禁断の精神病棟
第1章 誘拐
第2章 診察
第3章 解放されて
第4章 長男
第5章 いじめ
第6章 強要
第7章 予告
第8章 スカート
第9章 再び拉致されて
第10章 償い
第11章 秘密
第12章 教室で
第13章 女の子として
第1章 誘拐
「ねえ、今年の夏も苗場に行くのかなあ」
「行くんじゃないの。パパもお休みとれそうだから」
「今年はテニスするって言っていたから、僕も練習しなきゃいけないかな?」
「そうね。お姉さんが教えてあげようか?」
「うん、行く前に上手になっていたいからね」
空はもう夏空になっていて、日差しが眩しい。
ボクは河合由紀、中学一年生。
お姉さんは河合貴子、中学3年生。
二人とも、私立の城南学園に通っている。
今日は二人ともクラブもないから、一緒に帰ることにしたんだ。
僕達が通っている城南学園はお金持ちが多いから、夏は外国に行く人も多いみ
たいだ。
パパは普通のサラリーマンだから苗場にあるリゾートマンションで避暑するこ
とになっている。
お姉さんはブレザーの下に白い半袖のブラウスを着て赤いリボンを付けている。
下は、チェックのミニスカートだ。
髪は長くてポニーテールにしている。
僕は、ブレザーにネクタイって恰好をしている。
最近お姉さんきれいになったみたい。
なんだかまぶしい。
お姉さんの制服を見つめているのに気が付いてくすっと笑った。
「あら、ゆきちゃんったら女の子の制服に興味があるの?」
くすっと笑った。
「貸して上げようか?似合うかもね」
「冗談はよしてよ」
顔を赤くして断った。
「でも、ゆきちゃん相変わらずちっちゃいわね。
お友達は、随分大きくなっているのにね」
「しょうがないじゃない。そのうちに伸びるよ」
「そうねー。それに色も白いし、まだ髭も生えていないのね。
そのうち、私のクラスの男の子みたいに、男っぽくなるのかしらね?」
笑いながら僕を見ている。
「何だか想像できないわ。お姉さんは今のままの方が好きなんだけどね」
そう言って微笑んだ。
「ゆきちゃんの事、お友達の間では可愛いって評判よ」
「そんなのやだ」
「あら、いいじゃない醜いって言われるよりか」
「そりゃあ、そうだけど」
そんなどうでも良いことを話しながら駅の方に歩いていた。
キー、と大きな音がした
驚いて横を見た。
大きな男の人達が車から降りて来た。
「河合さんですか?」
「そうですけど」
お姉さんが脅えたような声で答えた。
「君は?」
「弟ですけど」
「おい、一人じゃなかったのか?」
「いや、いいんだろう」
と囁いている。
いやな予感がした。
無理矢理車に連れ込まれてしまった。
必死に抵抗したんだけど、相手の力が強くてどうしようもなかった。
あいにく、周囲には人影がなかった。
車の中で、お姉さんと一緒に男の人達にはさまれて恐怖でふるえた。
「な、何なんですかあなた達は?」
「黙っていろ」
どうやら僕達は誘拐されてしまったみたいだ。
まさか、TVドラマみたいなことが僕達の身に降りかかるなんて。
夢でも見ているみたいな気分だ。
空も青く明るい日差しがうそのようだ。
車は猛スピードでしばらく走ったと思うと、古い倉庫の中に入っていった。
「降りろ」
ボク達は車から降ろされ、倉庫の中の小さな部屋に連れていかれた。
二人共後ろ手で椅子にしばられてしまった。
「一体あなた達は誰なんですか?」
「こんなの、まるっきり誘拐じゃないですか?」
お姉さんが男の人に向かってかみついた。
ボクは恐くって何にも言えない。
足ががたがた震えてくる。
「お嬢ちゃん達、しばらくこのままでいてもらうよ」
「叫んでも、外には聞こえないし誰も来ないからな」
と言って出ていってしまった。
「どうしよう、僕達誘拐されてしまったみたい」
恐いのをがまんして、お姉さんに話し掛けた。
「そんなこと、みりゃわかるでしょう。
でも、何で私たちが誘拐されたのかしら?
学校にはもっとお金持ちが一杯いるのに・・・」
腑に落ちない様子でお姉さんは考え込んでいる。
「僕恐い」
体が震えて止まらない。
「落着きなさい、ゆきちゃん」
「何だか変だわ」
とやっぱり顔をかしげている。
「ちょっと様子をみるしかないわね」
お姉さんは覚悟を決めた様子で目を閉じている。
一体ボク達はどうなってしまうんだろう・・・
隣の部屋で電話で話しているような声がかすかに聞こえる。
なんだか、いらだっている様子だ。
急に大きな音を立てて部屋のドアが開いた。
さっきの男の人達と、30位の女の人が入って来た。
「本当にあなた達って役に立たないわね」
「あねご、そんな事言ってもこれは間違えてしまいますよ」
「馬鹿、だからおまえ達はいつまでも下っ端なんだよ」
なんだか僕達は間違ってさらわれたみたいだ。
「やっぱり」
「あなた達は、河合智子さんの方を誘拐するつもりだったんでしょう」
「良くわかったわね」
「このぼんくら共よりかよっぽど頭が働くわね」
「じゃあ、もう家に帰してもらえますか」
「私達、この事は誰にも言いませんから」
お姉さんが女の人に向かって必死にお願いした。
「絶対に言いませんから」
ボクもお願いした。
「残念だけど、それは無理ね。
もう、警察も非常線を張ってしまってるわ。
それに、私達の顔を見てしまったからね」
「そんなー」
僕は絶望的な声を上げた。
女の人は男の人達の方を向いて話し始めた。
「人違いしたせいで、警察にもう通報が行ってしまったはずだわ」
「お前が馬鹿だから、女の子と男の子を誘拐したってこともばれてしまった。
取りあえず安全な場所にこの子達を移して、お前達もどこかに身を隠さないと。
幸いまだ誰が誘拐されたかわからないはずだからね」
女の人がボク達を見た。
「非常線を抜けてこの二人をどうやってアジトに連れて行くかが問題だわ。
少し考えこんでいる。
「車よりも、電車の方が盲点になるかもね。
しかし、男女二人の兄弟は目に付いてしまいそうだわ」
ボク達の方に振り向いて、思案している。
「ここで埋めてしまう手もあるんだけど」
「それだけはやめて下さい。何でも言うことを聞きますから」
ボクは必死にお願いした。
お姉さんもぎょっとした顔をしている。
「ふふふ、まだそんなに危ない橋は渡る気はないから安心おし」
ふと、ボクの顔を見て
「ふーん、僕は随分と可愛い顔をしておいでだこと」
ボクのあごを持ち上げてまじまじと見ている。
「なるほどね。取りあえず警察は男女二人ってことしか知らないはずだわね」
何かつぶやいている。
僕の体とお姉さんの体をひとしきり触わってから
「サブ、この子達をしっかり見張っておくのよ」
と男の人の一人に命令した。
彼女は残りの男の人達と一緒に外に出て行った。
一体何をしようっていうんだろう?
不安で一杯になってきた。
取り敢えずは命は取られないみたいだけど・・・
1時間程してまた3人が部屋に入ってきた。
大きな手提げの紙袋を4つ持っている。
「良い子にしていたみたいね」
「ちゃんと言うことを聞いていたら、命はとらないからね」
脅すような冷たい目でボク達を見た。
「はい・・・」
女の人が紙袋の中身をどさっと机の上にぶちまけた。
目の前の机の上に、女の子の下着とスカートなどが山積みされた。
えー、何これ???
