初めての方は古城の中から◆PART1〜バブルの果て◆からお読みください
この作品はID:古城の中から◆PART11〜拷問処刑の総合リゾート誕生◆からの続きです
◆本編は旧PART11を分割して後半に加筆したものです
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さて、拷問処刑テーマパークで体験できるその他の処刑体験を見てみよう。
確かに、斬首も磔もその都度の準備や執行者の技術がいるので、いつでも手軽にとはいかないものである。
特に野外での体験は準備に時間がかかる。
処刑体験希望者はチケットを購入するが、なかなか順番が回ってこないという苦情も受けるようになった。
特に中国式や日本式の、ギロチンなどの処刑具を使わない刀による斬首は難しく、お客様を斬首できる資格を持つのはわずか2人だけである。
その2人も資格を取る前に、ボランティアの志願者を多数斬首して経験を積んで、ようやくお客様を斬首することが認められたばかりである。
串刺刑体験は希望者が多いので、自動串刺装置も開発された。そのため串刺そのものの体験終了までは速いが、その後に串刺のまま火で焼かれて人間バーベキューになるのが定番コースな上に、自分の身体を他人に被食されることを希望する体験者も多く、かなりの手間がかかるものとなっている。
串刺装置も最初の串をドリルのように押し込み回転式から、串を振動で押し込んでいく方式に変わり、振動式は回転式より肛門部の快感が強いということで、大変好評となっている。
普通の絞首刑も手軽に見えるが、絞首後の死体は、原則として1週間は吊るしたまま晒してもらえるというルールなので、死体をすぐ取り片づけられるガロットと違って、絞首台がなかなか空かず、大人数の希望者の対応は難しかった。
屋内での自動絞首刑工場も造られたが、男性は野外での絞首刑希望者が多く、処刑後の死体晒しよりも純粋に絞首刑を楽しみたいという体験希望者ばかりとなり、事実上女性専用となってしまっている。
そこで、多人数の処刑体験希望者があっても、簡単に対応できる鉄環絞首刑の「ガロット」が人気を集めている。
ガロットには、鉄の環を締めるハンドルに重りが付いていて、遠心力でハンドルを回転させて急速に首を絞める急速タイプと、ハンドルが手回しで処刑執行者の裁量でゆっくり絞首される緩速タイプがある。
急速タイプは体験希望者をあらかじめ後ろ手に縛っておき、ガロットが空いたらそこまで歩いて行って腰掛ける。
すると、胴体はベルトで固定され、首の周りに鉄環が回されて動けなくなる。
あとは鉄環の後ろのハンドルを思い切って回すだけで、鉄環が絞まって処刑完了となる。
鉄環とベルトを外して死体を運び出せば、もう次の体験希望者に座ってもらうだけであり、1人5分で体験完了する。
最後に床の落し戸が開いて死体が床下に落とされる。5分間では完全に窒息死できない場合でも、床下は保存液の水槽になっており、両手両足を縛られたまま水中に落とされるわけだから、もし仮死状態であっても確実に溺死させることができる。
事前の緊縛が念入りなのは、ガロット上での流れをスムーズにするためである。
一方の緩速タイプは、体験者をガロットに縛り付け、鉄環を首に廻らせるのは似ているが、あらかじめの拘束はガウンの中で前手に縛られているものの、ガロットに座ってからロープで縛り付けられるのが、メインの拘束となる。
ハンドルも執行人が両手持って、ゆっくり絞めたり、急に絞めたり、また戻したりして一度失神したりもう死んだと思っても再び意識が戻って何度でも処刑の恐怖を阿木和得るなど、、スリル満点。
鉄環絞首だけでハンドルが動き始めてから窒息死するまで最低でも15分以上を要するのが普通である。
体験希望者は好みの方式を自由に選べるが、最近はスリリングな緩速タイプの方が人気が高い。
鉄環絞首刑の場合は、処刑後直ちに死体をそのまま標本にしてもらえることも、人気の秘密である。
凌遅処死のように切り刻まれることもなく、火刑のように黒焦げになることもなく、鉄の処女のように身体中に孔が開くこともなく、ギロチンや斬首のように首と胴が話されることもなく、絞首刑のように死体晒しで腐敗することもないので、そのままの姿の標本化が可能となっている。
死体保全を考えるなら、薬殺やガス室による処刑でも可能であるが、今のところ処刑体験のメニューには含まれていない。
結局処刑体験だけで終わりではなく、永久的な死体晒しも希望する参加者は、鉄環絞首刑を選ぶことが多くなる。
そして、手軽にいつでも手上げできる処刑体験は、やはり魅力的であることは間違いない。
さて、標本化の方法は、内臓などを取り出して皮膚だけを剥製にしたり、全身をそのまま乾燥させてミイラ化させたり、保存液に漬けてから透明樹脂で「固める方法などがある。また、最近人気が高いのは、水分をプラスチック樹脂で置き換えて、生きていたときの姿のまま身体に触れることもできるプラスチネーション化であるという。
