ある夜、30代の男は夜道を車で走っていた。
男の名は田辺雄一、県内の高校で体育の先生をしている。
男女問わず生徒からの人気は高く、休み時間になれば、生徒が集まってきては、「田辺先生、田辺先生!」と話で盛り上がる。
しかし、そんな田辺先生にはかなり変わった性癖があった。
それは、短小包茎が好きという事である。
というよりも最近では、性交渉を行うには難ありなペニスを見る事、想像する事に興奮を覚える。
自分のペニスが難ありという訳ではない、難ありになりたいという欲もない。(いや、本当はあるのかも知らない。ただ大事な唯一無二の一本であるから大切に扱いたいだけである。)
そして田辺には体育教師という事もあり、平均よりも鍛え上げられた身体に、これも平均よりは一層逞しいペニスを兼ね備えていた。
太さ、長さ、反り具合、カリの高さ、どれをとっても「こんなの見た事ない」と相手をした女性に言わせる程の一本であった。
つまり、他人のペニスが、性交渉の機能を果たしていなければいないほど興奮するのだ。
さらには、その他人の年齢が、性に多感、性欲が高い年齢であればある程興奮する。
例えば、40代のペニスが難ありというよりも、自分の周りできゃっきゃ楽しそうに話す高校生のペニスに不具合、障がいがあればある程興奮する。
休日はいつもSNSで呼びかけては、色んな人のペニスを見る日々を過ごしている。
20代、30代の人もいれば、中には高校生や中学生もいる。
そして時々、田辺の好きな短小包茎のペニスが見れると、より一層興奮しているのであった。
決して男だけが好きな訳ではない、上にも書いたように女性との経験はそこそこにはある。
学生時代に学力で常に芳しくない成績であった田辺であるが故、俺には逞しいペニスがあるんだぞと、お前には貧相なペニスしか付いていないのかと、なら俺の勝ちだなと、男性器での優位性を保ちたいが為に、このような性癖になってしまったのだと、自分で思っている。
そんな田辺が、今夜道を車で走っているのには訳がある。
今日は元々体育教師の集まりで昼過ぎには学校を出て、隣町の公民館で会合があった。
夜19時頃、会合が終わり、田辺は家に帰ろうとした際に、明日返却予定のノートを一クラス分チェックせず、学校においたままにしていふことに気がついた。
明日の朝早く行っても良いのだが、最近オナニーをしていない田辺は、今日は夜中まで溜めたおかず(SNSで手に入れた不具合ペニス)でオナニーをする予定にしていたので、仕事を先に終わらせて、ゆっくり出勤をしたいと考えていた。
会合で出されたお弁当は自分の分はたいらげ、主任の計らいで、余ったお弁当を2つも田辺に分けてくれたのである。
「まだ若いし一人暮らしでしょ?余ってるから持っていきなさい。」
そんなこんなで助手席には輪ゴムで留めてある幕の内弁当が2つ積まれて鎮座していた。
そんなこんなで、後2つ角を曲がればすぐ学校という所まで車を走らせていた。遠くに学校は見えている。ほとんど明かりが付いていないところを見ると、宿直の先生以外は全員帰ったかなという所か。
正門まで行ってインターホンで学校を開けてもらおう。以前にも何度かそうした事があった。
そして最後の角が見えてきた。ここらへんの道はこの時間帯車通りが多くないが、夜が更けて0時を回る頃になると荷物を運ぶトラックが多くなり、また翌朝6時以降にはトラックの数が減る、そんな道である。
この十字路をまっすぐ行けば行った事は無いがゴルフ場へと繋がる。右に曲がれば少し道は狭くなるが、別の大きな道に抜ける抜け道になっている。そして左に曲がれば学校まで登りの一本道である。角の手前はコンクリートの壁。角の向こうは背の低い草が少し生えていて、縁石で縁取りされた狭い広場。朝にはこの広場に田辺や他の先生が順番に立って挨拶指導を行なっている。
信号で一旦停車し、青になるのを待つ。
青になった事を確認し、少し前に車を発進させた時、田辺は車のライトの左端に一台の自転車が目に入った。それと同時にブレーキを踏む。
