今年の花は少し遅い。まもなく清楚で華麗な桜の花盛りとなるだろう。髙い塀で囲まれているこの学園にも桜が美しく、そして妖しく匂いたつ。清純な乙女たちの花園であった場所、どこか淫らで倒錯した花が開こうとしている。
「ここよ、噂の聖美女子学園は」
「へーえ、でも男女共学になったんでしょう」
「そうなのよ。でも女子高の雰囲気は変わっていないみたい・・・・男の子を受け入れてもね」
「どういうことなの?」
「フフフ、この学園に入学した男の子はね。全員女装されちゃうのよ」
「ええーっ、じょ、女装・・・・スカートとか」
「もちろん、スカートだけじゃなく下着もぜーんぶ」
「どうして?」
二人の妙齢の女性、というか主婦同士の会話が続く。好奇の目を輝かせ、驚いたそぶりをしているがまんざらでもない様子だ。男より女のほうがこういう話になるとどこか残酷だ。一人の女性が言葉を続ける。
「一応名目ではお勉強に集中できるようにするための手段」
「どうして女装が手段なの?」
「まあ、一種の去勢ね」
「えっ、きょ・・・・去勢って? そんな・・・・」
(略)
園では女装させて生活させるそうよ。女の子の恰好にさせたら男の子っておとなしくなるみたい。それに集中力が高まってお勉強のほうも向上、だから一流の大学に入れるってわけ」
「女装させただけで、そんなに効果があるのかしら?」
「思春期の男の子を女の子として躾けるみたいよ。そのためにオナニーも厳禁とか」
「えっ、それは無理でしょう。年頃の男の子には」
「でもオナニーしてばかりいたらお勉強に集中できないでしょう。女の子になったら射精もできないわけ。そのための手段として女の子にされちゃうの」
「なんだか可哀そう。でも女装ってなると・・・・」
「男の子は全員寮生活と決まってるの。入園するとすぐに女の子の制服を着せられちゃうみたい。女生徒と同じ白いブラウスに短い襞スカート」
「スカ―トですって! ウフッ、でも何だか可愛らしそうね。下着も?」
「もちろん、ブラにパンティ、それに必要とあればパンスト、ガードルなんかもね」
「えーっ、そこまでするの!}
「そうらしいわよ。男の子に女の子のパンティをはかせると、恥ずかしくておとなしくなるみたい」
「うふっ、パンティは男の子にとってある意味では拘束具」
「そうそう、パンティとスカートじゃ男の子のオナニーもできないわ」
「なるほど、射精を我慢させて・・・・ちょっと気の毒」
「これは学園の方針だから、嫌ならここに来ないわよ」
「でも見てみたい。男の子のスカート姿。屈辱じゃない、それに恥ずかしい。でも、性欲は抑えられない」
「だから厳しい指導が必要なのよ。一年後にどうなっちゃうのかしら? ちょっと興味があるわよねえ、フフフ」
女二人の会話が弾む。
(略)
聖美女子学園、女子教育の伝統を今もかたくなに守り続けている時代錯誤も罪とはならない。いや、いっさい表沙汰にされることはない。そう、ここは異空間、淫魔たちがその倒錯した快楽を貪る場所だ。
「見たいわ、私。圭吾君がスカートはかされる姿を」
「そうなのよ、圭吾君は聖美女学園に行くらしいの。圭吾君のママが熱心に勧めたみたい。しっかりお勉強して難関大学へ合格することをめざしてね」
「でもねえ。可哀そうじゃない。思春期の男の子に下着まで女の子のものを着せて、オナニーも許されないなんて」
「考えればお気の毒ね。圭吾君、スカートはかされること、知ってるのかしら?」
「お母さまは承知の上でしょう。でも、本人には入学するまでナイショのはず」
「うふっ、坊ちゃん嫌がるでしょう、可哀そうに」
「ホンモノの女の子になってしまったりしてね、フフフ」
ママ友たちの興味津々の会話はとまらない。淫靡な妄想は女のほうがたくましいのかも知れない。
満開の桜、その並木道の奥まった所に聖美女学園の鉄の門があった。何者をも受け入れ、受け入れたからには逃がれることのできない門。柔らかに桜の花びらが風に流れていく。
先々、単行本化を計画しています。
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投稿:2025.04.08更新:2025.04.09
聖美女学園.ープロローグ抄
著者 KOU-HIMURO 様 / アクセス 751 / ♥ 5