
村井がうそぶいた。
いいわ、続きを話すわ。貴子が再び始めた。
「処刑を続けるために失神している男の子を無理やり起こしたんだって。そしたらその男の子、手を擦りあわせて『お願いします。もうつぶさないでください。お願いします。この通りです。』って拝んだんだって。それで執行官は『左の金玉だけつぶされて右はそのままっていうんじゃぁ、不公平でしょう。平等に右も潰してしまわないと』って言ったの。それでも尚クドクドと命乞いをしてたらしいの。あっ命乞いじゃなくて、タマ乞いか。ハハ。それでとうとう執行官はこう言ったんだって『金玉が三個なくて良かったって思えばいいのよ。そしたらもう一個つぶされても耐えれるでしょ』って。で、その男の子が『えーっ、三個もですかー』って言ったやさきにエイッって二個目も潰しちゃったんだって。そしたらその男の子また気絶したらしいの。わたしこの話ここまで聴いた時大笑いしちゃった。だって、その男の子“三個もですかー”って自分で金玉が三個あったらどうしようって想像した途端に残るもう一個の金玉をつぶされちゃってるんだもん。そして次に目を覚ました時には二個とも無くなっててさー。まぬけーっていうところがかわいくて可笑しかったわ。」貴子は笑っていた。
弥生はゲラゲラ笑っていた。
村井は顔が真っ青になっていた。
気をとり戻した貴子が村井君に言った。
「そういうわけで、悪いけどわたしたちあなたを見逃してあげるわけにはいかないわ」
「そうね、わたしたちこの地域のおんなは弱虫な男の子を滅ぼそうってこの試験やってんだもんね」
と弥生。
「どうすんのさ」
おずおずと村井が尋ねた。
貴子があっさり、
「このまま執行官に引き渡すわ。そして村井君は脱走兵としての処刑を受けるわ。気の毒だけどたぶん金玉を潰されると思う。それがここの掟だもの」
と言った。
「そうねぇ、掟だもんねー。どうしようもないわ。できる事と言えば弱虫な男の子に生まれてきたことを後悔するしかないわねー。あとはできるだけ痛くないように潰してもらうしかないかなー」
弥生にはまったく他人事のようだ。
「じゃあ、どうしてもおれを逃がしてくれないんだな」
念を押すかのように村井が訊いた。
貴子と弥生はうなずいた。
村井は「このーっ」って言いながら弥生へ向かって駆け出した。両手を縛られている村井は細身タイプの弥生に突破口を切り開こうとした。弥生は声をあげてよけたがそれでもはじき飛ばされた。貴子が「絶対逃がさないからねー」と言い、村井の後を追った。と、村井が振り向いて貴子に頭から向かって来た。貴子はふいのことでよけきれず、もろに頭突きを喰らってひっくり返ってしまった。
村井はここで止せばいいのに、ついずにのってしまい貴子に覆いかぶさろうとした。「う!」と短い声を発したとおもったらしゃがみこんでしまった。倒れた姿勢でも貴子の右ひざが見事金玉を蹴り上げたのだ。勝負はあった。村井は貴子と弥生に両脇を取られたまま体育館へと連れられて行った。(つづく)
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第七章
村井は貴子と弥生に脇をとられ、体育館へと連れられて行くところだった。貴子と弥生はブルマ姿だった。一方村井は全裸でいわゆるフルチンだった。
貴子は村井が歩くたびにオチンチンがプルプルするのが変な気がした。自分の股間は流線形を描いてスッキリしてるのに、男の子ってなんて奇妙なもの股に付けなくっちゃならないの?
さっきからずっと歩いていくあいだじゅうオチンチンはプルッて振られっぱなし。村井君は見たところなにも感じてないみたいだけどあんなにプルプルさせていて邪魔じゃないのかしら?
おまけにその下にはキンタマまでぶら下げてるっていうじゃない?
よくうまく歩けるわね?
