「序」
小さなリビングのような特別室には一人の少年がいた。いや、少年だったもの・・・少年から今まさに変身しようとしているものと言ったほうがいいかもしれない。
少年の名前はショウ。彼は今年のブルマ検査に一応合格していた。しかし、彼は自らブルマを希望した、言わば「ブルマ志願者」なのである。
一応合格というのは、彼の男性器は毎年ブルマ検査で合格、不合格のボーダーライン上にあり、いつも再検査にまわされた。今年もその再検査でなんとか合格という扱いになった。
しかし、毎年の再検査のわずらわしさと、一応合格というなんとも煮え切らない結果に再検査の終了直後、ショウはその場で自らブルマを「志願」したのだった。
その時点では、ショウはそれが自分にとって最良の判断だと考えていた・・・。その時までは・・・。
「決断」
「本当にいいのね。」
コクリとオレは頷いた。
「わかったわ。でももう一度、あと10分だけ考える時間をあげるわ。」
10分後、ブルマ担当の女医さんはオレにもう一度聞いてきた。
「本当にいいのね。後悔しても戻れないのよ。」
「いい・・・。分かっている。」
躊躇の気持ちが全くないと言ったら嘘になってしまう。しかし、そのときのオレにはそれ以上答えられなかった。
「じゃあ、早速説明させてもらうわ。これからショウ君には志願者用の特別室に移動してもらうわ。それと、施術方式だけど、志願者は無痛のメルトブルマー方式でブルマになってもらうわ。」
「メルトブルマー?」
「詳しいことは特別室で話すわ。」
そう言われて女医さんに案内された部屋は、パソコンとベッド、ソファー、テーブルがある小さなリビングのような部屋だった。
「この個室でブルマになってもらうわ。さっきも言ったメルトブルマーだけど、ズボンとパンツを脱いでこの特殊なブルマーを穿くだけなの。」
そう言って女医さんはオレにブルマーを渡した。
「ブルマーの内側クロッチの部分に、オチンチンとタマタマを溶かすナプキンがついているわ。」
「溶かす・・・!?」
「心配しなくてもいいわ。メルトブルマーは本来強制的にブルマにされる子が穿かされる『おしおき用』でかなりの痛みがともなうものだけど、志願者用はナプキンがオチンチンを溶かしながら、同時に痛み止めがしみ出してくれるから、多少お股に違和感を感じる程度で痛くないわよ。
だから、ソファーでくつろいだりベッドで寝ていてるうちに施術は終わるわ。そして男の子の部分がなくなると、女の子としての部分が次第に体の内外で形成されていくの。ここまで何か質問とかある?」
「・・・ないです。」
本当はブルマになることが不安で仕方がない。正直、いまさらになって合格したのに、その場の勢いで志願してしまったことに後悔の心もでてきた・・・。
「あと、ショウ君は志願者だから、私はこのブルマーを穿くことを強制することはできないの。だから、最後の決断は自分でしてね。本当にブルマになる決心が付いたら自分の意思で足を通してね。それと一度穿いてしまったら、おわるまでブルマーは脱げなくなるから、今のうちにトイレは行ってきてね。」
トイレは特別室の入り口に備え付けられていた。不安の心が次第に大きくなってきたオレは、とにかく1人になりたくてすぐに個室に入った。
(どうしよう・・・。今さら「やっぱり辞めます」なんて言えない。)
とにかくオシッコだけはしておこうと思い、オチンチンに手を伸ばしたけれど、オチンチンも自分の運命を悟ったのか、萎んで縮こまっている。
「どうしたの?気分でも悪いの?」
オレがなかなか出てこないので、個室の外から女医さんが声をかけてきた。今のオレにとっては決断を急がせる悪魔の声でしかない。
(どうしよう。・・・・・そうだ、もう怒られてもいい。辞めることをしっかり伝えよう。オレは志願だから強制はされないはずだ・・・。)
恐る恐る個室から出て、後ろめたい気持ちになりながらも本当のことを伝えようとして、顔を上げたときだった。
「こんにちは。」
「!!」
女医さんの横には年配の男性医師がいた。
「キミがブルマ志願者か。よく決断したね。」
(決断なんてまだ・・・。)
「自らブルマを志願するなんて、普通の男の子じゃできないよ。先生方もキミのことを褒めていたよ。キミだったら立派なブルマになれるって。」
(そんなことを言われたら、断るに断れない。)
その後、自分の意志が伝えられないままその男性医師に体温、血圧、脈拍そしてズボンとパンツを脱がされ、現在のオチンチンの状況などいろいろと検査されてしまった。
「良子先生、異常はありません。彼はこのままメルトブルマーを穿いてもだいじょうぶです。」
「よかったわねショウ君。これでブルマになるゴーサインがでたわ。」
もう涙がこぼれそうだった。
