僕はチラホラと雪の舞う季節に誘われて、ひとり秘湯めぐりの旅へと出発した。
冷たい風に身を震わせながらバイクを走らせ、名だたる温泉地を横目に鄙びた地方道へと入り、地元の人から情報を集め「カマイタチ子宝の湯」という聞きなれない名の温泉へと辿り着いた。
薄らと苔の生えた狭い道を走り続け、民家もまばらな小さな谷あいの村が目に入ると、すぐにモクモクと湯けむりを上げる温泉旅館が見えた。
雰囲気良く鄙びた温泉旅館に癒されながらも、駐車場には1台のバスと何台かの高級車が見て取れた。
「この温泉って、お金持ちの間では有名なのかな?」
そんな事を思いながらも僕は旅路で冷え切った体を温めたく、急いで旅館の玄関をくぐった。
玄関の正面奥の中庭に、カマイタチ大明神と書かれた神社が祀ってあるのが見えた。
その厳かな雰囲気に圧倒されながら歴史のありそうな庭園を眺めていると、笑顔の素敵な女将が出迎えてくれた。
「いらっしゃいませ」
「あの、飛び込みですが、宿泊できますか?」
「はい、大丈夫ですよ、お若い男性の御客様は大歓迎ですから」
僕は思いつきの旅にも関わらず、すんなりと宿と温泉を確保できた事に感謝した。
ロビーでくつろいでいると、山奥の鄙びた温泉に似つかわしくない浴衣姿の女性客がこちらを見て軽く会釈をしてきた。
どこか大人っぽい色気のある雰囲気に僕は思わず口元が綻びてしまい、鼻の下が伸びそうになった。
「では、こちらへどうぞ」
僕は仲居さんの案内で部屋に通され、熱いお茶を一杯頂き一息入れた。
「大浴場は一階の廊下の一番奥にありますので、温泉は弱アルカリ泉で混浴になっております」
「こっ! 混浴ですか!?」
僕は先ほどロビーで出会った女性客を思い出し、思わず興奮しそうになった。
仲居さんが部屋を後にすると、僕はいそいそと浴衣に着替え、軽い足取りで大浴場へと向かった。
脱衣場は男女別になっており、男湯ののれんをくぐろうとすると、先ほどロビーにいた女性のひとりに声をかけられた。
上品なブラウンヘアを上に纏めた大人っぽい女性、その美しいうなじと良く似合った浴衣姿に僕はゴクリと唾を飲み込んだ。
「こんにちは、お兄さんはおひとりなの?」
「え? あ、はい……ひとりです」
「そうなの、じゃあ中でね……フフフッ」
「はっ、はいっ」
この女性と混浴できる……そう思うと僕の心臓は高鳴り、チンポが膨らみ始めた。
急いで平静を装いながらのれんをくぐった……。
「いらっしゃいませ」
「お、女将さん!」
のれんをくぐった先には旅館の女将が待ち構えていた。
「当館の温泉は少し変わっていますので、私が説明いたしますね」
「そうなんですか?」
「はい、どうぞ、そちらの籠に浴衣をお脱ぎになってください」
「はい」
僕は女将に言われた通り、浴衣を脱ごうとするが女将はその場を離れようとしない。
「あ、あのっ」
「どうぞ、私の事はお気にされないで」
「はあ……」
背中越しに女将の熱い視線を感じながら、僕は裸になると、恥ずかしさのあまり急ぎ足で浴場へと向かった。
後ろから女将がタオルを手に一緒についてきたのが分かった。
「あ、あれ?」
浴場の扉を開くと、そこには大きな温泉は無く、サウナの様な個室が並んでいた。
