「序」
「来年の秋また戻ってくるからな。オレがいない間にブルマなんかになったらぶっ飛ばすからな。」
親の仕事の都合で一年間の転校を前に、男同士の再開を誓って仲間たちにそう言って別れたのは5年のブルマ検査のあとだった。
当然、元の学校に再転校する直前に転校先の学校で一番厳しい6年生のブルマ検査を受けたのだが・・・。
(畜生、よりによってオレが・・・。)
第1章「友達との再会」
元の学校への再転校を控えた1ヶ月前、夏休み中にオレは懐かしい街に引っ越してきた。しかし、引っ越す前と唯一違うのはこの街に戻ってきたオレは「ユウタ」ではなく、ブルマになった「ユウコ」だ。街の懐かしい空気を感じつつも、自分自身がブルマになって再転校することに一抹の不安を抱えていた。
数日後、通いなれた公園に行ってみると、そこにはケイタ、リョウジ、タカトシの3人組を含めた数人が遊んでいた。
「おい、ユウタ。ユウタじゃんか。こっちに帰ってきたのか。」
「うん。数日前・・・。」
「ユウタも男のまま帰ってきたんだ。これでみんな男同士の再会だ。」
「ガキ大将のユウタがブルマになったんじゃ始まらないもんな。」
「聞いてくれよ。タカトシなんかブルマ検査、再検査で危うくブルマにさせられるところだったんだぜ。結果前日に『オレ、明日女になるかも。』って泣いていたのユウタに見せてやりたかったぜ。」
「うるせぇな。」
本来なら、久しぶりの再開を素直に喜ぶべきだっただろう。本来なら・・・。ブルマになって1週間。ブルマとしての基本的な教育は受けたけど、まだブルマになった自分の体の変化になじめず、男姿で過ごすことが多かった。
そんな今日も男姿のままで外出したものだから、ヤツらはオレのことを男のままだと思うのも無理はない。結局、本当のことを言えないまま『男』としてその日はヤツらと遊んだ。
しかし、いくら『男』でいたくとも、家に帰れば秋から使う赤のランドセル、女子用の水着、体操服などオレを現実に引き戻すものがたくさんある。特にお風呂に入ったときは当然ながら自分の体を見ることになる。鏡の前に立てば、胸こそまだ出ていないものの、視線を下に移せばオチンチンのない、僅かに波を打ったペッタンコの股間が目に映り、ブルマになったことを認めざるを得なくなる。
それに、ショックに追い討ちをかけたのは、友人3人組にブルマになったやつはおらず、自分だけがブルマになってしまったことだ。本当のことを言うことをためらわせた理由はそこにもあった。
結局、本当のことを言う機会を逃してしまったオレは、来る日も来る日もヤツらの前では『男』のままで通した。
しかし、あるとき自分自身の体の変化に気づかされた。
お風呂上りに体を拭いていたら、胸に違和感があり、心なしか乳首あたりが少し出っ張ってきたような気がした。
(嘘だろ、まだブルマになって半月だというのに。)
正直、こんなに早く変化が訪れるとは思っても見なかった。そしてこの変化は自分自身が抱いていた淡い期待さえも、あっけなく奪い去るものだった。
第2章「淡い期待」
半月前、引越し前の学校でブルマと判定されたオレは去勢施術を受ける病院にいた。
「やさしく切ってあげますからね。」
女医さんのそんな言葉もよそに、オレはあふれ出る涙をこらえきれずにいた。今まで、ガキ大将と呼ばれたオレが検査ひとつであっさり女にされてしまうなんて・・・。
「オレは男です。早くやってください。」
「あら、もう覚悟できたのね。では、ユウタ君からはじめます。」
覚悟もクソもあったもんじゃない。どうせ結果から逃げられないんだ。何より、泣き喚いて結果の撤回を懇願して逃げられない施術から逃げようとしている女々しいやつらと一緒にされたくなかっただけだ。
覚悟を決めたと解釈した女医は無慈悲だった。看護婦さんに腋を支えられながら、立った姿勢のままのオレの前にしゃがむと、おもむろにパンツをズリ下げ、股間に注射をしてしばらくすると、袋からタマタマを取り出し、オチンチンを摘み上げるとメスをあてがった。
「はい、もう終わりますからね。」
声を上げる暇もなく、あっという間にオレのオチンチンは女医の手のひらの上にあった。
「すぐに女性器の形成に移りますから、そのベッドに寝てください。」
オレの股間を整形しながら女医が気になる事を言った。
「施術が終わってしばらくはオチンチンがない男の子の体のままですが、半月ほどすると体の女子化が始まります。いったん女子化が始まりますと、同年代の女子と同じくらいの体型になるまで急激に女子化し、その後は年齢に応じた成長に切り替わります。」