「何をするつもりなの?」
いやな予感がして叫んだ。
「ふふふ、ご想像の通りよ」
大きな声で笑ってから
「さあ、二人共早く着替えなさい」
二人の縄が解かれた。
「ふふふ、ボクはさぞ可愛い女の子になるでしょうね」
馬鹿にしたような顔で笑っている。
なんで、こんな屈辱的なことを・・・
くやしくって、涙が出て来た。
横では、お姉さんが黙って下着姿になった。
「さあ、ボクもさっさと脱ぎなさい」
「誘拐された男の子がこの世から消えたら、警察も捜し様がないでしょうね」
そう言うと僕を見て嘲笑した。
恥ずかしいけど、とにかくパンツ一枚になった。
「それも脱ぐのよ」
「えー、そんな」
「ぐずぐず言わないで。死にたくないでしょう」
「ほら、パンティとブラジャーを取って」
ボクは机の上にあるパンティを取り、急いで穿き替えた。
お姉さんはもう着替え終っている。
ボクの方に来て
「ほら、それを貸しなさい」
僕に、ブラジャーを着けた。
ブラジャーが胸を締め付ける感触が妙に恥ずかしい。
ブラウスを着て、チェックのスカートをはいた。
「思った通り良く似合うじゃない」
僕は恥ずかしさで首まで真っ赤になってしまった。
「ほら、このウィッグを被せてあげて」
渡されたウィッグをお姉さんがボクに被せて、ブラシできれいに梳いてくれた。
「いい、途中でばれたら、君たちを殺しても私達は逃げるつもりだからね」
「精一杯女の子になるのよ」
ボク達をにらみつけた。
薄くピンクのリップを付けられて、白いソックスと黒いローファーを履いた。
僕をなめるように見てから
「ふん、うまく化けたじゃない」
「これなら何とかなるかもね」
「こっち向いて可愛く笑ってみて、ポーズを取りなさい」
言われる通りいやいや笑って、ポーズをとった。
堪らなく恥ずかしい。
「そうねー、お姉さんの方は、髪を切りましょうか」
お姉さんは脅えた目で
「やめて下さい」
「駄目よ、あなたも少し変わってもらわなくっちゃ」
はさみで長い髪をショートにされてしまった。
「ふふふ、こうすると弟さんの方が女の子っぽいわね」
僕達をからかって喜んでいる。
ふと気が付くと後ろの方で男の人がビデをを持って僕達を写している。
「な、なにをしてるんですか」
ぎょっとして叫んだ。
「ふふふ、ちょっと見てみる?」
僕が女の子の服に着替えて、可愛い女の子になっていく様子が克明に写されて
いる。
しかも笑顔してポーズなんかして、如何にも喜んでやっているみたいだ。
顔が赤くなった。
最後のポーズではまるで女の子みたいだ。
「どう、もし途中で逃げ出そうとするそぶりをしたら、このビデオを学校中に配
ることにするわ」
「や、やめて下さい。そんなこと・・・」
「そう、おとなしく言うことを聞いていたらそんなことしないわ」
「それに、その恰好で助けられたりしたら、きっとテレビに映って、みんなよろ
こぶでしょうね」
「そ、そんなことやめて・・・」
思わず涙ぐんでしまった。
「それがいやなら、逃げ出さないことね」
冷たい目で僕を見た。
「それと、ボクにはしばらく女の子でいてもらうわ」
「えー。そんな・・・」
お姉さんとサブと呼ばれた男の人がペアになった。
ボクは女の人とペアになった。
まずボク僕が移動する。
ボク達が無事についたら、今度はお姉さん達が移動するということみたいだ。
「もし、変な事をしたら、お姉さんの命がないからね。
お姉さんの方も一緒だよ」
僕と女の人は倉庫を出た。
どこに連れていかれてしまうのか生きた心地がしなかった。
それに、いつ男の子だってばれるかと思って、足ががくがくしている。
スカートが恥ずかしい・・・
何でこんなことに・・・
僕達は田園都市線の駅に着いた。
警官が何人か警戒している。
やっぱり、非常線が張られている。
叫びたいんだけど、お姉さんがまだつかまっているから声を出せない。
気が付いて・・・
必死に祈って、警官の方を見たんだけど、気が付かない。
切符を買って、改札を通る。
駄目だ、誰も気が付かない・・・
ボクを見ても無関心な顔で通り過ぎて行ってしまう。
渋谷で乗り換えてから、山手線で巣鴨まで行った。
まわりには、セーラー服やブラウス姿の女子高が大勢いる。
僕は緊張で胸がどきどきしっぱなしだ。
でも、信じられない。
完全に女の子として見られている。
時々男の子に見られて、どぎまぎした。
でも、怪しむような目じゃないのでちょっと安心した。
こんな事態なのに一体僕はどうしちゃったんだ。
「さあ、降りましょう」
女の人について歩いた。
時々警官が警戒しているみたいだけど、僕達は注意もされないで通ってしまっ
た。
「ふふふ、やっぱり正解だったわね」
「ここまで君が女の子になるなんて想像以上だわ」
なにやら意味あり気な目で僕を見ている。
「ねえ、ボクスカートが気に入ったみたいね」
「そんなことありません・・・」
「ふーん。そうかしら?」
軽蔑したような顔で笑っている。
ボク達は、繁華街を抜けて、高い塀で囲われた建物の前で止まった。
何だろう、病院みたいだけど・・・
中に連れていかれた。
「例の子ですので部屋に連れていきます」
そう言うと、すたすたと中に入って行った。
でも、途中で大きなドアを鍵を開けて入っていったりして何だか変な感じ。
「ふふふ、ここがどこだかわかる?」
頭をふった。
「精神病院よ」
・・・
「だから、大きな声がしても誰も気にしないのよ」
と言って、僕を隅の病室らしきところに連れて行った。
「さあ、入って」
僕は言われるままに中に入った。
そこは、8畳位で、きれいなベッドや本棚もあって、女の子の部屋みたいだっ
た。
でも、窓に鉄格子がはまってあるのが異様な感じを与えている。
「今日からしばらくここで過ごすのよ」
「人違いで一文にもならなくって馬鹿みたいだわ、まったく」
「そんな、僕の方こそいい迷惑です・・・
それにこんな恰好させられて」
情けない顔でスカートを見る。
「しょうがないでしょう」
「でも一体なんでこんなところに連れて来たんですか?」
ふふふって笑って
「君にはここで少しだけ女の子になってもらうわ」
戦慄が背中を走った。
「そうすれば、お家に帰っても、恥ずかしいから私達の事を誰にも言えないで
しょう」
「そ、そんな・・・」
「絶対に言いませんから」
「ふふふ、駄目よ信用できないから」
「いいじゃない、生きて帰れるんだから」
僕は唖然として聞いていた。
「誘拐しても殺人は出来ればしたくないからね。
男の子を女の子にしたらどんな罪になるのかしらね?
多分殺人よりは軽いわね」
とほほえんだ。
もうこれ以上聞きたくなかった。
「じゃあ、君が女の子になったら又迎えに来てあげるわね」
「ほんの二ヶ月位のものよ」
そ、そんな・・・
涙が出て止まらなくなった。
「そうそう、クローゼットの中はちゃんと身の回りの物が入っているからね」
「私からのプレゼントよ」
「お姉さんは一体どうなるの?」
「そうね、お姉さんは君が人質だから返してあげるわ」
それだけ言うとドアに鍵を掛けて出ていってしまった。
僕は茫然としてベッドに腰を掛けたままでいた。
しばらくしてから立ち上がってクローゼットを開けてみた。
中にはワンピースやドレス、スカート、それにセーラー服などが一杯つるして
あった。
めまいがした。
ドアを閉めてまたベッドに腰を掛けた。
着替え用にも、男の子の服は全くない・・・
ベッドに横になって、目を閉じた。
知らないうちに眠りに就いてしまった。
ドアの鍵を開ける音で目が覚めた。
体格の良い看護婦らしき人が入って来た。
「助けて下さい。僕誘拐されたんです」
悲鳴に近い声で叫んだ。
看護婦さんは黙って僕を見てから
「はいはい、わかりました。その話は先生としましょうね」
「ち、違うんです。本当なんです。誘拐されたんです」
又僕の姿ををじろっと見て
「そうね、そうでしょうね」
僕はスカートをはいていることを思い出した。
「違うんです、この恰好は無理矢理着せられて」
「ここを出して下さい」
「はいはい」
哀れむような目をして呟いた。
「女の子に生まれていたら幸せになれていたでしょうに・・・」
何を言ってるの?