「無灯火かよ!危ねえなぁ!」と考えていると、自転車もハンドルを思いっきり左に切り、車との接触は避けられたものの、そのまま勢いをころすことが出来ずに、縁石を乗り越え、広場に自転車もろともバタンとこけてしまった。
「おぃ、まじかょ…」
田辺は接触事故は免れたものの、誘因事故かよ…これは教師人生終わったな…
と内なるショックを隠しきれずに扉を開けて、自転車の側に横たわる人物に駆け寄る。
暗いながらも遠くの街灯で少し目が慣れてきた田辺が見たものは、広場にうつ伏せに倒れている自分の働いている高校の制服を着た生徒であった。
見た所外傷はないが、気を失っているようだ。
さらに近寄ってみると、横の自転車の側に部活のバッグが転がっていた。
しかも、それは田辺自身が顧問を務めるバレー部のバッグであった。
「は?え、この時間まで誰が練習してたんだょ」
近寄りながら頭の中では、どんどん最悪のシナリオが描かれていく。
田辺は恐る恐る生徒の肩を揺すりながら、仰向けに体制を変える。
痛そうに顔をしかめているが、この顔には見覚えがある。
一年生で恵まれた身長と負けず嫌いを絵に描いたようなエース候補として入ってきた佐々木である。メキメキと才能を発揮し、おそらく夏明けの新人戦では、その活躍を全国に知らせるだろうと確信していた。
昼休みに田辺の周りに集まる女子の話題の8割は今のところ佐々木の話である。
「ぉ、おぃ!」
恐る恐る声をかける。
顔を少しぴくつかせてしかめているので、死んではいない事にひとまず安心する田辺だが、佐々木は全身を打った様子で、そのまま気を失ってしまった。
田辺は焦って佐々木の心臓に耳を当て、鼓動が聞こえて再度安心はしたが、この状況はそれでもなお最悪と言っても過言ではないままである。
焦った田辺はポケットを探るが携帯は車の後部座席のカバンの中、取りに行こうと身を起こし、車の方向に向く途中、学校が目に入る。
学校はもぉ、宿直の人しか多分おらず、学校からこの後誰かが出てくる確率はほぼ無いに等しい。
「ったく、なんでこんな遅くまで練習してるんだょ」と考えると同時にバレー部のキャプテンの言葉が思い出された。
「佐々木は才能はありますが、体力が無いので、毎晩校庭を20周してから帰ってるそうですょ」
「だからこんな遅かったのか、でも無灯火は良くないょなぁ」
自分の不注意は棚に上げて、そんな事を心の中で呟きながら、車へと向かう。
その間も全く車の通りは無く、現時点で田辺の起こした誘因事故は誰の目にも止まっていない。おそらく佐々木本人もまさか、自分が避けた車が田辺先生ので、声をかけたのも田辺先生だとはあの暗がり、痛みの中では気づいていないだろう。
田辺は車に向かうまでのほんの数秒の内に、自分の中の悪い部分がとてつもなく大きくなっていくのが、分かっていた。
先生としては最悪かも知れないが、たった一度の人生を棒に振ってしまっていいのか…
そもそも無灯火が一番行けないのではないのか、しかも十字路にブレーキ無しで突っ込もうとしていた、その行為のせいで今の現状がある。
自分が先生である事など、もぉ頭の中には何もない。倒れているのが自分を信じて一生懸命部活に勤しんでいる期待の新人で、自分は心身の健康を教える立場の教師である事など、自分の今後の人生の事を考えると、田辺の場合はどうでもよくなってきた。
そしてドアを開ける瞬間には、
「え、このまま走り去っても誰も気づかなくね?車に傷一つないし、あ!しかも俺は今日昼には学校を出て、会合に行っていた。学校に寄ることは誰にも伝えていない。」
そして開けたドアから車に乗り込もうとした時に、ふと助手席に目がいった。
そこには輪ゴムで縛られた二つの幕の内弁当がある。
「いや、何でそんな事が気になったんだ。」
自分の気持ちが変に作用して高ぶっているのか、何も考えられていないのか、よく分かっていなかった。
しかし、先生として最悪の考え方をしている田辺の元に、悪魔の囁きが舞い降りてくる。
「今の佐々木なら何をしても無抵抗じゃないか?」
「夏はまだ来てないから、今の一年生のおちんちんは見た事がないなぁ…」
田辺が自分の性癖の話を考える時だけペニスの事をおちんちんと言うのは癖である。
