■1
乾物の行商で立ち寄った山深い谷底に突如として現れた大きな山里。
周囲の山々には質の良い木が立ち並んでいる、どうやら森の木を切り出して生計を立てているようだ……。
山肌にいる男衆の視線をジロジロと浴びながら村の真ん中にたどり着くと、何やら祭の準備で女衆たちが騒がしくしていた。
あまり外の者が来ないのか、女衆は少々驚いた表情で笑みを浮かべながら俺のことを見る。
そんな村の通りを歩きながら、俺は一番大きい屋敷を持つ長者の家を訪ねた。
「俺は内海の乾物を売り歩いております与助といいます」
「ほうほう、この山奥に乾物とはありがたい。この村に内海の方から来る行商人は少ないからの」
「ええ、道が険しく荷車を引くには少々辛い道中でした」
村の長老と思われる老人は快く俺を迎え入れ、村の者に声をかけ客を集めてくれた。
今日は村で何年かに一度行われる祭りがあると言う、その供物として長老は一山の乾物を買い取ってくれた。
祭りのおかげかどうかはわからないが荷車の乾物の半分が一時もせずに売れ、俺の顔は綻んだ。
そうこうしていると、乾物を買いに来ていた若い女の一人がニタニタと笑いながら俺に問いかけた。
「あんたも、姫神様のお祭に出るん?」
「え? 他所から来た者が出るわけにはいかんのでは?」
俺が女にそう返すと、傍にいた長老が口を開いた。
「村の掟で男は皆祭に出ることになっておる……村の外の者とはいえ、悪いがお前さんにも参加してもらうことになる」
「そりゃあ、別に構いませんが……」
俺は事の成り行きで姫神さまの祭とやらに出ることになった……。
■2
山間の夕暮れは早く、辺りは急に暗くなった。
村の中ほどにある赤松の林に建つ神社の前には丸太で作られたとてつもなく長い台が用意してあり、しっかりとしめ縄で飾り付けられている。
その後ろ側には杉の木でやぐらが組まれ、何本も縄が用意してある。
女衆はその前を囲むように集まっており、ニタニタと笑う者や暗く神妙な表情で涙ぐむ者が入り交ざっており、何やら普通の祭りとは違う感じがした。
やがてゾロゾロと山から戻ってきた男衆のほとんどが俺に興味もない表情で無言のまま着物を脱ぎ始めた。
俺はどうして良いかわからずウロウロするしていると、先ほどの女が近づいてきた。
「あんたも、早う脱ぎ!」
「ぬ、脱ぐって……着る物全部か?」
「そうや!」
俺はその女に剥がされるように着物を脱ぎ、背中を押されながら丸太の一番端へと導かれ、村の男衆と横並びに立たされた。
そして俺はそのまま、服を着た男衆に後ろ手にされてやぐらへと押し付けられる。
「おいおい! 何をする!」
「心配せんでも取って食いはせん……」
男はそう言いながらしっかりと俺をやぐらに縛り付けた。
他の男衆も同じように縛り付けられた。丸太の上にはちょうどマラが乗るように作られている。
「人並み外れて立派なマラやわぁ……食べるもんが違うからマラも違うんかねぇ」
女はいやらしい表情で俺のマラをジロジロと見ると、頬を赤らめながらそう言った。
ちらりと他の男衆のマラを見ると、確かに俺のマラに比べると一回り小さい者が多いような気がした……。
ふと、隣の男が俺に声をかけた。
「あんまり立派すぎてもええことはないからの……」
恐らくは自分より立派なマラを持つ俺に嫉妬しているのだろう、俺はそう思った。
(ドン)
太鼓の音が一つ鳴り響くと、素っ裸の男衆は目の前に用意してあった桶で女衆から全身に水をぶっかけられた。
よく冷えた山の清水のせいで一斉に男衆から声にならない声が上がる。