プラスチネーション後のスタイルは自由に選べるので、キの字磔での展示を希望して、腕と脚を大きく開いた形になるのが、今人気である。
この形は大きなタンクが必要なため、優先順位を付けざるを得ないようで、基本的に完全去勢者優先となっているようだ。
志願者によっては、本物の人体標本のように、あえて腹部を切り裂いて内臓を見せたりすることを希望する場合もあるとのこと。
剥製化の場合は、皮膚標本と骨格標本に分けて作成することも可能である。
去勢した体験者も剥製化の時点で自分の男性器を再接合することもできる。
中には、身体の中に管とタンクを入れて、小便小僧スタイルを希望する体験者もいるとか。
美術品のように壁掛けタイプの剥製化も可能である。
ミイラ化は死体をそのまま乾燥させるので、生前の姿そのままとはいかないが、それはそれで変わり果てた姿になることに魅力を感じる人もいるようだ。
ただし、剥製化には人手と技術と時間がかかり、プラスチネーション化には水分を樹脂に置換するための全身が入るタンクのような特別な設備が必要なため、本人の希望と標本化処理能力との間にギャップが生じている。
そのため、体験者の希望どおりの死体処理にならず、意に反して乾燥炉で手軽に大量処理できるミイラ化を選択せざるを得なかったり、とりあえず死体保存の保存液プールがあればいい透明樹脂固めにされるケースも出てきていると言う。
中には、生きたままミイラ化乾燥炉に入って、そのまま渇きと脱水でミイラになることを希望する体験者もいる。
そのために、ミイラ化乾燥炉には、生前ミイラ化室と死体ミイラ化室が区分されている。
生前ミイラは定員5人、死体ミイラは同時に25体まで処理可能である。
生前ミイラ化室には覗き窓があって、中の体験者の様子を観察できる。
特にペルーの緊縛ミイラになるために、生前に緊縛されたり、乾燥炉の中に吊るされたりして、人生最後の拘束プレイを楽しもうという志願者が多いという。
なお、樹脂固めの場合は、防腐剤が身体全体に十分に浸透したら、死体を引き上げて透明プラスチックで固める処理が行われる。これは型枠の中に展示用の死体を自由な形で入れて、樹脂を流し込んで固めてから、型枠は外すだけなので、プラスチネーションのような特別な設備が不用で、大量処理が可能である。
なお、万一希望どおりにならなくても、身体が残って展示されるというだけでも、多くの体験者には相当魅力的だそうで、鉄環絞首刑体験に希望者が集まる理由になっている。
これらの処刑体験後の人体標本は、博物館に収納され、入れ替わりで展示されている。その姿はもちろん一糸纏わぬ全裸であることは言うまでもない。
なお、処刑の効率化のため、ガロットに座る場合は決められた処刑用囚人衣を着用することになっているが、是非全裸で絞殺されたいという体験希望者もいるため、ときどき全裸ガロット体験の特別ショーも開催されている。
人型の鉄の檻に体験者を閉じ込めて高く吊るすジベット体験は、体験者が死亡するまで1週間、その後放置された死体が自然消滅するまで3ヶ月はかかるという長期間のイベントで、特別イベントの期間中だけでは終わらないため、常設イベントになった。ただしジベット檻の回転効率が悪いため、順番待ちの希望者をさばききれないということだ。
このジベットは時間をかけて処刑されるため大変人気が高く、鉄籠がなかなか空かないため、地面に打ち込んだ杭に四肢を縛り付けてそのまま餓死させ、死体が朽ち果てるまで放置する生前風葬体験が新たに設けられた。
こちらは体験希望者の数にあわせて杭と縄を用意するだけなので、人数は無制限である。
ただし、風葬なので死体が早く腐るように、また、鳥葬も兼ねているので腹部を鳥が食べやすいように、男女を問わず全裸でかつ仰向けの姿勢で縛られることになっている。
そのためこちらも見物客に人気が高い。
なお、中にはあらかじめ腹を裂いてから放置を希望する体験者もいて、こちらは介錯がない切腹のようなかたちになっている。
体験イベントのために、罪人を中で焼き殺したファラリスの鉄の牡牛は、もはやそれだけでは平凡な処刑具となっていたが、特別に公開処刑だけを目的とした新作の刑具が開発された。
これは、透明な耐火ガラスで出来た窓があって、中の体験者の様子が最後まで観察できることで、なかなか衝撃的な効果をもたらした。
また、更に衝撃的だったのは、人間を大股開きで逆さに吊し、股間の性器部分から鋸で真っ二つに挽いていく欧風の鋸挽刑である。その凄惨さもさることながら、前後で鋸を挽いている2人も実は処刑体験の希望者で、次に同じの鋸挽で処刑されていくという企画が、大きな話題となった。
しかし鋸挽も希望者が多く、鋸で挽かれたいが他の体験者を鋸で挽くのは自信がないという希望者も増え、体験途中で挽くのを断念する挽き手も出るようになった。
そのため挽き手が不足して体験希望者の需要に間に合わなくなったので、回転鋸で自動的に体験者を股間から頭部まで真っ二つにする装置が開発された。
さらに体験希望者の増加により、複数人が同時に鋸挽体験を受けられるように、設備が大規模化された。