田辺は車から再び佐々木の元へ戻ってきて、ゴクリと生唾を飲んだ後、時間も限られているとすぐに佐々木のズボンに手をかけた。
ベルトを震える手を使いかちゃかちゃと音を少し立てながらも外す。
再び生唾を飲み、今度は制服のズボンのフックを外す。
田辺の手は加速する。
続いてそのまま慣れた手つきでチャックを下す。
少しはだけたズボンの隙間から
白いパンツが見える。暗がりなので、本当は紺色に見えているが、頭の中でこれはおそらく白だろうと判断を下した。
その間も佐々木は起きる気配が無く、生きてるのか少し心配にはなるが、生きているだろうと信じ込み、田辺はズボンに手をかける。
少し引っ掛かりはあるが、ズボンを下ろすと先程の白いパンツが目に入る。
それはブリーフではなく、白を基調として、そのメーカーのロゴがカラフルな色で散りばめられてプリントされているトランクスであった。
俺も昔こんなの履いてたなと一瞬思い、次の瞬間には、少し膨らみを持っている股間の部分に田辺は大層興奮していた。
トランクスの上から手をお椀型に丸めた手を被せる。
手の中にぴたっと佐々木のペニスの感触が伝わる。
「柔らかい」
それが田辺の第一印象であった。
いつぶりか忘れてしまうぐらい、田辺は他の人のペニスを触っていなかった。
トランクスに手をかけた頃には田辺のペニスもズボンの中で存在を大きくしていた。
佐々木のトランクスを下ろすと、そこには佐々木の大事に育ててきたペニスが一本、身体から生えていた。
生唾を飲むのが早いか、生でペニスを触るのが早いか、田辺は佐々木のペニスを持ち上げていた。
「柔らかい」
そして、
「大きい……!?」
目で見た時も、少し高校生にしては、と違和感を覚えていたが、手のひらで持ち上げた瞬間に確信へと変わっていた。
「こいつ、立ってない時だが、俺のより大きいかも知れない…」
「いや、仮に俺の方が大きかったとしても、高校生でこのサイズなら大人になった時には、俺のを遥かに超えてくるのかも知れない…」
田辺の好奇心はその瞬間から徐々に嫉妬心へと変わっていった。
「こいつ、スポーツが出来て、イケメンで、更にはちんこまで大きいやと!?」
※田辺は大きいペニスの事はちんこと呼ぶ
「女子にちやほやされ、どぉせすぐに彼女作って全てを手に入れるに違いない!いや、もう彼女はいるかも知れん!」
田辺の嫉妬心は怒りへと、そしてその怒りが田辺の最後の理性を吹っ飛ばし、田辺の性癖をモロに刺激した!!
田辺は車へと戻り、助手席のドアを開けたかと思うと、積んであった弁当から輪ゴムを外し、またドアを閉めた。
1つの弁当に輪ゴムが2つ付いていたので、計4つの輪ゴムを手にした田辺は三度佐々木の元へとやってきて、膝を付いて手の中の輪ゴムをじっと見た。
「そうか、さっき運転席に乗り込もうとした時に目に入ったのは弁当ではなく、俺にこうさせる為の輪ゴムだったんだ」
その場に人がいれば恐怖に慄くような笑みを口元に見せた田辺は、素早く輪ゴムを4つとも8の字にしては束ねて、また伸ばして8の字にしては束ねてを繰り返し、田辺の力でも、もぉ引っ張るのが限界になるまで輪ゴムを束ねた。
そしてその輪ゴムをコンドームを装着する勢いで、一気に佐々木のペニスの根元にはめ、手を離した。
佐々木は目を覚ます様子はないが、全てを曝け出されたペニスの根元には今、ぎゅうぎゅうに輪ゴムが締め付けられている。
気温のせいか体温のせいか、それとも自分の興奮が予想以上のものであったのか、気づくと頭から汗が滝のように流れ落ちていた。
目はギラギラと輝き、若き高校生のその股間には似つかわしくないサイズのペニスを、そして根元が異常に締め付けられペニス全体が少しの固さを持った状態を睨みつけていた。
「やった、やったぞ!」
恐る恐る佐々木のペニスをつつく田辺、
先程とは感触が異なる。
手のひらで握ってみる。
いつもの自分のペニスと頭の中で重ね合わせ、再度その大きさに驚く。
ぎゅっぎゅっと力を少し入れて握ってみる。
幾分硬さが増してきている。
田辺は以前、通っていた風俗で
一度目の射精の後、2度目を嬢に頼んだが、硬く無いのに出来ないでしょ?