「ぶわっ! 冷てぇ!」
「禊だから我慢しい」
先ほどの女は俺の前から離れず、相変わらずニタニタとしながら俺のマラを見つめている。
(ドドン)
二つ太鼓が鳴ると、女は俺のマラへと手を伸ばしゆっくりとそれを握りしめた。
「お、おいおい!」
「さぁ、大きくしておくれ……」
その指先がねっとりと絡みつき、いやらしく俺のマラを弄る。
俺のマラは久しぶりの女の感触に我慢できず、あっという間に立ち上がった。
「あらまぁ……素敵やわぁ」
女はさらに顔を真っ赤にして恥ずかしながらギュウとそれを握りしめた。
そして用意してあった紐で付け根を縛り上げる。
「お、おい! 何をする……」
「マラを立派なままにするためや、一時の我慢や」
他の男衆も同じようにマラを弄られ大きく立ち上がっているが、やはり俺のマラが一際目立つ。
村の男衆で一番大きそうな男のマラと比べても先っぽ一つ分は俺の方が長い。
「あんな大きなマラは見たことがないわ」
「何を食ったらあんなに立派になるんだろうねぇ」
見物する村の衆達からヒソヒソと聞こえる話し声に、俺は悪い気はしなかった……。
しかし、その話し声に混ざる言葉も気になった。
「気の毒に……」
それが一体どういう意味なのか、俺には理解出来なかった。
(ドドドン)
三つ太鼓が鳴ると、幾人かの巫女が現れた。
顔立ちの良い美しい巫女が両手に三方を携えている、横にいるまだ幼さの残る娘巫女は美しく飾り付けられた手斧を持っているようだ。
三方の上に乗っているのは……四寸ほどのただの松茸に見えた。
「姫神様の御使いである魔羅茸によって魔羅削ぎを行いまする」
巫女は声高らかにそう言うと、その魔羅茸とやらを手に取り丸太に並ぶ男衆の前へと進んだ。
村の衆は急に静かになり、その様子を見つめている。
巫女は順番に男の前に立ち、大きく立ち上がったマラの横に魔羅茸を並べて見比べる。
恐らくは魔羅茸とマラの大きさを比べているのであろう。
そしてそれは何事もなく順番に巫女がこちらへと近づいてくる……そう思っていた時だった。
「……足りませぬ」
巫女がそう口を開くと、途端に男は狂ったようにもがきながら声を上げた。
「嫌じゃ! 嫌じゃ! そんなことはない! もう一度見てくれ!」
「どう見ても足りませぬ……」
魔羅茸を持った巫女が一歩後ろに下がると、手斧を持った巫女が前に出る。
「(ま! まさか!)」
次に起こる事を想像して俺は血の気が引いた。
「堪忍してな……」
鈍く輝く手斧を持った巫女は小さくつぶやくと、その刃先をマラ目がけて一気に振り落した。
(ブチュ、ダンッ!)
小気味の良い肉の断ち切られる音と、丸太に食い込む斧の音が響いた。
切り落とされたマラは巫女の真っ白な衣装に血を飛び散らせながら宙へと飛び上がり、再び丸太の上に転がり落ちた。
「痛テェエエエ!! ウガアアアアアアアアアアアアアアアッ!! お鶴っすまねえ! ウァアアアアアアアアア……」
マラを断ち切られた男が全身を震わせながら悲鳴を上げ続ける。
そして、先ほどその男に禊の水をかけマラを立たせた女が泣き崩れた……恐らくはお鶴、この男の女房なのであろう。
男とその女房は脇を抱えられながら、引きずられるように長者の屋敷へと連れて行かれた。
地面には点々と血の跡が続く……。
「なんだこれは……」
真っ青な顔でおののく俺に、目の前の女がそっとマラに手を添えながら声をかける。
「心配せんでも、あんたのマラは立派やから切られはせんわ」
(ブチュ、ダンッ!)