「佐々木先生ありがとうございました。あとはこちらでやっておきますので。・・・ショウ君、じゃあ早速はじめましょう。あなたがブルマーを穿いた時点でパソコンのこのソフトを起動させるわ。このソフトの画面は時計と連動していて、ブルマーの中でオチンチンがどうなっているかを文字情報で表示するの。表示は一定時間ごとに更新されるようになっているわ。」
(そんなことをされたら余計に怖くなって・・・。)
「さあ、心の準備はできた?」
(・・・。)
「どうしたの。怖いの?ブルマになりたいんでしょ?」
もう、どうしたらいいのか分からなくなった。逃げるにも逃げられない。先生たちも期待している・・・。
オチンチンが今からなくなる恐怖で震えながら、逃げ出したい気持ちを抑えてブルマーに足を通した。目を閉じてブルマーを一気に上まであげた。
目を閉じていたからオチンチンがブルマーの中に隠れる瞬間は見れなかった(怖くて見ることができなかった)が、たしかにオチンチンがブルマーのナプキンに包み込まれる感触があった。
「2時間ほどで施術はおわるわ。後でまたくるから、それまでしばらくこの部屋でゆっくりしていてね。」
パソコンのソフトを起動させると女医さんは部屋から出て行った。
女医さんの姿が見えなくなると、ソファーに突っ伏して思いっきり泣いた。なぜあのときブルマを志願してしまったかということはもとより、最後まで自分の本当の気持ちを伝えられなかった自分自身への怒りも、この涙を誘った。
いずれにせよ、最後は自分の意志でブルマーをあげてしまった。男を捨てるには一瞬で、あまりにも悲しい決断だった。
「変身」
思いっきり泣いて涙もかれた頃、女医さんが点けていったパソコンの表示画面が目に入った。見たくなくても目はそちらにいってしまう・・・。
『メルトブルマーを着用後10〜30分。オチンチンとタマタマの皺がなくなり、全体的に白みを帯びる。その後、亀頭部分のくびれが消失し、表皮から溶解、侵食が開始される。なお現時点では立位排尿は可能。』
もう始まってしまったブルマへの道。後戻りはできない。そう分かっていても手は股間にいってしまう。ブルマーの上からさわると、オチンチンやタマタマの感覚もまだ普通に感じられる。
(脱いでしまおうか・・・。そうすれば男でいられる。しかし、ここまで来てやめたら、先生たちになんて言ったらよいのか・・・。それに、自らブルマになることを何とか認めてくれた母にも・・・。)
ブルマーを脱ぐ決心が付かないまま、窓の外を見たり、ソファーに座ったりと落ち着きがないまま時間だけが過ぎていった。
『メルトブルマーを着用後50〜1時間。ナプキンに触れている部分の溶解が進行。オチンチンの長さが溶解によりだんだんと短縮化され、陰嚢内部の溶解も開始される。現時点での立位排尿は可能。』
(これって、ついにタマも溶かされ始めたってこと!?)
分かっていてもオチンチンがなくなる不安でどっと、汗が噴出してきた。股間を触ると、さっきよりもブルマーの膨らみが小さくなっていた。
無意識のうちにだんだん小さくなっていくオチンチンをブルマーの上からしごいていた。・・・というより手を股間に当てて思いっきりこすりつけていた。
ブルマーに溶かされながらもオチンチンは、外からの刺激に己の存在を主張するかのように勃起し、中から必死でブルマーを押し上げようとしていた。これは最後まで溶かされまいと、オレの中の男の部分が無意識に必死で抵抗しているようだった。
けなげにもブルマーの中で、必死でもがいているかのようなオチンチンの感覚をひしひしと感じると再び涙があふれてきた・・・。
心の中がごちゃごちゃになりながらも、何もできないまま、また時間が経過してしまった。すると、股間の中央・・・タマタマの後ろ辺りがムズムズしてきた。このムズムズする感覚は次第に大きくなってきた。
ゾクゾクとする不安に駆られながらもオレはパソコンの画面を覗き込んだ。
『メルトブルマーを着用後1時間30分。新尿道形成期。オチンチンは次第に短くなり、同時に新しい尿道が現れる。新しい尿道は膀胱より直接真下に向けて形成されていき、メルトブルマーの効力により陰嚢及び睾丸が溶かされ消滅すると同時に表面に開口する。古い尿道はオチンチンと同時に消滅し、新しい尿道が膀胱に到達、および表面に開口した時点でオチンチンに向かっていた旧尿道は圧着、閉口する。新しい尿道が完成するまでは、オチンチン、睾丸とも残骸が残存するが、この時点での立位排尿は困難。』
(うわあぁぁぁどうしよう。ついになくなっちゃう。そうだ。ブルマーさえ脱げばまだ男でいられる。・・・。途中で脱いで怒られてもあとはなんとか・・・。)
意を決してブルマーのゴムに手をかけた。今のオチンチンの姿を直視できるかという不安はあったが、そんなことよりも、もうすぐ男ではなくなってしまうという現実から逃れたくてブルマーを下げようとした。
(あれ?そんな・・・。ブルマーを下げられない!)
