19歳の春、僕は2つの睾丸を失った。
3日程度痛みはあったものの、病院にも行かず、春休み明けてからも大学にはきちんと通っている。
それからの生活といえば、あまり変化はない。
少し性欲が減ったのとオナニーをした時に白い液が出なくて、透明の液が出るということだろうか。
それを見るときに僕はもう子供は作れないのだと自覚させられるのだ。
それから、精神的に少し不安定になることが増えたことか。まぁそこまで大きな問題ではない。
恥ずかしさから温泉や風俗には行けずにいる。それを彩夏に話すと
「男の子って温泉でアソコの大きさとか競ったりするんでしょ?一樹に粗チンじゃないし、行ってきなよ。タマなんて誰も見てないよ?アタシ男じゃないから、わかんないけどさ。それに今のうちにエッチできるならしたほうがいいと思うよ。」
と彩夏が割りとマジメに言ってくる
「そうかな~」
「チンチンだってそう遠くない未来に取っちゃうんだから、一応男のうちに楽しめることしといたら?まぁあたしは絶対エッチしないけど」
「やっぱチンチンも・・・」
「当たり前じゃない!チンチンあったら宦官じゃないんだから!」
「ですよね・・・・」
彩夏はこの一点張り、無くなるっていう自覚はないけど、彩夏と居る為にはやっぱり・・。
睾丸まで無くしたのだ。いまさら引けるわけ無い。
タマを抜かれる前の1年、タマを抜かれてからの1年、彩夏と住んでからこれで2年が経とうとするときにある転機が現れた。
それはキャンパスの移転だ。彩夏の学科は3年になるとキャンパスを移らないといけないのだ。僕の大学とは逆方向になるのだ。まともに通うとなると片道で2時間。彩夏と離れたくない僕は大学を退学し、彩夏のキャンパスから通える企業に就職することにしたのだ。
「一樹、大学辞めちゃうんだ。勿体無いわね。せっかく受験頑張って入ったのに。まぁ就職おめでとう!」
「ありがとう。」
「あっそうだ、言い忘れてた。大学と契約してる女性専用のアパートに入居することになったわ。パパがここなら家賃払う言うんだ。」
「彩夏さん・・・。タマはないとは言え、僕一応女じゃないし、そんなとこ行って大丈夫かな」
「だよね~。困ったな。ねぇウチに入るときは女装してくれない?」
「いや~それは・・・」
渋ったが、僕に選択肢は無かった。部屋は1人暮らし用かと思ったが、2~3人は住める間取りになっていた。
一応契約は彩夏1人が入るようなものになっていた。僕の名前など入れられるわけなど無かった。
彩夏からはかつらと女性用の服を数着渡された。タマ無しとはいえすごく屈辱的だった。
20歳の4月からは転居と就職だった。
女装しては、人目のつかない公園のトイレでスーツに着替える。
どっちのトイレに行けばいいかわからず、いつも困惑している。
障害者用のどちらの性別でも入れるようなところを探しては着替えている。
なかなか心が休まらない毎日だった。
そして会社のほうは営業の仕事で、いつもプレッシャーをかけられ
1ヶ月で退職したのだ。いわゆる5月病に負けたのだ。
彩夏に退職したことを話すと
「やっぱ一樹に会社員は似合わないのよ。チンチン取った後はあたしの宦官になるんだから。あたしに永久就職よ。一生ちゃんと養ってあげるんだから」
「はっはい」
いつペニスを取られてしまうかわからないけど、そこは明確にしないほうが自分の為だと思った。
それからというもの、僕は所謂無職になった。居候らしく、家の掃除、料理、洗濯すべてやった。
「やっぱ、一樹が家に居ると助かるわ。料理も上手になってきたね」
といってもらえるようになった。
このアパートに住んでから1年になる21歳の春先のことだった。アパートに男が住んでるんじゃないのか
という噂が流れるようになったのだ。部屋から男の声がするとかそんな内容だった。
ビクビクしながらいつも通り女装をして帰宅しようとすると。
隣の部屋にいる女性とすれ違ったのだった。
彼女は僕をすごくじーと見つめている。
「やっぱ前から思ってたけど、あなた男でしょ?なんか毛が濃いし、でしょ?」
不意打ちにビビッた僕は慌てて部屋に逃げ込んだのだ。彩夏には
「そんなに慌ててどうしたの?」
と言われた。
「いやなんでもない」
と誤魔化した。バレたら、追い出される。もしくはペニスを取られてしまうかも
そんなことを隠し通せるわけもなく、
彩夏さんとご飯を食べようとキッチンでご飯を作っていたときに
「ピンポン」
となった。彩夏さんはいつも通りドアを開けた。
すると女の子達が5人が訪問してきた。
ドアを開けるとすぐキッチンなので、僕と目があってしまった。
「あの~ここ男子禁制なんですけど」
「男性がいるのは困ります。」
と言われる。ついに本当にばれてしまったのだ。
隣の女性が広めたに違いない。
とりあえず、居間に女性達を招いて事情を説明することとなった。
と話していた。
「とにかく私達としては、女子専用アパートに男子がいるのは困ります」
「男子は出て行って」
彩夏はそれに対して受け答えをしたのだ
「いや彼は男ではありません。あっそうだ皆さんこれを見て」
冷蔵庫の上に飾ってある。白い2つのタマが入ったビンを
「なにあれ?らっきょう?」
「なんだろ?」
そして彩夏はそのビンをテーブルの前に持ってきた。
