執行官フレイヤと裁定官リアンの処断
■連行
「違う! 俺は何もやっていない!」
カビ臭く、重苦しく湿った空気の漂う詰所の中で椅子に縛り上げられたまま、俺は大声で叫んでいた。
「嘘をつくな! 貴様は幾多の女性を襲った強姦魔ファロスに違いない! 手配書が回っているんだ!」
フレイヤと名乗る女性執行官が激しく俺を叱責する。
旅の途中、メキルの街に立ち寄った俺はいきなり衛兵に呼び止められ、そのままこの場所へと連行されのだった。
「違う! 俺の名はエリオンだ、ファロスではない! 勘違いだ!」
「黙れ! 往生際の悪い男だ……」
その美しい名前に全く似合っていない、短い赤髪と筋肉質な肉体を露にした鎧に身を包んだ執行官の耳に俺の声は全く届かない。
「お願いだ! よく調べてくれ……頼む!」
俺はフレイヤの傍で手配書に目を通している、長い黒髪の大人しそうな女性裁定官に視線を送り、必死に懇願した。
「……確認した……この男は強姦魔ファロス……間違いない」
「そんな! 違うっ!」
俺の叫びなど無視するように、彼女は無表情のまま再び手配書へと視線を落とした。
「いい加減女々しいぞファロス! イグレシオン国王より承りし執行官の権限においてこのフレイヤがオマエを処断する!」
「ふ、ふざけるな! 俺は何もやってない!」
「うるさい黙れ!」
(ガタン!)
「グフッ……」
フレイヤの渾身の一撃で椅子ごと蹴り倒された俺は一人、床の上で悶絶する……。
「リアン、さっさとこのクズ男に裁定を!」
裁定官リアンはしばし無言のまま、手配書と裁定書を読み続ける。
そして、一体何を考えているのかわからない、澱んだ黒い瞳で俺を見つめながら小さく呟いた。
「……ペニス切断……男娼館に拘禁50年」
「そんな! やめてくれ!」
チンポを切り落とされた上に、男娼にさせられる……その非道な裁定に俺は悲痛の叫び声を上げた。
フレイヤは大きく口元を歪めたニヤニヤとした表情で床に倒れたままの俺の頭を踏みつける。
「強姦魔ファロスにふさわしい裁定だな! ざまぁないな! ハッハッハッ! 衛兵! コイツを処刑室へ連れて行け」
■処刑室
俺はフレイヤに呼び出された衛兵達に引きずられ、石造りの血生臭い部屋へと運ばれた。
石畳の床のあらゆる場所に黒いシミがこびりついている……どう見てもそれは血の跡だった。
「やめろ! 俺は何もしていない! 強姦魔でもファロスでもないんだ!」
「うるせぇな、黙ってろクズ野郎!」
衛兵も俺を強姦魔ファロスだと信じて疑っていない……無理矢理に口枷を押し込まれた俺は絶望に打ちひしがれた。
屈強な衛兵に立ち向かえるはずもなく、俺は着る物を全て切り裂かれるとそのまま冷たい石の壁に押し付けられ、鋼の拘束具で固定された。
程なくしてフレイヤとリアンが処刑室へと現れると、衛兵達は整列した。
「処刑準備、完了しました」
「うむ、下がって良い……この刑の執行は男は見たくないだろうからな、クククッ」
衛兵達が下がると、フレイヤはニヤニヤと笑みを浮かべながら俺に近づき、ジロジロと全身をくまなく視姦する。
「へぇ、イイ肉体してるじゃん……さすが名立たる強姦魔、チンポも立派だな!」
(ドスッ)
「(ゴフッ!)」
フレイヤは俺の股間に軽く蹴りを入れる……軽く、しかし、筋骨隆々とした大柄な彼女のその蹴りにたまらず全身の力が抜ける。
白目を痙攣させながら俯き唸り声を上げる俺の髪をつかみ上げると、フレイヤはこう叫んだ。
「痛いか? クズ野郎……私が男じゃなくしてやるよ!」
静かに見守っていた裁定官……リアンが小さく呟く。
「フレイヤ……ソレを破裂させてはダメ……男娼の価値が下がるから」
「チッ……そうだったな」
フレイヤは顔をしかめ、心底残念そうな表情を浮かべる。
「じゃあサッサと切っちまうか、このクズ野郎のチンポを……女を痛めつけたことを後悔させてやる!」
俺はこの不条理な展開を黙って受け入れる事しか出来なかった……。
■執行
「しかし、ホント立派なチンポだな……この街の男もみんなこれぐらいあればイイのにな、チンポは大きい方がイイからな」
フレイヤは乱暴に俺のチンポを掴み上げると、ニヤニヤしながら強く引っ張り上げた。
ズン、ズンと荒っぽく引っ張られる度に、体の奥のチンポの付け根が悲鳴を上げる。
「オイ! この私がチンポを握ってやってるのに、なんで起たせないんだ? ふざけるなよ?」