女に気を取られていると、また一人の男のマラが丸太の上に転がった……。
先ほどまで男の印であった無残に転がるマラを、三人目の巫女が何とも言えぬ表情で別の三方の上に並べている。
俺の前に巫女達が来るまでの間に、五本のマラが丸太の上に転がり、五人の男衆が男ではなくなってしまった……。
目の前に立つ巫女の衣装に飛び散った血しぶきが目に刺さる。
巫女は他の男衆と同じように魔羅茸を俺のマラと見比べる、俺は血のりが付いた斧に思わず身震いする。
そして三方の上には切り落とされたばかり五本のマラが転がっている……もし紐で縛られていなかったら俺のマラは萎え縮んでいるだろう。
「魔羅神様……」
巫女はそうつぶやき深く一礼すると、そのまま社へと戻っていった。
「魔羅神様?」
「あんたが今から魔羅神さまや! 男衆の中で一番マラが立派ということや」
(ドン)
再び一つ太鼓が鳴ると俺は縄を解かれやぐらから解き放たれると、素っ裸のまま女衆達に社へと導かれた。
その途中、俺の次に立派なマラの男が緊張と安堵の混ざった不思議な表情で声を掛けてきた。
「しっかり頼んだぞ」
俺はその言葉の意味がわからなかった……。
■3
社には宴の用意がしてあり、俺は立派な上座に座らされる。
あんな事があった後に、しかも御神体の女神像の前には切り落とされたマラが奉納されており何も食べる気はしないが、村の衆の雰囲気に逆らうこともできず酒を振る舞われる。
二十人ほどの女衆が俺を取り囲み、杯に酒を注ぎ、料理を口元へと運んでくる……俺は何が何やらわけがわからない気分になった。
軽く酔いが回ると宴は終わり、先ほどの女が俺の肩に腕を回してくる。
「わたしが最初の姫神様や」
「姫神様?」
俺はそのまま押し倒されるように抱きつかれ、その指先でマラを強く扱き扱われた。
「あぁ、マラや……久しぶりのマラや……しかもこんなに立派で嬉しいわぁ」
「久しぶりとは一体どういうこった」
「わたしの旦那にはマラがない……前の祭で切り落とされて姫神様に捧げられたんや」
「なっ!?」
俺は驚き、そして気づいた。
祭に出なかった服を着たままの男衆……彼らはすでに祭でマラを切り落とされた者たちだと。
「マラを切り落とされた男の女房は祭の夜だけ姫神様になって、魔羅神様に……あんたに抱いてもらえるんや……」
「姫神様を抱くって……ここの女衆をみんな抱くのか!?」
「そうや、あんたのように天を衝く立派なマラが付いた男の子を孕ませておくれ!」
(チュウウウウ……)
俺は女の激しい接吻に気を失いそうになったが、目の前の酒池肉林にどっぷりと漬かることにした。
久しぶりの男の肉体に興奮する女の欲求を満たしてやった。
「ああああああっ……長いわぁ! こんなマラは初めてや!」
そして一晩中、入れ代わり立ち代わり姫神様にマラを奪われた女盛りの女房達を満たし続けた。
ここの村の男衆のマラでは届いたことのないであろう奥深くに、ドクドクと男の精を解き放ち続けた。
ただ、その中には先ほどの祭で泣き崩れた女房達もいたのが心に少し突き刺さる。
そして、そのことを思い出さないようにマラが求めるまま、ただただ女達を犯し続けた……。
■4
「……夜が明けたのか?」
ふと気が付くと、大勢いた女衆は誰一人居なくなり、社の中は昨晩の肉欲の香りが満ちており、俺の鼻を刺激する。
「魔羅神様、お目覚めですか?」
声のした方に顔を向けると、御神体の前にあの巫女が座っていた。
御膳には粥が用意されており、肉欲に溺れて疲れ果てた俺はそれをガツガツと頂いた。
「俺はとんでもないことをしてしもうた……」
「気にすることは御座いませんわ、これは姫神様の御意志ですから」
俺はふと、マラを切り落とされた男たちの事が気になった。
「しかし……マラを切られた男たちが気の毒だ」
「気に病むことは御座いません、あの男達のマラは姫神様と一体になったのですから。それはそれで村の男にとって誉な事です」