いくつかの部屋からは時折お湯を流す音が聞こえる、そこが温泉なのだと言う事は分かった。
しかし、初めて見る光景にどうして良いかわからず立ちつくす僕の横を女将が通り過ぎた。
前へと回った女将のその視線が僕のチンポへと向けられたのがわかり、あわててそこを手で隠した。
「とても立派なのですから隠さなくても構いませんわ、どうぞこちらへ、お客様……」
「はい」
僕は恐る恐る女将が開いた個室の中へと入った。
すると、そこには小さな浴槽があり、その奥には十センチ角ほどの木の小窓があるのがわかった。
「その小窓が開きましたら、お客様のおチンポとおキンタマをそこから女湯に出してくださいね」
「えっ! チンポを!?」
とても上品な女将の口からおチンポという言葉が出て、僕は驚いてしまった。
「はい、とても楽しいひと時が待っていますから、どうぞお楽しみにしてくださいね」
「……は、はい」
「それまで、狭いですが温泉を楽しんでお待ちくださいね、では失礼します」
女将は軽く会釈をすると、小部屋の扉を閉め、旅館の方へと戻って行った。
僕はとりあえず体を流し、小さな浴槽に張られた温泉に浸かり体を温めた。
良い湯加減の思わずため息を漏らす。木の壁の向こうからは水の音や何人かの女性の話声が聞こえる。
僕はいかがわしい想像をして膨らんだチンポを握りながら、小窓が開くのを待ち続けた……。
(コンコン)
小窓を向こう側から叩く音が聞こえ、僕は一瞬ドキリとした。
「はっ、はい」
「あら、その声はさっきのお兄さんかしら?」
「え? あ、はいっ!」
小窓を叩くのが先ほど声をかけてくれた女性とわかり、僕は興奮した。
すでに硬く起ちあがっていたチンポが、さらに輪をかけてカチカチになるのがわかった。
「ヤダ……恥ずかしいわね、フフフッ」
「はい、僕も恥ずかしいです……」
(ガタン!)
突如、浴場に鳴り響いた音と共に、あの小窓が開いた。
その小窓の向こう側にチラリと白い足先が見えた……あの女性の足だ。
僕は思わずゴクリと生唾を飲み込んだ。
「じゃあ、お兄さんのチンポ……見せてくれる?」
「はい……」
僕は初めて経験する不思議でエロティックな雰囲気に呑まれ、恥ずかしさを忘れ、いきり起ったチンポをその小窓から向こう側へと差し込んだ。
「キャッ! ヤダァ、お兄さんのチンポ……大きいわね」
「そ、そんな! 普通ですよ」
「そんなことは無いわ、とても立派なチンポよ……キンタマも大きいし素敵。気に入ったわ、フフフッ」
そんなに大きいチンポだという自覚は無かったが、素敵な大人の女性に自分のチンポとキンタマを誉められて悪い気はしなかった。
そして次の瞬間、チンポにグニュと柔らかい手の感触が感じられた。
「あっ!」
「フフフッ、チンポがビクビクッっとしてる。驚いちゃったみたいね、急に握ってゴメンなさいね」
「そ、そんな! 強く握ると出ちゃう……」
「あらダメよ、もう少し我慢してね……さぁ、もっとこっちにお兄さんのチンポを突き出して……オネガイ」
「はい」
僕は下腹が小窓に突き当たるほどチンポを女湯へと突き出した、その瞬間……。
(ガタン! ザシュッ!)
