「ひろくん、今日も遊びましょ」
「うん遊ぼう!」
僕の住む町と隣の町との間にある真っ暗で小さなトンネル。
僕は最近そこでひとりの女の子と出会った……まだ名前も知らない。
その女の子は隣の町に住んでいると言っていたけれど、僕はトンネルの向こう側に行ったことはなかった。
僕は学校から帰ると宿題もせず、急いでトンネルに向かう。
あの女の子と遊ぶために、僕は今日もトンネルに向かう。
「いってきます!」
「ひろ……またあのトンネルに遊びに行くの?」
お母さんが怪訝そうな顔で僕を呼び止める。
「うん……」
「あんな危ないところに行かないで、たまには学校のお友達と遊んだらどう?」
「そんなのつまんないよ……いってきます」
「ちょっと待ちなさい! ひろ!」
僕はお母さんの声を無視して玄関を飛び出した。
学校の友達と遊ぶのなんて子供じみててつまんない……僕はあの女の子と、あのトンネルで遊ぶ方が何倍も楽しい。
トンネルへと向かう途中、僕はいつも通り駄菓子屋でガムを買う。あの子といっしょに食べるために。
トンネルが見えてきた……トンネルの出口から射す光の中に長い黒髪にワンピースを着た女の子のが浮かんで見えた瞬間、僕の胸は高鳴る。
「ひろくん、今日も遊びましょ」
「うん遊ぼう!」
僕はいつものようにトンネルに足を踏み入れる。
その瞬間、土の匂いのするジメッとした空気に包まれる……肌に感じるその感触が僕はとても好きだ。
そしてポケットからガムを取出し、包み紙を剥がして女の子の口にそっと近づける……。
「はんぶんこ」
女の子はそう呟いてニコっと微笑んでガムを咥えると、ゆっくりと唇とその大きな瞳を閉じる。
僕はそのガムの一方を咥えて……そしてゆっくりとガムを口の中へと寄せて、瞳を閉じた。
(チュ)
僕はあの子とキスをする。
両手を合わせて、指先を絡めてながら……唇を重ねたまま、甘いガムの味がするキスをし続けた。
「ひろくん……好き」
「僕も好き」
いつものようにキスをし終わると、僕と女の子はトンネルの中の窪みに置いてある古ぼけたベンチで服を脱ぎ、下着姿で遊びをはじめる。
「今日は、私が診る番ね」
「うん」
―お医者さんごっこ
そう言うと子供っぽい遊びかもしれないけれど、僕にとってそれはとても刺激的で少し大人になったような気分になれる遊びだ。
僕は女の子の裸を……白くてやわらかい肌を……そして昨日は少し膨らんだ胸を触らせてもらった。
女の子が持って来たおもちゃの聴診器を小さい膨らみの先っぽに押し当てると、女の子は瞳を閉じて小さな吐息を漏らした。
その時僕の心臓はバクバクと高鳴り、おちんちんは芯が入ったように固くなって上を向いてしまった。
女の子は僕の大きく膨らませたパンツのそれを見て、ニコッと照れ笑いをした。
そして今日は僕が診てもらう番だ。
僕は少し湿った冷たいベンチの上で横になる……僕のおちんちんはもう固くなって昨日と同じようにパンツを膨らませていた。
僕は思わず恥ずかしくなり、そこを手で隠そうとする。
「だめですよ……手を下して真っ直ぐ横になってくださいね」
女の子は僕の腕をとり、脈を診る。
「すごくドキドキしてますね……どこがつらいですか?」
「お……おちんちん」
僕はそう言うと、急に恥ずかしくなって顔を真っ赤にした……。
「じゃあ……おちんちんを見てみましょうね」
女の子は少し頬を赤くしながら、僕のパンツに指先をかけて下にずらす……僕は腰を上げて、女の子のするがままにまかせた。
上を向いたおちんちんにパンツが引っ掛かると、女の子はクスッと笑いながらそこを摘まみながら一気に引き下げた。
(プルンッ)
僕の固くなったおちんちんはおへそにくっつく勢いで跳ね上がった。
