慣れないスカートを穿いてもうすぐ半年になる。
二人の姉に言わせれば僕の女装は完璧らしい。
僕にしても後半年の間はこの女装は絶対ばれるわけにはいかないのだ。
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今年の春から両親の仕事の都合で住み慣れた家を離れ一年間の期限で
別の学校に通うことになったのだがひとつだけ問題があった。
「節度無き自慰行為に耽る男児は厳罰に処す。」
…転入先の小学校の校則の一項目だ。
一体この小学校の過去に何があったか知らないけれど普通ではない。
なぜならここでいう厳罰とは去勢、つまりちんちんを切り取ってしまうことらしい。
そのことを聞いた二人の姉は、青ざめる僕を見て手を叩いて爆笑していた。
僕にとっては笑い事じゃあすまない。
ホントかどうか分からないけど「節度無き」という判断基準に
ちんちんの外見が重要視されるという噂があるのだ。
つまり普段から節操無くちんちんをいじくっている子の包皮は
通常よりもだらしなく伸びているという判断だろうか。
・・・そして僕のちんちんの皮は(姉達にいつもネタにされるほど)伸び垂れていた。
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あいまいな規則ほど性質の悪いものは無い。
この校則関しては厳罰=去勢ということ意外はっきりしている部分が無い。
判断基準もそうだが誰がそういったことを調べるかとかも良く分からないらしい。
もちろん定期的な検査とかそういうものがある訳でもなく
まるで形骸化した校則の様でもある。かといって無視するのも・・・。
「学校で切られちゃうのが嫌なら、今すぐ女の子になっちゃえばいいじゃないw」
姉の一人が笑いながらハサミをちょきちょき鳴らした。
笑えない冗談をもう一人の姉は意地悪く考えをめぐらせ
「そんなことしなくても男の子ってバレなきゃいいじゃん。」
その一言で笑えない冗談は冗談で無くなってしまった。
どうやら母や姉達にとって僕は女の子の格好をさせたい存在なのだろう。
母と姉達は僕に姉のお古の服を着せ僕をこれから通う学校に連れて行った。
姉が着れないお古をのこしてある時点で姉達が
僕を日頃どう扱ってるか皆さんに分かっていただけると思う。
(そして断れば僕のちんちんの写メが
クラスの女子のケータイに受信されるのだろう(涙))
さてさて学校に着くなり校長室に切り込んで母は
「実はこの子性同一性障害なんです。」とデタラメを吐いた。
唖然とする校長に畳み掛けるように姉達が「理解の無い前学校とは訴訟中である」とか
「貴方はこの問題についてどういった考えをお持ちでしょうか?」だの
いわゆるモンスターっぷりを爆発させた。
みるみる表情が蒼くなっていく校長はしばらく沈黙した後、
僕を立たせてその周囲をぐるぐる回りまた沈黙した。
やがて校長は疲れた声で僕に既出である名前をたずねた。
「坪口 優です。」
僕の声質を聞いてうーんと声を絞り出した後、ただし他の児童とトラブルが
あったときは私は責任はもちませんからね、と校長は母に念を押した。
その一言に姉二人は顔を見合わせ笑みをこぼした。
僕は校長の権限で(残念なことに)女子として通学することを容認されたのだ。
僕としては校長にあの校則について質問したかったが
変に勘ぐられるとダメだと姉達に言われできなかった。
こうして僕は流されるままに一年間女子として学校生活を送ることになった。
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転入当初、クラス(というか女子としての生活)に馴染めないでいると
「あら、貴女おとなしいのね。」と声を掛けられた。
そのとき感じた印象は「イジワルお嬢様」だろうか。
いかにも棘のありそうな女の子が僕の机の前に立っていた。
何と無く嫌な予感がしたものの彼女は案外親切な様子で