「心配しないで、きっとお父様もわかって下さるから。
先生がちゃんと直して下さるわ」
又哀れむような目で見た。
「違うんです。テレビを見てないんですか?」
「なんのことを言っているの?」
「そんなはずは・・・」
「さあさあ、ごねてないでお食事しましょうね」
一体どうなっているんだ・・・
僕はお腹もすいていたから、取り敢えず食事をすることにした。
お姉さんー、ママー、パパー
ぐすん
泣きながら食事をした。
その日は着替える気もしなくってそのままで寝てしまった。
第2章 診察
次の日診察室に連れていかれた。
先生は年配の男の人で優しそうな感じだった。
この人だったら話を聞いてくれるかもしれない・・・
先生の前の席にスカートを気にしながら座った。
先生は僕のスカート姿を見て、ふむふむとうなずいている。
「急にこんなところに連れて来られてとまどっているだろうね」
優しく僕を見た。
「先生聞いて下さい。これは犯罪なんです」
「ほー」
「お願いします。聞いて下さい」
「じゃあ、聞いてあげよう」
僕は一生懸命昨日起こった事を説明した。
先生は最後まで黙って聞いていてくれた。
でも聞きおわってから
「ははは、それは君の妄想だよ」
「私は君のことを治療するだけだ」
「まさか、先生もぐるなんですか?」
「何を人聞きの悪い事を言っているんだね」
「精神病院だから、妄想を持った患者が多くて困るね」
と言って、平然としている。
「まあ、折角お母様が君の希望をかなえてあげようっていうんだから、安心して
いなさい。
もう出れないって思ってそんなこと言っているんだろうけど。
治療してちゃんと女の子になったらすぐ出れるからね。
まあ、君のは性同一性障害って言って今はちゃんと認められた病気なんだから
ね」
さとすように言った。
「見たところ、そのままでも女の子に見えるし、君の気持ちもわかるよ。
安心して、私のいうことを良く聞くんだよ」
僕は完全に、あの女の人達の仕掛けた罠にはまってしまったことに気が付いた。
力なくうなだれた。
「ほら、そんなに落ち込まないで」
「ちゃんと女の子になったら、こんなところ出てまたご両親と暮らせるんだから」
僕は戦慄と絶望で天井を見上げた・・・
「じゃあ、早速治療を始めよう」
看護婦さん達に命じて注射の用意を始めた。
「な、何をするんですか?」
「なーに、簡単な注射だよ。
すぐに、女の子らしくなるからね」
「や、やめて下さいー」
「心配しなくてもいいからね」
僕は両足を押さえつけられて、おしりに二本も太い注射を打たれてしまった。
「これから、2日に一回ここに来なさいね」
僕は恥ずかしさと屈辱と絶望で泣き出してしまった。
「まあ、しばらくすれば落ち着くだろう」
僕は自分の部屋に戻された。
そのまま夜がくるまでじいっとしていた。
注射の所為かなんだか体がだるい。
しょうがないからネグリジェに着替えてベッドにもぐりこんだ。
それから、2日毎におしりに太い注射を打たれた。
自分の部屋ですることもなくテレビを見る生活が続いた。
毎日何だかもうろうとして気持ちが悪い。
2週間程経つとなんだか、気が弱くなって来たような気がする。
それに、乳首がふくらんでいつもはれている。
胸もなんだかはれて大きくなってきたみたいだ。
僕はこのまま女の子になってしまうんだろうか。
絶望的な気持ちと裏腹に、胸をさわっていると甘酸っぱい陶酔感が襲ってくる。
一ヶ月経った。
「服を脱いで」
先生が僕に命じた。
「恥ずかしい・・・」
僕はふくらんだ胸を見られるのが無性に恥ずかしかった。
「さあ、恥ずかしがらないで」
僕はしぶしぶワンピースを脱いだ。
「スリップとブラジャーも」
いわれるままにスリップを脱いで、ブラジャーも取った。
先生の目の前に、思春期の少女のようなきれいな胸をしたボクの体が現れた。
「ほう、きれいになったね」
先生は、嬉しそうに肯いている。
「おしりも、肉が付いてきたね」
「よしよし」
「もう、君の体は男性ホルモンに反応しなくなっているからね」
「声変わりしたり、髭が生えたりする心配はないよ」
背筋を戦慄が走った。
「ま、まさか・・・」
「それじゃあ、もう男の子になれないんですか?」
「後、一ヶ月もすれば、男性器以外はすっかり同じ年頃の女の子と同じになるか
らね」
悪魔の宣告にも、天使のささやきにも聞こえる。
「でも、こんな体になってしまって・・・」
「男の子でもないし、女の子でもないし・・・」
無性に悲しくなって来た。
なんで僕がこんな事に・・・
「心配しなくてもいいからね」
「今日は嬉しいことをしてあげるから」
先生は僕を手術台に乗せるように看護婦達に指示した。
「や、やめてぇぇぇ」
恐怖に引き攣って叫んだ。
でも、小柄な僕はあっさり看護婦達に抱きかかえられて手術室に連れて行かれ
た。
手術台の上にパンティも脱がされて裸のまま、手足をしばりつけられた。
不安と恐怖で胸が一杯だ。
手術服に着替えた先生が入って来た。
先生の横に並んだ沢山の注射器が不気味に光っている・・・
看護婦達が僕の股に注射をした。
また恐怖感が襲って来た。
下半身の感覚が徐々に無くなっていく。
「さあ、覚悟はいいね」
そう言うと、僕の睾丸の裏にメスを入れた。
「やめてー」
必死にさけんだ
だけど、先生は黙ったままメスを動かしている。
痛い。
何かどろっとしたものが流れ出た気配がする。
先生の手にどろっとした小さな玉が握られている。
ま、まさか・・・
「ほら、これで君は男の子じゃあなくなったんだよ」
先生が僕に今取り出した睾丸を二つ見せた。
「きゃー」
僕は目をつぶって涙を流した。
これでもう、男の子じゃあなくなってしまった。
絶望で涙が止まらない。
2日程してから、先生の診察室に呼ばれた。
先生は、傷口を丹念に調べている。
「これで、今までより自然に女性化が進行するからね。
もう、声変わりしたり、髭が生えたりする心配はないよ。
スカートはいていても、もう男の子じゃあないんだから恥ずかしくないだろ
う?」
僕を見て微笑んでいる。
「もっと嬉しそうな顔をしたらどうだい」
「そんな・・・」
「大丈夫だよ、すぐ気持ちが落ち着くから」
僕これから一体どうなるんだろう・・・
そろそろ、ここに来て2ヶ月になる。
みんなどうしてるんだろう・・・
最近すぐ涙が出てきてしまう。
顔つきも、初めは中性的な可愛さだったのが、今は少女の可愛さに変わってき
ている。
肌も抜けるように白くなってきた。
夜胸を触っていると、狂おしくなってくる・・・
ぺニスはもう、小指位しかなくなってしまった。
今は何も考えない様にしよう・・・
第3章 解放されて
食事の後先生に呼ばれた。
先生の部屋に入って驚いて立ちすくんでしまった。
「お姉さん・・・」
涙が出て来た。
「無事だったのね」
お姉さんも嬉しそうに僕を見つめている。
「可哀相にまだ女の子の恰好をさせられてるの?」
「うん」
心臓がびくっとした。
あそこを取られて胸が大きくなった事は、お姉さんに知られたくない・・・
ちょっと怪訝な顔をして
「何だか随分女っぽくなったきがするけど」
僕の胸や手足、腰を見ている。
「気のせいだよ、いつもスカートはいているせいだよ」
「そうかもね」
また明るい笑顔で
「でも、本当に無事で良かった」
僕に抱き着いてきた。
僕も嬉しくってお姉さんに抱き着いた。
「ゆきちゃん、その胸はまさか・・・」
僕の胸を触った。
あっ・・・
「ちょっとワンピース脱いで」
強引にワンピースを脱がされた。
「それって・・・
本物じゃない・・・」
唖然としている。
「一体ゆきに何をしたんですか?」
