「序」
ボクはサッカークラブではいつも補欠だった。レギュラーになってコートを駆け抜ける仲間をベンチどれだけ悔しい思いでみつめていたことか。
(もし、ボクが女子だったら確実にレギュラーになれていたのにな・・・。)
ちょっとした出来心的な憧れだった。
第1章 「ブルマ検査を控えて」
ブルマ検査を1ヵ月後に控えたある日の午後、学校の授業は午前中で終わり、ボクたち男子だけ午後体育館に集められました。
演台には今年ボク達のブルマ検査を担当する女医さんがおり、彼女からブルマ検査の内容についての説明がありました。内容といっても毎年聞いていることとほとんど変わらず、ただボク達6年生のブルマ検査が5年の時より厳しく行うということが付け加えられただけだった。
集会が終わると、みんなブルマ検査について憂鬱になるのは毎年かわらないけど、今年のボクはそれに加えて個人的な悩みがあった。
家に帰ってベッドの上で、自分のオチンチンを眺めながらいろいろと物思いにふけっていた。
(このオチンチンなら不合格になることはまずない。でも、ボクはこのまま男でいていいのだろうか・・・。今のボクはサッカーだって男子なら補欠、女子ならレギュラー。体も色白で女顔とよく言われる。・・・もし、オチンチンのせいでボクが損をしているのならこのオチンチンが憎い。でも男でいることがいやだというわけでもない・・・。)
ほとんどの男子なら1ヵ月後のブルマ検査で不合格になりオチンチンを切られてしまうことを不安に思うだろう。しかし、ボクの悩みはこのまま普通に男子として残るか、それともブルマを選んで女子になるかということだった。
このときはブルマになることを決意したわけでもなく、ブルマになることが不安というわけでもなく、ただブルマになった自分を空想してブルマに淡い期待を感じている・・・。ということだった。優柔不断と言われればそのとりかもしれない。
この揺れ動く気持ちを抱えながら数日が経過した頃、学校の保健室がいつもと様子が変わっていました。
友人に聞くと、ブルマ検査当日までの間ボク達の検査を担当する女医さんが保健室に常駐して、ブルマ検査の不安や悩みについて聞いてくれる。というものでした。
ボクも今の気持ちを聞いてもらおうかと思いましたが、女医さんに「ブルマを志願しに来た」と思われたりとか、このことが友人にバレてうわさになるのが怖くて、その日は何も行動が起こせませんでした。
しかし、その日の夜家でテレビを見ていると、ニュースで「サッカーのナデ○コチーム快進撃」というものをやっていました。
今や飛ぶ鳥を落とす勢いのナデ○コチーム、女子とはいえサッカーの話題なのでボクは食い入るようにしてみました。
その日、寝る前ボクは涙がとまりませんでした。ボクのサッカーの実力は仮に女子でも国の代表になれるほどではないことはわかっている。でも、来年中学でサッカー部に入っても万年補欠だ・・・。でも女子ならそこそこはいける。サッカーだけがすべてではないけど、今日の「サッカーのナデ○コチーム快進撃」という出来事がボクの心を男子とブルマの間でなおいっそう揺れ動くものになりました。
第2章「相談」
次の日の放課後、友人たちが帰宅したあとボクは意を決して保健室の「ブルマ相談室」のドアをノックしました。中に入ると保険の先生はおらず、女医さんだけがいました。
「どうしたの?まずお名前を聞かせてもらおうか。」
女医さんはボクに優しく話しかけてきました。
「6年1組のタカシくんね。それで今日はどうしたの?」
ボクは今までの揺れ動く気持ちを女医さんにすべて話しました。
「なるほどね・・・。それでどうするか迷っているんだ。・・・じゃあ、タカシくんのオチンチン見せてくれる?」
「え?」
「恥ずかしがらないの。検査の時はみんな私にオチンチンを見せるんだから。」
言われるがままパンツを下ろすと、女医さんはボクの前にしゃがんでオチンチンの先っぽを優しくプニプニと摘んだあと、皮を反転させて人差し指で穴のあたりをコチョコチョとくすぐってきました。突然オチンチンを弄られ、立った姿勢のままオチンチンも起立してしまいました。
「勃ってきた勃ってきた。かわいい。」
「先生・・・。」