大きな物音と同時に風を切るような音が聞こえ、股間にヒヤリとした感触を感じた。
「あ、あれ? 閉じてる?」
ふと体を引くと小窓が元の通り閉じられているのが解った。
すると、他の個室から何人かの男の悲鳴が聞こえてきた。
僕は何か違和感を感じる股間へと視線を落とした。
「あっ!? あ……チ、チンポがないっ! うわぁあああああああああああっ!!」
僕も他の個室の男と同じように悲鳴を上げてその場に座り込んだ。
僕の男のシンボルは全て失われ、ポツンとピンク色の断面が覗く平らな股間だけが残った。
「これは夢だ! 悪夢だ! こんな事などありえない!」
その断面からは一滴の血も流れておらず、痛みすら感じない。
チンポとキンタマを切り落とされたのに、こんなことなどありえない……これは夢なんだと思った。
「あぁん……お兄さんのチンポ……いいわぁ」
壁の向こうからあの女性の声が聞こえる、時折、とても色っぽい吐息を漏らしている。
その声と物音や様子から、僕から切り落としたチンポで何をしているのかの想像はついた。
そして、ふと気付くと失われた股間に快感を感じるのがわかった。
「こ、これって……まさか!?」
体から切り離されたチンポからとても気持ちの良い……何かに包まれる感触が伝わる。
僕は心地よい快感に襲われながら、射精しそうになるのを必死に堪えた。
チンポとキンタマを失った股間から射精したら、一体どうなるのか想像が出来なかったからだ。
「あああああっ! どうしよう! どうしよう! ああっ……出るっ!」
僕はジンジンと疼くチンポの断面を必死に手で押さえながらゴロゴロと床を転げ回った。
「お客様、そんなに我慢しなくても構いませんよ」
「お、女将さん!」
ふと気付くと、個室の扉が開き、笑みを浮かべた女将がこちらを見つめていた。
「あ! ウッ……」
(ドクンドクンドクン……)
僕は女将の視線を浴びながら、情けない表情のまま射精してしまった。
「あ……あ、あれっ!? 出てない?」
僕は必死に射精したそこを隠そうとしたが、尿道と思われる断面の小さな穴からは何も出ていなかった。
「大丈夫ですよ、お客様……女性のお客様と混浴中のおチンポとおキンタマの気の向くままに精液をお出しくださいね」
「混浴中って一体これって……あっ!」
必死に現状を理解しようとする僕の脳を邪魔するように、再び無いはずのチンポからあの快感が襲いかかる。
僕は情けない表情でドクドクと射精する快感に腰砕けになり、ウネウネと腰をくねらせながら女将に手を取られ個室を後にした。
Yの字のように平らになった股間……男でも女でもない身体、脱衣場の鏡に映った自分の裸体を見て更に落胆した。
他の男性客も同じように腰砕けになりながら必死に浴衣を纏い、腰をうねらせながら仲居さん達に手を取られながら部屋へと戻って行った。
「畜生! オレのチンポ返せ! 何が混浴ツアーだ!」と叫びながら男性従業員に取り押さえらている者もいた。
部屋には食事が用意されており、僕は何が何だかわからないままそこに座るしかなかった。
ソワソワする僕の目の前に女将が座り、こう切り出した。
「ここは子宝の湯なのです」
「え? 子宝の湯?」
「そう、子供が欲しいのに恵まれない女性の為の温泉なのです」
「そんな……でも、でもこんなバカなことありえない!」
「温泉の神通力は理屈では説明できません。ですが、もう八百年近く多くの女性が、おチンポとおキンタマを楽しんでいるのですよ」
理屈では説明できない、しかし現実にこんな事が起こっている
「そんな……チンポとキンタマが無いと困る!」
「明朝には温泉の神通力でキチンと元通りにしてお返しします、どうぞご心配なくお楽しみください。お小水はそこから出ますので、お座りになって用をお足しくださいね」
「楽しむって……あ、あっ! また感じる!」
「あら……お相手のお客様はもうお食事を終えられて始めたみたいですね、私はこれで失礼いたします……ウフフッ」
「ま、待って、ああっ!」
僕は再び失った股間に快感を感じ、腰砕けになった。
エッチな事など何もしていない。浴衣と下着を着けたままの状態であの快感を感じる。
言いようのないむず痒い不思議な感覚に襲われ続け、食事など出来る状況ではなかった。