目に涙を浮かべて女の人をにらんだ。
「ほほほ、ゆきちゃんを可愛い女の子にしてあげたのよ」
「うそ。何で、こんな事を」
「ゆきちゃんはもう男の子じゃあないからね」
「ちょっとそれってどういう事?」
僕の股間をまさぐった。
「うそ・・・ないわ・・・
それに、ペニスも小さくなって・・・」
「そうよ、おかげでほらこんなに可愛らしくなっちゃって」
お姉さんが呆然としたまま僕を見ている。
「もう、お家に帰ってもいいわよ。
でも、私達の事を話したら、ゆきちゃんの秘密もみんなに知られてしまうわね。
まさか、そんなこと出来ないでしょう?」
僕達を恐い顔で睨んだ。
「もし私達の事をばらしたら、ひろみちゃんの秘密がみんなにばれるんだからね」
「わかっているわね」
「はい」
僕達はうなずくしかなかった。
「でも、私はあなた達を絶対にゆるしませんよ」
お姉さんが女の人を睨みつけている。
「まあ、恐い。
でもまあ、いいわ。
さあ、行きなさい。
ゆきちゃんの大好きなお洋服とかは、後で送っておいてあげるわ。
それから毎週ここに必ず来るように先生が言ってたからね。
ちゃんとお注射続けないと、死んじゃうわよ」
それだけ言うと、ドアから外に出ていってしまった。
「お姉さん」
「可哀相なゆきちゃん」
二人で泣きながらしばらく抱き合った。
「さあ、早くこんなところ出ましょう」
僕の手をとって玄関に向った。
病院を出てから、二人で手をつないでとぼとぼ駅に向った。
帰れるのに、ちっとも嬉しくならない・・・
「ねえ、パパとママはどうしているの?」
「とっても心配しているわ。
警察に連絡したか殺すからって言われたの。
2ヶ月したら必ず返すからってことで。
でも、その2ヶ月がまさかこんなことに使われたなんて・・・」
笑顔になった。
「でも、生きているだけですごく喜ぶよ絶対に。
だから、もっと明るい顔をして帰ろう」
「うん、そうだね」
久しぶりに自分の家が見えてきた。
涙があふれ出てきた。
又帰れるとは思っていなかった・・・
ママー、パパー
チャイムを押したらすぐ、ママとパパが出てきた。
「由紀」
僕を見て一瞬動かなくなった。
「ママ、パパ。説明は後でするから」
「ゆきちゃんよ、無事に帰って来たのよ」
ママとパパはそれでも顔をくしゃくしゃにして、ボクに抱き付いた。
「良く無事で」
「良かった、良かった」
僕の顔がママの涙でぐしゃぐしゃになってしまった。
リビングに行ってみんなで久しぶりにソファーに座った。
ワンピース姿が気恥ずかしい。
それに、胸を見る視線が痛い。
お姉さんが簡単に僕のこれまでの事を説明してくれた。
「まさか・・・」
「良かったら、服を脱いでくれる」
僕は肯いて、ワンピースとスリップを脱いで、パンティとブラジャーだけに
なった。
「これも取るの?恥ずかしい・・・」
「いいわ、もう」
ママが悲しそうな顔で言った。
「あいつらなんてことを・・・」
パパは顔を真っ赤にして怒っている。
「すぐ警察に連絡する」
「駄目よパパ」
お姉さんが止めた。
「何でだ」
「ゆきちゃんのこの体のことが表沙汰になってもいいの?」
「一生台無しになっちゃうわよ」
パパは静かに受話器を置いた。
「もうあの人達の事は忘れて、ゆきちゃんのことを考えましょうよ」
第4章 長男
「もういいでしょう」
恥ずかしいから急いでワンピースを着た。
パパが恐い顔で僕を見ている。
「さあ、明日からちゃんと学校に行くんだ」
「いや・・・」
ママが心配そうな顔で僕を見た。
「学校行きたくない・・・」
「行かなきゃ駄目だ。
由紀は長男なんだから、勉強していい学校を出ないと」
パパが低い声で言った。
いい学校を出る?
出てどうするの?
「あなた、ようやく帰ってきたばかりなんですから」
「昨日までの事は忘れて前に戻るんだ」
「いや・・・」
「我が侭言うんじゃない」
「あなた・・・」
「パパひどい。ゆきちゃん大変な目に会っていたのに」
「早くそんな女の子の服を着替えるんだ」
「だって・・・」
「いいから早く着替えなさい」
「パパ、このままでいいじゃない」
「何を言ってるんだ」
「だけどゆきちゃん男の子じゃなくなっちゃったのよ」
「だからと言って女になった訳じゃない」
「だけど・・・」
お姉さんが不服そうな顔をしている。
「事故に会ったと思えばいいんだ」
「パパ・・・」
胸を押さえてパパを見た。
「男の子のくせにいつまでもそんな恰好しているんじゃない」
体が竦んだ。
「くそ。犯人のやつらめ。絶対に許さんからな」
恐い・・・
子供部屋に行って、ワンピースを脱いだ。
ブラを取った。
パンティはそのままでズボンをはいた。
何だかごわごわして肌触りが悪い・・・
胸が目立たないようにサマーセーターを着た。
知らないうちに涙が出てきた。
リビングに戻った。
「何だか男装している少女みたい」
お姉さんがおかしそうな顔をしている。
「パパ、胸が出てるから男の子の服じゃおかしいよ」
「何言ってるんだ。男の子が女の子の服なんか着たら変態だ」
変態・・・
「だけど、制服着たら目立っちゃうわよ」
「ブレザー着れば目立たないだろう」
「あなた、ゆきちゃん可哀相よ・・・」
「髪も短くしろ」
「あなた・・・」
「いやだ・・・」
「駄目だ。ちゃんと男らしくするんだ」
「そんな事言っても・・・」
僕は髪を短く切られてしまった。
パパは黙っている。
ママもお姉さんも黙っている。
パパが言うようにいい大学に入っても、それで一体どうなるんだろう・・・
暗い気分になった。
「ねえ、お姉さん」
「なあに?」
お姉さんのベッドに腰掛けた。
「僕どうなるんだろう・・・」
「普通に学校に行くだけじゃない」
「だけど、学校行ってどうなるの?」
「さあ?」
「いい会社入って、それで・・・」
「でも、パパはそれを望んでいるんじゃない」
「だけど、僕もう男の子じゃないよ・・・」
胸を見下ろした。
「胸もあるし・・・
恥ずかしくて学校になんかいけない・・・」
「そうねえ」
「僕が長男だから?」
「そうなんじゃない」
「せっかく家に帰ったのに、これじゃあ病院の方が良かった・・・」
お姉さんが哀れむような目で僕を見ている。
「学校行かないとパパ怒るかなあ?」
「そうみたいね」
「でも、僕男の子らしくならないって先生が言ってたよ・・・」
お姉さんは黙って聞いている。
「段々女の子らしくなっていくのに・・・」
涙がこぼれた。
「きっと、学校に行ったらいじめられちゃう」
「ゆきちゃん・・・」
「お姉さん、僕学校行きたくない」
「今日はもう寝なさい」
「うん」
自分の部屋に帰ってベッドにもぐりこんだ。
第5章 いじめ
久しぶりの学校。
ブレザーの前をしっかり止めて、胸が目立たないように気をつけた。
周りを歩いている子が僕を見るとびくっとしてしまう。
緊張して教室に入った。
胸がどきどきしている。
「おー、河合じゃないか」
クラスの子達が寄ってきた。
「どうしてたの?」
「うん、入院していたんだ」
学校には病気で入院しているってことにしている。
「そうか、もう良くなったのか?」
「うん」
「それで何だか色が白いのか」
どきっとした。
「何だか感じが違ってないか?」
三宅君が不思議な顔をして僕を見ている。
「何だか女みたいだな」
「うん、僕もそう思っていたんだ」
僕は体を硬くして手でブレザーの前を隠した。
胸が膨らんでいるのばれるんじゃないかって生きた心地がしない。
「本当。河合君前から女の子っぽかったけど、女の子みたい」
「気のせいだよ」
「そうかなあ?」
「ほら次の授業もう始まっちゃうよ」
みんなが自分の席に戻っていった。