なれない転入生に学校の色々なことを丁寧に説明した。
「じゃあこれからよろしくね、坪口さん。」
ありがとう、と少し恥ずかしい心地でお礼を言うと
「高沢 怜」と名乗ったその子はにっこりと笑みで返した。
思い返せばここで気を許してしまったのがいけなかったのだろうか・・・。
「お嬢様でいるのはストレスがたまるのよ。」
知り合って一週間程で高沢さんはその性根を現しはじめた。
彼女の形成するグループに取り込まれた僕は
初対面の印象が間違ってなかったことを実感した。
グループには彼女と僕のほかにマキとミキという女子がいるが
その二人と高沢さんの関係は友達というより
教祖と信者という感じで薄気味悪かった。
そして彼女は僕に対してはまるで普通の友達のように接してくるのである。
高沢さんは典型的なトラブルメーカーで家でのストレスを
発散するかのごとく学校では自由に振舞った。
気まぐれに火災報知器のボタンを押してみたり
学校に犬を連れてきたりとやりたい放題だ。
そんなトラブルメーカーとおとなしそうな転入生が
一緒にいるのを心配したのかクラス委員長の雪城さんが声を掛けてきた。
「坪口さん、高沢さんにイジメられたりしてない?」
間近に覗き込んだ心配そうな彼女の表情に僕は顔を真っ赤にしながら
うん、大丈夫と小さく答えた。
「あの子、貴女みたいなおとなしい子をみつけて
そういうことしたりするから・・・。」
不安そうな表情で雪城さんは僕を見つめる。
高沢さんがイジワルお嬢様なら雪城さんはシッカリ優等生だろうか。
「なにかあったらなんでも私に相談してね」とだけ告げると
彼女は甘い香りを残して去っていった。
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「坪口さんはあの校則知ってる?」
最初に切り出したのはマキだった。
僕はすぐにピンときたが無難に知らない振りをすると
興味があるのかマキとミキはクスクス笑いながら説明してくれた。
唖然と(した振りを)する僕を見てミキは
まあ形だけの校則だとみんな言ってるけれどね、と付け加えた。
「ところがそうとは言い切れないのよね。」
高沢さんが何か閃いたように話に加わる。
彼女が言うには過去一人だけ切られてしまった子が存在するらしい。
「えっ。嘘でしょ?」驚きながらマキは面白そうに話に食いつく。
高沢さんはさも楽しそうに
「だから実際に試してみればいいじゃない。」
と僕を見て冷たく笑った。
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冷や汗が一滴流れたがどうやら僕の早合点で
僕の女装がばれたという事では無いらしい。
ほっと安堵をしたのも束の間、高沢さんは「誰がいいと思う」と僕に聞いてくる。
僕は質問の内容と意図が分からず答えられないでいると
「じゃあ、クラスの男子の中で一番大人しそうなのは?」と質問を代えてきた。
僕は「巻川くん」と一人の少年の名前をあげた。
彼は小柄で中性的で大人しく僕に似て不思議な親近感があり
男子の中で唯一顔と名前が一致する子だ。
「じゃあターゲットは決定ねw」
高沢さんのその一言で僕は彼女の意図を理解して愕然とした。
彼女は巻川くんのちんちんを件の校則に引っかかるようにして
去勢されるかどうかを試してみるというのだ。
そして今僕はその悪行の片棒を担がされたのである。
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高沢怜は計画を練ると僕は巻川くんの呼び出し役とその後の見張り役を命じた。
マキとミキは呼び出された巻川くんを押さえつける役だ。
罪悪感でいっぱいな僕は心の中で謝りながら
「巻川くん先生が呼んでるよ。」と、嘘をついた。
誰もいない音楽室に巻川くんを呼び出すと高沢怜がガチャリと鍵をかける。
すぐさまマキとミキが抵抗する巻川くんを床に押さえつける。