ふと、御神体の方を見ると女神像の女陰の部分に空いた穴に、血の乾きかけた五本のマラが差し込まれていた……俺はすぐに目を背けた。
「この祭のおかげで少しずつ村に生まれる男衆は男らしく立派なマラになるのです……魔羅神様の血によって」
昨晩犯し続けた女衆……マラを切られた男達の女房はきっと俺の子を孕むのだろう。
俺は何とも言えない罪悪感に襲われ、居たたまれなくなってきた。
「村の男達に合わせる顔がない……俺はこのまま村を発とう」
「そうですか……その前に魔羅神様にはまだお役目が御座います」
「お役目?」
「はい」
巫女はそう言うと巫女の衣装をハラリと脱ぎ、その裸体を露わにした。
巫女は恥ずかしそうに乳房と女陰を手で覆い隠しながらこう言った。
「私にも、魔羅神様の血を下さいませ」
村の女衆とは違う、気品のある引き締まった女体に俺は息を飲んだ。
この美女を抱かない理由はない、そう思った瞬間に俺のマラは大きく立ち上がり反り返った。
「大きい……」
巫女は一言そうつぶやくと、その唇をマラの先へと運びそのまま先っぽを咥えこんだ。
お淑やかに見えた巫女の姿とは裏腹に、その舌運びは巧みなものだった。
「うっ! 出ちまう!」
俺の言葉に構わずその舌でマラを弄り回し、俺はたまらず精を放ってしまった。
(ドクッドクッドクッ……)
あの酒池肉林の大騒ぎで俺の精は枯れ果てたかと思っていたが、全く衰える様子もなくその口にたっぷりと精を解き放った。
巫女は何事もなかったかのような表情で、その精を飲み干した。
「魔羅神様……次は下の口に、お願いします」
巫女は先ほどまで隠していたそこを露わにし、そこから滴るほど溢れ出る愛液が未だに硬く反り立つ俺のマラを誘う。
「わかった……そこに俺のマラを入れてやる」
「あぁ……はい、嬉しゅうございます」
マラを入れると言った瞬間、巫女は顔を赤らめて女の表情になり俺を求めた。
(ヌプ……)
俺のマラはゆっくりと巫女のそこを貫く。
随分と窮屈な感触が俺のマラを包み込み、思わず精を放ちそうになる。
「ああ……あああああっ……ん」
俺を抱きしめる腕の力が入り、その表情からもそこを満たされた喜びが伝わってきた。
「どうだ俺のマラは? 満たされたか?」
「あぁ……は、はい……とても、とても満たされております、さぁ、早く魔羅神様の血を私に注いでくださいませ!」
予想以上に締め付けられ、俺は余裕もなく巫女のそこに精を……魔羅神の血を解き放つ。
「うっ! クッ……出る!」
(ドクンドクンドクン……ドクッ)
「あぁあああ……ん! 魔羅神様の熱い血が! 嬉しい! 嬉しゅう御座います!」
痺れるような快感に打ち負かされ精を放った俺のマラは硬く反り立ったままだった、そのまま何度も巫女の胎内に魔羅神の血を注ぎ込み続けた……。
■5
「これは一体どうしたことか……」
巫女の胎内に数えきれないほど精を放つのに、俺のマラは全く萎えようとしない。
それどころかますます硬さを増しているような気がした。
「ハァハァ……ま、魔羅神様……私はもう無理ですわ……最後に……最後に姫神様にその血を」
巫女はそう言いながらゆっくりと腰を引き、一時ぶりに俺のマラをそこから解き放った。
「姫神様にって……俺はどうすりゃいいんだ?」
「御心配には及びませんわ、さぁ皆さんお入りを」
(ガタン)
社の戸が開くと、昨晩犯した女衆と数人の男衆が現れて一気に俺を押さえ込んだ。
「な! 何をしやがる! 離せっ……ウグッ」
俺は猿轡をさせられ腕を縛られ、何も言い返せないまま強引に御神体の前へと連れて行かれる。
「あなたが村の者であれば、このような御無礼はせずに済んだのですが……魔羅神様、どうかお許しください」
巫女は俺の顔ではなくマラを見つめながらそう言うと、そっと俺のマラを手に取り、御神体である女神像の女陰へと導く。
そこにはあの切り落とされた五本のマラが差し込まれたままだ……俺は嫌な予感を感じ、一気に青ざめた。