はじめはスルスルと下がったブルマーだったけど、股間の部分にあるナプキンがしっかりとオチンチンとタマタマに張り付いて剥れない。
何度やっても結果は同じだった。怖くなってオチンチンの存在を再確認しようと、さっきみたいにブルマーの上からオチンチンを手でこすってみた。すると、男を主張するかのようにブルマーを中から押し上げようとするような抵抗は感じられず、わずかに5ミリほど盛り上がってヒクヒクとするだけだった。
(頼むから消えないでくれよう。)
わずかな股間の盛り上がりを護ろうとして何回も何回も手で股間をこすった。しかし、その盛り上がりは溶けかかった氷が水になる最後の瞬間のように、しだいに小さくなると、そのうちに確認することはできなくなってしまった。
(うわあぁぁぁ、オレのオチンチン・・・。)
もうどうにもならないと分かっていても、声を上げて泣くしかなかった。
『メルトブルマーを着用後1時間50分。仕上げ。この時点ではオチンチン、タマタマとも完全に消失し、残った股間の皮膚が新たな組織を形成し、新たな性器の外観を形成する。現時点で立位排尿は不可能。』
パソコンの画面にそう現れたが、もう何も考えられなかった。ソファーに座ってボーっと天井を、あるいは自分の膨らみがなくなってしまった股間部分を眺めていた・・・。
メルトブルマーを穿いて2時間が経過した頃、部屋に女医さんが戻ってきた。
「お疲れ様。これであなたはブルマの仲間入りよ。ただ、今日完成したのは外観だけだから、この後数日かけて体内の部分も形成されていくから無理をしちゃだめよ。5日たったら検査があるわ。それと、最後にそのブルマー自分で脱いで新しい自分の体をその目でしっかり確認してね。そうしたら今日はこれでおしまいよ。」
(さっき、ブルマーが張り付いて・・・。)
「どうしたの?ゆっくりと下げてみなさい。怖がらなくてもいいのよ。」
女医さんに言われるがまま、ブルマーに手をかけて、ゆっくりと下げた。すると、股間の辺りでパリパリと乾いた音がして、あっさりと脱ぐことができた。
どうやら、このブルマーは施術途中では脱げない仕掛けらしい。
案の定、オレの股間はツルリとしていて、男を主張するものは何もなくなっていた。そのかわり、鏡に写された股間中央部に走る1本の線が、ブルマになったことを主張していた。
「どうしたの。そんなに泣き出しそうな顔しちゃって。ショウ君ブルマになりたかったんじゃないの。」
「はい・・・そうです。」
オレはすべての感情を押し殺して顔を上げると、笑ってそう答えた・・・。
「その後」
家に帰っても心は晴れなかった。
(ブルマを志願したのは自分なんだ。強制されたんじゃない。)
そうとはわかっていても、心の切り替えはできなかった。
家のトイレにある朝顔を見ると無性にさびしさがこみ上げてきた。昨日まで何のためらいもなくしていた立ちオシッコも、もう今日からはできない。
夜、シャワーを浴びながらできないと分かっていても、男の子との決別を自分自身に言い聞かせるために家族にばれないよう立ちオシッコをしてみた。
当然オシッコは昨日までとは違い、足を伝い落ちていった。
この行為は、自分自身がブルマになったことを思い知るには十分すぎるものだった。
(これでよかったんだ。自分が望んだブルマになれたのだから・・・。これでよかったんだ・・・。)
シャワーでオシッコを洗い流しながら、そして涙を流しながら、そう自分に言い聞かせた。
おしまい
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投稿:2012.03.15
メルトブルマー 「志願者の後悔」
著者 やかん 様 / アクセス 20081 / ♥ 28