放課後になった。
みんなが何だか変な目で僕を見ている。
急いで教室を出ようとすると、吉村君が僕を捕まえた。
「何するんだよ?」
「いいじゃないか、急いで帰らなくても」
僕を意地の悪い顔で見下ろしている。
「おまえ、もしかして胸が膨らんでいないか?」
体が凍り付いた。
心臓が締め付けられた。
「そ、そんな事ないよ」
「へー、そうか」
いやらしい目で僕のブレザーを見た。
「何で、一日中ブレザー着てるんだ?」
「そんなの勝手じゃないか」
急に僕のブレザーが捕まれた。
やめて・・・
逃げようとしたけど、後ろから押さえつけられた。
ブレザーの前が開かれた。
あっ・・・
「ははは。こいつ女みたいに胸が膨らんでるぞ」
吉村君が僕の胸を触った。
「おっ、ボヨンとしたぜ」
周りの男の子達が嘲るように笑った。
「やめて・・・」
「やめてだってよ。女みたいな声を出してら」
涙が出てきた。
必死に押さえられている手を振りほどいて教室の外に逃げた。
追いかけて来る気配はない。
でも、大きな笑い声が後ろで聞こえる。
恥ずかしさで顔が真っ赤になった。
気が付くとお姉さんの教室の前にいた。
「お姉さん」
「ゆきちゃん」
僕を見て驚いたような顔をしている。
「何か有ったの?」
「うん・・・」
お姉さんの胸に顔を沈めた。
緊張が緩んだら急に悲しくなった。
お姉さんは僕を優しく抱きしめてくれている。
そのまま泣き続けた。
「帰ろうか・・・」
「うん」
黙ったまま家に帰った。
第6章 強要
「学校行くのいや」
ふとんの中でぐずっているとパパが来た。
「早く起きて行きなさい」
「いや」
ふとんを頭から被った。
「起きろ」
ふとんをはがされ起こされた。
「パパ・・・」
「さあ、早く着替えていくんだ」
「だって・・・」
パパが恐い目で見ている。
「ちゃんと学校にいくんだ」
「はい・・・」
パパなんか嫌い・・・
学校何か行きたくない。
嫌々着替えて、一階に降りた。
「ママ、ゆきちゃんいじめられたみたいよ」
「そうなの?」
ママが心配そうな目で見ている。
「僕学校行きたくない・・・」
「学校はちゃんと行かなきゃ駄目だ」
パパがきつい目で僕を見た。
何でそんな事いうの?
「だけど、いじめられちゃう」
「男の子なら、がつんとすればいじめられない」
「男の子じゃないもん・・・」
小さな声で呟いた。
「由紀は男の子だ」
不機嫌そうな顔をしている。
「ちゃんと行くんだぞ」
「はい・・・」
ママとお姉さんが心配そうな顔をしている。
気が重いなあ・・・
教室のドアを開けた。
吉村君はまだ来てないみたい。
ほっとして自分の席に行った。
どきっとして顔がかーっとなった。
机にマジックで「私は女の子です」と書いてある。
横にブラをした僕の絵が書いてある。
急いで消そうとしたけど、消えない。
呆然としていると、吉村君とその仲間が入ってきた。
「おう、女が来たぞ」
仲間の男の子達がはやし立てる。
体がかーっとなった。
「やめてよ・・・」
「ははは、本当の事だろう」
助けを求めて周りを見たけどみんな知らんぷりしている。
くやしい・・・
放課後急いで席を立った。
でも、吉村君達がにやにやしながらドアのところに立って。
僕の方にやって来た。
恐い・・・
体が震えた。
「おい、脱がせてしまえ」
「な、何を・・・」
吉村君の仲間に押さえられて、ブレザーを脱がされた。
ワイシャツも脱がされていく。
「助けて・・・」
誰も助けてくれない。
ランニング一枚になった。
胸の膨らみがはっきりわかる。
「おっ、すげえ」
「それも取ってしまえ」
胸がはだけられた。
恥ずかしさで涙が出てきた。
「おい、可愛いおっぱいがあるぞ」
「男のくせに、変なの」
「女の子みたいだな」
「やめて・・・お願い」
「わかった」
ほっとした。
でも、吉村君がブラを手に持っている。
「やっぱり女の子はちゃんとこれを着けないとな」
そう言って笑った。
「やめて。みんなが見ている・・・」
抵抗できない僕の両手にブラジャーを通した。
背中のホックを止められた。
力が抜けて動けない。
「おー。可愛いじゃないか」
にやにや笑っている。
「じゃあ許してやるか」
ほっとした。
でも、ブラをしたまま、ワイシャツを着せられた。
「何をするの」
脅えた目で吉村君を見た。
「これはいらないな」
そう言うとランニングを仲間に渡した。
「今日から、ちゃんと女の子らしくブラを着けて来るんだぞ」
「してこなかったらどうなるか分かってるな」
そう言ってみんなで僕を笑った。
いやだこんなの・・・
涙がこぼれた。
手が離れたので急いでブレザーを着て胸を隠した。
「ははは、面白かったな」
そう言うと教室を出ていった。
他の人は、くすくす笑いながら僕を見ている。
顔を真っ赤にして教室を飛出した。
ひどい、ひどいよ・・・
だから来たくなかったのに・・・
第7章 予告
「いや、絶対に行かない」
「駄目だ起きるんだ」
またパパが僕を無理矢理起こそうとする。
「またいじめられちゃう・・・」
「そんな事言ってたら学校に行けなくなってしまうぞ。
もう二ヶ月も遅れてるんだし」
「いいの、もう行かなくても」
泣いて頼んだんだけど、許してくれなかった。
嫌だなあ・・・
体が震える。
迷ったけど言われた通りブラをしてきた。
来る時は、見られるんじゃないかとびくびくしっぱなしだった。
ずうっと鞄で前を隠していた。
ドアをそっと開けて急いで席に行った。
どきっとした。
又机に絵が書いてある。
上半身が女の子用のブラウスを着て胸にリボンを付けている絵が書いてある。
嫌な予感がした。
持ってきたアルコールで消そうとしたけどうまく消えない。
「ちゃんとブラ付けてきただろうな」
吉村君の声が聞こえた。
体が竦んだ。
振返ると吉村君と仲間の男の子達がにやにやして僕を見ている。
「何をする気?」
「ブラしてて、ワイシャツじゃあ合わないだろうと思ってな」
またにやにやしている。
「まさか・・・」
「おう、勘がいいじゃないか」
そういうと仲間の男の子達に命令した。
「やれ」
僕は上半身ブラだけにされた。
恐くて震えた。
それに、みんなが見てるから恥ずかしい・・・
女の子用の半袖のブラウスを着せられて、赤いリボンまで結ばれた。
「うん、やっぱり女の子はこうじゃなくっちゃな」
そう言ってみんなで僕を見て笑っている。
「可愛いおっぱいに似合うぜ」
「おう、本当に女の子みたいだ」
「返して・・・」
掠れた声でお願いした。
「こんなもの要らないだろう。捨ててしまえ」
仲間の男の子がワイシャツを持って行ってしまった。
「今日はそうしていろよな」
「可愛いぜ」
「返して・・・」
脱がされたブレザーをブラウスの上に急いで着て、前を合わせて机につっぷし
た。
いや。何でこんな目に会うの・・・
授業が始まった。
先生は僕が女の子用のブラウス着てるのを見てにやにやしている。
「何だ河合、女の子になったのか?」
恥ずかしくて顔が真っ赤になった。
放課後ブラウスをブレザーで隠して出ようとするとまた吉村君達が立ちふさ
がった。
急に僕のお腹を殴った。
苦しくて動けなくなった。
「おい、明日ちゃんとそれを着てこなかったら、もっと苦しい目にあうぞ」
そう言うと、教室を出ていった。
しばらく苦しくて動けなかった。
ようやく動けるようになって、隠れるようにして家に帰った。
すれ違う人が僕を変な目で見る。
早く帰りたい・・・
第8章 スカート
「おはよう」
僕はブラを着けて女の子用のブラウスを着て一階に降りていった。
「由紀。何だその恰好は」
パパが驚いたような顔でどなった。
何でどなるの?
