股間の激しい痛みにより緊急手術と入院をしたケイが退院したのは、それから一週間余り後だった。
空っぽにされた玉袋には、偽睾丸が二つ挿入され、外見的に普通に見えるようにされたが、生殖機能が失われたことには変わりがなく、実質的に宦官になってしまった。
タツキが勤めている喫茶室に彼が行くと、マスターのヨシタケがささやかな退院祝いをしてくれた。
客が退き、入れ替わりにタツキと同期のナギが何人か連れて入ってきた。
ナギもまたタツキ同様に美形の男で、左腕を失って義手を装着している。
「ケイ。退院したんだな。おめでとう」
ナギがケイに言う。
「ありがとうございます」
ケイがナギに返事をすると、ナギが
「ところで、君はどうしたんだい?」
と、聞き返した。
なぜ入院したのか知りたかったらしい。
「ええとね。タツキさんの家に遊びに行って……」
あまり思い出したくない表情をしながらケイがナギに話す。
「ああ。あれか……。アレ、俺もなっちまって、どっちもアウトになったよ」
ケイから話を聞いたナギが苦笑しながら、衝撃的なことを言い、周囲をぎょっとさせた。
冷静で情報収集に長けている、雲をつかむようなマスターのヨシタケですら、そのことは初めて耳にしたらしく、思わずタツキに
「君は知っていましたか?」
と聞くほどだった。
ヨシタケに聞かれたタツキはちょっと困惑した様子で
「いや、知りません。初めて聞きました」
と答えた。
「ナギ。それはいつ?」
タツキが戸惑いを隠せない表情をして、たまりかねてナギに聞くと、
「あれ? お前に言ってなかったっけ? 腕なくして入院してる間にだけど」
と、ナギはこともなげに答えた。
「というより、爆弾テロに巻き込まれて知らない間にしでかしていた、っていうのが真相さ」
ナギがあからさまに言う。
日が高いうちに、という呆れた顔をヨシタケがする。
ケイとしては、それが本当なのかどうなのか気になってきた。
ナギが連れてきた何人かは、いずれも男の娘であり、ケイが気にかかるのかしきりにそれぞれに視線を投げていた。
どうしてもナギの股間が気にかかるケイは、彼にこっそり耳打ちをした。
ナギは苦笑交じりにそれを承知したのだった。
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投稿:2019.07.23
宦官になっちゃった(その2)
著者 石見野権左衛門 様 / アクセス 3671 / ♥ 0