尿検査で細菌感染の反応が出たらしい18歳が、私がアシストしている医者のところにやってきた。毎年春の新入生健康検査で引っかかったらしい。合格した筈なのに、健康問題でいきなり休学とが最悪だから、大学の保健所だけでなく、セカンドオピニオンとしてうちに来たようだ。
医者は「細菌性の膀胱炎だろう」と大学生に説明している。そこまでは普通の説明だ。いや、優秀な医者と行ってもよい。問題はそこから。膀胱結石の怖さを説明し始めたのだ。結石は普通は初老以上の年配によく出る症状だ。しかし、若者でも結石が出ないことはない。とくに膀胱炎を起こすような細菌に感染すると結石が発生沈殿する可能性はある。しかし、そんな症例は若者の限って言えば稀だ。なのに不安をあおり立てるなんて、悪徳医者としか言いようがない。そうやって、必要も無い膀胱鏡検査をやらせるつもりのようだ。
膀胱結石がたまり易いのは膀胱内のひだと、前立腺で尿道が細くなっている部位。昔はその推定に色々な手段を使ったが、今では膀胱鏡検査で一発で分かる。胃カメラより簡単で痛みも少ないから、レントゲンを撮る事すらしない。胃がん検診がレントゲンから胃カメラに世代交代したのと同じだ。しかしだ。尿の最近感染(正確には抗体検査の要請)の場合、普通は先ず抗生物質を投与して、改善がない場合に限って膀胱鏡検査をするものだ。早期発見が重要な癌とは全く異なるのだ。
よしよし、それなら私も、この悪徳医者に乗っかって不安をあおり立てようか。
膀胱鏡モニターで、前立腺のところに近づいたら、大きな白い塊が映るように細工する。前立腺の画像自動判定のプログラムはそこまで難しくない。AIも少しだけ混ざってはいるが、基本は普通の条件判定プログラムだ。モニターに白い塊を加えるのも簡単だ。しかも、患者のプライバシー保護のため、このモニターイメージは録画されない。つまり証拠が残らないということだ。
こうして、膀胱鏡検査は「想像以上に大きな結石」「前立腺の近くのみ」という結果となった。大きすぎるので膀胱鏡では除去出来ず、特別な機械で除去することになる。除去といっても、こちらもモニター画像の細工で、除去したように見せるだけだ。予約は1週間後。結石は緊急性がないのでもっと遅くても良いが、サードオピニオンという名で他の医者に行かれては困るからだ。
こうして、画像の上だけで「結石除去」をおこなった新入大学生は、予後のためという名目の抗生物質だけを受け取って完治する名目上も実質上も完治することになる。うちは大もうけだ。
しかしながら、私はその大学生の「可愛い」顔を初めて見た時に、それだけで済ませないことを思いついていた。それは彼に間違った知識を与える事だった。待合室の読み物雑誌コーナーに「若者の結石」というフェイク・パンフレットを置いておいたのだ。もちろん、病院とは無関係の雑誌で、どこかの患者が勝手に置いて行ったという想定だ。足は着かせない。
パンフレットには、結石の原因として、精液内の精子が、尿内のシュウ酸と結合することもある、と書いてある。そして、その場合は、将来癌になる可能性が高いとも書いてある。
となれば、もしも、もう一度、尿検査で細菌反応があったら不安に思う筈だ。そして、彼は結石除去の予後検診で病院にやってくる。私のするのは、彼の尿に、結石の元を加え、膀胱鏡モニターに前立腺から漏れ出ている物質と、結石の元が結合しつつあるように見せるべくモニターを細工するだけ。結石の元は普通に含まれる得る物質だから、足がつく事はない。
悪徳医者も私の意図を汲んだのか、嘘にならない程度に「可能性」として精子が結石を作っていそうだと吹き込み、しかも「若いうちからこれでは、先が長くない」と脅した。
新入大学生はまだ入学式前だ。去勢するなら間に合う。そういう情報も加えると、ついに彼は折れた。
知り合いの闇性転換医者を紹介する。もちろん紹介料のリベートが来る。でも私は、お金よりも、彼のように可愛い子が、可愛いままに女の子になっている事の方が嬉しい。
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投稿:2017.12.18
膀胱結石
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