別の巫女が現れて御神体に差し込まれたマラを一本ずつ抜き取り、先ほどの巫女に俺のマラをその穴へと差し込むよう合図した。
「さぁ魔羅神様、姫神様に御注ぎください……姫神様、粗末なマラに代わり御口直しで御座います」
俺は成すすべもなく、巫女の導くまま御神体の女陰にマラを入れる。
すると巫女はその指先でマラを弄り、俺の精を御神体に解き放たせようとする……。
俺のマラはまるで媚薬でも仕込まれたかのように敏感になり、巫女の手淫に打ち負かされてしまい、張り裂けそうな快感に任せてそこに大量の精を解き放った。
(ドクッドクッドクッドクッドクッ……)
恐らくはあの粥に仕込まれていた媚薬によって、俺は今までで一番大量の精をこの御神体に放ち続ける……それは屈辱だった。
「あぁ……姫神様がお喜びですわ!」
巫女は恍惚とした表情で両手を合わせ、姫神様を拝み始めた。
俺を押さえつけていない村の衆も、姫神様に向かい手を合わせる……この村にとって姫神様の存在は唯一無二のようだ。
だからこの男衆達はマラを切り落とされても我慢出来るのであろう……俺には理解出来なかった。
「ウグッ(!?)」
巫女は祭の時と同じように紐で俺のマラの付け根をギュウと締め上げた。
丁度、御神体の女陰の前には真新しい丸木が立てられている……俺のマラは付け根はそこに乗せられた。
「ウググッウグググググッ(やめろっやめてくれっ!)」
俺の声は誰にも届かず、すぐ傍らに斧を持った巫女が立つ。
「堪忍してな……」
まだ少女ぽさを残す巫女はその外見とは裏腹に何の戸惑いもなく、その斧を一気に振り下ろした。
(ブチュ、ダンッ!)
「グギグググググッ(ギャアアアアアアア!!)」
先ほどまで魔羅神様と崇められていた俺の自慢のマラは一瞬で切り落とされ、血飛沫を飛び散らせながら御神体の女陰の中へと落ちた。
恐る恐る切り落とされたそこに目を移すと、縛り上げられた紐で血は吹き出ないものの、丸木の下に残された男の証である金玉が縮み上がっていた……俺は痛みと絶望で気を失った。
その時、男衆の一人が俺の耳元でこう囁いたのが聞こえた。
「ざまぁみろ」
と……。
■6
次に気が付くと、俺は小さな部屋に閉じ込められていた。恐らくはあの社の中なのであろう。
ふと切り落とされたそこを弄るが、当然マラは無かった……手当はしてあるようだが、金玉を残して平らになってしまったその傷跡がジンジンと疼く。
「畜生……俺はおしまいだ」
俺は力なく床を殴りつけると、絶望でそのまま横になった。
そうしていると、ふと扉の方から声が聞こえた。あの巫女の声だ。
「玉神様」
「た……玉神様だって?」
マラを切り落とされた怒りをぶつけようとする前に飛び込んできた玉神様という言葉に俺は戸惑った……。
「はい、魔羅神様として姫神様にマラを捧げたお方を次の祭まで玉神様としてお祀りいたします」
「次の祭まで?」
「はい、その日までは玉神様に精一杯のご奉仕をさせていただきます」
「……その後はどうなるんだよ! 俺はもうマラ無しなんだぞ! 男として生きていけないんだぞ! こんな体じゃ恥ずかしくてもう郷にも帰れやしねぇ!!」
俺はようやく怒りと絶望を巫女にぶつける事が出来た。しかし、巫女は平然とした表情で続ける。
「郷に戻る必要は御座いません、この村は大変裕福で御座います。代々玉神様が村の衆をまとめる役人となり、行く行くは長になる決まりが御座います」
「じゃあ、あの長老もマラが無いのか?」
「……はい」
俺のマラが立派だと見抜いたのかどうかはわからないが、俺はあの長老に嵌められた気がした。
「……俺が玉神様なんぞやめて村を出ると言ったら?」
「その時は……その御命を姫神様に捧げていただきます」
「おいおい神様を脅すのか!」
「不本意ながら……致し方なく」
何もかも無茶苦茶な巫女の言い分に俺はマラだけでなく何かを考える気力を失った。
「玉神様になることを御承知していただけますか?」