無視して座った。
「こらっ」
「何だよ」
パパを睨んだ。
「パパのせいだからね」
「パパがいやだってのに無理矢理学校にいかせるからだ」
「どういう事だ?」
「おっぱいがあるからっていじめられて、無理矢理着せられたんだ」
「何だと?」
「着てかないと又殴られてしまう」
「みんな僕の恰好みて笑っている。
恥ずかしいんだから・・・」
涙が出てきた。
「みんなパパが悪いんだ」
パパを睨み付けた。
パパがぎょっとしたような顔をした。
「今日もちゃんと行くよ。行けばいいんでしょう」
涙がほほを伝わった。
「パパなんか大っ嫌い」
食事ををのままにして家を飛出した。
ママがおろおろした顔をして立っていた。
「ゆきちゃん待って・・・」
お姉さんの声が聞こえる。
僕は振り向かないで泣いたまま走って学校に行った。
教室の机を見ると又落書きが増えている。
今日の絵はブラウスの下にスカートをはいている。
体が竦んだ。
「よう、ちゃんと来たな」
体が強張って動かない。
恐る恐る振返ると吉村君が制服のチェックのスカートを持ってにやにやしてい
る。
「やっぱり、女の子はスカートをはかないとな」
「そう思うだろう」
「ああ、女の子はちゃんとスカートはかなきゃ」
「やめて・・・」
抵抗したけど、ズボンを脱がされた。
「おい、こいつ女の子の下着付けてら」
嘲るように僕を見た。
「男のくせに、おっぱい膨らませて、パンティをはいてら」
「やっぱりスカートはかせましょう」
仲間の男の子が言った。
「そう思うよな」
「スカートはやめて・・・」
もう学校来れなくなっちゃう・・・
スカートをはかされて座らされた。
「こうして見ると完全に女だな」
「男のくせに、女の子の制服着てらあ」
「ははは」
他の子達もくすくす笑っている。
僕は机につっぷしてくやしくて恥ずかしくて泣いていた。
僕が何をしたっていうの?
みんな何で僕のことこんな風に・・・
第9章 再び拉致されて
僕は泣きながら家に帰った。
着てきたズボンは返してもらえなかった。
女の子の制服が恥ずかしい・・・
病院から戻った時は、お姉さんと一緒だったし髪も長かった。
家に帰れる喜びの方が大きかった。
すれ違う人が僕を見て笑っているみたい。
体が竦んでしまう・・・
せめて髪が長かったら女の子に見えるのに・・・
スカートが情けなかった。
電車の中では、連結器の前で俯いていた。
横の女の子がくすくす笑っている。
恥ずかしい・・・
誰とも目を合わせられなかった。
ようやく家に着いた。
「どうしたの?」
ママが驚いたような顔をしている。
「また、無理矢理着せられちゃった」
涙が出てきた。
「ママ・・・」
「ゆきちゃん・・・」
「もう学校行かない・・・」
着替えてからベッドに潜り込んで泣いた。
このまま家にいたい・・・
どこにも行きたくない・・・
みんな僕の事馬鹿にしているんだ。
パパなんか嫌い・・・
知らないうちに眠り込んでしまった。
「ゆきちゃん起きなさい」
「えっ・・・」
驚いて目を開けた。
お姉さんが立っている」
「晩御飯よ」
「食べたくない・・・」
「ほら、食べなきゃだめよ」
「うん・・・」
パパとママが食卓についている。
「ゆき、スカートはかされて帰ってきたんだって」
「うん・・・」
「何で抵抗しないんだ」
「そんな事言ったって、出来ないよ・・・」
ごはんをつついた。
「男の子は強くなきゃいけない」
「僕強くなくてもいい・・・。
いじめられなければいいんだ」
パパを見た。
「みんな僕がスカートはいてるの見て笑っているんだから。
帰りも死ぬほど恥ずかしかったんだから・・・
パパが髪切っちゃうからだ」
「何言ってるんだ」
パパが怒り出した。
「くそ、こんな事になったのもあいつらのせいだ。警察に電話してやる」
「パパやめて」
お姉さんが叫んだ。
「どうせ、みんな知ってるんだろう。同じだ」
パパが警察に電話した。
僕は体を硬くしていた。
「パパ、そんな事して大丈夫?」
「何がだ?」
「だって、犯人の人達警察に知らせたら黙っていないって・・・」
「そんなの只の脅かしだ。捕まってしまえば大丈夫だ」
僕達は警察に呼ばれた。
小さな部屋に通されて事情聴取された。
パパが怒ったような顔で事情を説明している。
「早く捕まえて下さい。おかげで大事な息子も学校でいじめられているんだ。
まったく、こんな事が行われるなんて、警察は何をしているんだ」
「まあ、まあ」
警察の人がパパをなだめている。
パパは僕が女の子にされていた事は黙っていた。
僕は横で体を硬くしていた。
僕とお姉さんが犯人の特徴とかを説明した。
でも、心配が膨らんでいく。
大丈夫なんだろうか・・・
「じゃあ、犯人のモンタージュを作りたいのでまた来てもらえますか?」
「はい」
事情聴取に2時間もかかった。
ようやく終って家に帰ることができた。
次の日は学校を休んだ。
パパが怒ったけど、どうしても嫌だって言って行かなかった。
ママはいいじゃない休んだってと言ってかばってくれた。
夕方までベッドの中で寝ていた。
さすがに退屈になったので本屋に出掛けた。
学校さぼって少し罪悪感があったけど、でも気分がいい。
胸が目だたないようにジャケットを羽織って行った。
本屋で今日発売のまんがを買って、店を出た。
僕の家のそばまで来て人通りが少なくなった。
「キー」
黒い車が僕の目の前で急に止まった。
驚いて見ると男の人が二人飛出して来た。
あの二人だ。
体が竦んだ。
あっと言う間もなく車の中に連れ込まれた。
「やめて」
「静かにしろ」
僕は何か薬を嗅がされて意識が遠くなって行った。
目が覚めたら椅子にしばりつけられている。
目の前にあの女の人が僕を冷たい目で見つめている。
「ボク気が付いたのね」
「一体何をするつもりですか?」
脅えて声が震えた。
「警察に通報したそうね?」
「何でその事を」
「ほほほ。それ位の情報網は持っているわよ」
「私達のモンタージュなんか作られたら困るからね」
「・・・」
電話を取り上げた。
「もしもし・・・」
「大事な息子さんは預かったわ」
僕は不安な気持ちでで女の人を見た。
「そう、警察に協力したら息子さんがどうなるか分かっているわね」
「ほほほ」
大きな声で笑った。
「モンタージュなんか作られたら困るのよ。
約束してくれたら大事な息子さんを返してあげるわ」
また言い合っている。
パパが出てるみたい。
「それと、約束破った償いはしてもらうからね」
僕を冷たい目で見た。
ぞっとした。
電話を静かに置いた。
「話は分かったでしょう」
僕は黙って見つめた。
「ふふふ。折角きれいな胸になったのに、可哀相ね」
そう言って僕の髪を触った。
「何をするつもり何ですか?」
「さあね。でも約束破った償いはしてもらうわね」
僕はしばりつけられたまま震えた。
「今度はもう約束を破らないようにね」
「まさか殺すんですか?」
「ほほほ。そんな事はしないわ。後が恐いもの」
「もう、お宅のお父様が約束を破らないように知らしめてあげるわ」
体ががたがた震えた。
「じゃあ、移動しなくちゃね。
いつまでもここにいては危ないわ」
そう言うと男の人二人に合図した。
「男の子を連れていると万が一の時危ないからね」
そう言うと、僕の前に女の子の服を投げ出した。
下着や、スカートが散らばった。
「早く着替えなさい」
「・・・」
散らばった服を見つめた。
縄が解かれて、体が自由になった。
「着替えなさい」
黙って服を脱いだ。
「ふふふ。きれいな体になったわね」
不気味な顔で笑っている。
僕は脅えながら下着を着けた。
ブラウスとスカートを身にまとって、女の人を見た。
「ふふ、似合うじゃない。ボクは女の子になった方がいいわね」
殺されるかもしれないという思いの中で、不思議な戦慄が走った。
「髪の毛がちょっとね。可哀相に切られちゃったの?」
こくっと頷いた。
「しょうがないわね」
ウィッグを被せられた。
「ふふ。いいじゃない。これならボクだって分からないわね」
僕は再び車に乗せられた。
第10章 償い
「ここは?」
僕は驚いて目の前の建物を見た。
「驚いた?」
僕は脅えた目で女の人を見た。
「まさか、同じところに拉致するとは思ってないでしょうからね」
「一体何を・・・」
「そのうち分かるわ」
前にここで男の子じゃなくなってしまったのを思い出して身震いした。
中に連れていかれた。
「先生はいる?」
「ええ、いらっしゃいますよ」
「じゃあ、入るわね」
僕はまたあの診察室に連れていかれた。
「やっぱりまた来たのか]
先生が僕を見て言った。
「そうなの、電話で説明した通りですわ」
そう言って意味ありげな顔で僕を見た。
「せっかく先生に治療して頂いたのに、またおかしくなっちゃって。
衝動的に髪も切っちゃって」
哀れむような顔をしている。
「先生にちゃんと女の子にして頂けたら直ると思うんですが」
「ああ、いいでしょう」
「そういう子が多いからね」
何を言ってるの?
