序章 『解説』
ブルマ法が施行されて30年、これまでこの法律によって幾多のブルマが誕生してきた。しかし、ブルマ法施行当初と比べてわが国の女子の出生率も、ここ10年ほどは軒並み回復してきた。
そのため、以前のように厳しいブルマ検査を施していたのでは、逆に男子の数が女子+ブルマの数を大きく下回ってしまい、逆に男子の絶対数が不足するという事態になりかねなかった。
このような事態を重くみたわが国の政府は、女子の出生率に軒並み回復が見られた頃より、ブルマ法の見直しを検討していた。
結果、見直しが始まった当初は、
『ブルマ検査を小学6年生のみとする。そのほかの学年は凍結する』
というものであったものが、
『女子の出生率の高かった年に生まれた男子が6年生になってもその年はブルマ検査をとりおこなわない』
が付け加えられ、さらに女子の数が安定しだすと、5年前からは上記2つに
『全国を北海道東北地方、関東地方、中部北陸地方、近畿関西地方、中国四国地方、九州地方の6ブロックにわけ、ブルマ検査の施行は振り分けられたブロック内の都道府県からひとつ、毎年輪番制で行う』
が付け加えられた。
これは、例えば区分けされたブロック内に5つの県(A県〜E県)があったとして、その年はA県が輪番でブルマ検査がとり行われる県であったとする。(その年はB県〜E県はブルマ検査なし。)しかし、その年は小学6年生の女子児童が多い(女子の出生率が高かった年)とすると、A県でもブルマ検査が行われない。
先の見直し案は、男女比を一定に保つためとはいえ、ブルマ法の存続のための苦肉の案ともいえるものであり、輪番制に当たらなかった県や、女子の出生率が高かった年では、見直し案施行前の通常のブルマ検査が仮にとりおこなわれたのなら、ブルマ相当の者が男の子として残る結果を多く生み出してしまい、結局、検査によってブルマになるか男として残る以外に、ブルマ検査に当たるか否かが当該者の生まれた年の女子の出生率と輪番の年という『運』によって左右される意味合いも強くなり、不公平感を助長させる結果となった。
当然のことながら、見直し案の施行前にブルマになった者や、運悪く輪番でブルマ検査に当たった県の男子から不満、抗議が出るに至った。
余談ではあるが、朝令暮改の見直し案に振り回されるのは男の子たちだけではなく、ブルマ検査担当の去勢科医師も、近年は去勢専門ではなくほかの科と兼任する医師も増えてきた。
抗議を受けて政府はさらなるブルマ法の見直しに着手するわけとなったのだが、今年はブルマ法施行30年の節目の年。『本年のブルマ検査執行日までに何らかの結論を出す。』ということのみ発表されたにとどまり、いまだにブルマ法は施行されたままになっているため、不幸にして輪番などでブルマ検査に当たった県の男子は、己の合格を信じてブルマ検査の当日をただ、ただ待つしかなかった・・・。
第1章『ブルマ検査1週間前』
ブルマ検査を1週間後に控えた金曜日、政府からの今年のブルマ検査についての発表はなかった。
(なんで今年はボク達の県なんだ。やっぱり、ブルマ検査受けなきゃダメなのかな・・・。)
ボクは政府によるブルマ法の廃止に淡い期待を寄せていたのだが、どうやらそれは夢に終わりそうだ。学校でも『ブルマ検査のしおり』が配られ、来週の水曜日からは体育館は当日臨時の施術室にするため使用禁止になる予定だ。時は確実にブルマ検査に向けて歩を進めていた。
ブルマ検査が近づくにつれ、ボクは不安を募らせていた。もし、去年までに仮にブルマ検査をうけていたのなら、ボクは確実に女の子にさせられていただろう。正直、ボクのオチンチンは小さい。これまで男の子としていられたことが奇跡なほどだ。
『ブルマ検査のしおり』に書かれている模範的オチンチンと照らし合わせてもボクのオチンチンは完全に不合格だ。自分で何回測ってみても、結果は同じだった。
男の子でいられるのが後数日だとわかってから、急激に寂しさとオチンチンを切られてしまう恐怖がこみ上げてくる。いくら考えまいとしても自然に心にこみ上げてしまうのだった。
そんな心の不安に押しつぶされそうになること数日、直前の土日にボクはひとつの決断をした。
