名門女学園 裏学科 9
・旧華族の危機管理
錦鯉とはよく例えたもんだ、無論彼女らは未成年……だが成人になれば問題はない。元はヤクザが情婦に施したのが始りで時には情婦の娘にも施した母娘錦も見られた。やがて華族にも施す者が出ておりヤクザが管理を担当、ただ戦後はヤクザに対する社会の認識変化により旧華族の方が直に管理している。全身肌着とは文字通り普通の素肌を再現したボディースーツだ。
「これでも少ない方だよ」
「やはり施すのに金がかかるんですね」
「そうさ……まっワンポイントならやっている子もいる」
すると鶫はスカートのホックを外すと無毛の痴丘に刻まれたタトゥーを見せる、その顔は明らかに嶋さんの会話を見越していたのだ。
「……」
「言って置くが私の趣味ではない、彼女の本来の主はベットの上で永眠してしまってね……バイアグラを多用してな……」
これは後で知ったが一昨年に急逝した”兜町の主”と呼ばれた投資家の事で生前には色々と恋路の噂が絶えない御方で、彼女の”遺伝子上の父親”だ、母親はどうも”処分”されており孤児になってしまったが嶋さんが後見人の一人になりこの学園に身を寄せている。
「どうかね?」
鶫の眼は明らかに俺に向けられている。燈は言う。
「では、今夜は鶫に」
……俺としてはあんまり他所の子とセックスしたくはないが仕方ない。
程なくして和斗も合流、顧客対応していたのか少々疲れている。
「涼斗に連絡する前に始まったか?」
「……常任理事の秘書全員対応しました」
この分だと常任理事全員揃っているな、まあ俺がガキの時から知っているし、思えば男の娘化を狙っていたかもしれない……ただ一ノ瀬家の当主夫婦や諸事情と学生時代に問題を起こしてないので回避したって感じだ。
「錦鯉を見せたんですか?」
「ビックリしたよ……上空の警備ドローンに関しても納得したさ」
これも学園を支援している御方が出資した機関で試験中の品物で実験場所として提供……データ管理やらも信頼性がある所だな。
「さてと、皆の所に行くか」
嶋さんは苦笑した、涼斗の表情はかつての自分だ。この女学園の真の姿を見たらなぁ。
先程、和斗が対応したと言うのに俺の一物を視えているのか常任理事の校内秘書全員目の色変えやがったよ……流石に開発されているな、ここは会議室で主に理事会の場だ。常任理事全員集合……余程スケジュールの都合を合わせたな。
「はっ、はっ、どうしても相手をすると先にへばってしまうがな、バイアグラを使ってもな」
常任理事の長の椎屋 一之介(しのや いちのすけ)が苦笑交じりに言う。表では百貨店業界の猛者であり一線を退いたが今でも影響力がある。
「程々にしてくださいよ」
嶋さんの言葉も分かる、往生する時には場所次第では面倒な事になる。鶫の遺伝子上の父親の時にはマスコミにも協力して貰ったらしい。
「わかっておる。既に鶫は待ち切れないようだな」
「……椎屋理事長」
「女の扱いに長けた若手なぞ中々な……」
鶫の眼がイッているよ……嶋さんの息子も真っ白に燃え尽きているので普段は事務所社員数名に嬲って貰っていると言う。何れも将来を担う有能な若手だ。
「隆介は既にリエント女学園の外部理事をしている」
隆介、それが”腹違いの兄”で人工授精して俺よりも先にこの世に出て来た……これにより父親は乳飲み子の俺とその母親を棄てなければならなくなったが、ある男性が手を差し伸べるも母親は無理が祟り急逝、後に伯父と判明するがね……その腹違いの兄を産んだ方も罪悪感により俺を養子縁組する事になる。そりゃあ戦略結婚させられたからな、双方の親類も頷くしかない。
「……仕事ぶりはよいしな」
「まだボロが出てないだけです、鶫だけでは不公平なので……全員相手します、燈は前のみで勘弁してください」
燈はムッとしているが俺としては気を使っているんだよ。
「さて、お題としては本日付けでこの学園に転入する子だ」
スクリーンが降りて来て映写機が顔写真と全身を写した画像を投影、背丈からして姉妹女児と思える二人は並んで立っており青色のスモックには幼稚園で使われる名札がありプリーツスカートは裾が短い。ズームアップしてボーイッシュな子が玉ブラショーツを履いている事に気が付いた。白く透ける生地のシュシュは肌色朝顔蕾を包みこんでいた。
「右側の子は男の娘か?」
「……本名は篠山 一揮(しのやま かずき)であるが源氏名は一子(かずこ)。隣に居るのが姉の真奈美、即ち姉弟だ」
常任理事の一人が言うには水商売上がり母親が認知させた姉弟だ、篠山家の現当主後妻に収まる腹だったが母親は旅行先の某温泉街近くの山中にある秘湯で死亡、どうも谷底で空気の流れが悪いと源泉と共に出るガスにより窒息死する恐れもあり警告看板を幾重も出していたが高を括る性格な奴らが事故り倒れる事も……最も意識不明になり場所柄溺死するのが殆どであり母親も命を落とした。
「(その温泉街の有力者と内通している可能性もあるな)」
俺はそう思いつつも二人を見ていたが説明は続いていた。母親は他殺の線を残しつつも事故死とされ姉弟は認知した男が引き取った。だがここで姉弟が母親の交際相手から調教されていた事が発覚……この学園に預けられる事になる、これが表の話のみで、裏を付け加えると”交際相手が実は篠山夫人から依頼された調教師”と言うから温泉街にも居る可能性も……。