背中を戦慄が走った。
「やめて下さい」
「ほら、大丈夫だから。もう安心しなさいね」
「じゃあ、お願いします」
「はい、早速しますか」
「ええ」
僕を見てにやっと笑った。
「お礼はまた振り込んでおきますわ」
「ああ、いつも済まないな」
先生が看護婦達を呼んだ。
「あら、また来たの?」
屈強な看護婦が僕の前に立った。
「さあ、いらっしゃい」
僕は声もなかった。
手術着に着替えさせられて、手術室に連れていかれた。
体が竦んで震えている。
駄目だ。ここの人は何を言っても聞いてくれない。
前のことで分かっている。
しかも二回目だ・・・
手術台の上に手足をしばりつけられた。
「やめて・・・」
かすれた声で訴えたけど聞こえないふりをしている。
「赤ちゃんみたいなおちんちんね。
玉もないし、それにきれいな胸をしちゃって」
看護婦さんが僕を見て笑った。
「ボクにはこんなのいらないわよね」
「やめて下さい・・・」
「ボク怖がらなくてもいいのよ」
太い注射を手に取った。
「先生全身麻酔にしますか?」
「下半身だけでいいだろう」
やめて・・・
痛い。
下半身に針が刺し込まれた。
下半身がしびれて感覚がなくなって来た。
頭もぼーっとしてきた。
「これから、ちゃんと女の子にしてあげるからね」
先生が僕を見て微笑んだ。
「もう、悩むこともなくなって落ち着くからね」
「悩むことって・・・」
「やっぱり、中途半端だと精神的に不安定になりがちだからね」
先生がメスを取り上げた。
「先生、止めて・・・」
あっと思ったら、あそこにメスが入った。
「痛い・・・」
「すぐ痛くなくなるからね」
下半身を見ると、あそこが血で赤くなってる。
取られちゃう・・・
戦慄がまた背中を走った。
「あっ」
激痛が走った。
「やめてー」
僕の叫びが手術室に響いた。
「麻酔を」
「はい」
麻酔を嗅がされて気が遠くなった。
目が覚めた。
真っ白い天井が見える。
前に僕がいた部屋だ。
ネグリジェを着せられてベッドの上に寝ている。
はっと思って下半身を見ようとした。
痛い・・・
体が動かない。
そっと手を持って行ってみると包帯でぐるぐるまきにされている。
まさか・・・
まさか、本当に・・・
でも、いつもの感覚がない・・・
「ママー」
戦慄が走って思わず叫び声が出た。
意識が遠くなった。
もう何日目になるんだろう・・・
良くわからない。
看護婦さんが毎日きちんと世話をしてくれる。
今日包帯をが外せるって言ってたけど・・・
「いらっしゃい。もう歩けるでしょう」
「はい・・・」
診察室に連れていかれてベッドの上に横になった。
先生が無言で包帯を取っている。
全部外された。
恐くって下半身を見ることが出来ない・・・
あるはずのものの感覚がない。
先生がにこっと笑った。
「おめでとう。これで君は立派な女の子になったよ」
電流が体を流れた。
体が震えた。
「見てごらん」
先生が僕を起き上がらせて、鏡を見せる。
胸がどきどきして鏡に写る僕のあそこを見た。
こんもりとピンクの隆起が見える。
割れ目が間に走っている。
見慣れたあれが無い。
お風呂で見たお姉さんのと同じみたい。
胸がドキドキしてきた。
先生が優しく割れ目を広げた。
「あん・・・」
下半身に電流が走った。
「どうだい。嬉しいかい」
僕を見て笑顔になった。
「女の子と同じだよ。これで男の子とも愛し合えるよ」
「男の子と・・・」
部屋に戻って全身を鏡に映してみた。
未成熟だけどきれいな小さな胸の女の子が映っている・・・
下半身にはもうじゃまなものが無くってこんもりとした膨らみだけがある・・・
僕、女の子になっちゃったんだ・・・
涙がこぼれた。
ふとパパの顔が浮かんだ。
パパ怒るだろうなあ・・・
暗い気持ちになった。
第11章 秘密
僕を家のそばで降ろすとすぐ黒い車は去って行った。
ブラウスにスカート姿の僕は暗い気持ちで家まで歩いて行った。
「ただいま・・・」
「ゆきちゃん」
ママが僕に抱き付いてきた。
ママの顔を見ると涙が出てきた。
お姉さんも僕に抱き付いた。
「ママ、お姉ちゃん」
リビングに行くとパパがじっとして座っていた。
僕を見て声を出した。
「由紀、大丈夫だったか?」
「うん」
「良かった。こんな脅しをかけやがって」
パパが恐い顔をしている。
「彼らの顔を警察に言ったら、また誘拐するっていうことなんだな」
僕を見てうめいた。
「パパ・・・」
「また、女の子の恰好をさせて。あいつら何考えてるんだ」
女の子の恰好させたんじゃなんだよ・・・
「警察に教えるか・・・」
「やめて、パパ」
「いつまでもこんなことされたら」
「お願い、やめて・・・」
必死にお願いした。
もう嫌だ・・・
もういいじゃない。みんな済んでしまったんだ・・・
「僕これ以上何かされたら」
「また何かされたのか?」
パパが恐い顔で僕を見た。
目をスカートに落とした。
「何があったんだ」
僕を掴んだ。
「何もないよ」
涙が出てきた。
「パパ優しくしてあげてよ」
「ああ、分かった」
「いいじゃない。また無事に帰ってきたんだから」
「ああ・・・」
ほっとした。
「警察に言ったら僕死んじゃうから」
僕の顔を唖然として見ている。
「わかった。じゃあ、早く着替えなさい」
パパの顔を見つめた。
男の子に戻ったってどうせ又いじめられるだけだ・・・
それに、もう・・・
それなら・・・
「嫌・・・」
「何?」
「着替えるのいや」
「由紀・・・」
「どうせいじめられるなら、このままでいる」
体を硬くして座っていた。
あれから、言い争ったけど、パパもあきらめたみたい。
自分の部屋でベッドに腰を掛けてぼんやりしていた。
「いい?」
ドアが開いてお姉さんが入ってきた。
「何かあったのね」
「うん・・・」
肩を優しく抱いてくれた。
「話してくれない。お姉さん力になってあげるから」
「お姉さん・・・」
お姉さんの前でスカートを脱いだ。
お姉さんは黙って見ている。
恥ずかしかったけどパンティを下げた。
「ゆきちゃん・・・」
お姉さんが驚いたような顔をしている。
「僕女の子になっちゃったんだ・・・」
「ゆきちゃん・・・」
お姉さん女の子胸に抱きしめられた。
「可哀相に・・・」
「ううん・・・」
お姉さんの目を見詰めた。
「いいんだ・・・」
「だって、もう男の子じゃなくなってたんだもの・・・」
「だけど・・・」
「僕、女の子になる。男の子には戻りたくない」
「ゆきちゃん」
また抱きしめられた。
「パパには内緒にして」
「うん。でもママには教えなくっちゃね」
「うん・・・」
「今日から私達姉妹なのね」
お姉さんが寂しそうに笑った。