後ろ手にガムテープでぐるぐる巻きにすると巻川くんはすすり泣きしだした。
「まだ何にもしてないじゃないw」
高沢怜が巻川くんの口をガムテープでふさぎながら苦笑する。
見張り役の僕は役目を忘れてその様子を固唾を飲んで眺めている。
床に押さえつけられた巻川くんの上半身をマキが、足首をミキが押さえつけると
高沢怜は容赦なく巻川くんのズボンとパンツを下ろした。
音楽室にマキとミキの甲高い笑い声がこだまする。
高沢怜も冷たい苦笑を浮かべていたが
僕には巻川くんの無念が伝わってくるようだった。
高沢怜がマキとミキに命じて彼の両足を開かせて
ケータイを取り出すと2、3回フラッシュが焚かれる。
その瞬間に巻川くんは諦めたようにぱったり抵抗をやめてしまった。
高沢怜が勝ち誇ったようにケータイの画面を巻川くんに見せ付けた。
巻川くんは目に涙をいっぱいためて視線をそらした。
「じゃあ、そろそろ皮伸ばそっかw」
高沢怜の一言にマキとミキがどっと笑い声をあげる。
巻川くんはピンときたのだろう、首を必死で左右に振って拒絶の意思を表す。
「臆病ねw、あんな校則なんて形だけに決まってるじゃないw」
高沢怜は巻川くんの先っちょを躊躇なく素手でつまむと
遠慮なくぐいぐい引っ張り始めた。
その後の巻川くんはまさに彼女達の玩具だった。
つままれ、引っ張られ、めくられ、伸ばされる。
もちろんそれだけではすまない。なにしろ校則に当てはめるなら
節度無き自慰行為というのが必要なのだ。
高沢怜は巻川くんの口元のガムテープを引っぺがす。
巻川くんに精通の有無を尋ねると巻川くんは、ありませんと小さく答えた。
「感謝なさい。私達が試してあげるからw」
高沢怜はイジワルな笑みを浮かべると巻川くんの包皮を
オーバーアクション気味に上下に動かし始めた。
「やめて!切られちゃう!切られちゃう!」
巻川くんの必死の懇願も彼女達の笑い声にかき消される。
「怖がりねえw」 「臆病すぎるねw」 「意気地なしっw」
高沢怜はクスクス笑いながら手を動かす。
ムクムクと大きくなる様子をマキとミキはケータイのムービーで撮りながら
ケラケラと笑い声をあげた。
やがてマジックペン程度の細さと硬さのちんちんがお腹に着きそうなくらい反り返ると
「それっ!切られちゃえっ!」
と、高沢怜の一言と同時に
巻川くんはマキとミキのケータイの前で二度、三度射精した。
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射精シーンまで撮られてしまった巻川くんは
高沢怜の言いなりになるしか無かったようで毎日のように彼女の呼び出しを喰らった。
僕はなんだか自分の身代わりに生贄を差し出した気分になり
なけなしの勇気を振り絞って高沢怜を呼び出した。
「あんなの根拠の無い噂にきまってるじゃない。」
本当に切られてしまったら可哀想だ、という僕の意見に対して
高沢怜は簡単に切り替えした。
僕はあっけにとられたがすぐに理解した。
つまり彼女自身、巻川くんのちんちんを伸ばそうがシコろうが
去勢されるなんてありえないと思ってるのだ。
ただそんな噂に振り回される男子の度胸の無さをあざ笑いたいだけなのだ。
僕は雷が直撃したようなショックを受けた。
じゃあ、僕は一体何なんだろう。
もし高沢怜が、いやこの学校の女子が僕が女装していることを、
そしてその理由を知ったら、僕の度胸の無さを顔を真っ赤にして笑うだろう。
今の僕は去勢されてちんちんが無くなってしまった男子より男らしくない。
ちんちんがついていても男子としてのプライドが無いのと同じだ。
一人塞ぎ込む僕に高沢怜は「それに坪口さんももう十分共犯だからね。」と
示唆すると僕は黙って頷くしか無かった。
「・・・・・・・・・・・・。」
自分の惨めさに気づいた僕が塞ぎ込んでいるのを高沢怜は
勘違いしたのか「そんなに悩むこと無いって。」と声を掛けた。
「大体ホントに切られちゃってもおちんちん無くなるだけでしょ?
