初投稿です、サイトの趣旨とそぐわない部分があるかもしれませんが、そこはご容赦を...。
アイツが飛び降りたのは、俺のせいだ。
俺がイジメに気がつけなかったせいなんだ。
アイツは、人一倍優しかった。
その容姿も、男子にしては可愛らし過ぎた。
女みたいだと、男子からは仲間はずれにされ、キモイからと、女子からは除け者にされていた。
別のクラスにいたから、俺はその事実に気がつけなかった。
「来ないで!」
そこは、学校の屋上だった。
「マコト、馬鹿なことをするな!」
「もういやなの、一人ぼっちはもういやなの!」
「俺がいてやるから!」
「え?」
その声に驚くマコト...だが。
風が吹いてしまった。
風にバランスを崩し、不自然な格好で落下する身体。
偶然にも、花壇がそこにあったため、命こそ落としはしなかった。
が、不自然な格好で落下したために、うつ伏せで落ちてしまった。
そのため、アレが潰れてしまった。
そう、男性として一番大切なアレを...。
病室で見た病衣は、ピンク色をしていた。
以前に入院した時、俺は青色の病衣だった。
そして、母さんが入院した時は、ピンク色をした病衣だった。
その違いを、この瞬間まで知らなかった。
そしてその違いを知ってしまった時、マコトに起きてしまったことを感じてしまった。
「ユウくん...来てくれたんだ...」
マコトは、俺に微笑んだ姿を見れてくれた。
心配させないために、無理して笑ったのだろう。
会った瞬間、何故か今までと違ったものを感じてしまった。
友情とはまたちがう、特別な感情を感じてしまった。
可愛いと、感じてしまったんだ。
「ねえユウくん、今の僕のこと、どう思う?」
退院近くのある日、唐突にそう聞かれた。
あの日以来、学校の様子が変わって行った。
一番うるさかったマコトのクラスは、俺のクラスにまで聞こえる程の、授業中の大声や笑い声が消えた。
何というか、いう方向に変わっていった。
俺はというと、毎日のようにお見舞いに来ていた。
そのため、他のお見舞いに来る人たち(もちろん、学校の先生や生徒を含め)に、よく会うようになった。
謝罪の現場に、居合わせたこともあった。
学校の様子を話したり世間話をしたり、そんな毎日。
そんな普通になったある日のことだったから、何となくで答えてしまった。
「可愛いと思う」
言ったあとに、しまったと思った。
その言葉は、マコトを飛び降りさせてしまった言葉の一つかもしれなかったのに。
謝ろうと思った、なのに、マコトは顔を見せてはくれなかった。
「帰って」そんな気持ちの現れだと思った俺は、「ごめん」とつぶやくように言った。
そして、帰った。
次の日から、お見舞いにいかなかった。
いけなかった。
学年が上がり、クラス替えが行われた。
俺のクラスには、マコトの名前もあった。
最初、マコトは転校すると思っていた。
しかし、確かに席はあるし、名前もある。
そして今日、マコトが帰ってくるらしい。
教室の扉が開かれた。
そこにいたのは、赤いランドセルを背負って、スカート姿で現れたマコトだった。
「ただいま、ユウくん!」
笑顔だった。
高校生になり、性に関する知識だとか、そういうのを色々知った。
今のマコトが、本当の女の子になったわけでなく、所謂「去勢」された状態なのだというのも知った。
子供が産めるわけではない、ただ、アソコが女の子と同じになっただけで...。
修学旅行で別々の風呂に入る時、少しずつ膨らむ胸を見た時、同じ学校に行くのが決まってそれぞれの制服が違うのに気づいた時、異性になってしまったのだと思う。
本当の女の子ではないのに、女の子のように思ってしまう。
可愛いと、思ってしまう。
マコトをこんなにしてしまったのは、俺だというのに...。
「ユウくん、いらっしゃい!」
「おじゃまします」
両親が仕事の都合で家をあけるというので、マコトの家に泊まることになった。
一人でも大丈夫だと言ったが、いいから泊まれという命令だ。
「やあユウくん、よく来たね」
「本当に久しぶりね...最後にうちに来たのは、マコトがまだ男の子だった時かしら?」
マコトの両親も、快く迎え入れてくれた。
マコトがキッチンに立ち、料理をし始める。
「今じゃ、私よりマコトの方がお料理上手なのよ」
聞けば、普段の家事はほとんどマコトがやっているのだとか。
「まるで嫁入り修行ね」
思わず口に含んだお茶を吹き出しそうになったが、堪えて逆に飲み込む。
「どうだいユウくん、マコトをもらってはくれないかね?」
吹き出すお茶が口にあれば、間違いなく吹き出していた。
「パパもママも、冗談はそのぐらいにして、夕食にしよ」
夕飯は、かなりうまかった。
あとかたずけを終えて、俺とマコト両親が風呂に入り終わり、マコトが風呂に入っている間、大事な話があると言って、リビングから茶の間に案内された。
「単刀直入に聞こう、マコトのことをどう思う?」
素直に答える。
「可愛いと思います」
「本当にそれだけか?」
一瞬、心の中が見透かされたように思った。
「言い方を変えよう、マコトのことが好きか?」
そう、俺はマコトが好きだ。
けれども...。
「マコトは子供が産めるわけではない、本当の女の子ではない」
違う。
「それもいいのか?」
違う。
「違います」
そう、そうじゃない。
「俺はマコトといつも一緒だった、なのに止められなかった、気づいてやれなかった」
だから。
「俺がマコトをあんなにしたんです」
だから。
「俺に、マコトと一緒にいる資格は無いんです」
だから言えなかった、好きだって。
「マコトは、いつもユウくんのことばかり話しているよ、あの日の前も、後も」
あの日の、飛び降りたあの日。
「『俺がいてやる』その言葉が、マコトの支えになった」
あの日の言葉...。
「『可愛いと思う』その言葉が、マコトに女の子の身体を受け入れる決意をさせた」
あの言葉が...。
「話していたよ...この身体になったのは、きっと神様が僕にくれたプレゼントだからだ、って」
つまりそれは...。
「もともと、ユウくんには罪なんてなかったんだ」
だったら...。
「いつもマコトは、ユウくんのことばかり話していた、あの子も君のことが好きなんだ」s
「...なら俺は、この気持ちを伝えていいんですか?」
「...ああ」
「好きだと...言っていいんですか?」
「ああ、そうだ」
俺は、マコトの両親にしっかり伝える。
「伝えてきます、この気持ちを」
「行ってきなさい」
マコトは、もう風呂から出た後だった。
リビングで一人、座っていた。
「ユウくん、話は終わったの?」
伝えるんだ、この気持ちを!
「好きだ」
マコトは、目を見開く。
そして、震える唇で言葉が紡がれる。
「僕で...いいの?」
「いいんだ」
「赤ちゃん産めないよ?本当の女の子じゃないんだよ?」
「いいんだ、俺はマコトが好きなんだ」
「...僕も」
唇が...重なる。
今度こそ守ってみせる。
世界で一番大切な女を。
「心配する必要なんてなかったようね」
「ただ、二人の子供が見れないのは少々残念だがな」
「それは、あちらの家族とも話したことでしょう?」
「そうだな、これが二人にとっての最高の幸せなのだからな...」
〜fin〜
-
投稿:2012.02.24
変化〜二人の最高の幸せ〜
著者 ルミナス 様 / アクセス 9578 / ♥ 1