胸がきゅんっとなった。
「お姉さん・・・」
第12章 教室で
拉致される前にむりやり着せられた制服を着た。
お姉さんに手伝ってもらって、短い髪を何とか女の子らしく見えるようにした。
鏡にあどけない華奢な女の子が映っている。
胸がきゅんっとなった。
可愛いな。
顔が赤くなった。
「ゆきちゃん可愛いわよ」
「そう?」
鏡の中の女の子がはにかんでいる。
「行ってきます」
「気を付けてね」
ママが心配そうな顔で僕を見た。
「大丈夫よ」
「なら、いいけど・・・」
お姉さんを見て言った。
「貴子お願いね」
「うん、分かっているよ」
お姉さんと一緒だと思うと気持ちが楽になる。
すれ違う人に見られるとついお姉さんの陰に隠れてしまう。
「お姉さん恥ずかしい・・・」
チェックのスカートから出ている細い足を見た。
「大丈夫よ。みんなゆきちゃんの事女の子だと思ってるわよ。
「だけど・・・」
「もっと、自信を持ちなさいよ」
「うん、だけど・・・」
「それに、ゆきちゃん女の子でしょう」
「そうだけど・・・」
「私の可愛い妹だもんね」
優しい笑顔で僕を見た。
「うん・・・」
胸が熱くなった。
そっと、お姉さんの手を握った。
お姉さんも強く握り返してきた。
教室に入っていくと、一瞬しーんとなった。
直後大きな笑い声が起こった。
「やだ、久しぶりに来たと思ったら」
「可愛いじゃないか」
「やっぱり河合は女の子だったのかよ」
吉村君が寄ってきた。
「ははは。とうとうスカートはいて学校に来たのか」
「やめて」
無視して席に行こうとしたら腕を掴まれた。
「何するの?いやらしいわね」
吉村君が唖然とした顔で手を離した。
無視して席に着いた。
これでいいんだ。
僕女の子なんだもの。
涙が出てきた。
他の子も静かになって黙って僕を見ている。
僕は無視して教科書を開いた。
先生が入って来た。
僕を見て、驚いた顔をした。
「出てきたのか?それにその恰好は」
「いけませんか?」
「いけないって訳じゃないが。しかし」
僕を見て笑った。
「吉村君達が無理矢理こうしたんですから」
吉村君が驚いたような顔をしている。
「女の子なんだから、女の子の制服着てておかしくないでしょう」
「女の子・・・」
本当なんだもの・・・
「後で職員室に来なさい」
「はい・・・」
みんな僕を見ている。
くすくす笑っている子もいる。
授業が終ると、女の子達がよってきた。
「河合君女の子になったたの?」
くすくすおかしそうに笑っている。
「ずうとスカートはいてくるつもり?」
「うん」
「ブラしてるんでしょう?」
「その中本物よね。この間見ちゃったわよ」
「河合君可愛いから女の子の方が似合うかもね」
色々言われて恥ずかしくなってきた。
スカートを見下ろした。
恥ずかしくなんかないんだ・・・
スカートの下にはちゃんと女の子のあるものがあるんだもん・・・
胸もあるんだし・・・
「女の子になっても仲良くしてくれる?」
思い切って微笑んでみんなを見た。
「いいわよ」
みんな言ってくれた。
「お前何言ってるんだよ?」
吉村君がやってきた。
「なによ?」
「馬鹿じゃないのか?お前男だろう」
「女よ。変な事いうのやめて」
「おちんちんが付いている女なんかいないぜ」
立ち上がって吉村君を見た。
もういじめられるのいやだ。
吉村君がにやって笑って僕のスカートを捲り上げて、僕の股間を掴もうとした。
一瞬体が竦んでしまった。
「いや・・・」
「何するのいやらしいわね」
女の子達が騒いだ。
吉村君が唖然とした顔で僕を見ている。
「お前一体・・・」
急いで彼の手をどけてスカートを下ろした。
「いやらしいことやめて」
彼の目を見た。
「そうよ、えっちね」
口々に非難している。
女の子だと、変な事されないんだ・・・
男の子だといじめられてもみんな黙っていたのに・・・
チェックのスカートをじいっと見つめた。
職員室に入って先生の前に立った。
先生は戸惑ったような顔をしている。
「ちょっと応接室に行こう」
「はい・・・」
先生は僕に女の子の服着てる理由を聞いてきた。
僕はただ女の子だからとだけしか言わなかった。
本当の事言ったら・・・
女の人の事思い出して恐くなった。
もうこれ以上変な事されたら・・・
「良くわからないな」
先生は僕を見て頭を傾げている。
「その胸は何か入れてるのか?」
「いいえ」
驚いた様な顔をした。
「でも、君は男の子で入学してるんだから」
胸がどきどきしてきた。
どうしたらわかってもらえるんだろう・・・
「だって、僕もう女の子なんですから」
吉村君の事を思い出して、立ち上がった。
「先生・・・」
スカートを捲り上げた。
先生が焦った顔をしている。
「ちょっと・・・」
でも、僕の股間に目が吸い付けられている。
恥ずかしいからすぐスカートを下げた。
「河合、本当に女になったのか?」
こくっと頷いた。
女の子になちゃったんだもん・・・
第13章 女の子として
「お姉さーん」
「なあに、ゆきちゃん」
これどういう風に切るの?
お姉さんと一緒に夕食の支度をしているんだ。
何だか楽しいな。
ワンピースにエプロンして料理していると女の子なんだわって気持ちになって
くる。
「こんなものかしら?」
「ええ、うまいじゃない」
笑顔で僕を見詰めた。
「ゆきちゃん、女の子になって良かった?」
「うん」
こくっと頷いた。
あの誘拐から始まった出来事を思い出していた。
何だか夢のような気がする。
あの女の人はどうしてるのかしら。
男の子だった時の記憶は段々薄れてきた。
昔からこうしてお姉さんの妹だったみたいな気がする。
「ゆきちゃん、上手じゃない」
ママが優しい目で僕の手元を見ている。
「ママ、ありがとう」
「じゃあ、出来たから持って行こうか」
「ええ」
パパが僕を見てむすっとした顔をしている。
パパは僕が女の子になるのをまだ許してくれない。
何で分かってくれないのかしら・・・
女の子になって、僕は幸せなのに。
学校でも一杯お友達が出来た。
同じ事して、同じように感じても前はいじめられていただけなのに。
今はみんなに受け入れられている。
不思議な気がした。
何で女の子やママ達は受け入れてくれるのに、男の人は駄目なんだろうなあ?
まあ、いいわ。
今幸せなんだもの。
パパを無視して、ママとお姉さんを見て微笑んだ。
完
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投稿:2007.06.09
由紀さんの「禁断の精神病棟」
著者 名無し 様 / アクセス 26348 / ♥ 12