「序」
「マサアキ君にブルマを宣告します。」
これがすべての始まりだった。オチンチンの大きさから覚悟はしていたものの、宣告を受けた瞬間、視線が空を仰いだ。視線に映った体育館の壁の時計は10時3分だった。
第1章「背景」
今年はブルマ+女子対男子の均衡バランスを適正にするために、数ヶ月前から政府によって今年のブルマ検査をどうするかということが議論されていた。
しかし、議論は保守派と見直し派の間でいつも平行線をたどり、結論が出ないままブルマ検査開催の1週間前になってしまった。
一時は今年のブルマ検査の日にち延期や中止の噂も出たのだが、政府から正式な発表はなかった。
このため、ブルマ検査を開催する医師や関係機関、学校、それにブルマ検査を受ける男子たちも、政府の発表を一日も早く待っていたのだった。
結局、ブルマ検査開催日前日になっても、中止や延期の発表はなかったため、例年どおりにブルマ検査は開催されることとなった。
第2章 「運命の時を待つ」
今年のブルマ検査は少し違っていた。例年どおりなら午前9時から各々の学校の体育館で開かれるはずだった。しかし、政府の発表があるかもしれないという不安から、ボクの住む県ではブルマ検査の開始時刻をおのおのの学校の判断で行うことになった。
このため、被験査者数の多いボクの通う学校では、授業1時間分に相当する50分遅らせた、9時50分から開催となった。
はじめの2人の検査が終わり、ついにボクの順番がやってきた・・・。
「マサアキ君にブルマを宣告します。」
数々の検査が終わった後、ついに宣告されてしまった。ボクのオチンチンでは今年は無理かもしれないと半ば覚悟をしていたとはいえ、宣告と同時に天井を見上げた。体育館の壁の時計は10時3分だった。
検査が終わると、ブルマ宣告を受けたボクは保健室に連れて行かれた。ここが今日の施術場だ。しかし、まだ施術の準備が整っていないため、宣告を受けたボクは隣にある多目的室で待たされることになった。多目的室に着くとすぐ、ボクのすぐ後に受けたアキラが連れてこられた。そのあともポツリポツリと仲間が増え、8人になった時、保健の先生から連絡がありました。
「皆さんの施術は準備が整い次第2人ずつ行います。もうすぐ施術担当の先生方がみえられますから、それまでここで大人しく待機していてください。」
だれも、保険の先生の声は耳に入っていたが反応はなかった。アキラはボクの横ですすり泣いていた。ほかにも、体育座りのまま俯いて動かないヤツ、足を投げ出したまま目が空を泳いでいるヤツ、皆オチンチンがなくなってしまう恐怖と戦っていた。
それから暫らくして、10時半より施術開始の連絡があった。運命の時間を待っていた30分がとても長く感じられた。この時間の間にも、ブルマになる仲間は増えていった。
「さて、これから皆さんに対するブルマ施術を行います。政府からの発表もないみたいだから、施術はブルマを宣告された順番で行います。」
(ついにオチンチンがなくなってしまうんだ・・・。)
自分のオチンチンでは合格に届かないことはよくわかっていた。しかし、政府の発表によって、もしかしたらブルマにならなくてもすむという淡い期待を心の隅に持っていたことも事実であった。しかし、淡い期待は今、もろくも崩れ去ろうとしている・・・。
「マサアキ君、アキラ君保健室に来てください。」
もう覚悟を決めるしかない。涙をこらえながらボクは保険室に歩を進めた。
「アキラ君、早くあなたもですよ。」
「あらやだ、泣き疲れてこの子、気を失っている。・・・仕方がないわね。」
アキラに対する保健の先生の言葉を尻目に保健室に入ると、すでに施術の準備は整っており、担当の二人の女医さんもスタンバイしていた。
男でなくなってしまう悔しい思いをこらえつつ、ボクが施術台に乗った時、気を取り戻したアキラが脇を抱えられながら保健室にやってきた。
「マサアキ君ね。これからあなたに対するブルマ施術を開始します。悪いけど無意識に暴れると危ないから、腰と両腕は台に固定させてもらうわ。」
ボクが固定されている時、アキラはまた気を失ってしまったようで、抱えられて施術台に乗せられるところだった。
「さて、マサアキ君。オチンチンに注射をします。ちょっと痛いけどそのうち眠ってしまうわ。目が覚めたときはもうブルマの仲間入りよ。」
オチンチンにチクリとした痛みを感じた時だった。保健の先生が慌てて部屋に飛び込んできた。
「先生方。たった今、政府からの発表がありました。午前10時以降にブルマを宣告された男の子の施術は中止です。保守派と見直し派との妥協案として、午前10時以降のブルマ検査の結果は無効になりました。ほとんどの学校が10時から検査実施だったため、今年のブルマはほとんどいないはずです。」
