とある国、とある大学での講義にて。
聴講生諸君。
とかく映画などを見ているとタマは腕や足のような端っこ又は、アタマや胸部など上の方
にばかり当たるものと相場は決まっているな。何故かといえばそれはドラマチックな脚本
をひりだす為だ。
端っこなら負傷にも関わらず戦い続けるタフネスさ、上の方なら悲壮感や勇壮感を盛り上
げる事ができる。足でも同様だ。
タマにタマが当たりましたでは、最大値で観客の半分の同情しかない事請け合いだからな。
しかし現実にはタマにもタマは当たるものだ。実例を見ていこう。
ケース1 貫通銃創
WW2、東部戦線スターリングラード市内、独歩兵士官
最も一般的にありがちなケースだ。
モシンナガンライフルによる貫通銃創だが、大遠距離での狙撃であった事と、横風などの
天候により弾着が上体から反れたようだ。致命傷は免れたが、7,92mmの小銃弾に貫通され
ては陰茎なぞは残りようが無い。軍袴の中に得体の知れぬ肉塊がこびりついていて片タマ
だけかろうじてつながっていたが、陰嚢の方が破れてどうにもならなくなっており、タマ
を腹腔におしこんで縫合の上、まだ繋がっていた空路でピトムニク飛行場からの輸送機便
で後送され一命は助かった。
ただし、腹腔内におしこまれた睾丸は陰嚢が失われた事で整復できなかったので事実上の
去勢となっている。
ケース2 対人地雷
WW2、アフリカ戦線エルアラメイン近傍、英歩兵
対人地雷といってもこのケースはポップアップ型の地雷だ。ワイヤーで繋がっている信管
を起動させると、埋設状態からポップアップして数メートル飛び上がり空中でベアリング
の球のような小球を大量にばら撒くヤツだな。クレイモアのような指向性の管制地雷でも
同じ事は起こるかもしれん。
このライミー(英兵)も運悪く踏んづけた地雷の炸裂を背中から浴びている。背嚢にたま
さか入れていたものと球の飛来方向が良かったからヘルメットが上手く働いて、致命傷は
免れた。ただし、盾になるものがない下半身以下は一面に小球を浴びてしまっている。
自分の骨盤があるから陰茎は大丈夫だったが、陰嚢と睾丸は数個の小球が貫通または跳ね
回り、全く機能をなさないまでに破壊されている。
戦場を制圧したのが英軍だったお陰で、一命は拾ったが当然ながら去勢状態だな。
ケース3 大口径ライフルによる破砕、イラク歩兵?
イラク戦争、バグダッド郊外
?がついているのは正規軍なのか不正規兵か不明だからだ。
12,7mmの大口径銃弾、恐らく狙撃用大口径ライフルによるものだが、たまさか狙いが外れ、
足の間を銃弾がトンネルしたものらしいな。直撃なら腰の部分が無くなった「壊れた人形」
のようになるからな。
さてこのケース、直撃は免れたが、身体の直近を大口径銃弾が通過したために、衝撃波が
発生し、片足と股間の男性部分全体を切り裂いて破断したものらしい。何も男性であった
痕跡が残っておらん。早々に自軍が崩壊し極めて早急に敵軍に戦場を「制圧してもらった」
おかげで助かったようだ。何が幸いするかは判らないものだ。命が助かったので充分幸い
と本人が思う事が出来ればの話だが。
ケース4 砲弾による破砕
WW1、ヴェルダン郊外、独歩兵下士官
仏軍が多年にわたって愛用し、大量に使用した75mm野砲の榴弾が炸裂した際に生じた弾片
の比較的小さいものの直撃を股間に受けているな。まあ小さいといっても、そこは砲弾。
「手酷い裂傷」としか表現の仕様が無いな。
弾片は陰茎組織を体内部で両断し骨盤に当たり食い込んで運動エネルギーを消費し尽した
ようだ。切断面、、というか最早、破断面という方が近いか。ともかく傷口の状態が綺麗
ではなく、時間をかけられれば再度縫合もできたかもしれんが、そんな手間も時間も無い
状況で、まずは比較的手を掛けずに助かりそうな生命を助けるのが戦場医療の基本だから
その意味で比較的重視さるべき負傷兵だった訳だ。現況で整復の手間をかけられない陰茎
を切除して、尿道を確保の上で縫合し後送され一命を拾っている。
因みにこの後この下士官氏は復讐を誓ったものか、傷口が癒えた後も前線勤務を志願した
らしい。気持ちは良く判る。ただ陰茎が無い=用便や何やの都合、、塹壕は只でさえ不潔
なものとなり易いので、その辺りが忌避されたかそれとも何か他の故かは詳らかでないが、
後方勤務において特に精励したそうな。
ケース5 化学薬剤による壊死
WW1、ヴェルダン郊外、仏歩兵
ケース4にかなり近い。毒ガス砲弾の破片で受傷したからだ。
ただし弾片の方は小さいもので、軍袴を引き破った程度で終わったようだが、問題は同じ
砲弾に詰まっていた糜爛性毒ガスの原液を浴びてしまった事だな。本来なら炸裂すると
気体になって飛散しないといけないものが、砲弾が地面にめり込んで炸裂したのか、工作
精度の不足による不良品かそれは判らんが、皮膚や粘膜を腐食させ糜爛する毒物、恐らく
はマスタードガスだろうが、それを股間一面に浴びている。粘膜組織むき出しの亀頭なぞ
悲惨なものだな。一面に組織が崩れて膿だかリンパだか判らんテラテラした体液にまみれ
それが男性外性器全体の表面に及んでいる。結局糜爛の程度が酷かった陰茎を切除して、
生命の保持を優先したようだ。幸いタマの方は残ったようだが、どれほど男性機能が残置
されていたのかは疑問だな。
ケース6 放射線による機能喪失
湾岸戦争、イラクサウジ国境地帯、イラク戦車兵
見た目には何も起こっておらんな。ただ120mm劣化ウラン弾またはそれによって破壊され
た自分の戦車の小破片が睾丸にめり込んでいた。
劣化ウラン弾はぶ厚い装甲をその大重量からくる高運動エネルギーをもって貫通すること
を狙ったものだが、まずこれによって彼の戦車は装甲を打ち抜かれ次に副次効果として、
劣化ウランが装甲を貫通する時に生じる焼夷効果ともあいまって、自分の戦車搭載弾薬が
自爆した。たまさか車長用ハッチから身を乗り出していた彼は、下半身全面に大やけどを
負う羽目になったが、戦車から投げ出されたおかげで一命は助かった。砲手と操縦手など
ミンチのケシズミだからな。ケース3に近く、これも早々に戦場を「制圧してもらった」
おかげで助かった訳だが、当初は下半身の火傷しかないものと思っていたらしい。しかし
それに治療の手を尽くしている間も、睾丸内で放射線を帯びた小片が悪さをしておった訳
だな。じっくり時間をかけて内部から放射線被爆したおかげで、すっかり機能破壊されて
しまっている。ハッチから身を乗り出していても、先に120mmを食らってしまった迂闊さ
又は戦車の性能差の代償としては実に身に恐怖を覚える代償と言える。長期的な健康被害
についてはまだまだ研究が始まったばかりでしかないからな。
極々僅少な事例だがこのように弾は玉であろうとも当たるのだ。平和な国と時にある事と、
その有り難さを感じ取ってもらえたかな?男性聴講生諸君。
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投稿:2007.10.19更新:2007.10.19
タマはタマにも当たる
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