人手による鋸挽に比べて無機質でつまらないように見えるが、鋸の回転速度や回転鋸が股間に迫ってくる速度はランダムに変化し、恐怖感を十分に味わえるはずだという。
ここまでご紹介したように、このテーマパークは地上の地獄そのものに見えるが、なぜか千客万来の大人気となっているのである。
体験者の中では「悪魔のテーマパーク」とか「死のテーマパーク」とかいう呼び方をされることも多いようだが、そう呼ぶ人に限って謎の魅力に憑りつかれて、大抵はリピーターになっているという。
さて、グランドオープンから早くも3年が過ぎ、近々大幅な模様替えも予定されているようだ。
そのときにどんな新アトラクションが登場するのか、今から楽しみである。
(おしまい)
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★あとがき★
何ともへんてこりんな物語でしたが、いかかでしょうか。
なぜこんなに人々が熱病のように死や拷問や処刑に憧れる、超マゾヒズムが蔓延した世界になったのか、それはわかりません。強いて理由を付けるなら、自分の人生は自分で決めればいいという風潮が広く拡大したとでも想像しておいてください。
会話だけで話が進む章を入れてみましたが、どうも単に読みにくくなっただけに終り、申し訳ありませんでした。
ところどころに挿絵があります。一部にモザイク掛けるぐらいなら全体をノイスでぼかしてしまえというわけで、あんな絵になりました。下に解説が入ってますが、あくまで雰囲気のためで、ストーリーと矛盾したりしています。軽く読み流してください。
つたない物語に最後までおつきあいくださりありがとうございました。
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<<追伸>> そういえばこんなニュースがありました
★★「生きるのに向いていないから」~健康な24歳女性の安楽死が認められる!!★★
現在、世界において積極的安楽死(本人の自発的意思のもと、医師が自殺幇助すること)が認められているのは、ヨーロッパの数カ国や米国の一部の州に限られている。その中の1国であるベルギーでは、「生きるのに向いていない」という理由で死を望んでいる女性に対する安楽死が行われようとしているようだ。
6月19日付のベルギー紙「De Morgen」によると、今回複数の精神科医によって安楽死が承認されたのは、ラウラさん(仮名)という24歳の女性。安楽死と聞くと、末期症状などの“肉体的苦痛”から解放されるための手段というイメージが強いが、ラウラさんは健康に何の問題も抱えていない。ただし彼女は、幼少期から一貫して自殺願望が頭から離れないという“精神的苦痛”に悩まされてきたのだという。
ラウラさんは、この自殺願望には自身の生い立ちが少なからず影響を与えていることを認める。彼女の両親にとって、ラウラさんの誕生は予期せぬ出来事であり、酒癖の悪い父親からの虐待も相当なものだった。祖父母に預けられて安定した環境の中で育ちはしたものの、彼女の自殺願望は一向に収まらなかった。
「苦しみのもとは、確かに子ども時代にあります。でも、穏やかで幸せな家庭で育っていたとしても、この自殺願望は変わらなかったでしょう」
21歳のころからは精神病院に通院し、同じような考えを持つ友人ができ、さらに演劇への興味も湧いてきたラウラさん。しかし彼女の「自分は生きるのに向いていない」という思いは、やがて確信へと変わり、死を決意するに至ったとのことだ。
ラウラさんの安楽死は3人の精神科医によって承認され、この夏に決行される予定だという。ちなみにベルギーの成人には、医師が認める場合、精神的苦痛から逃れることを理由とした安楽死が許されており、昨年は性転換手術に失敗した女性(44)が実際にこの世を去っている。
2002年、オランダに次ぎ積極的安楽死を合法化したベルギー。その後、条件付きながら未成年にも認められるなど適用範囲は拡大し、現在では1日に5人が医師の援助のもとで安楽死している状況にある。
しかし、健康体であるにもかかわらず精神的苦痛を理由とした安楽死が行われることに対しては、反対意見も残っているようだ。
ベルギー(2015年6月29日)
(2015年6月29日)
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24歳で病気でもないのに安楽死。
ますます、この物語の世界が近づいているのかもしれません。
最初の作品古城の中から◆PART1〜バブルの果て◆はこちら
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【同じような世界観の作品】
「クルセード」はこちら
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投稿:2022.10.01更新:2024.11.01
古城の中から◆PART12〜テーマパークは永遠に◆
挿絵あり 著者 名誉教授 様 / アクセス 59223 / ♥ 440