この状況で……乱暴に握られ、そして今からチンポを切り落とされると言うのに起たせろというのが無理な話だ。
そう思っている間にもフレイヤはズン、ズンと乱暴にしごき続ける。
「せっかく私が手でしてやってるのにムカツク……なぁ、やっぱりキンタマ潰してもいいか?」
「……ダメ」
そう呟いたリアンが仕方なさそうに、俺の傍へと近づきフレイヤの手から俺のチンポを開放してくれた。
「えっ? リアン……やめとけって!」
「(!?)」
リアンは無表情のまま、躊躇なく俺のチンポの先端を口に含んだ。
思いもかけないその大胆な行動に、俺も、フレイヤも驚きを隠せなかった。
「(ウッ! 気持ちいい……)」
小柄で清楚なその姿からは想像もつかないテクニックで舐め取られ、俺のチンポは一瞬で大きく膨らみ、はち切れんばかりに上を向いた。
「私の手じゃ不服だったわけだ……ムカツクなぁ、クソ野郎……女心を傷つけやがって」
そのテクニックに絶頂を迎えそうになった瞬間、リアンは口を離し、手に持っていた紐で俺のチンポの付け根を強く……ギュウギュウと縛り上げた。
「(痛ッ!)」
込み上げていた絶頂感は一瞬で体の奥へと消え去り、俺のチンポは脈動に合わせて大きく……滑稽に揺れている。
リアンは強く、ギュウギュウと縛り上げられたチンポに血液を送り込み、大きくしようとしている。
「……フレイヤ……準備出来た、ペニスを切って……執行」
リアンは無表情のまま淡々と、残酷な宣告を行った。
「(待って! 待ってくれっ!)」
口枷越しに命乞い……チンポ乞いをするが、彼女らの耳には届かない。
フレイヤは腰の短剣を鞘から抜き取り握りしめると、そのまま大きく振り上げ宣告を告げる。
「強姦魔ファルス! 裁定官リアンの裁定通り、この執行官フレイヤが貴様の男の証であるペニスを切断する! 覚悟しろ!」
真面目に執行を宣告するフレイヤだが、その表情は崩れ、悍ましい笑みを浮かべていた……。
(ヒュッ……ザンッ!)
フレイヤの握る短剣が空を切る音と共に、俺のチンポは一瞬で切り落とされ、石畳の上にボトリと落ち、コロリと転がる。
「アッハッハッハ! リアン! 見て見て! コイツのチンポが転がってる! ザマァ見ろよ! アッハッハッハ……」
執行後、ひと時も我慢せずフレイヤは涙を流すほど笑いながら俺のチンポ……俺のモノだったチンポを指さし、喜んでいる。
「(終わった……)」
俺の男としての人生は終わった……不条理な無実の罪で裁かれ、男としての礎を失った。
そう理解した瞬間、その断面から激痛が頭の天辺まで、稲妻のようにズキズキッと走った。
「(グアアアアアアアアアッ)」
口枷の奥から声にならない悲鳴を上げると同時に、体の奥からいきなり絶頂感が迸った。
(ドクッ……ドクドクドクドク)
しかし、強く縛り上げられた断面からはわずかに鮮血が染み出すだけで、白濁したそれが飛び出すことはなかった。
全てが体の奥へと逆流し、残されたチンポの残骸に強い鈍痛が走った……。
「え? キンタマがビクビクしてるけど、もしかしてイッたの? 最後にキモチ良くなれたんだ! 良かったじゃん! アッハッハッハ! 可笑しい~!」
俺の男の証を切り落として上機嫌のフレイヤを横目に、リアンは無言で淡々と俺のチンポを拾い上げる。
その重さを確かめるように握りしめながら、高価そうな銀製の器に収め、蓋を閉じた。
「……ペニス切断の執行……終了」
「あーあ、スッキリした! 助かったキンタマでも眺めながら、女を痛めつけたことを後悔してなさい……じゃあね!」
彼女らが処刑室から出て行く姿を、絶望と痛みで溢れる涙越しに見つめながら、俺は再び絶望し、項垂れた……。
■過ち
俺は男として一番大切なチンポを失い、絶望し、やつれた表情で冷たく粗末な牢のベッドの上で隅で小さくうずくまっていた。
あれから幾日か過ぎ、処置されたチンポの断面の傷が癒え、ボタボタとキンタマと内腿を汚しながら小便を流したことを思い出し嗚咽していた。
そしてこの後、いつかは男娼館に送られのだという現実に慄き、ガタガタと震えている……。
次の瞬間、ガチャリと錠を解く音が響き、小さく悲鳴を上げた。
「ヒッ! 男娼になるなんて嫌だ!! 嫌だッ!!」
そう叫びながら俺は衛兵に引きずられ、牢を後にする……程なくして堅牢な扉の前に着くと、衛兵は声を上げた。
「彼を連れて参りました」