私達女子には元々そんなもの無くても平気だからきっと大丈夫だよ。」
僕は高沢怜の一言に男子と女子の温度差のようなものを感じて驚愕した。
今の一言は女子の立場にある坪口優の罪悪感を和らげるための高沢怜の本音だろう。
違う。決してそんなもんじゃ無い。
ちんちんにコンプレックスを持つ僕はよく分かる。
ペニスとは男性としての象徴なのだ。
ひどく皮が余り人前では常に前を隠し、姉にちんちんをネタにされる僕は
ちんちんに自信が持てないから男子として自信がもてないのだ。
ちんちんは立派であることに越したことは無い。
決して切り取ってしまって良いものでは無いのだ。
しかしそんな大層な意見を吐く資格は今の僕には無い。
何しろ今の僕は男子ですら無いのだ。
僕は心の中で巻川くんに土下座しながら
「そうだね、指が無くなったら不便だけどおちんちんは無くなっても困らないよね。」
と無理やり笑顔を振り絞って返答した。
高沢怜もそんな僕の様子にほっとしたのか
「じゃあ私、巻川くん呼んでくるね」と僕の代わりに教室に消えていった。
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その日の放課後、クラス委員長の雪城さんに呼び止められた。
「高沢さん達とは早く距離をとった方が良いわよ。」
単刀直入に彼女は切り出した。
もう十二分にそのことに関しては実感している。
ただどう考えてももう手遅れなのだ。
心配そうに雪城さんは「何か困ったことは無いか?」
「あの子達陰で悪いことしていないか?」だの尋ねてくる。
うつむく僕を下から覗き込む仕草に一瞬戸惑ったが慌てて視線をはずした。
何も答えない僕に少し残念そうな表情の雪城さんは
じゃあね。と一言残して立ち去ろうとする。
「あ、あのっ・・・。」
僕の声に反応して雪城さんは振り返る。
「いつも、心配してくれて・・・、ありがとう・・・。」
僕の一言ににっこり笑みで返すと雪城さんは教室から出て行った。
教室に残された僕はガラスに映った自分の姿をしばし見つめていた。
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「もうやだっ!ホントに切られちゃうっ!」
巻川くんの悲鳴が音楽室に響き
「きゃははっw 弱虫ーっ!」
マキとミキの笑い声が響き
「それっ!切られちゃいなさいっw」
高沢怜の合図とともにずいぶんと皮が伸ばされたちんちんが
降参するみたいに勢い良く白い液を搾り出した。
毎度おなじみの光景となってしまったが
巻川くんの包皮は日々着々と伸ばされ
もうすぐ僕と同じくらいの長さに達しようとしていた。
もう以前の巻川くんのちんちんの面影は無い。
マキは毎日巻川くんのちんちんの皮の伸び具合を撮りつづけ
パソコンで編集してまるで二十日大根の成長記録のように動画にした。
彼女達はその滑稽な様子にゲラゲラ笑い転げた。
「こんなに伸ばしてるのに一向に切られないね。」
マキが笑いが収まらない様子でつぶやくと
「当たり前じゃない。学校側はどうやってそんな事調べるのよ。」
高沢怜はさも当然のように答えた。
確かに彼女の言うとおりだ。
実際に巻川くんは包皮を伸ばされ節度無き自慰行為(厳密には自慰では無いが)に
及んでいるが学校側はその事実を知るすべが無い。
「これで結論がでたわね。つまりあの校則は規則として制定されてるけど
全く意味は無く、形だけの校則だったてね。」
高沢怜はようやく満足がいったのか長い実験に終止符を打った。
もう明日から巻川くんが呼び出されることも無いだろう。
僕も重い重い罪悪感から開放される。
後は残りの半年女装がばれないように上手くやるだけだ・・・。
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翌日の朝、巻川くんの姿は教室に無かった。
そのかわり玄関前に晒し首のように切断されたちんちんが掲示されていた。
「諸事情により厳罰に処す。ー学園理事会ー」
あいまいな理由が書かれた張り紙が傍に張られてあり説明になっていなかったが
その包皮は長く垂れ下がっていて誰のものかは僕には考えるまでも無いことだった。
僕はショックでめまいがした。
卑怯なことに、巻川くんに対して後悔の念とかではなく
つまり何かあって僕の女装がバレ取り調べられることがあった場合
確実に僕のちんちんも切り取られ玄関に晒されてしまうという
自己中心的な理由によるショックだ。
自然と膝が振るえ、あぶら汗がぽたぽたとこぼれた。
切断されたちんちんは透明なプラスティックで固められていて
後で知ったことだが血液の代わりに赤色の防腐剤を注入されており
きれいな肌色を保ち切断されたものという感じがしなかった。
まるで晒し者にするのが目的だといわんばかりだ。