貴子は急に村井にそのことで尋ねたくなった。
弥生は弥生でさっきから村井君の足が動くつどオチンチンがプルルンプルルンするのがおかしくて仕方がなかった。
一方、村井の方も自分のオチンチンが歩を進めるごとにプルプルゆれているのが恥ずかしくて仕方なかった。うつむきかげんでチラッと両脇の女の子の股間を盗み見した。
二人ともブルマをはいていてその股間はスムースに見えた。しかも貴子はブルマにワレメ線が見えていた。ブルマをピタッとはいた女子のワレメ線を見るのは全裸を見ることに近いものを感じた。しかも貴子は学級委員であたまがよく美人タイプだ。“いけね! 大きくなる”と思った瞬間、弥生がプッって吹きだした。
「やだー村井君、いまわたしらのブルマの前のほうをチラッと見たでしょ? どうして? もしかしてわたしたちのと自分のとを比べてみたかったんじゃない? あはは。そうでしょ?だってわたしもさっきからあなたのオチンチンがプルルンゆれるのがおかしくておかしくてしょうがなかったの。あははは。おもしろー」
そう言って弥生は右手を自分の股間にもっていき人差し指を突きだしてオチンチンにみたててふってみた。
「ねぇねぇこんな感じなんでしょ? あははは、おかしー、チョウおもしろーい」
弥生は活発な女の子で、思いついたことは何でも口に出すタイプだった。
「弥生、やめなさいよ。いくら村井君が検査に不合格になって男の子をやめさせられるとはいえ失礼じゃないの。それに切り捨てられるのはキンタマのほうよ、オチンチンじゃないわ。だからオチンチンを見てからかうのはかわいそうよ」
村井は顔を真っ赤にしてうつむいていた。
「もう、貴子はなーんもわかってないんだから」
弥生は本心でそう言った。
「ほら、村井君のオチンチンを見て少し大きくなってるでしょ? あれ、貴子のブルマの前を見てからああ成ってきたんだよ。きょうの貴子、ブルマにワレメが入って見えるから、それで村井の奴エッチな気分になったんだよ!」
貴子は急いで自分のブルマの前を見てみた。
「きゃっ!!」
「村井君のエッチ!!!」
「もおー、はずかしいー、やだー!!」
そう言いながら貴子は恥ずかしさのあまりしゃがみ込んでしまった。
「だからいわないこっちゃないのよ。それに貴子は知らなかったのかもしれないけど、オチンチンも結局は切られちゃうのよ。『こんなものもう必要ないでしょ』とか言われて」
貴子はさすが優等生でもう気を取り直して村井と弥生を背にして立ち上がり、ブルマの内股のところから左右の中指をそれぞれつっこんで下に引っぱり上に持ち上げしブルマのくい込みを直した。そして「どう!?」って感じでくるりと振り返った。
村井はいままでうつむいていた顔を思わず上げて貴子のブルマ姿に魅入ってしまった。少女としてのすべてのきれいさがそこにはあった。
「あー、村井の奴また大きくなってきているよ。ねー貴子、こいつに制裁を加えないといい気になってるよ」
「そうよねー、わたしたちのブルマ姿を見てオチンチンを大きくした罰として今からわたしの質問に必ず答えること」
貴子は先程考えていた疑問を村井にしてみようとした。
村井はいまから何をされるのか不安が湧いてきた。
「質問1、歩くときオチンチンがプルってしてるけど自分では変だとは思わないの?」
「ナイスクエスチョン! さすが貴子よね。訊きたいこと言ってくれる。さぁ、答えなさいよ、村井君」
暫く沈黙があって、村井が答えた。「いままではそんなに気になったことはなかったけど、今日二人に挟まれて歩いていて自分の股間だけプルプルゆれるのがスゲー恥ずかしかった」
「ふ~ん、そうだったんだ。それでわたしらのブルマの前見ちゃったんだ。それでどう思ったの?」
と今度は弥生が訊く。
「おれの股と異うって、なにも無いからスッキリしててすご歩きやすそーって」
村井が正直なところを言った。
二人の女の子はお互いのブルマの前を見合って、お互いにスムースな股間であることを目と目で褒めあった。
「質問2、キンタマをぶら下げててちゃんと歩けるの? 邪魔じゃないの?」
「これもナイスなクエスチョンねー、さすがわれらが貴子姫」
「時々、足と足のあいだにはさんだりすることもある。いつだったかは忘れたけど教室の机の角に金玉をぶつけてしまいスゲー痛い思いをして邪魔ーと思った」