ガチャリと扉が開くと、そこには憎き執行官フレイヤの姿があった。
「ご苦労……入ってくれ、エリオン殿」
「(え?)」
柔らかい絨毯が敷かれたその部屋の作りはとても豪華だった、どうやらフレイヤの居室のようだ。
部屋の中には裁定官リアンの姿もあった……。
「すまなかった……許してほしい」
「……」
二人は床に膝を着き、深く頭を下げる……俺の心拍はゆっくりと上がって行った。
どうやら俺が強姦魔ファルスではなく、善良な庶民であるエリオンだということがわかったのだろう……何を今更な話だ。
「……ゆ、ゆ許すも何もっ……俺は……もう! 男じゃ……ないっ! ん……だぞっ!」
怒りを爆発させようとしたものの、その前に絶望が込み上げ、俺は情けなく大粒の涙を流し、嗚咽して泣き喚いた……。
「すまなかった……心から謝罪する」
「……」
二人は俺の傍に寄り、強く抱きしめてくれた……俺を男でなくした張本人! だとわかっているのに、今はその抱擁に安らぎを感じている。
おかしい、絶対におかしい……ふざけた話だ……。
■謝罪
「どうだろう、私たちを貴殿に抱かせることを謝罪として受け取ってくれないだろうか?」
「……は?」
男ではなくなった……チンポを切り落とされた俺に女として抱かれることで許してほしいというフレイヤの発言に、一瞬頭がおかしくなりそうだった。
「こう言ってはなんだが、私たちは貴族階級の高貴な女だ……本来なら庶民である貴殿が抱くことどころか、裸を見ることなど絶対に許されていないことなのだ」
先ほどまで丁寧に、下手に出ていたフレイヤだが、粗暴で高慢な本性は隠せないようだ。
「あぁ、もうメンドクサイ……女が抱いてイイって言ってるんだから黙って抱けよ!」
本性を露わにしたフレイヤは大柄な体格に対して小さめの鎧をさっさと脱ぎ捨て、一糸も纏わない姿を露わにした。
そのまま俺の粗末な服を力で剥ぎ取り、絨毯の上に押し倒し馬乗りになった。
その高貴なお嬢様の柔らかい部分が、俺のチンポがあったはずの場所に触れている。
「どう? 私のアソコの柔らかさ……感じる?」
筋骨隆々ながらも、柔らかそうなふたつの胸の膨らみと腰つき、その肉体は女性の魅力を十分に醸し出している……しかし、その素行のせいかどうしても色気を感じなかった。
そして黒いコート姿のリアンが近づき、ゆっくりと口を開け、あの時、俺のチンポを舐め取った仕草をする……。
「あっ……!」
俺のチンポの残骸がピクリと反応したのがわかった……俺の男の証を切り落とす裁定をした張本人なのに。
あの時の、チンポで感じた男として最後の快感が頭の中に甦った。
その無残なチンポの残骸は一瞬でカチカチに硬くなり、逞しい肉体のフレイヤ唯一の女性の証である柔らかい肉を僅かに押し返した。
「やっぱりムカツクなオマエ……私のアソコより、リアンの口がいいのか?」
「そういうわけじゃない、しかし……」
どうして酷い目に遭わされた俺が責められなければならないのか……不条理だと感じながらも、何とかしてフレイヤを抱かないと無事ではすまないと感じ取った俺は前に進むしかなかった。
……が、しかし。
「俺は……どうすればいいんだ……」
「女の私に聞くなよ! チンポは……私が切っちまったけど、キンタマはついてるだろ? 男なら何とかしろよ……」
何とかするしかない……俺はフレイヤをベッドへと寝かせ、いつも通り……とはいえ数か月前に隣の街でした以来の行為を頑張ることにした。
ベッドに寝かされたフレイヤは一瞬、女の表情を浮かべ、俺を誘った……。
「早く……来て」
俺は少し背伸びをしてフレイヤに唇を重ね、その柔らかい胸の膨らみの先端をやさしく指先で愛撫した。
大柄で逞しいフレイヤだが、一瞬で女のスイッチが入り甘い吐息を漏らし、色気のある舌を絡めてくる。
傷口が張り裂けそうになるほど硬くなり脈打つチンポの断面に、フレイヤのそこから溢れ出た愛液が飛び散る……。
「アァアアアン!! 早く! 早くッ! チンポが欲しいの! 早くッ!! 立派なチンポッ! ついてたじゃんッ!」
俺は僅かに膨らんだチンポの残骸を、フレイヤの柔らかい部分へと押し当てた……何度も、何度も。
「アンッ! アンッ! イジワルッ! しないでっ! 早くッ! チンポが欲しいのォッ!! 挿れてッ! 私を女にしてッ!」