このときはこの言葉が何を意味しているのかはわからなかった。それ以前に本当はオチンチンを切られる覚悟なんて、ほんの少しもできていなかった。女性器を形成されながらも、ついさっき自分の身に起きたことが信じたくなかった。頭の中もゴチャゴチャになっていた。
(オレは男なんだ。ブルマになんかならない。必ずオレの股間からはもっと立派なオチンチンが生えてくるんだ。必ず男に戻れるんだ。・・・。)
すでにオチンチンは切られてしまった。男に戻れることなんて起こるはずがない。そうとはわかっていても、そのときは自分にそう言い聞かせて、ぐっとこらえていた・・・。
そして、このとき心に芽生えた『オチンチンが生えてきて、男に戻れる』の妄想は、いつしか淡い期待に変化して、オレの心に根づいていった。
第3章「変化」
(こんなに早く来るなんて・・・。)
胸の変化に気づいた数日後、お風呂上りに姿見の前に立ってみると、胸はさらに成長していた。もう、明らかに男子の胸ではなく、中途半端に膨らみかけた女子の胸だ。
(この前までは、チンポがないだけだったのに。)
毎日オチンチンがなくなってしまった股間を見るだけでも辛いのに、胸まで出てきたとなると・・・。
3日後、朝着替えているとき更なる絶望が襲った。タンクトップ姿では胸の膨らみが完全に目立ってしまっている。
(まずいまずい。ブルマだとバレちゃう。この前会ったときと体が変わっていることがバレたら何を言われるか・・・。)
悩みに悩みぬいて、その日はタオルで胸をぐるぐる巻きにしてTシャツを着ていくことにした。これが自分なりのブルマ化への抵抗だった。
しかし、そんな偽装もつかの間、体のブルマ化は日に日に進んでいった。あの時女医が言った『同年代の女子と同じくらいの体型になるまで急激に女子化・・・』が身をもって思い知らされた。
偽装工作はしだいに、半袖Tシャツから長袖、サマーセーターへと進んでいった。しかし、そんな偽装もだんだん厳しくなっていった。
小6ぐらいだと成長は男子より女子のほうが著しい。急激な女子化で最近オレの身長、体重ともに胸と同様に成長中だ。
「最近、ユウタ太っていないか。」
「ちょっと太ったかな(汗)」
「それにしてもお前だけ最近異様にデカくなってねえか。それに、こんなに暑いのに厚着していたりとか最近変じゃないか。」
「気のせいだよ。」
「まさかユウタ、もしかしてお前本当はブルマになっていた・・・。なんてことないだろうな。」
「ふざけるな、オレは男だ。」
(ヤバイ、ヤバすぎる。)
「だったら、もしもオレたちの中でブルマになったこと隠していたやつがいたら、ユウタお前、オレたちのガキ大将としてどうする?」
「そんなヤツ、オレがぶっ飛ばす。」
「本当だな。絶対に約束守ってもらうぞ。」
「もちろんだ。上等じゃんか。」
「そのかわり、もしユウタがブルマだったら俺たちもただじゃおかないぞ。」
「も、もちろんだ。」
「よし。男同士の約束だぞ。」
(やばい・・・。もう引っ込みが付かない。)
なんとか、ケイタ、タカトシ、リョウヤたちの鋭い質問をかわすことができた。しかし結局、夏休み最後の日までブルマになったということは言えなかった。
第4章「運命の日」
男同士の約束の日から、夏休み明けまでオレは夏風邪を引いたということでやつらとは遊ばなかった。本当は、偽装工作をしても、もう体を隠しきれなくなって外出すらできなかった。
(まずい・・・。本当にブルマの体になっちゃった。)
もう、『オチンチンが生えてきて、男に戻れる』という淡い期待は完全に打ち砕かれていた。
そんなオレの気持ちに関係なく、運命の日はやってきてしまった。それは、『夏休み明けの登校日』。
ブルマになっても夏休み中まではなんとかユウタという『男の子』でいることができたけれど、当然学校にはユウコという『女の子』として編入することになる。さすがにもう『男の子』ではいられない。本当のことを言えなかった背徳感を残しながらも、女の服に着替えた。赤のランドセルにピンクのTシャツ、スカート・・・。もう完全にオレは女の子だ。
あいつら3人組に会ったら何を言われるかという不安を残しつつも、学校に着いたら、オレが編入するクラスの担任に付き添われてクラスに案内された。
(あいつらのことはまた考えればいい。まずは新しいクラスになじもう・・・。)