と一度は断られてしまう。
しかし、必死の頼み込みに嬢が折れ、
「ならコンドームに穴あけて、ちょっときついかも知れないけど、おちんちんの根元をゴムで縛れば、硬くなるからやってみよっか」
「その代わり!おちんちんが痛くなったり、感覚が無くなってきたり、冷たくなってくる前に射精してね!絶対だょ?それ以上しておちんちんにダメージあっても知らないからね」
と忠告をされたのを思い出した。
もちろん、そんなダメージが出る前に気持ちよく2度目の射精を終えたのだが……
だから田辺には少し知識があった。
ペニスの根元を縛れば血流が遮断され、ペニスに血が流れ込むだけで、出ていかない。
だから硬くはなるが、早く解かないと……
その先は想像しただけで怖くなり、興奮してしまう。
田辺は自分のちんこが痛いほどに硬くなっている事に気づく。
これまでSNSでやり取りしている時とは比べ物にならないぐらいに膨張している。
「これだよ、俺の性癖を刺激するのは!!」
ズボンの上から自分のペニスを撫でる。
気分は帰ってからのオナニーの事でいっぱいである。
「絶対に今日は最高のオナニーが出来るぞ」
田辺はよしっ、と膝をポンと叩くと
目の前の佐々木のゴムで縛られ硬くなったペニスを丁寧にトランクスの中にしまい、こちらも丁寧に制服のズボンの中にしまう。
もちろんシャツも制服の中に入れることは忘れない。
自分が触ったところの指紋を拭くことは忘れない。
「練習着のまま帰らずに、制服に着替えてから帰宅するとかえらいな」
と、まだ目を覚さないままの佐々木に向かって呟くと、そのままゆっくり佐々木の体を広場に横に寝かし、最後にもう一度股間の辺りをポンと叩く。
手には確実に強制的に勃起させられた佐々木のペニスの感触があった。
あ、また指紋が……
口元にはひきつったような笑みを浮かべている。
「ごめんよ、でも、さっきまでの俺はもぉ自分では先生を保つことは出来なかったんだ。なんなら今もペニスは痛いくらいに勃起してる。」
「大丈夫、見たところ外傷はないし、ただ気を失ってるだけでしょ。この後トラックがたくさん通るから、誰かに気づいてもらえるよ。そして救急車呼んでもられるから安心して!気づいてもらえた時にちんこがどうなってるか、あぁ俺の股間が耐えられない。また学校で!待ってるからね!!」
そう心の中で呟きながら、目線は眠っている佐々木に、身体は自分の車へと向かっていた。
もちろん、学校に寄る事はせずに丁寧に車を来た方向とは反対方向に向けて、発車した。
先生としてではなく、人として最低な行いをいくつも重ねた上で……
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田辺は家に着くと、一目散にベッドへと向かい、いつもの体勢でオナニーをし始めた。
明らかにいつもとは硬さが違う。張りが違う。反り返りが違う。
最近のストレスの影響を全て受けなかった、大学生の時のペニスが今股間から生えていた。
目を瞑り、先程までの行動を思い出す。
時折出てくる理性も、
「怪我も無かったし、すぐにトラックの運転手が見つけてくれるから大丈夫!」
とすぐにオナニーへと没入していった。
「あぁ!!」
と生徒には聞かせた事も無いような声をあげて、ガチガチに硬くさせた自慢のペニスを扱き、大量の精液を床だけではなく、目の前にあったテレビにまで吐き出した。
「佐々木はまだオナニー出来るかなぁ」
そんな事を考えていると、緊張の糸が解けたのが、急な睡魔に襲われて、そのまま眠りについてしまった。
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次の朝、夏前とはいえ、下半身裸で寝てしまったので、寒さから目を覚ました田辺は、少し明るくなってきた空を見ながら、昨晩の事を考えた。
