徳川家康のY染色体を持った子孫は万を下らないとも噂されている。一代で平均2人ずつ男が成人したら(途絶える子孫もいれば5人以上いる子孫もいるので)、450年15世代で2の15乗の3万3千人になるからだ。その一方で過去450年の人口増加率は10倍以下である。つまり、滅びたY染色体の数の方が、継続されたY染色体の数より多いのである。これは一夫多妻制度(妾を含む)では当然の帰結で、日本に限らない。
逆に言えば、男の大多数は単純な労働力であって、そこに子孫を残す意義など結果的には無かったとも言えよう。ごく一部のハーレム家系だけが繁栄し、他は断種してしまった現実。そのくらいに男のハーレム願望は野蛮で排他的だ。同様の例に肉用牛がある。大多数は始めから去勢され、その結果、優秀な種牛だけが選ばれる。しかし、それと同じことを某ハーレム実業家が選挙の「本音」で訴えた結果、大統領に選ばれたのだから、この考え方は今も根強いと見て良いだろう。
俺も子孫を沢山残したい。しかも女がわがままを言えない状況で。それには、多くの女が俺を取り合う状況を作り出すのがよいのだ。しかし現実の俺は小柄で、運動も苦手だ。女子は自分より背の低い男には滅多に興味を持たない。となれば、俺にできることは、他の男たちを蹴落とすことだけだ。早めに中二病を迎えてしまった俺はそう考えた。
幸い、俺は独りではなかった。同じように何らかの理由でモテない男子が同じ学校からもう一人、他の2校から4人集まった。6人もおれば十分だ。3人一組で一人にあたって目標は週に6人、学校毎2人。しかも、学校違いで顔を知られていない者だけで事を当たれる。週に2人ということは、年に5クラス分のライバルを蹴落とせるということだ。
こっそりと睡眠薬を入れ、眠ったあとに微量の麻酔をかぶせて、玉をシリコンに交換する。施術は俺たちで研鑽した。玉だけならちょっと切れ目を入れれば簡単に取り出せるからだ。縫合だけが難しいが、それでも最後には衣類の脱着を含めて全部で15分でできるようになった。
精神的に「男でない」と自覚させることが、ライバルを蹴落とす上で重要だから、何処かの段階で本人も自覚させる必要はある。男の第二次性徴を実感しなくても、男でなくなった事を認められない者は多いだろうからだ。そこで、シリコンはその膜が酸化で2〜3年後に崩れ、その後は中身が半年で溶けるようになっている。
もっとも、直ぐに発覚すると、クラス全体を施術する邪魔になるから、できるだけ発覚は避けるように気をつけてる。そして、それは可能だ。切断面は裏側だけで、しかも非常に小さいからだ。縫合面自体は2日で繋がり、1週間でほとんど傷が分からなくなる。その間だけ気付かれなければこっちのものだ。しかも、念のために、施術を受ける者には「変なことを言ったら、言われた相手が迷惑を被る」という、客観的に読んだら脅迫とは取れない脅迫文を、ほかの雑多な落書きと共に、自然に目に入る位置に書き、更に寝ている時に人口音声でイヤホンからささやき続けている。
それでも通報の可能性はあるし、中学になっても親と一緒に風呂に入るような「お子ちゃま」だと家族に気付かれる可能性もある。しかし、万一警察沙汰になっても、俺たちは始めから「被害者」として外されるだろう。というのも、縫合の傷跡だけは俺たちにもあるからだ。袋の切断と縫合は練習の一環として身内でなんどもやっているのだ。ただし玉をそのままにして。
一番発覚しそうなのは、3年時の修学旅行の風呂だろう。その1ヶ月前までに全員の処置を終えれば、痕跡すら完全に消えるから乗り切れるのではないかと目算している。しかも、男っぽい奴を優先しているから、修学旅行であそこを比較しても、皆が一様に性徴が遅れた状態となっているはずで、異常にすら気づきにくくなるだろう。
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中2の夏休みに入った。15週間で予定より多い50人を処理している。学年の半分だ。ここまで全く発覚していないのは素晴らしい。この分だと、今年中に、下級生も狙える。
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中2の冬休みに入った。同級生は俺と相棒を除いて全て施術済み。1年生すら30人ほど処置済みだ。他校の仲間はなかなかよくやる。かく言う俺たちも、彼らの学校の1年生に手を出している。
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中学3年の修学旅行は無事にクリヤーできた。これで高校まで発覚しない自身がつく。しかも2年生も全員処置済みだ。この分だと卒業までに、いや、2学期が終わる前に1年生の施術も終わるだろう。
そういえば、今年は3校とも体育や部活での成績がいまいちだそうだ。平均はそれほど悪くないのだが、突出した者がいないらしい。そりゃそうだろう、あれを失って成長期に1年もすれば、トレーニングで伸びる分を超える「3年生の急成長」など望むべくもないからだ。でも、発覚にはいたらない。なんぜ全体が落ち込んでいるし、下級生も伸び悩むはずだから。そういう変化は「世代の変化」としてとらえられるのが常だ。
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俺は晴れて高校に入った。すべて順調なのだが、一つだけ誤算がある。それは俺の第二次性徴が遅れている事。俺以外にも声変わりをしていない奴が3分の1ほどいるから目立ってはいないが、さもなければいじめられるところだった。他の奴らを蹴落としておいて、ほんとうに良かったと胸を撫で下ろす。それにしても、3校以外の中学出身の連中の肩幅の広いことだよな、と思ってしまう。おれなんか、未だに学生服の肩がぶかぶかなのに。
だから、未だに例の作戦は継続中だ。まずは高校の同級生。そして出身中学の新入生。後者は発覚を遅らせるのと、同窓会で出会った時にハーレムになる事を夢見て続けている
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施術の技術があがったので数をこなせるようになったものの、高校はさすがにクラス数が多いので、結局、同級生と中学1年を処置するのに1年かかってしまった。その間に体格に差が開いたのは言うまでもない。なぜ俺の体格は変わらないのだ。目立ってはいないものの、先輩とくらべるとまるで男の娘だ。不安が頭をよぎるが、それでもハーレムを夢見て、今は、新入生のうちの出身中学が3校以外の奴を処置している。
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3年になった。俺は結局、女の子にモテるような体つきにはなれなかった。それどころか、最近、玉が小さくなっている気がする。記憶を辿ると、一番始めの施術の練習時に、念のために麻酔を打った経験がある。もしかしたら裏切られた?
でも、他の5人も同じような体格だから、ちょっと理解に苦しむ。裏切り者が2組別々にいないと説明つかないからだ。
と、記憶をたぐると、いつだったか前後不覚で寝ていた時に、そのあと昔の縫合面に違和感を感じた事があったのを思い出した。となると犯人は誰か? 一番怪しいのは、と考えて、一人思い当たった。
玉と交換するシリコンを提供してくれている人って何者なんだ?
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投稿:2016.11.23更新:2016.11.26
ハーレムを実現する中二病的方法
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