「序」
「ユウキ、おなかを出して縁台に寝ていると風邪ひくわよ。まあ、オチンチンまで出して寝てる・・・。寝相が悪いのもいい加減にしなさい。」
「わかったよ、うるさいな。誰にも見られたわけじゃないからいいじゃんか・・・。」
去年4年生の夏休み、田舎の祖父母の家に帰省したときにだらしなく寝ていて母に怒られた。
(そうだ、あのときだったんだ・・・。)
「運命の始まり」
(なんか変だな・・・。)
その日、トイレでオシッコをしていると、オシッコがいつもと違って変にグニャグニャと曲がって出てきた。でも何とか便器からこぼさずにすることができたけれど、いつもより勢いがなくて時間がかかってしまった。
「おーい、ユウキ俺たち先に教室行っているぞ。」
「待てよ。すぐに行くよ。」
授業が始まっても、すぐにトイレに行きたくなってしまう・・・。次の休み時間までの時間がとにかく待ち遠しい。休み時間になったらなったで、また、なかなか出ないオシッコに悩まされる。
「なんだ、またションベン長いじゃんかよ。」
「おまえ、人よりチンコが大きいからっていつまでも眺めているんじゃねーよ。」
「そんなに見ていたければ、クラスのヤツの前で自慢しろよ。『これが俺様自慢のマツタケ様です。』ってな。きっと女子は大喜びだぞ。」
「うるさい!さっさと出て行け!」
何も知らない友達はボクのことを笑いながらトイレから出て行ったけど、正直それどころじゃない。数日前からオシッコがなかなか出ないだけじゃなく、常にオチンチンが勃起したように硬くなっている。
(なんで、こんなことになったんだ・・・。)
そのときは、また数日したら治ると思い気には留めなかった。痛くもないし、ちょっとオシッコの出が悪いだけだとしか・・・。
しかし、翌日の朝ボクのオチンチンの様子が変わっていた。オシッコの穴から白い、細い糸のようなものが出でいた。はじめはパンツの糸くずがくっついるだけだと思って、引っ張ってとろうとしたらオチンチンにチクッとした痛みが走った。
(何だよこれ・・・。)
不安に思いつつも、学校に遅刻するのが怖くて、糸のようなものがついたままパンツを穿き、着替えてそのまま行くことにした。
自然に取れてくれることを祈りながら・・・。
しかし、ボクの願いが神様に通じることはなかった。
次の朝、オチンチンの糸くずは先端から3センチほどになっていた。さすがに3センチも飛び出していると、普通にしていても違和感が出てくる。
(何なんだこれは。こんなの誰かに見られたら・・・。)
オチンチンの穴から飛び出した糸くずは昨日より長くなっただけではなく、少し太くなっていた。そのせいでオチンチンの穴が狭くなり、今まで以上にオシッコに時間がかかるようになってしまった。心なしかオチンチンが細くなったような気もする。
糸くずがオチンチンから生えてきて1週間。ボクのオチンチンから生えた糸くずは10センチを超え、土筆のようになっていた。
何とかこのことは学校の友人たちには隠したつもりだけど、ついに運命の時がやって来てしまった。
一番最後までオシッコをしているボクに、次々にオシッコが終わった友人たちが寄ってきました。
「おい、ユウキ。毎日毎日休み時間になるとトイレばっかり行って、いつもいつも長いんだよ。本当は休み時間のたびにションベンするマネしてシコシコやっているんじゃないか。」
「馬鹿!そんなことするか。」
「おい、みんなでユウキを便器からはがしてやろうぜ。」
「ふざけるな。」
「まあまあ、俺たちも鬼じゃないんだ。お前が便所でシコシコしていことが確認できればいいだけなんだぞ。」
「やめろ、やめろよう。」
「きっと今頃、ユウキのマツタケ様が大マツタケ様になっているぞ。」
「そんなんじゃないったら。」
「男どうしじゃんか。チンポ見せるくらい。」
「トイレには俺たち仲間しかいないんだから遠慮するなよ。」
数人の友人に後ろからとりつかれ、無理やりはがされてしまった。
「な、何だよおまえのチンポ・・・。」
「・・・・・。」
「おーい、ユウキのマツタケ様から長い土筆が生えているぞ。」
ついにボクの秘密がみんなにばれて、大騒ぎになってしまった。どうしたらよいかわからず、ボクは泣くしかなかった。
このことが、担任の先生に知れるとボクはすぐに保健室に連れて行かれた。保健の先生はボクのオチンチンを見ると絶句してしまった。
しばらく沈黙のあと、突然保健の先生は切り出してきた。
「このままじゃ仕方がないわね。とにかくオチンチンから出ている部分だけでも切っちゃわないと・・・。」
そう言って、保健の先生は剪定ばさみをボクのオチンチンの先端にあてがった。オチンチンから出ている植物の茎を切ると分かっていても、ハサミがオチンチンに近づくと、オチンチンそのものを切り落とされそうな気分になり恐怖で目を閉じたそのとき、ボクのオチンチンに激痛が走った。
「痛い、痛い。オチンチン切らないで!」
「オチンチンじゃなくて土筆の茎を切ろうとしたのよ。」
「だって、オチンチンがすごく痛かった。」
ボクは涙を流しながら保健の先生にそう言った。
「しょうがないわね。そのままお医者さんに診てもらいましょ。」
結局、オチンチンから生えている土筆をどうすることもできないまま、ボクは病院へと行くことになりました。
「病院で」
病院に着くと、学校から事情を知らされたのか、母が待っていました。
すぐにオチンチンのレントゲンを撮られたり、血圧や脈拍、血液検査などあわただしく、いろいろな検査をさせられました。
検査のあとしばらくして診察室に呼ばれると、先生からの説明がありました。
