「(彼女が欲しい……)」
ぼんやりとそんな事を思いながら、今日もとぼとぼと家路を急ぐ。
ふと周囲を見渡すと、都心の街頭や看板の煌びやかな灯りが目に刺さる。
そんな街中を楽しそうに歩くのは、幸せそうなカップルばかりだ……そんな光景がグサリと心に刺さる。
こんなことなら、あいつと別れるんじゃなかった……大してモテるわけでもないのに、一年前に付き合っていた彼女を振った事を少し後悔した。
良い所のお嬢様だったし、どうして別れたんだろうと今更ながらに後悔した。
「彼女が欲しいの?」
「えっ!?」
突然聞こえたその声の方を振り返ると、薄暗い路地の一角から一人の女性がこちらを見つめていた。
その声の主は最近はすっかり見かけなくなった、街角に店を構える占い師だった。
「ど、どうしてわかったんだ?」
「占い師だから。じゃ納得できないかしら? フフフッ……」
僕は自然と彼女の店の前へと歩み寄り、その小さな丸椅子に腰かけた。
店の名前はどこにもなく、ただ白い布で覆われた机があるだけだった。
その占い師の女性は浅くフードを被っているが、テーブルの上に置かれたランプの薄明かりに照らされるその素顔は、とても若く、恐ろしいほどに美しかった。
日頃からオカルトめいた事には興味がなかったが、僕の心の声を言い当てたこの占い師に好奇心を感じ、もしかしたら凄い力を持っているのかもしれないと思い期待した。
「そう……そこそこ稼ぎもあるし、そんなに悪い顔でもないのに、どうしてモテないのかな? なんて考えてるのね……賢史さん」
「う……」
名前を言い当てられた驚きよりも、日頃から思っていた本音を言い当てられ、少し気恥ずかしかった。
「いいわ、あなたの恋愛運を占ってあげる」
「べ、別にまだ占いを頼んだわけじゃ……」
「そこに座った時点で、あなたは私のお客様よ」
僕はそれ以上、占いを拒めなかった……ぼったくられる予感もしたが、懐には余裕があるし、まぁ大丈夫だろう……と。
彼女は無言で僕の瞳を見つめ続けてくる、僕は瞬きもせず、ただただ見つめあった。
どことなく異邦人のような顔立ちをした美人だ……僕は彼女の美貌に魅入られ、自然と頬を赤らめた。
「……残念ね」
「えっ! 残念って……」
いきなり残念と言われて、僕は戸惑い、動揺した。
「あなたは一生、恋も出来ずに独りで過ごすことになるわ」
「そ! そんなバカな!」
「前に付き合っていた女性が唯一のチャンスだったのに……仕方ないわね、それがあなたの運命よ」
「そんな……そんなの嘘だ!」
「嘘じゃないわ。あなたはこれから一生、恋も出来ず、女を抱くことも出来ずに暗く寂しく生き続けるの……」
「ふざけるな! そんな話は信じないからな!」
僕は思わず激高し、丸椅子を引っくり返す勢いで席を立った。
彼女は表情を変えず、ゆっくりと立ち上がり椅子を元に戻すと、僕の傍へと歩み寄った。
「可哀想な人……怒るのも無理はないわ、凄く残酷な運命だもの」
「ちょ……っと……」
彼女はそのか細い腕で僕を抱きしめると、そのまま唇を重ねてきた。
思ってもいなかった彼女の行動に、僕は動揺しながらも、その魅惑に誘われてゆっくりとその肩を抱き寄せた。
「その可哀想な劣情を、せめて私が叶えてあげるわ……フフフッ」
「劣情……だなんて」
彼女は僕のベルトに手を掛け、手慣れた手つきでそこを露出させる。
「こっ、こんなところで!?」
「あら、あなたもオトナでしょう? たまにはこういうドキドキする遊びもいいわよ」
終始リードされっぱなしの状況に、僕は少し意地になりその薄い布地のベールの上から彼女の乳房の形を確かめた。
「……あっ……ゆっくり……」
彼女は透き通った声で吐息を漏らすと、再び唇を重ね、舌を絡める。
思いもかけなかった状況に、僕の劣情は爆発した。
「ンフフフ……すっごく硬くなってるわね……あなたのチンポ、思っていたよりも素敵だわ」
下半身だけ露出させられた僕のチンポに彼女の細く、冷たい指が絡みつく……その感触がとても気持ち良い。
「いっぱい吐き出させてあげるわ……」
彼女はそう言いながらゆっくりとしゃがみ込み、僕のチンポにその吐息を吹きかけた。
(カプ……)
「んぁっ!」
チンポの先端をその唇が咥えこみ、彼女の舌が執拗に愛撫する……僕は思わず声を出した。
「うっ! 出る!」
僕は思わずビクンと背筋を伸ばし、必死にイクのを耐えようとした。
少しでも長く彼女の舌に遊ばれたかった。
「楽しそうね、賢史」
「!?」
突然、背後から聞き覚えのある女の声が聞こえたと同時に、二本の腕が後ろから僕のチンポへと回り込んだ。
「やっぱり忘れられないの……賢史のコレ」
「えっ! ひ、浩子!」
その声の主は去年振った彼女、浩子だった。