野次馬間でも男女の温度差は存在し、実際に切断されてしまう恐怖を
感じてしまう男子はその場を離れるのに対して
現実感の無い女子は好奇心いっぱいに
「誰のちんちんだろう?」とか「なんか晒し首みたいw」と噂しあった。
その様子はまるで理科室の標本を眺める程度の軽さでしか無かった。
惨めな姿になってしまった巻川くんのちんちんは
結果的に女子の好奇の目に晒されることになり
包皮が長く伸びて垂れ下がってる様子を側にいた女子は
「なんだかしょんぼりしてるみたいだねw」と苦笑した。
そしてこの様子は僕にとって全く他人事じゃなく
未来の僕の姿なのかもしれないのだ。
やがてそこに当事者であるはずの高沢怜が現れた。
彼女はしばし無言であったがクスクス笑い出すと
ポケットからケータイを取り出しシャッターを押し始めた。
そんな彼女につられる様に周囲の女子もケータイを取り出した。
無数のフラッシュを浴びる様子に満足したように
「苦労して伸ばした甲斐があったねw」と僕に小声でささやいた。
どうやら彼女の言い分はこうらしい。
つまり私達は巻川くんの包皮を伸ばし、強制的に射精させたが
それを節度無き自慰行為と勘違いし去勢に至ったのは学校側の責任だ
というのだ。
まったく悪びれた様子も無い彼女だがひとつだけ
「でもどうやって学校側は調べたんだろう?」と首をかしげて去っていった。
全く同じ疑問が頭にあった僕はすぐ隣に雪城さんがいるのに気がつかなかった。
ようやく僕が雪城さんに気づいたことに彼女はクスクスと苦笑した。
「あんなに面白いおちんちんは切られちゃっても仕方が無いねw」
彼女はわざと周囲に聞こえるように少し張った声をだすと
周囲の女の子達は堪え切れないように笑みをこぼした。
僕は雪城さんがそんな事を言うとは想像ができず耳を疑った。
「あんなに面白いおちんちんは切られちゃっても仕方が無いね?」
今度は普通に僕に向かって彼女は話しかけた。
僕は少し残念な気持ちになって「うん、仕方ないね。」と小さく答えた。
その返事を聞くと雪城さんは「ちょっとこっち。」と僕の手をとって
人気の無い校舎裏まで引っ張っていった。
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「私、知ってるんだから。」
彼女はいつかの放課後の別れ際のにっこりとした表情で鋭く切り出した。
僕は全身からあぶら汗が噴き出した。
僕の様子を見て雪城さんはクスクス苦笑を漏らした。
「なんでも私に相談してねって言ったじゃない?
もう隠さずに全部話して見なさい?」
低学年の子を諭すように困った表情で雪城さんはうつむく僕を下から覗き込んだ。
僕は高沢怜の一員として参加した一連の悪行をポツリポツリ漏らし始めた。
神妙な様子で話を聞いていた雪城さんだったが僕が全て話し終えると
「それで全部?」と聞き返した。
僕は小さく頷くと雪城さんは満面の笑みで
「じゃあ、パンツ下ろしなさい。」
と鋭い口調で命令した。
その一言に僕は大きな間違いを犯したのだと気づいた。
膝がかくかくと震える。彼女が「知っている」と言ったことはそういうことなのだ。
震える手でスカートの下のパンツを膝まで下ろす。
可愛い女子用のパンツに雪城さんは堪え切れないように苦笑をこぼした。
「ゆっくりスカート捲り上げなさい。」
高沢怜よりも冷たい笑みを浮かべて雪城さんはケータイではなく
あらかじめ用意していたデジカメを構えた。
僕の長く垂れた包皮がスカートの下からひょっこり顔を出すと
雪城さんは「あらあら、なにこれ?(笑)」と冷たく言い放つと
容赦なくシャッターを切る。
雪城さんは撮影したばかりの画像を確認すると満足そうにクスクス笑い、
突きつけるように僕の目の前にモニターを差し出す。
そこには僕の文字通り急所が映し出され記録されていた。
歯がカチカチと鳴り膝ががくがく震える。
「・・・変態。」
━━━━僕が臆病な気持ちで女子の格好をしていたこと。
「何このおちんちん? 面白すぎるわよ。」
━━━━コンプレックスであった包皮の垂れさがったおちんちん。
その両方の秘密を彼女にデータという取り返せない形で握られてしまったのだ。
「・・・この画像が学校に出回ったらどうなるかしら?」
僕の顔から血の気が引いていく。当然僕のちんちんは玄関前に晒し首だ。
「や、やだぁ。お、お願いだから・・・切らないでぇ・・・。」
涙がぽろぽろこぼれ、震える声を絞り出す。
瞬間、彼女はその白く冷たい指で僕の惨めな包皮をねじりあげた。
「晒し首にされちゃえっ、卑怯者! クラスメイトのおちんちんは見殺しにしたくせに。」
彼女の鋭い言葉が僕の心に突き刺さった。
逃れ様の無い罪の意識が僕を押しつぶす。
僕の脳裏には先ほどの光景、晒し首にされたちんちんが思い浮かぶ。
嫌だ、切られちゃうなんて絶対嫌だっ!