村井は話していくうちに楽な気持ちになってきてまじめにこう答えた。
「やっぱ、邪魔だったんだ。男の子ってかわいそー!!」
弥生は嬉しそうだった。女の子でいられる優越感を味わっていた。
貴子が続ける。
「質問3、男の子でいたいですか?」
「あー、それわたしもゼッタイ訊きたい」
弥生が賛同した。
「あー、昨日までは。でも今日おまえら二人に驚かされて不合格になって金玉を切り取られることになって体育館へ連れられて行って、広田が金玉潰されていったのを見て逃げ出しておまえらに捕まりまた連れていかれる途中に、おまえら二人のブルマ姿見てて女の子っていいなぁって思うようになった。男の子は金玉をぶら下げないといけないんでぶざまかなって」
「プッ、ぶざまって表現ぴったりじゃん! ねー、貴子。男の人ってキンタマぶら下げてるから確かにぶざまよねー」
弥生はますます得意気だ。
「じゃぁ、女の子になるの覚悟したのね?」
貴子が話題を変えるのも兼ねて尋ねた。
こくりと村井が頷いた。
「でも村井君は、キンタマ切り捨てられるんじゃなくて、つぶされちゃうのよ。それでもいいの? ねー貴子何かいい考えないの?」
弥生が村井を助けた。
「そうねぇ、じゃぁこう言えばどうかしら? 『村井君は逃げたんじゃなくて広田君の処刑を見て気分が悪くなって外へ出てたって。そこへわたしたちと遭ったって。それでこうして今戻ってきました』って。それなら執行官も情状酌量も考えてくれるとおもうわ」
「なーんて貴子って頭いいの。わたし感心しちゃうわ。村井君、わたしたちがいま貴子が言った様に執行官に報告してあげるから、つぶされないで済むわよ。きっと。さぁ行きましょう」
三人は体育館へと向かった。
体育館ではちょうど貴子が、村井君は恐くて逃げたのではなくて気分が悪くなって外へ出ていたという旨の話をし終えたところだった。
執行官の藤井しのぶと野田クミはそれについて話し合っていた。
クミは、何の理由であれ姿をくらましたのは逃亡罪にあたるとして、金玉を潰すよう強く主張した。一方のしのぶは、18歳の時にも一度執行官を任せられた経験があるだけに、他の方法を考えていた。というのも貴子と弥生の話には信憑性は低いものの村井の味方になっているという点が見過ごせなかったからである。ここであまり厳罰を施すと、女の子たちから残酷すぎると非難をあびかねなく、この制度そのものの存続が脅かされかねない危険があるからだ。
弱い男の子は金玉を切り捨てられるというこの制度は、この地域社会に有益だとしのぶは信じていた。しのぶはクミにそう諭した。
「それでは、村井佑の処置を宣告します。逃亡罪にあたり金玉を一個ずつ潰していくのが掟になっていますが、広田の処刑を見た後なら誰もが恐れをなすのも仕方なしとして、自決と致します」
しのぶがこう告げた。
自決? 自決って? じけつ? みんな意味が分からないようだった。
そこでしのぶが説明した。
「自決。つまり村井には自分で自分の金玉を切り取ってもらいます。これは自決でしょ?」
あーそうかという雰囲気が会場中に拡がった。村井も少し安堵したようにみえた。貴子と弥生は手を合わせて喜んだ。
「村井君厳罰にならなくてすんだわ、弥生」
「これでもわたしたち少しは役には立てたのね、貴子」
「何言ってんの弥生、少しどころか大いによ。だってこれで村井君つぶされなくて済んだんだもの」
クミが、例の毛抜きバサミを大きくしたような人用の去勢バサミを持って来て、村井に手渡した。村井はその刃を見てびくついた。いったいこれまで何人の男の子の金玉を切ってきたんだろう。クミはそれを察して、
「そうねー、年に2~3人の男の子が金玉を切り捨てられてきてるから百人は下らないんじゃない。だから200個以上の金玉をこの世から葬り去ったって計算になるわねー。だから安心して、実績あるから。切れ味抜群だから」
と、妙な励まし方をした。
続いてクミは言った。
「わたしがあなたの金玉袋をつかんでてあげるから、あなたはそのハサミを根元にあてがって、一気に自分の金玉を取りなさい」
クミが村井に説明しているのをしのぶは聞いていた。