しかし、この期待もあっけなく打ち砕かれてしまった。新しいクラスの扉を開けると、あいつら全員がオレが編入するクラスのクラスメートだった・・・。最悪だ・・・。
夏休み明けの初日ということで、HRだけのため学校は午前で終わった。新しいクラスに溶け込めるということよりも、あいつらに何を言われるかということでビクビクものだった。しかし、学校では気持ち悪いほど何も起こらなかった。
そんなビクビクした初日の帰り、家路を急いでいる時だった。公園の横を通り過ぎようとしたら不意に人影を感じた。あいつらだった。
「ほーほーほー。ユウコはお前だったんだ。」
「ユウコちゃん。男の子の真似をしちゃあダメでしょ。」
「俺たちユウコの偽装に騙されたよな。」
「・・・。」
「ちょっとツラかしてもらおうか。」
3人に連れてこられたのは町外れの小さな神社だった。
「約束守ってもらうからな。」
「約束って・・・。」
「ぶっ飛ばすんだろ。嘘つきを。」
「さあ、自分で自分をぶっ飛ばしてもらおうか。」
「黙っていたことは悪かったよ・・・。でも、でもオレ、お前たちをだまそうなんて・・・。ただ、お前たちといつまでも友達でいたかったから・・・。」
「男同士の約束だろ!」
「オレはもう女だよ。」
「そんな言い訳が通じるか。悪いと思うなら俺たちの前で裸で土下座しろ。そうすれば自分で自分をぶっ飛ばすのは許してやってもいいけどな。」
しばらくの重い沈黙が流れた。
分かっていたこととはいえ、恐れていたことが起きてしまった。確かにこいつらの言うとおり黙っていたオレが悪い。でも、仲間の中で一人だけブルマになった寂しさも分かってほしい・・・。でも裸で土下座はさすがにできない。
「そういえばこの前、自分で『ふざけるな、オレは男だ。』って言ったよな。」
沈黙を破ったのはケイタだった。
「そうだ。俺も聞いたぞ。」
タカトシやリョウヤもケイタに同調してきた。
「だったら、今俺たち3人の前にいるのはユウコじゃない、ユウタだ。」
(!?)
「男ならチンポついているはずだ。スカート穿いているなんておかしいぜ。女の服なんか脱がしてやろうぜ。」
いきなり、ケイタがスカートを引っ張ってきた。
「バカ、やめろ。」
後の2人に両脇を押さえられていたため、スカートをずり下げられてしまった。
「こいつ、男のくせにブルマー穿いてやがる。どこまで女に偽装しているんだ。」
事実を黙っていたオレが悪いといっても、ここまで好き勝手されたらオレだって許しておけない。すぐに両脇を押さえている2人を振り払うと、ケイタに掴みかかった。
(オレはこいつらのガキ大将なんだ。ブルマにされたからって、ケイタなんかに・・・。えっ!?)
去年までは楽に投げ飛ばしていたケイタに逆に投げ飛ばされてしまった。何回掴みかかっても投げられてしまう・・・。
「確か、小6ぐらいになると男子と女子ではいろいろと差が出てくるんだったよな。」
(畜生!女子化の影響がこんなところまで。ケイタのヤツわかっていてやっているな。)
腕力では全くかなわなくなってしまった。
「ケイタ卑怯だぞ。」
「嘘つきに卑怯だなんて言われたくないな。」
「なんだと・・・。」
ぶっ飛ばしてやりたいが、飛び掛ったらまた投げ飛ばされるだけだ。
(くそう、くそう。)
「なあ、ユウタ。もう殴り合いはやめようぜ。俺たち友達だろ。だったら仲良くゲームで勝負しようぜ。もし負けたら裸で土下座だ。俺たちが負けたら、負けたやつが裸で土下座する。それなら文句ないだろ。」
「そうだよケイタ。俺たちだってお前と友達でいたいんだよ。」
残る2人もそう言い出した。
このとき、まだオレは3人の考えている思惑を読み取ることはできなかった。まさか、あんなことになるなんて・・・。
第5章「非情なゲーム」
「何だよそのゲームってのは。」
「簡単な個人戦さ。このままじゃ3対1でユウタのこといじめたなんて言われたら、俺たちだって胸クソ悪いからな。」
「本当に1対1だろうな。」
「うそは言わねえよ。4人だから1対1対1対1さ。だから誰が勝っても負けても文句なし。」
「だったらやってやろうじゃんか。オレだってこのままじゃ引っ込みが付かない。」
オレが了承すると、ケイタは地面に1本の線を引いた。
「よし、4人一列に並べ。勝負は立ちションゲーム。ションベンの飛ばしっこだ。この線に立って一番遠くにションベンを飛ばせたやつが勝ち。よーし、男の秘密兵器を出せ。」
3人は一斉にオチンチンを出した。
「ユウタのブルマーにはチャックがないから、横から出せよ。」
「おい、ふざけるな。」