「ごめんね。オチンチンがどんな状態なのか見てみたのよ。完全な検査はしていないからはっきりしたことは言えないけど、タカシくんのオチンチンは合格圏内ね。」
そのとき、不意に保健室のドアが開きました。保健の先生が戻ってきたのです。
びっくりして振り向いてしまったのですが、起立したままのオチンチンをバットのように振った状態になり、途端に保健の先生に笑われてしまいました。
「この子どうしたの?」
「ブルマになろうか男の子でいようか悩んでいるんですって。」
女性同士のとんでもない会話が始まり、ボクは赤面したまま声も出ませんでした。当然オチンチンも萎んでしまいました。
「ゴメンネ。タカシくん。だったらこうしたらどうかしら。」
オチンチン丸出しのまま突っ立っているボクに話しかけてきたのは女医さんでした。
「ブルマになるかどうかは別として、明日からブルマの体験をしてみない?」
「体験ですか?」
「そう。明日から仮にブルマになったと思ってブルマとして生活してみるの。」
「・・・?」
「ご両親にはこちらから言っておくわ。明日の朝登校したらすぐに保健室に来てちょうだい。」
話はこれで終わり、その日はそのまま帰宅しました。
第3章 「ブルマ体験」
次の日、言われたとおり保健室にいくと、ボクは変身させられてしまいました。
着てきたものをすべて脱がされ、女物のTシャツにスカートを着せられ、ランドセルも赤色にかえられてしまいました。
「なんですかこれは。」
「今日からあなたはしばらくの間この格好で過ごしてもらうわ。保健室を出たらみんなあなたのことをブルマとして扱うわ。男子として使っていたものは保健室であずかっておくから、さあ、教室に行ってらっしゃい。」
「恥ずかしくていけません。」
「ブルマに憧れていたんじゃないの。だったらブルマを体験してみるのが一番よ。」
「それと、あなたのその格好を見てからかったり、苛めたりする子はいないわよ。ブルマを苛めた子はブルマにさせられるから安心して。・・・それと、まだ体は男の子のままだから紺色の短パン用意しておいたわ。ちなみにトイレはまだ男子用が無難かな。必ず個室を使うのよ。」
「・・・。」
「わかったら行ってらっしゃい。」
一方的に廊下に出されてしまった。これでは女装少年そのものだ。おそるおそる教室に入ると、ボクの机は女子の列に並べられていた。
「なんだ、タカシよく似合っているじゃんか。」
「はじめから女の子みたい。」
この学校にもブルマになった子がある程度いるからなのか、ボクを馬鹿にしてブルマにされるのが怖いからか男子でボクをからかうヤツはいなかった。男子だけじゃない、女子だって馬鹿にするやつはいなかった。
その日からボクの生活は一変した。体育で持久走の距離は女子の距離。給食の量も女子の量。すべてが女子扱い。性差もまだ始まりだしたばかりだから、男子の体で女子の格好をしていても、とりたてて女子と差があるというわけでもない。知らない人がみれば普通にボクのことを女子と思ってくれるだろう。
ひとつ悪く言うと今まで男子で体育をしてきたボクにとってみれば女子の運動量はこんなに楽なのかと思えるほどであった。
そんなこんなで、まわりがボクをブルマとして扱ってくれていたので、ボクもブルマの格好でいることが次第に普通になっていった。・・・というより、体は男の子のままなのに、何の抵抗もなくボクをブルマとして受け入れてくれる周囲と、この擬似ブルマの生活にいつしか慣れていったボクは、今日このまま志願して本当のブルマになってもいいと考えることもしばしばあった。
しかし、このような生活が終わりを告げたのはブルマ検査1週間前だった。
いつしか擬似ブルマの生活に陶酔しているボクを現実の世界に引き戻したのは、同じサッカークラブでボクと同じように補欠としていつもベンチを温めているリョウジの一言だった。
「なあタカシ、おまえこのまま本当にブルマになっちゃうのか。」
「え・・・!?」
「おまえがそれでよければオレは止めないけど、サッカークラブの監督やみんなが本当にブルマになるなら、せめて男子としてのお別れパーティーをしたいと言うんだ。」
この言葉を聞いてボクの心の中が一転した。
