西暦21XX年。男女平等が社会に浸透し、女性が女性らしさを求められることはすっかりなくなっていた。
すると世の女性たちは、あることが気になりはじめた。それは男の急所、いわゆる金玉のことだった。
男尊女卑の社会においては金玉はタブーであった。女は男の3歩後をついていくもの。そう教え込まれた女性たちは「なぜ股間に急所をぶら下げている人たちが威張っているのだろう?」と疑問に思いつつも、男に逆らうことができなかった。女性が性に関することを口にするのはとてもはしたないことだとされていたからだ。ましてや「金玉」などと公の場で発言しようものなら男たちから激しく非難され、女性失格の烙印を押されてしまう。
だが今は違う。今や女性の大学進学率は男性を上回り、女性が男性よりも優秀であることが証明された。女性が男に気を遣う必要はなくなった。
社会的地位の高い女性を中心に、男の急所について公然と口にする女性が増えていった。
「なぜ股間に急所をぶら下げている男性が、急所のない私たちと対等なんですか?」
日本中の女性が口々にそう言い始めた。『男の急所』が流行語大賞に選ばれ、ドラマや映画では女性が男性の股間を蹴り上げるシーンがよく見られるようになった。
男性より女性のほうが知能が高いということが明らかになり、政治家や管理職のほとんどを女性が占めるようになったため、こうした社会の風潮に異を唱えることができる男性はもはやいなかった。
とはいえすべての男性が負けを認めたわけではなかった。高名な男性の格闘家が女性の格闘家に何度か勝負を挑んだが、ことごとく敗北した。そればかりか、格闘技の経験がない女性と戦っても、1度も勝つことができなかった。敗因は言うまでもなく、股間にぶら下がっている急所であった。
世界レベルの格闘家でも、女性に急所を狙われればひとたまりもなかった。
「どうして男は急所を身体の外に丸出しにしているの? 生物として問題あるんじゃない?」
急所蹴りを受け、白目を剥きながら痙攣する屈強な格闘家を前に、華奢な女性が腰に手を当てて仁王立ちする。男を見下ろすその目は軽蔑に満ちている。彼女の股間は男性と違ってぺったんこだ。いっさい無駄のない、シャープで優美なフォルムであった。そして胸は豊かに膨らんでおり、男性の急所に比べてはるかに大きかったが、男性にとっては残念なことにそこは急所ではない。女性は乳房を掴まれても平気だが、男性は金玉を掴まれると痛みで気を失ってしまう。容姿、知能、肉体すべてにおいて女性が男性よりも優れていることはもはや疑いようがなかった。
女性たちはこぞって男の股間を蹴りはじめた。母親が息子の、彼女が彼氏の、妻が夫の股間を日常的に蹴るようになった。
「金玉ぶら下げてるくせに偉そうにするな!」
股間を蹴り上げられて泡を吹き失禁する男に女性は容赦なく言い放った。男に抑圧されてきた分、女性たちの怒りはすさまじかった。
急所を狙いさえすれば中高年の女性でも若い男を簡単に倒すことができた。金玉は蹴りやすい場所についているため、守るのは非常に困難だった。女性に喧嘩を挑まれたが最後、男は右往左往し、股間にぶら下がった弱点をだらしなく揺らしながら、女性に蹴られるのを待つしかなかった。戦いがはじまるともう女性は男の股間しか見ていない。急所を守るために男が内股になると、女性は男に平手打ちする。そして男がよろめいて足を開いた瞬間に急所蹴り。それでおしまいだった。
時々お返しとばかりに女性の股間を蹴り上げる馬鹿な男がいたが、当然無駄である。女性の股間は急所ではない。女性の美しく頑丈なマンコは男の蹴りを力強く弾き返した。絶望した男は土下座して許しを乞う。すると女性はパンツを下ろして女性の強さの象徴であるマンコを見せつけたのち、男を仰向けに転がしてその顔面に思い切り放尿する。女性に逆らう男はあっという間にいなくなった。男は文字通り女性に金玉を握られていた。
そんな日本社会に世界中の女性が称賛を送っている。いまや日本は世界一女性が幸せな国だ。諸外国も次々と日本の後に続くことだろう。その栄光の陰で日本の男たちの幸福度は下がっている。だがそれを問題視する女性は1人もいない。それも当然だ。女性の付属物でしかない男は女性の3歩後をついていくのがお似合いなのだから。
-
投稿:2024.08.01
女は強し
著者 未熟児 様 / アクセス 2455 / ♥ 10