「ガキ大将のユウタが立ちションすらできないなんてことないよな。」
「ユウタの立派なチンポ見せてくれよ。」
「『オレは男だ』って言ったんだから、はやく男として勝負しろよ。」
(くそう、こいつら・・・。オレにもうオチンチンがないことを知っていながら。それに、オレが腕力でかなわないとなったらいきなり掌を返しやがって・・・。)
「おい、ユウタ早くしろよ。チンポ出せよ。」
(こいつら、本当にここでオレに立ちションさせるつもりか・・・。)
しかし、「立ちションは許してくれ」などと言ってこいつらにひれ伏すのはオレのプライドが許さない。さすがにブルマの体で立ちションというのは・・・。
そんな時、オレの頭に閃くものがあった。
(たしか、ブルマにさせられた直後お風呂場でガマンできずにオシッコを漏らした時、少し前に飛んでいたはずだ。そのときのことを思えば、股間を突き出せば何とかなるはず・・・。)
男だったときのようにオシッコをコントロールができるかどうかはわからない。でも、前にさえ飛ばせられることができたのなら何とかなるはずだ。オレは意を決してブルマーを膝まで下げ、股間を突き出した。
「よーしやるんだな。よーい、スタート。」
3人のオシッコは放物線を描いた。しかしオレのオシッコは前に飛ぶどころか、足にまとわり付くようにだらしなく伝わり始めた。
(なんでできないんだよう。)
確かにあの時、お風呂では前に飛んでいたはずなのに全然飛ばない。あの時は急激な女子化始まる前だったから、たまたまできただけだったのか・・・。 いくら頑張ってもオシッコは前に飛ばなかった。
とにかくこんな惨めな姿を見られたくなくて、近くの木の根元に走りこむとそこにしゃがみこんだ。悔しくて涙が溢れてきた。
「勝負あったな・・・。」
「さて、約束は守ってもらうぞ。」
「もう立ちションまでしたんだから許してくれよ。」
もうプライドも何もズタズタだ。
「あれのどこが立ちションなんだよ。全然立ちションになってなかったじゃんか。男同士の約束守ってもらうぞ。」
結局3人に裸にひん剥かれて土下座させられてしまった。
「人を騙して男に偽装していたユウタが悪いんだからな。」
「ブルマが男のマネをするからこうなるんだぞ。」
「・・・。」
もうこいつらにかなわない。抵抗するのを止めた。
「ブルマに立ちションができるかできないかっていう勝負は俺の勝ちだ。」
(!!!)
いきなり意外なことを口走ったのはケイタだった。
「チェッ。わかったよ。俺たちでケイタにジュースおごるよ。」
「いくら男だったといっても、チンポ切られてブルマにさせられたら立ちションできなくなるんだ。ガキ大将もかたなしだな。」
「いくら疑問に思っていても、ブルマに『立ちションできるかどうか見せてください』なんて言えないもんな。賭けには負けたけど、立ちションできなくてあわてているとこ、面白かったよな。」
「もう、結果がわかったし、罰も終わったからこのオカマは放っておいて行こーぜ。」
あいつらが帰った後もしばらくは裸で土下座の姿勢で動けなかった。
立ちションゲームはあいつらの策略だった・・・。確かにブルマだったことを黙っていたことはオレが悪い。でも、友達だと思っていたあの3人にブルマになった体を弄ばれたことが悔しくて悔しくて、また涙が出てきた。
しばらくの後、涙はまだ止まらなかったけど、剥ぎ取られて神社の境内に散らかった自分の服を拾い集めて泣きながら着替えた。オシッコで濡れてしまったブルマーも気持ち悪いのをガマンして仕方なく穿いて帰った・・・。
第6章「その後」
土日をはさんだ3日後、オレは恐る恐る学校に登校した。
またあの3人に何をされるかという不安でいっぱいだった。しかし、あいつらはわけあって揃って転校したのだという。
3人の転校の理由は知らされなかったが、その日の朝礼で校長先生が『ブルマいじめをした男の子達に男の子として一番恐るべき罰が下った』という話をしていたことが気にかかった。
校長先生が話した男の子達はあの3人なのか・・・。しかし、結局その後あの3人に会うことはなかった。そして、あの事件以来オレも自分自身のブルマ化する体に抵抗して『男の子』に偽装することをやめた。
おしまい
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投稿:2013.05.20更新:2013.05.20
ブルマの偽装 (悲運のガキ大将)
著者 やかん 様 / アクセス 16216 / ♥ 6