どうしようもない……俺はこれ以上、フレイヤに何もする事ができない……彼女を女として満たしてやることができない。
俺はもう男ではない……その辛い現実を忘れるように、一心に腰を振り続けた。
「もうッ! イヤッッッ!!!!!」
俺はフレイヤに思いっきり突き飛ばされ、情けなく床に転がった……。
「リアン! やっぱダメじゃんコイツ! チンポ切ったから使えないって、私言ったじゃん! これじゃリアンとする方がマシだって!」
「……」
リアンは無言のまま軽く頷くと、後ろを向き、その黒いコートをゆっくりと脱ぎ捨てた。
小柄ながらも白く、細く女性らしい裸体が露になり、俺は心を奪われそうになった……しかし。
「……!?」
リアンがゆっくりとこちらを向いた瞬間、俺は驚き、慄いた。
同時にフレイヤも一瞬、驚きの声を上げた……。
「リアン! それってまさか! コイツのチンポ!?」
「……そう……彼のペニス……双頭の張型にした」
リアンの女性の部分には、俺のモノだったチンポが張り裂けそうな大きな姿のまま起立していた。
「アァアアア我慢できない! リアンお願いッ! リアンの立派なチンポちょうだい!」
「……わかった」
それはリアンのチンポじゃない! 俺のチンポだ!
そんな思いなど通じるわけもなく、俺の存在を無視してリアンはフレイヤを抱いた。
俺のモノだったチンポがズプリと、フレイヤのそこに飲み込まれる……。
いつも無表情だったリアンの頬は赤く紅潮し、興奮しているのがわかった。
フレイヤと慣れたキスを交わしながら、リアンは大きく腰を振る……リアンの柔らかい部分からも愛液が飛び散っているのがわかった。
「アァアアアアン……リアンにチンポがッ! ついてるッ! いつもより素敵! 最高ッ! リアン! 好きッ!」
「ンッ……私も……フレイヤ……ンッ……好きッ! 愛してるのッ!」
行き場を失った俺はリアンとフレイヤと熱い交わりを眺めながら、硬く張り詰めたままのチンポの残骸を弄ることしかできなかった……。
そんな俺の姿を一瞬、リアンが憐みの眼差しで見つめたのが分かった……その表情は、ほんの少し笑みを浮かべているように見えた。
■隠蔽
「わかってると思うけど……」
「わかってる……誰にも何も言わない」
「誤って、男の証を……チンポを切ったことは心から悪いとは思ってるから、それだけは信じてほしい」
「……わかった」
俺はフレイヤから一生暮らすには困らないゴールドと、詰所のすぐ近くにある多層住居の一室を与えられ、この街から出ることを禁じられた。
俺のチンポは数か月前に隣町で行きずりの女を抱いたときに切り落とされたことにされた……酷い話だ。
住人から同情の眼差しや、イロモノを見る目で見られるのは辛い……。
座って小便をすることには少し慣れてきたが、射精したい欲求を抑える事はできない。
フレイヤがニヤニヤしながら「苦しいだろうからキンタマも切ってやろうか?」と問うてきたが、俺は断った。
例え苦しくても、奴隷商で売られている宦官奴隷のようにはなりたくない……。
フレイヤは知らないが、俺はチンポの残骸を慰める解消方法を得ていた。
「……来たよ」
多くの人が寝静まった夜、俺の部屋に訪れるのは裁定官、リアンだ。
相変わらずの無表情のまま、リアンは俺のチンポの残骸に唇を乗せる……。
(チュ……)
「んっ……」
リアンのテクニックは、チンポの残骸……情けなく平らになった断面に、まだ男だった時の快感を蘇らせてくれる。
何度か訪れるうちに、リアンは体も重ねてくれるようになった……俺のチンポの残骸が、リアンの柔らかい女性の部分を愛撫する。
リアンもそれなりに満足しているように感じた……元々、女同士であるフレイヤと体を重ねていたからだろう。
俺ももう男として彼女を満たすことは叶わないが、男だった頃を思い出せることが嬉しかった。
そうやってリアンの肉体を感じているうちに、俺は思い出した……。
「……どうしたの?」
「いや、なんでもない……」
「……そう……じゃあ、また溜まったころに来るから」
数か月前、隣町で抱いた行きずりの女……暗くてよく見えなかったが、あれはリアンの肉体と同じだった。
無口でほとんど喋らなかったが、俺のチンポを握りながら「……大きい」と一言だけ発した声も似ていた気がする。
あの先端を舐めるテクニックも……でもそれはきっと、気のせいだと思うことにした。
そう思うことに決めた……。
(END)