女の子はとても楽しそうな表情でそこをじっと見つめている……僕は顔が燃え上がるほど恥ずかしかった。
「どうしておちんちんが固くなってるの?」
「えっ?」
「どうしてかな?」
女の子はニコニコした表情をしながら、いつもの口調で僕にそう聞いてきた。
「え……えっちな気分だから」
「どうしてえっちな気分なの?」
「そっ……それは……その……見られてるから」
「私に、このおちんちんを見られてるから?」
そう言うと女の子は僕のおちんちんを指先でキュッと摘まみ、その固さを確かめるようにギュギュと力を込める。
「でも……これだとおしっこできないでしょ? 上に向かって飛んじゃう……フフッ」
「だ、大丈夫だよ! ……そのうち小さくなるから」
「うん、知ってるよ……こうするんでしょ?」
「えっ! ま、待って!」
女の子は僕のおちんちんを摘まんだ指先を上下に動かしはじめた。
「隠さなくてもいいよ……男の子はこうやってえっちな気分を消しちゃうんでしょ? 私がしてあげるね……」
「んっ! 待って!」
僕は部屋で隠れてこっそりとおちんちんを擦って気持ちいいことをしていたけれど、まさか女の子にそれをしてもらうなんて夢にも思っていなかった。
(シュッ シュッ シュッ……)
静かなトンネルに女の子の指先がおちんちんを擦る音と、僕の恥ずかしい吐息が響いている。
僕は恥ずかしいような、嬉しいような……そして少し悔しいような気分になりながら、吐息を漏らすしかなかった。
「待って……あっ! あっ! 出ちゃうよ! 汚いよ!」
「出してもいいよ」
(ピュッ ピュッ ピュッ……)
「あっ! あっ! あぁ……」
僕のおちんちんから吐き出された白い液体が、僕のおなかと胸に飛び散った。
女の子の指先にもドロドロとした僕の液体がついている……僕は急に罪悪感に襲われる。
「ごめん! 大丈夫!?」
僕は女の子に嫌われると思い、必死に謝った。
でも女の子はそんなことは気にしない様子で僕のおちんちんを見つめ続けている。
「……おちんちん、小さくならないね」
「えっ?」
僕のおちんちんはまだ固く上を向いたままだ。
「私の指……気持ちよくなかった?」
「そんなことないよ! おちんちんすっごく気持ちよかったよ! 指でしてくれてとってもうれしいよ!」
「でもまだこんなに固くて上を向いたままだよ? ひろくん……もう、おしっこできなくなっちゃった」
「そのうち小さくなるから大丈夫だよ!」
僕は女の子にからかわれているのかと思ったけれど、その表情はとても真剣で少し心配になった。
しばらくうつむいたままだった女の子は、ゆっくりと顔を上げてこう言った。
「私と……したいの?」
「……え?」
「私と……セックスしたい?」
「セックスって! そそそそんな!」
セックス……女の人と裸で抱き合う……大事なトコにおちんちんを入れる……なんとなく知っている。
だけどそんな大胆なこと、僕はそこまでえっちなことを女の子とするなんて夢にも思ってない。
本当はしてみたいけど、まさかそんなこと……言えない。
「……絶対にないしょだよ?」
「……ないしょ?」
「ふたりだけの秘密……約束だよ?」
「う……うん」
女の子はそう言うと、後ろを向いてから下着を脱いで完全に裸になった。
僕は思わず目を背けないといけないと思ったけれど……そのまま女の子を見つめ続けてしまった。
女の子は大きく深呼吸をすると、ゆっくりと僕の方を振り返った。
「あ……っ!」
僕は初めて見る女の子の裸に……おちんちんがついていないその部分に……呼吸が止まりそうになるほど魅せられた。
女の子は僕の上へと被さり、肌と肌を押し付け合う……僕の上を向いたおちんちんが……女の子のやわらかいおなかに押し当てられた。
「ひろくん……好き」
「ぼ、僕も……好き」
(チュ)