僕は再びチンポの断面をギュっと手で押さえながら、ゴロゴロと部屋を転げ回るしかなかった。
(ドクッドクッドクッ……)
「ハァ、ハァ、ハァ……ハァ……」
僕が数回続けて射精したところでようやく快感が収まり、チンポに風を感じた。
正直楽しむどころではない、僕は憔悴して震える手で箸を取り必死に料理に手をつけた。
これから一晩続くであろう、この快楽に打ち勝つための栄養を補充した……。
「あっ! また!」
チンポに数回、柔らかい唇でキスされた感触を感じると、僕の断面が萎える間もなく再び快感に包まれた。
僕はチンポから快感を感じながら、そしてドクドクと射精しながら食事を口に運び咀嚼した……そんな奇妙で狂気に満ちた時間を過ごし続けた。
「んんっ……朝か……フゥ……」
果たしていつ眠ったかも覚えていない、そんな状況で目覚めた僕はハッキリしない頭を叩きながら浴衣を整えた。
そして昨晩からずっと我慢していたトイレへと入り、仕方なくしゃがみ込む……平らになったその断面から飛び出す方向の定まらないオシッコに、少し悔し涙が浮かんだ。
トイレで受けたショックに大きくため息をつきボーっとしていると、襖の向こうから仲居さんの声が聞こえた。
「おはようございます。一階の広間に朝食がご用意出来ております」
広間へと降りると他の男性客達も寝不足のようで、みな食卓の前でボーっとしている。
僕は女性客のいる隣の広間へと視線を移し、あの女性を探したが見当たらなかった……。
女性客はみな、すっかり憔悴し切った男性客を眺めながらクスクスと笑っている。
「お食事が終わりましたら皆さま大浴場にお越しください。おチンポとおキンタマをお返しいたします」
女将が広間でそう知らせると、男性客はみな、かき込むように朝食を食べ、急ぎ足で大浴場へと向かった。
僕はようやくこの不可思議で不本意な快楽から解放される、そして男のシンボルを取り戻せるのだ。
僕は昨日と同じ個室へと入り、平らになった股間とその断面を念入りに洗った。
(ガタン!)
昨日と同じようにあの音が鳴り響くと小窓が開いた。僕は必死にその小窓に飛びついた。
「!?」
しかし、小窓の向こうにあの魅力的だった白い足先は見えず、そこには誰も居なかった。
僕は慌てて個室を飛び出し、女将のいる受付へと飛び込んだ。
「昨日の女性がいないんです!」
「え? まさか!?」
女将は驚いた表情で仲居さんや従業員に声をかけ、あの女性客の行方を確認している。
すると、一人の従業員がこう答えた。
「そう言えば、朝早くに車が一台出て行ったような気が……」
「そ! そんなっ!?」
僕は女将とその女性の泊まっていた部屋へと向かった。そこには宿代と、僕宛に一通の手紙が置いてあった。
『素敵なチンポのお兄さんへ
こんなことになってしまって、本当にごめんなさい
私の主人は物凄い祖チンなの、だからどうしても我慢できなくなってしまいました
いけない事とわかりつつ、お兄さんの大切なチンポをお持ち帰りしてしまいました
毎日大事にして愛してあげるから許して下さい、これからもずっと一緒に感じ合いましょうね。
−エッチでどうしようもない人妻おねえさんより』
宿帳に書かれたあの女性の連絡先に電話は繋がらず、それが嘘だとわかった。
他の男性客がチンポとキンタマを取り戻し意気揚々とチェックアウトする中、僕は膝を着いたまま項垂れるしかなかった……。
男のシンボルを失ったショックで酷く落ち込み、何も出来なくなった僕は数日間ほどその宿に泊まり続けた。
その間もエッチな人妻おねえさんは容赦なく僕を快楽で襲い続けた……そしてようやく現実へと戻る事が出来た。
「(なっ! こんな朝っぱらから!)」
(ドクンドクンドクン……ドクッ)
朝夕の通勤電車の中、仕事中、食事中、睡眠中……それはいつ襲ってくるかわからない。
僕は人知れず急に腰砕けになり、情けない表情を浮かべる日々を過ごしている。
(END)
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投稿:2013.11.13更新:2013.11.13
混浴温泉
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