第2章『決意』
月曜日、ボクは風邪を引いたという理由をつけて学校は欠席した。本当は風邪なんかひいてはいない。ボクが向かったのは病院だった。
「本当に後悔はないのかね。」
「はい・・・。」
「あと数日たてばブルマ検査があるのに、なぜブルマを志願するのかね?」
初老の男性医師は、心配そうな表情でボクに聞いてきた。
「実は・・・。」
・自分のオチンチンがとても小さくて合格が望めないこと。
・みんなの前で不合格を晒したくないこと。
・もうこれ以上不安に振り回されたくないこと。
などなど、心の不安を医師にぶつけた。
「しかし、まだブルマと決まったわけじゃないから・・・。まずオチンチンを見せてもらおうか。」
言われるがまま、ボクは医師にオチンチンを見せた。通常状態、勃起した膨張率など一足早いブルマ検査だった。
検査の結果を見て医師は唸っていた。
「確かに、合格は厳しいかな・・・。でも、最近言われている政府からの発表があるみたいだから、それからでも・・・。」
「ボクはブルマ志願者ですよ。ですからブルマ志願者として扱ってください。」
「・・・。」
しばらくの沈黙が流れた。
「本当に後悔はないのだね。」
「もちろんです。」
「わかりました。では谷川君をブルマ志願者として受け入れます。まだ心変わりがあるかもしれません。午後3時になりましたら、もう一度私のところに来てください。
第3章 『変身』
午後3時、再びボクは医師のところを訪ねた。
「もう一度お聞きします。本当によいですか?」
「はい・・・。」
「わかりました。これよりブルマ志願者、谷川君に施術を行います。」
「さて、キミはブルマ志願者だから施術方法を選ぶ権利があります。当院での施術方法は以下の2点です。どちらか選んでください。」
「・・・。」
「まず、通常のブルマ宣告された人と同じように、施術器具を使ってオチンチンとタマタマを切り取る方法。志願者のためオチンチンとタマタマは保存処理をしてお返しすることができます。次に、メルトブルマー方式。これは特殊なブルマーを直穿きすると、およそ2時間でブルマーにオチンチンとタマタマが溶かされてしまいます。」
しばらく考えた結果、ギラリと光る鋭利な刃に切られるのは怖かったため、ボクはメルトブルマーを選択した。
「では、こちらでよいですね。このブルマーは一度穿くと、溶解が終わるまで脱ぐことはできません。つまり、穿いた時点でもう男の子には戻れません。」
本当にオチンチンがなくなってしまうことに少しの躊躇はあった。しかし、同級生たちの目の前で不合格を告げられるよりは、はるかにこちらのほうがよい。医師の心配をよそに、ボクはメルトブルマーに足を通した。
ブルマーを穿いてからは、案内された個室で一人で過ごした。股間からわずかに感じられるピリピリとした刺激を感じながら溶解が終わるそのときを待った。
思えば、不合格になってしまうオチンチンを眺めながらブルマ検査を待つ日々も辛かったけれど、メルトブルマーにオチンチンを溶かされているまさにその時、男でも女でもない時間というのももどかしかった。
このときは、もう男の子に戻れないという悲しみではなく、早くブルマの体になってしまいたい。という気持ちが大きかった。とにかく、オチンチンがなくなってブルマになってしまえば、その結果をイヤが上でも受け入れなければならない。白黒はっきりさせてさっぱりしたいというのが本音だった。
メルトブルマーを穿いて2時間後、ついに脱ぐ時が来た。医師に言われるままブルマーを下ろすと、ボクの股間には見慣れたオチンチンはなく、キレイな1本のスジがあるだけだった。
(ついにブルマになっちゃった。)
自分で納得した上でのブルマ志願。しかし、現実にオチンチンのない股間を見たとき、ボクの頬に一筋の涙が伝った。
「さて、これで谷川君の施術は終わったけど、本当のブルマになるにはこのあと、ブルマ教育を受ける必要がある。あと4日後には学校のブルマ検査がある。そのときブルマになった子達と一緒に教育は受ければいい。まだ体は男の子のままだけど、半月ほどすると女性化が始まる。それまで新しい体に慣れておくといい。キミは4日間だけほかの子たちよりブルマの先輩なんだよ。」