僕は女の子とセックスをする。
頭は真っ白になり、自分でも何が何だかわからない……悪いことをしているのかもしれないけど、僕の気持ちにも、女の子の気持ちにも逆らえない。
僕のおちんちんが……女の子のそこに……おちんちんがついていない大事な部分に触れる……その時だった。
「ひろーっ!」
「(お母さん!?)」
お母さんが僕をトンネルまで探しに来た……最悪のタイミングだ。
僕は慌てて起き上がろうとする。
「ダメ」
「で、でも!」
女の子が起き上がろうとする僕を押さえつける。
「ひろくんは私とセックスすればいいの」
「でもっ! こんなところをお母さんに見られたら大変なことになるよ!」
そうしている間にお母さんの声が近づいてくる……もう、トンネルの入り口まで来ている。
「……絶対にないしょだからね?」
「うん! ないしょにする! だからまた明日……セックスしよう?」
「ひろくん……約束守れる?」
「ぜったい守るよ!」
女の子は曇った表情で僕を見つめる……その大きな瞳に涙が浮かんでいる。
「じゃあひろくんのおちんちん……私が預かっておくね」
「え? 預かるって?」
「ひろくんのおちんちん……お母さんに取り上げられちゃうといけないから」
「僕のお母さん、そんなことしないよ! 大丈夫だよ!」
女の子は僕の脚の上に裸で跨ったまま、いつも持ち歩いているバッグからおもちゃのメスを取り出した。
「おちんちんが固くなって上を向いたままだとおしっこできないから、これでおちんちんを切り取ってしまいましょうね」
女の子は涙目のままニコニコと笑顔をつくり、お医者さんごっこの口調でそう言いながら僕のおちんちんへとメスを押し当てた。
「遊んでる場合じゃないよ! もうお母さんがそこまで……」
(サクッ)
トンネルの中に、何かが切り裂かれる音が響いた。
「約束だよ?」
女の子の声が耳元で響く。
……さっきまで僕のおなかに上を向いて固く押し付けられていたおちんちんが見えない。
「あ……あれ?」
僕は慌てて起き上がる。
改めてそこを見る……。
「ない……ない……」
僕のおちんちんがない。
おちんちんがあるはずのそこにはピンク色の断面が見える……おちんちんは消えてなくなり、ふたつのタマがぶら下がっているだけ。
女の子の姿も消えてしまった……。
「ウワァアアアアアアアアアアアッ」
僕は何が何だかわからず、大声で叫んだ。
「ひろっ! そんなところで裸で何をしてるの!?……あんた! おちんちんどうしたのっ!!」
お母さんは僕のおちんちんがなくなっている姿を見て、血相を変えながら僕を抱きかかえると町の病院まで連れて行った。
血は出ていないし、痛くもないから、特に治療はしなかったけど僕は入院させられた。
騒ぎは大きくなり、町の人たちが総出で僕のおちんちんを探した……けれど、僕のおちんちんは見つからなかった。
「(トンネルに行かなきゃ……女の子に会わなきゃ)」
僕はこっそりと病院を抜け出してあのトンネルに向かおうとした。
あそこに行けば、きっとおちんちんも元通りになる……おちんちんを取り戻して女の子とセックスするんだ……自然とそう思った。
けれど、すぐにお母さんに見つかり取り押さえられた。
「もうあそこに行っちゃダメ!」
「イヤだ……行きたい……トンネルに行かなきゃ……約束だから……」
「ダメッたらダメッ!」
お母さんは僕を力強く抱きしめ、決して離さなかった……。
町では僕が女の通り魔におちんちんをちょん切られたという噂が広まった……本当は違うのに。
でも僕と女の子のないしょの約束だから、本当のことは誰にも言わない……絶対に。
お見舞いに来た友達とは会わなかった……おちんちんを切られたなんて、恥ずかしくてどんな顔をしてみんなに会えばいいのかわからなかったから。