思えば半月前、女医さんに勧められて女子(ブルマ)の格好をして学校生活を始めた。確かにそのときは、恥ずかしさもあったり、周りもいきなりボクが女子の格好で登校したものだから驚いたりもした。しかし、この半月のうちに恥ずかしさもなくなり、擬似的とはいえ女子(ブルマ)として受け入れられ、男子の姿をしていた時に比べれば女子と過ごすことが多くなった。
それに、ここ最近は体は男の子でもまわりは普通にブルマとして接してくれており、もうボクが1週間後のブルマ検査では、ブルマ志願者になると思っているクラスメートも少なくない。いや、クラスメートばかりでなくボクの周りの過半数はブルマになると思っているようだった。
例の女医さんでさえ、はじめのうちは
「どう、ブルマとして過ごしてみたこの数日は・・・」
だったのが、最近は
「段々ブルマも板についてきたわね。三週間前より髪の毛も伸びたし、あなたならブルマとしてやっていけるわよ。」
とボクに対する接し方も変わっていた。
つまり、ボクは擬似ブルマの生活に浸っているうちに、「ブルマになるかならないか」という肝心な結論を出せていなかったのだった。
(ヤバイ、ヤバイよ・・・。)
結局、そのときはリョウジに微笑むだけで答えは出せなかった。
その日家に帰ってから悩み苦しんだ。ブルマになるのかならないのか。しかし、辛いこともあったけど男子は男子で擬似とはいえここ半月過ごしたことでブルマはブルマでどちらも捨てがたい。でも、もうすぐどちらかを選ばなければならない。悩んでいるうちにも決断の時は確実に迫ってきている・・・。
第4章「決断」
結局、しっかりとした決断がつけられずブルマ検査は3日後に迫っていた。
優柔不断が悪いのはわかっている。しかし今更「やっぱり男に戻ります。」とは言えない雰囲気というものが感じ取れた。もうどうしていいかわからなくなっていた。
その日の夜、サプライズがボクを待っていた。しかし、このときのボクにはサプライズではない。ある意味、もう逃げられない現実を突きつけられたようなものだった。それは、ボクがYES,NOを出さないまま、例のサッカークラブでボクの壮行会が開かれてしまった。
「ブルマになっても仲間だからな。」
「ブルマになったら、是非マネージャーになってくれ。」
「ブルマになったら女子サッカーに入るのもいいぞ。」
みんなの言葉が鋭くボクの心に突き刺さる。
ブルマ検査前日の体育の時間、先生に頼んでもう一度だけ男子として扱ってもらった。こうすれば、ブルマ志願者から普通にブルマ検査を受けて男として残るきっかけを作れるかもしれない・・・。これが最後のチャンスかもしれない。淡い期待を寄せた・・・。
結果は散々だった。持久走も懸垂もみんなに全く歯が立たない。なぜなんだ・・・。
放課後、ボクはすぐに女医さんを尋ねた。今の気持ち、今日の体育のことを話すと、少し微笑を浮かべながら答えてくれた。
「なるほど、全く男子に歯が立たなかったのね。それは、タカシ君がこの半月間擬似的にもブルマとして生活して、そしてなじんで、体は男の子のままでも、深層心理ではブルマ(女子)化が始まっているのね。」
「どういうことですか?」
「よく考えてみて。あなたはこの半月間、女の子として生きていたのよ。男の子なのに女の子の格好をして。そしてそれを受け入れていた。ブルマになることが本当にイヤなら女装なんて3日ももたないわよ。」
「・・・。」
「変な言い方だけど、今のタカシ君は心がどうであれ、女の子の道を歩き始めたわ。つまり、いまはオチンチンの付いている女の子ね。」
家に帰っても結論はでなかった。ベッドに座ってオチンチンをずっと眺めていた。
(ボクは男の子なんだ。)
そう言い聞かせてオチンチンを何度も何度もしごいても、萎んだままだった。結局、その日は女医さんから言われた「オチンチンの付いている女の子」が頭に残り、寝つくまでかなりの時間がかかった。
ブルマ検査の当日。もうボクはブルマ志願者として扱われ、ブルマ検査は免除。みんなが体育館でブルマ検査を受けている時、保健室で孤独な待ち時間を過ごしていた。本当はここから逃げ出したい気持ちだけど、ドアに鍵がかかっているから逃げられない。