ボクは、次の日も学校を休み、水曜日からまた学校に通うことにしました。
第4章 『絶望』
ブルマ検査を2日後に控えた水曜日、学校ではブルマ検査の話題で持ちっきりでした。
「おい谷川、もう風邪はよくなったのかよ。」
「お前、明後日のブルマ検査怖くないか?オレ今さら女になりたくねぇよ。」
「ボクは別に怖くなんかないよ。」
「マジかよ。女になっちまうかもしれないのによく平気でいられるよな。」
(ボクは怖くなんかない。だってもうブルマになったんだ。)
明後日の金曜日、みんなを驚かせてやろうと思い、既に自分がブルマになっていることを隠して、『男の子』としてその日は学校に行きました。まだ体の女性化は始まっていないため、トイレなど一部を気をつけていればボクがブルマであることに気づく人はいません。
次の日、学校に行くと昨日以上に騒がしくなっていました。使用禁止の体育館に業者の人が来て、なにやら物を運び出しているのが少し気にかかりました。
しかし、それがただ事ではないとわかったのは朝のホームルームの時でした。
ホームルームが始まると、担任から思いがけない言葉が発せられました。
「男子はよく聞きなさい。明日のブルマ検査は中止になりました。従って、男子は全員合格の扱いとなります。」
(えっ!それどういうこと!?)
突然の衝撃的な言葉にショックで固まってしまったボクは、そのあと学校で同過ごしたかの記憶がありません。
一応、ブルマ検査前日という予定の日であったため、中止になったとはいえ学校は午前中で放課になりました。
とにかく、祈るような思いで一目散に行ったのは、おとといブルマ施術をしてもらった男性医師のいる病院でした。
「先生・・・。」
「谷川君、大変なことが起きた・・・。」
「どういうことですか?」
「政府がブルマ検査前日に、ブルマ法の無期限凍結を発表したんだ。」
「・・・。」
「昨今騒がれているブルマ検査の不公平感を是正するために、それと、近年の女子の出生率の向上を勘案して、この施行30年の節目の年に事実上の廃止に近い・・・。」
「ボクどうなるんですか?」
「まず、ブルマ法が凍結された以上今年・・・、いや、来年・・・、とにかくこれからブルマが誕生することはなくなる。それに、ブルマ検査前の発表だったから、今年のブルマ教育もとりおこなわれない。」
「先生、もう施術が終わってしまったボクはブルマになれるんですよね・・・。」
「・・・。」
「何とか言ってください。」
「ブルマは、ブルマ教育まで終わらないとブルマとして認められない・・・。」
「どうなるんですか・・・?」
「かわいそうだけど、いくら施術が終わっていても、キミはブルマにはなれない。つまり・・・。」
「つまり・・・!?」
「つまり、オチンチンを取ってしまった男の子。」
「うわああぁぁぁぁん。」
あまりの衝撃に声を上げて泣いた。
「まだ、完全に廃止と決まったわけじゃない。凍結が解除されればブルマ教育を受けることができる・・・。」
決断を4日早めたことによる取り返しがつかない絶望的悲劇であった。
第5章 『その後』
施術を受けて半月後、容赦なくボクの女性化は始まった。突き出る胸、丸みを帯びる身体・・・。ブルマの体になったことは白日の元にさらされ、同級生から格好の笑いものにされてしまった。
しかし、どんなに女性化してもブルマ教育を受けられなかったボクはブルマとしては認めてもらえず、ブルマの体をもつ男子として過ごすことになってしまった。
結局、その後も政府によるブルマ法凍結は解除されることはなかった。
5年後、高校2年生になったボクは現在も、どんどん女性化していく体に似合わない男子の制服を着て、男子高校生として過ごしています。
いつか、ブルマ法の凍結が解除されて、一日も早く本当のブルマになれる日を願いながら・・・。
オシマイ
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投稿:2013.05.27
ブルマ志願者の悲劇
著者 やかん 様 / アクセス 19779 / ♥ 14