「ユウキ君のオチンチンから生えている土筆のようなものは、冬珍夏草と言って、オチンチンに寄生する植物です。どうやら、ユウキくんはどこかでオチンチンに菌をつけてしまったみたいですね。」
「冬珍夏草って何ですか?」
「これは冬虫夏草の突然変異で男性器に取り付く厄介なキノコです。山間部などでこのキノコの胞子が空気中に飛散していることがあるのですが、普段男性器は下着で隠されておるため直接胞子と接触することはあまりないのですが、男性器が露出している時、胞子は尿道口から侵入します。しかし、多くの場合は根を張る前にオシッコで外に流されてしまうため、発症例はあまり多くありません。」
「・・・・・・。」
「しかし、オシッコで洗い流される前に尿道壁に根を張ると、根は尿道壁を突き破り海綿体に侵入します。ただ、この時点では痛みなどはなく、その状態のまま尿道の中で越冬するので自覚症状はありません。しかし、梅雨明け頃になると、寄生した冬珍夏草の成長は活発化します。」
「一度発芽してしまうと成長が早く、どんどん海綿体に根を張り、そこから自分に必要な養分を血液から摂取します。冬珍夏草に寄生されたオチンチンは次第にやせ細っていき、最後にはオチンチンそのものを植物化されてしてしまいます。つまり、オチンチンはその植物の一部になってしまいます・・・。」
「先生、この子のオチンチンは・・・。」
「ユウキ君のオチンチンはかなり重症です。残念ですが切るしかありませんね。早いうちに手術しておかなければオチンチンだけでなく、周りの皮膚が植物化して睾丸にも影響がでてきます。」
「そんな・・・。」
先生の言葉に母は泣き崩れてしまった。
「オチンチンを切るって・・・。」
「でもまだ、完全にオチンチンを切り取ると決まったわけじゃありません。一度切開してみて、冬珍夏草の根が浅ければ傷跡は残りますがオチンチンそのものは一部でも残せる可能性もあります。とにかくすぐに処置に入りますので、ユウキ君は施術着に着替えてください。」
母は看護婦さんに抱えられながら、診察室の外に出されてしまった。しかし、母がいなくなったあと、先生が先ほどのレントゲン写真を見て首を振っているのがボクの不安をさらに大きいものにさせた・・・。
手術室に着くと、ボクは足を大きく開かされて寝かされました。
「先生、ボ、ボクのオチンチンだいじょうぶですよね。」
「さあ・・・。かなり植物化してしまっているから。」
「オチンチンを切っちゃうのだけは勘弁してください。」
「あなたは患者さんなんだから、私たちに任せて静かにしていなさい。」
不安を口にするボクに、突然横にいた助手の人がボクの顔にマスクを押し当ててきた途端に、気が遠くなっていってしまった。
「目覚めて」
気がつくと、ボクは点滴をされながらベッドの上に寝ていました。起き上がろうとしましたが、体に力が入りませんでした。
「おや、気がついたかい?」
そう声をかけてきたのは、ボクを診察した先生でした。
「3日間も寝ていたんだから無理をしないで・・・。だいじょうぶ。冬珍夏草の根は根絶やしにしたよ。」
(よかった。もうあの変な糸くずに悩むこともないんだ。でも・・・。)
「先生、ボクのオチンチンは・・・。」
「キミのオチンチンはすっかり冬珍夏草に寄生されていて、植物化していたよ・・・。」
「でも、もうその冬珍夏草はボクの体にはついていないんですよね。オチンチンはまだついていますよね。」
「・・・・。」
「先生・・・。」
「正直に言うと、オチンチンの周りの皮膚にも植物化は及んでいて、キミの睾丸も冬珍夏草の影響で硬化していたよ。だから両方とも切り取るしかなかった・・・。」
急いで包帯の上から股間を確認したら、ボクの股間はなにもついていませんでした。
「また生えてきますよね。それともこれからオチンチンをつける手術をするとか・・・。」
「残念だけど、もうキミにオチンチンは生えてこない。」
「そんな・・・。」
「オチンチンとタマタマを切り取っただけじゃあまりにもかわいそうだから、見ての通り、女の子の股間は作っておいた。」
「じゃあ、ボクは・・・。」
「今日からはユウキくんじゃなくて、ユウキちゃんになってもらうしかないね。それに、今つけている点滴には女性ホルモンが入っているから、もう少しずつ胸も出てきているはずだよ。もうすぐ、見た目だけでも女の子にはなれるから・・・。」
「いやだそんなの・・・。」
ボクはもう男ではなくなってしまったことを思い知らされ、その場で泣き崩れてしまった。
「その後」
しばらくの自宅療養のあと、ボクはまた学校に戻りました。
女の子になってしまったボクは、しばらくの間、友人たちから「オカマ」「男なら立ちションしてみろ」などと、散々言われました。
この衝撃的な出来事があった5年生も終わり、6年生に進級した頃、事件が起きました。
ボクは女の子としての生活にも慣れた頃でした。去年同じクラスであったあの友人たちが次々に学校を休んでいるというのです。
聞くとみんなオチンチンに違和感を覚え入院してしまったとのことです。
(もしかして、去年ボクをトイレで取り囲んだ時にあいつらも冬珍夏草に・・・。)
小学校の卒業式を迎えた時、6年生に進級した時と比べて男子の数が減り、女子の数が増えていたことは言うまでもありません。
おしまい
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投稿:2012.08.15
冬珍夏草
著者 やかん 様 / アクセス 11758 / ♥ 1