僕は占い師の女にチンポを咥えられながら、去年別れた彼女にその付け根を掴まれている……この状況を頭で整理するのは難しかった。
「ほら、いきなさいよ……気持ち良いんでしょう?」
先端を執拗に愛撫されるチンポの茎を、浩子は指先で揉み扱き始めた。
二人の女性に同時にチンポを攻められ、僕はそれ以上耐える事が出来なかった。
(ドクッドクッドクッドクドクドクッ……ドクッドクドクッ……)
僕は言いようのない快感に襲われ、大量の白濁液をその口の中へと放出した……。
「ドクドクって感触が伝わってきてるよ……ねぇ、気持ち良かった?」
僕の耳元で、浩子が意地悪そうな口調でそう囁く。
「ハァハァ……ハァ……き、気持ちよかったよ」
「そう、良かったわね!」
(サクッ)
一瞬、刃物が何かを切り裂く音が聞こえた。
……何が起きたのか。
占い師の女がゆっくりと立ち上がり、先ほどと同じように僕の瞳を見つめる……。
その口元からダラリと垂れ下がる、肉の棒のような何かが見えた。
「チ……チンポ?」
(ズキズキッ)
その瞬間、股間に猛烈な痛みと熱を感じ……同時に僕の体温は一気に下がった気がした。ガクガクと全身が震えだす。
ゆっくりと視線を下ろすと、そこにはチンポの断面が覗いていた。そこから沸々と血が噴き出している。
「あっ……あっ……あ……あぁああああああああああああっ!」
僕はチンポを切り落とされた状況にパニックになり、路上に蹲り、そして絶叫した。
「アハハハハッ! いい気味だわ!」
そう笑いながら叫ぶ浩子の右手には、血のりが鈍く光るキッチンナイフが握られていた。
「忘れようと思ったけど、やっぱり忘れられなかったわ賢史。あんた程度の男が、この私を振るなんて許せなかったのよ!」
「うっ……うっ……」
僕は何かを言い返そうとしたが、ショックと激痛で口元から唾液が垂れるばかりで、全く声にならなかった。
「あなたが悪いのよ、賢史さん……彼女を愛し続けてあげれば、幸せになれたのに」
占い師の女がそう囁く。そしてこう続けた。
「でも、仕方ないわ……これがあなたと彼女の運命なのよ、受け入れなさい」
運命……僕はその一言でこの大事件を片付ける占い師の女を睨みつけた。
「あースッキリしたわ! これで心置きなく今の彼と結婚できるわ、ありがとうね賢史」
浩子はそう言いながらハンドバッグから札束を取り出すと、それを占い師の女へと手渡した。
占い師の女は札束と引き換えに僕のチンポを手渡すと、浩子はそれを足元の路上にポイと転がし、ニヤリと笑みを浮かべて僕を見つめた。
「(ま、まさか!?)」
(グチャッ……グチャッ……グシュッ……ブチュッ……)
浩子はヒールの底で僕のチンポを執拗に踏み潰した……何度も、何度も。
その肉の潰れる嫌な音と共に僕のチンポは砕け散り、赤いシミになって行った。
浩子はチンポの形が無くなるまで踏み潰し続け、最後に僕にウインクをすると、そのまま街へと消えて行った……。
「……クッ……アッ……グッ……アッ」
僕は声にならない悲鳴を上げ続けた……僕の男のシンボルであるチンポは、もう二度と元に戻らない肉片になってしまったのだ。
「く……は、はめたの……かっ! ち、チクショウ!!」
二人に嵌められた、そう思った僕は精一杯の力を込めて占い師の女を罵った。
「私はあなたと彼女の運命を引き合わせてあげただけよ、お節介だったかしら? それに、最後に私のお口でチンポを気持ち良くしてもらっておいて、酷い言いぐさね……そこで独り寂しく死になさい」
占い師の女はそのまま路地の闇に消えようとしている、僕はチンポの断面から感じる激痛と広がる血だまりに言いようのない恐怖を感じ、必死に叫んだ。
「ま! ま、まって……まってくれ!」
僕の必死の掛け声に、占い師の女は立ち止まり、ゆっくりと振り返ってくれた。
「まだ何か用かしら?」
「た……助けて……し、死にたくない……死にたくない……女にチンポを切られて死ぬなんて……い、嫌だ……」
彼女はしばし黙り込むと、こう答えた。
「そうね、あなたはまだ死なない運命だったわね」
僕は彼女に腕を引き上げられ、その肩にもたれ掛かった。そして、引き摺られるように暗く寂しい路地の奥へと歩みを進めた。
「ど……何処に……連れて……行くんだ……」
「今ここで死んだ方が良かった……なんて思わないと良いわね、フフフッ」
(END)
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投稿:2016.11.22更新:2016.11.22
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著者 いち 様 / アクセス 7425 / ♥ 1