「わかった……でも、俺はこれからどうなるんだ? マラが無くても生きて行けるのか?」
巫女はニコリと笑顔を見せると、こう続けた。
「御心配はありませんわ、マラが無い男衆はこの村で元気に生きております」
「元気にって……男なのにもう女を抱けないんだぞ? 精を放てないなんて気が狂ってしまう!」
「……では、その小窓を開けて見てください」
俺は部屋の奥にある小窓を開いてそこを覗き込んだ。
「あれは……」
そこは布団の敷かれた小部屋になっており、二人の男女が体を重ねていた。
女の方は……あれは俺のマラを切り落とした娘巫女だ。
その綺麗な柔肌と小ぶりな乳房を露わにして男のマラを咥えようとしている……。
そう見えたのだが、よく見ると男のそこにマラは無く、小さく盛り上がったマラの切り株と金玉が動いていた。
娘巫女は時々吐息を漏らしながら、そこにいやらしく舌を這わす。
男の方は興奮しながら必死にその綺麗な女陰を舐め回している。そして切り株をビクビクと震わせながら白い精を娘巫女の口元へとたっぷりと吐き出した。
「何なんだこりゃ……」
あっけに取られる俺に巫女が事の説明をする。
「ここは姫神様にマラを捧げた男衆の為の小屋。厠は不便かと存じますが、マラを切り落としても傷が癒えましたらあのように女を抱けるようになりますわ」
「いや……あれは女を抱くと言えるか?」
巫女はクスリと笑うと、こう続けた。
「あの娘はまだマラで貫かれていない、生粋の生娘……」
「えっ!?」
「ただの村の民として生まれた男が、生まれの良い生娘を抱けるのもマラが無いから許されることで御座います……私たち巫女として育てられた女の舌技であれば、マラが無くとも精を吐き出させることが出来るのです」
「……じゃあ、お前も生娘だったのか?」
「はい、玉神様……あなた様のマラで貫かれるまでは」
巫女は頬を赤らめながらそう答えた。
「しかしながらあなた様……玉神様にはあの娘は必要御座いません」
「それはどういう意味だ?」
「私はもう巫女では御座いません。あなた様の妻になるからです……授かった全ての技を使って精が放てるようご奉仕致します」
「……そりゃまた勝手な話だな」
生娘を奪った責任は感じるものの、俺もマラを奪われた身だ。言い返しても当然だろう。
しかし巫女……今は俺の許嫁になってしまった彼女は平然とこう答えた。
「私は長老の孫娘で羅姫と申します。他の玉神様、役人よりもあなた様が長老になれる便宜を図れるかと思います」
それは彼女の勝手な思いではあるし、従う理由もないがマラが無く郷にも帰れず断る理由もない。
もう何かを言い返そうという気分にはなれなかった。
「祖父も父も立派なマラで魔羅神様になりました。ですから、きっとこの子も立派な魔羅神様になれますわ……」
目の前の許嫁、羅姫はまだ出来たかどうかもわからない腹の子を優しく摩りながら、うっとりとした表情でそうつぶやく。
将来のわが子が男として一番大事なマラを切り落とされるというのに、悲しむどころかそれを夢見てうっとりとする姿を見て、俺はやはりこの村の衆の考えることは理解できないなと感じた。
俺がマラを切り落とされた時に耳元で「ざまぁみろ」と言った男の声が思い出された。あの男はまだまともだと感じた。
俺はこの村で一体どうなってしまうのだろうか?
「俺は……マラが無くなった俺は本当に大丈夫なのか? お前も急に男のマラが欲しくなって俺を見捨てたりしないか?」
「はい、大丈夫で御座います……姫神様に誓ってあなた様を見捨てはしません」
俺は再び考えるのを止め、羅姫の柔らかい手に手を握られながらウトウトと眠りについた……マラの傷跡がジンジンと疼く。
(終)
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投稿:2015.09.03更新:2015.09.22
姫神様と魔羅神様
著者 いち 様 / アクセス 40308 / ♥ 44