“金玉の無いクミが金玉の切り取り方を教えている。変な光景だわ”。心の中でそう思っていた。“弱い男の子はこの地域では金玉を切り取られてしまう。そしてその男の子は徴兵義務が無くなり、18歳になった時に徴兵に行かなくて済む。残った大多数の男の子は18歳になると徴兵義務で召集される。そこでは地獄の特訓が待っているみたいだ。厳しい訓練に耐えられなくて自殺する者は相当数いるらしい。弟が徴兵義務から戻ってきて姉のしのぶにこっそりと打ち明けてくれた。
『女にうまれてくれば良かったと何度思ったことか。お姉ちゃんは女で良かったね』と。
”10歳で弱い男の子の判別をつけて、金玉を切り取って女の子にしてしまうのはその子のためにもなるはずだわ”
しのぶはそう確信して執行官の任務を引き受けているのだった。
女の子たちは、誰もが口をふさいでこれから起こることに固唾をのんで待っていた。かわいそーだとか、いたそーだとか、こわそーだとか、それぞれが思い思いの感情を抱いているのだが、一つだけ共通していることがあった。
「女の子でよかった!」
「これより村井佑の去勢を執り行います」
クミがいよいよ執行開始を告げた。
「なお、この度は去勢人自らが自分の金玉を切り取ります。それでは去勢人村井佑、始めなさい」
クミが村井の袋をつかんで下へ引っぱった。
「こうしたほうが切りやすいでしょ。なに、大丈夫よ。そんなに痛くはないはずだから。さっきも言ったようにこれまでに200個もの金玉を抹殺してきてるんだから」
クミは、今でも本心では村井の金玉は潰すべきだと思っていたので、言葉にトゲが表れる。
村井の指に力がはいる。さあ、もう間もなくだ。という間際になって
「ぼく、できないよー」
と村井がべそをかいた。
「なにっを言ってのいまさら」
クミがしかりつける。
「はやいとこその弱虫金玉のかたをつけなさい!」
クミは手厳しかった。
しのぶが見かねて口を出した。
「村井君あなたが弱虫なんじゃないのよ。そこにぶら下がってる金玉が弱虫だから、あなたも弱虫にされちゃうの。だからそこの金玉を切り取ってしまえば、もう弱虫って言われることもなくなるわ。女の子になればもう決して言われないから。がんばって切っちゃいなさい」
それでもまだ村井は躊躇していた。なかなか決心をつけかねている様だった。
仕方ないわねーとしのぶは思って、
「学級委員の坂井貴子さーん、あなた村井君を手伝ってあげて」
と貴子を呼んだ。
貴子がステージ上にあがって来た。しのぶに「村井君と一緒にハサミを持って切り取るのを助けてあげて」と言われた。
「はい。わかりました」
と素直に答えると、貴子は村井のところへ行き
「わたしが手伝ってあげるから、今度はキンタマを一気に切り取っちゃおうね」
村井がこくりと頷いた。これで村井も覚悟したようだ。“さすが美人の学級委員は違うわねー”としのぶは内心感心した。
なんか貴子がいつもよりも増して生き生きしていた。
「せーの!」
貴子の掛け声とともに、二人の指にちからがこもった。シューッって音がした時には、村井の金玉は本人から離れていた。
「はい、確かにわたしの手に有るものは村井佑の金玉です。これで去勢が終わりました」
クミが終わりを告げた。クミは村井に、
「オチンチンはどうしよう? 女の子には無いものだから切っとく?」
と尋ねた。
村井さんが小さく頷くと、すぐに裁ちバサミを持ってきてオチンチンを左手でつかみ、少し引っぱって右手に持ったハサミを根元にあてがい、チョキンーと切ってしまった。クミは、この時点でさえ潰すべきだったと考えていたので、どうしても村井さんに優しく接することが出来なかった。18歳の若さだから仕方ないのかもしれないが。
こうしてこの年の男子の去勢検査が終わった。三人の男の子が女の子にされた。
これは来年もそして再来年もという具合に延々と続いていくだろう。
広田の金玉を潰した由美、村井の金玉を切り取った貴子。
この二人は将来の執行官候補ともう噂されている。それは一度男を支配したらそのあじが忘れられないと言われているからである。(おわり)
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投稿:2007.03.25
女の子っていい!by ブルマー世代(削除されたHPからの転載)
著者 匿名 様 / アクセス 55609 / ♥ 9