遠くからだとよく見えないが血管のようなものが浮き出ていた
「これ、もしかして・・・」
「そう、彼の睾丸よ。摘出済み。彼は男じゃないよ」
その場が少し凍りついた。
でも1人の女性は食い下がらなかった。
「でも、おちんちん付いてたら女じゃなくて男よ」
「そうよ。ねぇそれは女性とは言えないわよ。」
女性達は驚きを隠せないようだが、もっともらしい反論をしている。
それに対して彩夏もすかさず反論した。
「ペニスももちろんきっちり切除する予定ですから。文句は無いでしょう!?」
彩夏はかなりヒートアップしている様子だった。
もはや引くに引けない状況だ。
「ならいいんですけど」
「とにかく、手術してちゃんと性別変えてもらうとかしてもらわないと私達納得しませんからね。」
と言い女性達は去っていった。
「彩夏さん。どうしよう」
と僕は同様を隠せない。
「どうしようって。もう切るしかないわよ。あたしが結婚するまで待とうと思ってたけど。交換留学時代にアメリカであったタイ人の友達が、将来ナースになりたいと言っていたわ。彼女に相談してみる。」
「えっタイ!?」
わざわざ海外に行くことなのだろうか。
「国内じゃ難しいのよ。性同一性障害とかじゃなかったら手術できないらしいし、できたとしても女性器つくらなきゃいけないから。それじゃ宦官じゃないでしょ?」
彩夏は本気だ、もはや諦めるしかないだろう。
何日が後には噂はかなり広まっていた。
僕が女装して外に出ると
「アンタ男なんでしょ?」
「チンチン、切るんだって?いつなの?」
「種無しなんでしょ?」
「ウチには無いから分かんないけどさ、大事なんじゃないの?」
「女になっちゃえば?」
と外出する度に、恥ずかしいことを聞かれてしまう。
本当に恥ずかしい。こんな日々が続くのだろうか。
女性達が押しかけてから1週間が経ち、夕方くらいに家に戻ってくると来客が居たのだ。
彩夏と一緒にいたのは身長170cm近くある長身の女性。女子アナのような顔立ちだ。この人は誰だろうか?
「あっ一樹紹介するね。この人麻友さん。同じ大学の先輩なんだ」
「キミが一樹くんよろしくね。」
なかなか清楚で素敵な女性に見える。何より美しい人だ。
僕は少し緊張している。いままでこのうちに来客などあっただろうか?
いやない。女子専用のアパートに僕がいるのはまずいんだろう。
ただ遊びに来た?いやそれはないだろう。いやわからない
「麻友さんってすごいんだよ。今はうちの大学院で英文学を勉強していて論文も評価されてるんだよ。あと人気女性向けサイトのHerTubeで人気のチャンネルやってるんだ。」
「麻友さんすごいですね。」
「彩夏ありがと。まぁそのチャンネルもいま不調でね」
と少し麻友さんはため息をつきながら話していた。
「そのチャンネルではどんなことをされているんですか?」
「海外旅行についてとか、現地の食べ物とかについて、特にみんなが食べたことも無い食べ物を紹介したりするの。よかったら私のページ少し見ない?彩夏パソコン借りていい?」
「もちろん」
そういうと自分のチャンネルを出した
タイトルは「麻友の世界珍味紀行」
動画一覧・・・
「ウジムシの踊り食いに挑戦」
「ワニのステーキを食べてみました」
「水牛の睾丸を頂きました」
などなど・・・・
こんなにキレイな顔して、こんなエゲツないことをやるのか・・・。
確かに体を張ってるから、かなり人気のチャンネルになっている。
「麻友さん、バイトとかしなくてもコレで、食べていけるんでしょ?」
「まぁギリギリだけどね。でも最近ちょっと伸び悩みでね」
そうなのか。広告収入だけでこの人は食べていけるのか。すごい人なんだな。
「一樹くんの事は彩夏から、聞いたわ。近いうちに大事なとこ取っちゃうんでしょ?」
なぜそれをこの人は!?彩夏も何でそんなことを!
「彩夏さん・・・・」
「あたし最近すごく多忙でね、一樹の手術には立ち会えそうに無いの。それで大学でも良くしてくれてる麻友さんに相談したのよ。そしたら麻友さん一樹の夢かなえてくれるって」
まさか・・・・
「今回チャンネルでやらせて欲しいの『タイで人間のペニスを頂きました』の企画」
「宦官になるには本当は必要な部分なんだけど、あたしも立ち会えないし、税関通るのも大変そうだし、結婚までは待ってあげようと思ってたけど急に切ることになっちゃったし、あたしはとにかくそれだけは食べたくないから。麻友さん食べてみたいってさ。宝は睾丸だけで勘弁してあげる。」
そうか、もうそこまで話は進んでいるのか。もう逃げられないだろう。
「わかりました」
「一樹くんありがとう」
と麻友さんはうれしそうだった。この人に僕のペニスは食べられてしまうのだ。近い将来。
「一応、スケジュールなんだけど、明日、日本を出発して、明後日には手術だからよろしく。」
「え~そんな急な」
「しょうがないじゃない!早くしないと追い出されるんだから!はい。これチケットね」
と彩夏から2枚のタイ行きのチケットを渡されたのだった。
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投稿:2016.10.28
あたしの宦官になってよ 3
著者 あさくら 様 / アクセス 11870 / ♥ 4