(ついに本当の結論はでなかった・・・。)
もうこうなると、昨日までの擬似ブルマではなく、この孤独が破られた時、本当に自分の体からオチンチンが消えてなくなってしまうという恐怖でいっぱいだった。
(ナデ○コに憧れブルマになりたかったのは自分だ。オチンチンが憎いと考えたことだってある。擬似ブルマ嫌じゃなかったはずだ。)
とにかく自分自身に言い聞かせることだけを考えていた。そしてこの孤独がいつまでも崩れないことを願っていた。
しかし、その願いもあっけなく崩れ去ってしまった。男子全員のブルマ検査を終えた女医さんが保健室にやってきてしまった。
「タカシくんお待たせ。これからあなたに対するブルマ施術を行うわ。あなたは志願者だから、このメルトブルマーを穿いてもらうわ。」
女医さんから一通り、メルトブルマーについての説明があった。このブルマーを穿くとオチンチンとタマタマは溶かされてしまうこと。すべてが終わるまでブルマーは脱げないことなどを教えられました。
「さて、では早速メルトブルマーを穿いてもらいましょう。」
「・・・。」
「どうしたの。昨日まで擬似ブルマで頑張ったのだからここで躊躇したらこれまでのことがすべて水の泡よ。」
「・・・。」
「さあ早く・・・。」
もう本当に逃げられない。最後まで納得のいく結論は出なかったけど、意を決してブルマーに足を通すと、そのまま思いっきり引き上げた。
(このオチンチンが悪いんだ。オチンチンが・・・。)
これが本心であったかといわれれば自信がない。でもそのときは自分にそう言い聞かすしかなかった。決断とはいえない決断だった。
第5章 「ブルマへ」
「じゃあ、終わるまでまたおとなしくしていてね。」
そう言うと女医さんはまた保健室から出て行きました。
すべては一瞬だった。自分でブルマーを引き上げてしまった。もう本当に戻れない。この現実に我に返ると恐ろしくなってきた。
(オチンチン、ボクのオチンチン。)
ブルマーの中を確認しようとしてみたけど、腰のゴムがきつく締まっており手を入れることができない。
すぐにブルマーの上から股間を確認すると、ブルマーの生地を通してオチンチンの存在が確認できた。
(オチンチンがなくなっちゃうなんて嘘だよね。だってボクのオチンチンは合格圏内なんだもん。)
ブルマーの股間部分を弄ると、オチンチンはむくむくと勃起し、ブルマーをテント状に押し上げた。
(よかった。オチンチンついている。ボクは男なんだ。)
安心感からか、その後の記憶がありません。
気が付くとボクは保健室のソファーに横になっていました。
(あれ、何でボクはこんなところに・・・。)
そう思ったのもつかの間、すぐに思い出しました。時計を見ると1時間以上寝ていたようです。
そして、股間に目を向けると、さっきとは明らかにブルマーの出っ張りも小さく引っ込んでいました。
(そんな、嘘だろ。)
恐る恐るブルマーを触ってみると、さっきよりもはるかに小さくなったオチンチンの感触がありました。
(うわあぁ、まずい本当になくなっちゃう。)
もう本当にどうしてよいかわからなくなったとき、グラウンドから聞き覚えのある声がしていました。
見ると、サッカークラブの仲間たちが練習をしていました。しかし、次にボクの目に飛び込んできたものは、仲間の中で颯爽とゴールを決めるリョウジでした。
(あいつ、いつもボクと同じ補欠だったのに。あいつにだけは負けたくなかった。)
リョウジが活躍している姿を見ると、急に男に戻りたい気持ちがこみ上げてきました。しかし、今のボクはメルトブルマーを穿いて・・・。
(やっぱり男に戻りたい。あいつらともう一度サッカーをやりたい。)
オチンチンがなくなってしまってはリョウジたちとサッカーをすることは当然できなくなる。小さくなったとはいえ、まだオチンチンがあるうちにボクはブルマーを脱ごうとしました。
しかし、メルトブルマーはがっちりとボクの下腹部を包み込み脱げません。(このままじゃ本当にオチンチンがなくなっちゃう。)
強引にブルマーの腰ゴムに親指をねじ込ませると、ボクは懇親の力でブルマーを押し下げました。オチンチンが引っ張られたと感じた瞬間、
メリリッ!!
