(いててっ…!!)
下半身の痛みに気づいたアルザが目を覚ますと、ベッドに寝かされていた。
どうやら、麻酔が切れてきたらしい。
股間が、体の前から足の間までずきずきと異物感を伴ってうずく。
隣の方から、小さなうめき声を伴ったすすり泣きも聞こえてくる。
「痛いよぉ…おまたが、痛いよお…」
そっちに目をやってみると、同じくベッドに寝かされた親友のトントだった。
トントも、自分同様左腕に点滴をつけられており、下半身からチューブが伸びているのが見えた。
この部屋にいるのは、自分とトントの二人きりらしい。
アルザは、自分の股間に、そっと右手を伸ばしてまさぐった。
(…ないっ!!俺のチンポとキンタマがないっ!!)
意識を失う前は、確かに11年間ぶら下げていた股間の突起物が、跡形もなくなっているのが感じ取れた。
痛みは、睾丸を切除され、ペニスと前立腺を体内の海綿体ごと摘出されてその皮膚で女性器を形成されたことに伴うものであり、異物感は、体の前面から足の間に移された尿道に挿入されたカテーテルと、体に穴をあけられて形成された膣に入れられたダイレーターによるものだった。
トントも、自分と同じ処置を施されているはずだ。
「男」を奪われた痛みと屈辱に、アルザの頬を涙が伝わり落ちた。
事の起こりは、一昨日の事だった。
「絶交…!?」
親友だと思っていたトントに、いきなりそう言い渡されたアルザは、思わず叫んだ。
「トント!!何でだよ!!俺が一体何したってんだよ!!」
「アルザ…ボク、ね。あさって、おちんちんとタマタマを斬られちゃうんだ。」
「はあっ!?」
トントは、泣きながら続けた。
「ボクのお父さん、病気だったでしょ?その手術代の代わりだって。もう…入院して、手術も成功したから、だから…ボクに、女の子になれって。斬るんなら、早いほうがいいから、すぐにでもって。だから、男の子じゃなくなるから、もう遊べないし、友達でもいられない…」
「ばかぁっ!!」
アルザは、思わず叫んだ。
「俺たち、友達だろ!!お前が斬るんなら、俺も斬る!!俺も一緒に女にでもなんにでもなってやるよ!!だから…」
「アルザぁっ!!」
トントは、声を張り上げて泣き出した。
迎えの自動車が来る頃、アルザは、こっそり自宅を抜け出して、トントの家に向かった。
「私としては願ってもない申し入れだが、アルザ君、本当にいいんだね…?」
車内での富豪の問いかけに、アルザは無言でうなずいた。
「じゃあ、二人とも裸になって。」
富豪の経営する大病院の医師は、二人に言った。
医師は、まずアルザの睾丸を手に取り、たぷたぷと揺らした。
「アルザ君の睾丸は…年の割にはずいぶんと大きめだね。もう精通もありそうだ。」
次に、ペニスを調べた。
「こっちのほうも太くて長いよ。皮も剥けるし。…うん。亀頭の方もよく育ってる。いいペニスだよ。もう少ししたら…恥毛が生える頃だね。トント君のペニスと睾丸が小さいから、女性器と膣の形成材料にはちょっぴり不足気味かな、って思ったんだけど、うん、これなら大丈夫。アルザ君の男性器の皮膚を少し回せばいいよ。」
いよいよ…チョン斬られちまうんだな。
手術が終わったら、チンポもキンタマもなくなっちまってるし、立ちションも出来なくなっちまうんだな…
アルザは、そう思っただけで、がくがくと震えだした。
トントは…と見てみると、すすり泣きの声を上げ始めていた。
アルザとトントは、指でつまんだペニスの先端から小便が勢いよくほとばしる感触を確かめながら最後の立ちションを済ませた。
手術前の処置を施す時間の間じゅう、アルザは自分の股間のものを見据え、両手で握り締めてこねくり回した。
(いよいよ、さよならだ。別れ際に、お前のこと、この俺の目でちゃんと見といてやる。俺の手で、触り心地も覚えておいてやる。俺が男だったってこと…チンポとキンタマがついてたってこと、ちゃんと覚えておいてやる。大切にしてたけど…今日で、お前ともお別れだ。あばよ!!)
「嫌だ、嫌だよお!!斬られたくないよお!!ずっと男の子のまんまでいたいよお!!」
泣き叫び始めたトントに向かって、アルザは怒鳴りつけた。
「トント、泣くな!!俺がついててやるんだから!!」
お前にそこまで泣き喚かれたら、俺は何のためにチンポとキンタマを斬るって決めたのかわからなくなるじゃないか。
そう言いたかったのを、ぐっとこらえながら。
アルコール綿で腕が拭かれ、注射針が刺される。
アルザの記憶は、そこで、ふつっと途切れた。
アルザの両親に全てが説明されたのは、何もかも…
我が子の、去勢とペニス切除、女性器形成手術が終わってからだった。
貧民である両親と弟妹たちが、一生遊んで食べられるだけの金額が、二度と我が家へと戻ることのないアルザとその男性器につけられたものではあったが、二人とも泣き崩れた。
「アルザ、お前ってやつは、なんて馬鹿なことを…!!」
動き回れるようになってからの初めての入浴で、アルザは改めて自分の裸を見つめた。
股間をそっと触って…
アルザは、手術後、初めて声を張り上げて泣き喚いた。
浴室の鏡を拳で打ち据えながら、泣いて、泣いて、声が枯れるまで泣いて…
泣き止んだとき、アルザは、もう、男性器と立ちションへの未練はきっぱり切り捨てると自分に言い聞かせた。
手術の前に、たっぷり別れを惜しんだじゃないか。
大好きだったけど、大切だったけど…
トントが斬られるのであれば、自分も斬る。
そう決めたのは、自分自身だったじゃないか。
なのに、泣いたところで一体何になるというのかと。
だから、俺は、もう二度と泣かない。
アルザは、そう決めた。
それから一年経った。
富豪は、自宅の中で、常にこの世のものとも思えないような美しさの二人の少女をそばにはべらせていた。
二人とも、常に全裸に近い姿をしており、白い肌で腰まである長い栗色の髪をした少女をマリア、小麦色の肌で短い黒髪をした緑の瞳の少女をライラと言った。
二人とも、恥毛が生えない処理を施され、贅肉ひとつついていない体つきだが、その胸には、豊満な二つの果実が重たげにゆれている。
マリアは、両耳と乳首、陰核と陰唇に青いピアス、ライラには同じ位置に赤いピアスが施されている。
マリアのかつての名はトント、ライラのかつての名はアルザと言った。
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投稿:2008.01.16更新:2008.01.16
大尽道楽2
著者 真ん中 様 / アクセス 15982 / ♥ 7