「今頃どうなってるかなぁ」
シャワーを浴び、取りきれておらず、カピカピになった精液を流し、テレビをつける。
「ニュースにはなっていない…」
ノートのチェックの為に本当は早く学校に向かいたかったが、変な行動をしても怪しまれる。
いつも通りの時間に行こう、そう決めた田辺は携帯を見て驚いた。
そこには教頭と石村先生からの着信が入っていたのだ、時間は今から2時間程前。
この石村先生は、佐々木のクラスの担任の先生である。
「え?なんで、俺に電話?」
ただ、折り返しの電話を入れないのも変なので、ここは教頭の方へと折り返しをかけてみる。
「あ、田辺先生!ようやく繋がりましたね!バレー部の佐々木くんが交通事故にあって救急車で運ばれたんです!すぐに◯◯病院まで来て下さい!石村先生はもう到着しています。」
田辺は、「あ、疑われた訳じゃなくて部活の部員だから電話があったのか」と胸を撫で下ろし、急いで支度をして家を出た。
病院までの道のりは学校とは全く異なり、昨日の現場は見る事なく、病院に到着をした。
平静を装いながらも、一部活の顧問としての焦りを演じ、救急受付で教えられた場所へと向かった。
そこには、教頭、担任の石村先生、そしてご両親が重い雰囲気の中、待っていた。
近くには2名、警察官も立っていた。
「遅くなって申し訳ございません。バレー部顧問の田辺と申します。」
ご両親は目を一瞬合わせたが、すぐに下に逸らしてしまった。それが挨拶のお返しだと田辺は感じ取った。
教頭が田辺の方へやってくると
田辺を通り過ぎ、手招きをして田辺を呼んだ。
病院の廊下を一つ曲がり、両親から少し距離を取ったところで教頭は止まった。
気づくと後ろには石村もついてきていた。
「学校の坂を下った所の広場で昨晩1時30分頃に通りかかったトラックの運転手が、倒れている佐々木くんを発見したそうだ。」
「なんでそんな遅くに佐々木が?」
白々しい返答をする。
「いや、佐々木くんが何時に交通事故に遭ったのかは分かっていない。交通事故と言ったが、自転車にも佐々木くんにも自動車とぶつかった形跡はないから、どのような事故だったのかも分かっていないんだ。」
「部活は昨日は18時までの指示を出していました。」
「佐々木くんって居残りで練習をしてたんじゃ無かったっけ?」
石村先生が入ってくる。
「あぁ、居残りなんて、僕は指示した事はないですが自主練として校庭を走ってるとかは言っていましたね、キャプテンが」
「じゃあその帰りか…いや、宿直の先生も見てないそうだから、何時に帰ったのかが誰にも分からんのだょ」
「自分は昨日は隣町での会合でしたから、部活には最初から顔出してないですね…あの、所で佐々木の具合は?」
俺がそう言うと、教頭は少し発言を躊躇う様子を見せてから口を開いた。
「いや、交通事故としては怪我はほぼなく、軽い脳震盪だそうだ。倒れた所が運良く草の生えた広場、あの朝の指導で田辺先生が立ってらっしゃるあの広場ですょ、そこだったおかけで、打ち身程度で済んだそうだ。意識も私が田辺先生に電話した頃に回復して、少しぼーっとするけどお話は出来たょ」
「しかし、部活はしばらくお休みになりそうですょね…」
「いゃ、まぁ部活の方は身体の回復を待って少しずつ戻れれば彼の為にもなるかと思うんだがね」
教頭はそこで言葉を濁した。
「いや、何とも話づらい事なんだがな…救急車で病院に運ばれた時にな、佐々木くんのな、」
続く…
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投稿:2023.05.25更新:2023.05.30
理性と共に失せた一本
著者 闇夜ギロチン 様 / アクセス 5532 / ♥ 22