そのとき、隣の多目的室からは歓声が聞こえてきた。
「先生、早くボクを施術台からおろしてください・・・。」
ここまでの記憶はあるのですが、さっきの注射が効いたのか、このあとボクは眠ってしまったみたいです。
第3章 「目覚めて」
目覚めると、ボクとアキラは保健室のベッドに寝かされていました。
ボクが目を覚ましてすぐ、明も目を覚ましました。
「おい、アキラ。ブルマ施術は中止になったんだ。」
「・・・。」
「自分の股間を触ってみろよ。」
「えっ、オチンチンが付いている。」
何も知らないアキラはまだ事のしだいをのみこめていないようでした。
ボクも男のままでいれたという喜びを実感するためにすぐに股間に手を伸ばしたのですが・・・。ツルンとしていて何も出っ張りがない・・・。
(そんなバカな。)
起き上がってパンツの中を見ると・・・。
「ない、ない、ないよう!」
何度確認してもボクのパンツの中にあるはずのオチンチンもタマタマも付いていない。信じられない現実にだんだん怖くなってきた。
「二人とも起きたみたいね。マサアキ君はブルマに変身して、アキラ君は男の子のまま残ったのよ。」
(そんな馬鹿な。10時以降ならブルマ施術は中止だって・・・。)
「なんで、ボクがブルマ宣告を受けたのは確か10時3分・・・。」
「残念だけど、政府の決定のとおりに行ったの。」
「だって、体育館の・・・。」
「体育館の時計が狂っていたみたいね。マサアキ君がブルマ宣告を受けた時間は9時59分よ。ちゃんと私の時計とアシスタントの看護婦さん2人の時計を突き合わせて3人で時間は確認したわ。」
「そ、そんな・・・。じゃあ、アキラは。」
「10時をまわっていたわ。さっきも言った通り、政府から10時以降にブルマ宣告をされた人は不問で合格よ。」
「じゃあ、この学校でブルマになった人は・・・。」
「残念だけど今年はあなただけ。それに、たとえ10時以降のブルマ宣告だったとしても、あの注射を打ったらオチンチンもタマタマも助からないわ。いずれにせよあなたはブルマになる運命だったのかもしれないわね。」
あまりにも理不尽な結果と悔しさでただただ泣くしかなかった。
結局、ボク一人だけブルマということを女医さんたちも哀れに思ったのか、本来回収されてしまうオチンチンとタマタマに保存処理をして、保存用のガラス瓶に入れてボクに返してくれました。
しかし、それはなおさらオチンチンを切られたということを象徴するもので、何の慰めにもなりませんでした。
終章「幻のオチンチン」
ブルマになっての帰り道、これがボクにとっての最後の男の子の格好での下校です。しかし、見た目は男の子のままでも肝心のオチンチンは鞄の中・・・。
途中通りかかった公園では、ほんの数時間前までボクと一緒にブルマになるはずであった男の子たちが遊んでいました。
彼らの股間に見たくなくても目が言ってしまう。遠目でもわかる男の子を象徴する股間の膨らみ・・・。彼らのそれを見ると、途端に股間が疼きだしてきた。もう付いてないと分かってはいるけれど、股間に感じる幻のオチンチンの感覚・・・。自分の股間に目を落とすと無意味にブカブカになっているボクのズボン。手で触ると、ブカブカなふくらみは途端にペッタンコになってしまう。
悔しくなって、足早にそこを後にした。
家に帰ると部屋にはもう女の子の服が準備されていました。心を決めて着替えても、股間だけはもう付いていないはずのオチンチンが、ボクを男の子へと引き戻そうとする・・・。
次の朝、起きると股間にそそり立つあの感覚。手を伸ばせば当然もう付いてはいない。また幻のオチンチンに絶望に突き落とされた。
(ボクのオチンチンはもうついていない。ボクのオチンチンはこのビンの中だ。)
そう言い聞かせて鞄から例のビンを取り出したのですが、疼きはとまりませんでした。パンツの中に手を入れても結果は始めからわかっている。それでも、幻のオチンチンの感覚がボクの手を股間にひきつけます。そればかりか、ビンの中の本物を見てなおさら悔しくなり涙が出てきました。
誰にも見られてはいないとはいえ、元男の子が片手をパンツの中に入れ、幻のオチンチンを必死で探しながら、反対の手で持ったビンの中の標本となってしまった本物のオチンチンを見ながら泣いている姿は異様かもしれない。でも、それがそのときボクにできる精一杯の行動だった。
もうすぐボク達に対するブルマ教育が始まります。それまでには幻のオチンチンの疼きだけは消えてほしいと願ってやみません。
おしまい
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投稿:2014.12.24
ブルマ 悲運の分岐点
著者 やかん 様 / アクセス 13815 / ♥ 12