下半身からそんな音がして、すぐに股間を見てみると、オチンチンは半分以上溶かされた状態でブルマーにくっついていました。
「うわあああぁぁぁぁぁ。」
ジンジンという痛みで股間を押さえて倒れこんだ時、女医さんがあわてて駆けつけてきました。
「やだ。おとなしく寝ていたと思ったら、無理にブルマー下げてオチンチンが千切れちゃっている。」
オチンチンが千切れたと聞いてまたボクは気が遠くなっていきました。
再び気が付くと今度は保健室のベッドの上に寝かされていました。
「何であんな真似をしたの。」
女医さんの問いには答えられませんでした。
「あのあと何とか女の子の股間を作っておいたけど、一歩間違えれば大変なことになっていたわよ。」
「先生、ボクはブルマに・・・。」
「一応はなれました。ただし、さっきのことは反省しなさい。」
ブルマになった(なってしまった)という現実を知り、涙が止まりませんでした。
終章 「後悔と未練そして儀式」
家に帰っても一人の時は涙が止まりませんでした。ベッドに座っていても無意識のうちに手はズボンの中に入っていました。
(ない、ない。本当になくなっちゃった。)
いくらまさぐってもオチンチンとタマタマはありません。わかっていてもズボンの中に手を入れるたびに涙が溢れてきました。
ここ半月、女の子の姿で過ごし、一時はブルマになってもいいとまで思った。それなのにこみ上げてくる後悔と未練。その理由がブルマになってようやく分かった。
擬似ブルマでいたときは、女の格好をしていてもいつでも男に戻ることができるという安心感と甘えから、女子の世界という非日常に陶酔し、都合の悪い結論を先延ばしにした結果、ブルマ志願者という束縛から逃げれなくなってしまったということが・・・。すべては擬似ブルマで現実逃避しているうちに、男子とブルマの境界線を見失い、最後はブルマ志願者しか選択肢がなくなってしまったことが・・・。
今まで同じ補欠だった友人の活躍を目の当たりにし、そしてオチンチンを失ってはじめて気が付いた。失った代償はあまりにも大き過ぎた。
涙も枯れた頃ボクは夜、ボクなりの儀式を行った。もうブルマとしてこれから生きていくしか選択肢のないボクにとって自分なりに男子との決別式をやるために。
家族に気づかれないようにそっとトイレに行くと、そのままボクは朝顔の前に立った。これがブルマにとってどれだけ無謀かつ無理な行動かはわかっている。しかし男に決別するためにはやるしかなかった。
股間の前に右手でチョキを作ると、目を閉じると、股間に懐かしいオチンチンを想像して右手の指に感じ取った。そして、ひざを軽く曲げ、爪先立ちになると朝顔に向けて右手の指に挟んでいる幻のオチンチンに、そっと尿意を導いていった。
パタタタッ
おしっこのはじける音がした。しかし、その音はこの前まで聞いていた朝顔を打つ音ではなく、スリッパの先端を打っている音だということがつま先から感じ取れた。
それでもボクは幻のオチンチンを通じてオシッコを朝顔の中に届かせようとした。しかし、先程の音がやむと、オシッコはボクの太股を伝わりくるぶし、踵へと垂れていった。結局いくら頑張っても幻のオチンチンを通じてオシッコが朝顔の中に届くことはなかった。
そっと目を開けると、頭の中で想像していた懐かしいオチンチンは当然どこにもなく、右手のチョキは虚しく空を掴んでいた。そして下に目をやると、映ったのは、すべてを失ってしまった股間からまだ完全に出し終えていない残りのオシッコを脚に伝わせる自分の姿だった。先日まで普通にこの朝顔に立ってやっていたタカシのあまりにも変わり果てた醜態だった。
(できない、できないよう。)
あまりの悔しさからまた涙が溢れてきた。
これは自分自身に対するあまりにも残酷な儀式だった。ついこの前まで普通に立ち小便していた自分が志願者とはいえ、男の証明と特権を完全に奪われ、もはや男ではなくなったことを嫌でも認めざるを得ない情けない姿を目に焼き付けること。これがボクなりの儀式であった。
もうどう頑張っても男には戻れない。ブルマがイヤでももうブルマとして生きていくしかない。すべては自分が導いた結論なんだ。そう言い聞かせてボクは一人汚した床を掃除した。
ベッドにもぐってからも涙は止まらなかった。
数日間は男に対する未練は断ち切れないでいた。
しかしそのたびにこの儀式での情けない姿を思い出し、
(憧れのブルマになれたんだ。これでよかったんだ。)
無理にも自分自身にそう言い聞かして涙が枯れきるまで泣いた。
当然このあと学校ではボクの体操服は紺色の短パンからブルマーに変わった。
ブルマーを穿くたびにオチンチンがなくなってしまったことを実感する。ボクは自分に言い聞かせている。
(これでよかったんだ。)
おしまい
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投稿:2014.10.18
メルトブルマー 「志願者の未練」
著者 やかん 様 / アクセス 14431 / ♥ 24