そう強く思えば思う程、罪の意識も強くなる。
僕がしてしまった事はそういうことなのだ。
「当ててあげようか?」 彼女は指先に力を込める。そしてクスクスと笑いながら
「君、晒し首になってるおちんちん見たとき・・・、」
「ホントは『ボク、女の子の格好してて良かった!』て思ったでしょ?」
と、僕の卑怯で臆病な本心を正確に射抜いた。
ベソをかきながらコクンと頷くと、彼女は指先の力を緩め軽くつまみなおす。
彼女はクスクス笑うと「よく似合ってるわよ。その格好w」とミジメな僕を見下した。
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「安心しなさい。取り敢えずは秘密にしておいてあげるから。」
雪城さんの意外な一言に僕はうつむいた顔をあげた。
重く暗く黒い何かに潰されそうな重圧が消えてゆく。
そんな様子に苦笑した雪城さんはタネあかしをしてくれた。
最初に声を掛けた後、挙動不審な僕のことを前学校まで問い合わせたこと。
女装している理由が件の校則に関係あるとすぐ感づいたこと。
高沢怜との間に何かトラブルが起きてると気づいたこと。
そして巻川くんのことは(イジメの件はふせて)学校に通報した者がいること。
などを僕に簡単に説明してくれた。
僕は絶句した。
僕達当事者以外に巻川くんの件を知っているのはおそらく目の前の彼女だけだ。
そして彼女が通報の仕方を選べば巻川くんはちんちんを切られずにすんだだろう。
問題はなぜ『巻川くんなのか?』ということである。
雪城さんは僕を通報することもできたのである。
しかし彼女はそれをせず僕を罵倒したあげく『秘密にしてあげる』と言うのだ、
巻川くんのことは躊躇無く密告した彼女が。
つまり巻川くんのちんちんが切られたことはただの手段なのだ。
彼女の目的は僕の心に去勢される恐怖を直に焼き付けることなのだ。
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こうして僕は雪城さんの遊び道具になってしまったのだが
彼女は僕が逆らわない限り通報する意思も例の証拠画像をばら撒くつもりも無いらしい。
学校でもビクビクする僕を雪城さんは気にも留めない様子で
かえって逆に恐ろしい不安な日々が何日かつづいたのだが、
ある日、奇妙な噂を耳にする。
「巻川くんを密告した少年は巻川くんと同じようなちんちんだ。」
学校の空気は一変する。その噂は教室のあちこちでみんなの話題に上る。
噂を高沢怜は一笑に付し、僕は冷たい刃物を当てられた気分になった。
その噂は正確ではないが、大体あっている。
密告したか、見殺しにしたかの差であって真実を明らかにして
僕が必死に弁明しようとも鼻で笑われるだけだろう。
ひとつ言えることは僕のちんちんは学校中を敵にまわしたようだ。
やがて噂は皆の憶測と混ざり合って
「自分が切られたくないので巻川くんを犠牲にした。」という形に落ち着いた。
僕のすぐそばの女子の集団がクスクス笑っている。
「そんな卑怯なちんちんは切られちゃえばいいのにw」
急に話を振られた僕はゴクリと唾を飲み込んだ。
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やがて噂を流したであろう本人が僕の前に現れる。
学校中に噂が広がったことでに雪城さんは準備が整ったという様子だ。
僕は何故、彼女が通報する意思も
例の証拠画像をばら撒くつもりも無いのか分かってしまった。
「今日から学校にいる間パンツは私が預かるからねw」
雪城さんは楽しそうに笑うとスカートも短めのものを着用するようにと指示をだした。
これで僕のちんちんを守るものは短く薄く頼りない布一枚になってしまう。
最後に飼い猫のようにちんちんの根元に小さな鈴の付いた首輪を巻きつけた。
「じゃあ、ばれない様に頑張ってねw」
挨拶代わりといわんばかりに僕の包皮をぱちんと指で弾くと
根元の鈴がささやかにチリンチリンと鳴る。
雪城さんは慌てて前を押さえる僕を笑いながら去っていった。
その日から僕は毎日震えながら学校での日々を過ごしている。
油断すれば短いスカートの裾からミジメな包皮が顔を出す。
ちんちんがビクビク震えるたびにチリンチリンと鈴が鳴る。
存在しないはず鈴の音源を周囲の人間は不思議そうに探そうとする。
その度に僕は冷や汗をかかされる。
その視線は僕を処刑台に導く視線なのだ。
-
投稿:2010.01.09
晒し首
著者 うっかり 様 / アクセス 25414 / ♥ 46