お父さんとお母さんが相談して、僕は町を出ることになった。
僕のためにと言って、誰も僕がおちんちんを切られたことを知らない遠い街に引っ越すことになった。
僕は何度も家を抜け出してあのトンネルに向かおうとしたけど、町の人に邪魔をされてたどり着けなかった。
「(女の子に会いたい)」
その願いは叶わず、僕は町を後にした……。
―あれから幾年経っただろうか。
僕は親に内緒で再びこの町を訪れることができた。
僕は偽物のおちんちんを付ける手術を何度も断り続けた……それはとても辛くて苦しかったけれど、この日のために頑張って耐えた。
僕におちんちんがないことを知った上で好意を寄せてくれる女性もいたけれど、僕はその想いを断った。
夢の中で何度も、あの日のことを思い出しながら……あの女の子の指先の感触を思い出しながら、僕は白い液体を吐き出すことができた。
僕はあのトンネルの前に立った……あの女の子の姿が現れると信じてそこに立った。
「……そんな」
幾年かの間に崩れてしまったのだろうか?
トンネルの向こうに見えていた光が見えない……。
真っ暗なトンネルへと足を進めると、窪みに朽ち果てたベンチがあった。
ここ数年で朽ちた様子ではない……よく見ると、かろうじて読み取れる広告はかなり昔のもののようだ。
僕は落ち着きを無くし、バクバクと心臓が嫌な高鳴りを響かせる。
「僕だよ! 戻ってきたよ!!」
何度もそうやって大声を出しても、あの子の返事はなかった。
普通の人間の女の子じゃなかった……それは心のどこかでわかっていた。
それでも良いから会いに来た。
不思議な女の子だからこそ、会えると信じてここに来たのに……。
僕は町に向かい、役場でトンネルのことを訪ねた。
「ああ、あのトンネルはもう何十年も前に崩れて通じとらんよ? 向こう側の町も土砂崩れで埋まってしもうたからの」
「そんな……」
「あのトンネルには近づかん方がええ、何年か前には男の子が大事なトコを切られたり……もっと昔には女の子がひとり亡くなっておるからの……そういやあんたあの男の子に似て……」
「女の子が!?」
僕は自分がおちんちんを切られた男の子だとばれることよりも、その女の子の事が気になりさらに訪ねた。
「トンネルが崩れたときに一緒に埋もれてしもうたんよ……なんでもこっちの町の好きだった男の子と遊ぶ約束をして、トンネルで待っておったらしいよ、かわいそうに」
「(あの女の子だ……)」
僕は町のスーパーに立ち寄り花と……あの時と同じガムを買い、あのトンネルへと戻った。
そして思い出のあのベンチの上に花を供え、そっと手を合わせた。
「僕はもう君と会えないの?」
僕は涙を流しながらそっとガムの包み紙を剥がし、そこに供えようとしたその瞬間、指先に懐かしい感触が戻った……。
「ひろくん、今日も遊びましょ」
僕の瞳から大粒の涙が零れ落ちた。
あの時の姿のままの女の子が、僕の目の前に立っている……大きな瞳を潤ませながらニコっと僕に微笑みかける。
「うん遊ぼう!」
そう返事をして女の子を抱きしめる僕の体は、あの時の僕の姿に戻っていた……もう誰も僕と女の子の邪魔はできない。
(チュ)
そして僕はこのトンネルで女の子と毎日お医者さんごっこをしながら遊び続けている……けれど。
「今日もひろくんのおちんちんをくっつける手術は失敗しました」
「そんなぁ……」
「クスッ」
あの時のないしょの約束は、なかなか果たさせてくれない……。
終
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投稿:2018.02.17更新:2018.02.18
トンネルの女の子
著者 いち 様 / アクセス 7246 / ♥ 6