生殖管理処置法 去勢はタネザウルスにお任せ!2
生殖管理処置法 去勢はタネザウルスにお任せ!2
第一章:バスの出発
翌朝、コウキたちは制服姿で、引率のヤマダ先生とサトウ寮母に連れられ、生殖管理センター行きのバスへと向かう列に加わった。皆、顔色は悪く、口数は少なかった。
用を終えた彼らは、誰一人として互いの顔を見ることなく、すぐに制服を整え、バスへと向かった。
生徒たちが乗り込んだバスは、外観こそ普通の観光バスと変わらないが、車内は静かで、娯楽設備は一切なかった。
バスの前面の案内板には、何の飾り気もない無機質なデジタル文字で、ただ一言、行き先が点滅している。
生殖管理センター 行き
男子生徒と女子生徒は、意識的に通路を挟んで座席を分け、互いに視線を合わせようとはしなかった。
普段、彼らにとってバスに乗っての外出は、年に数回のレクリエーションに限られており、寮の管理された日常からの解放を意味する、数少ない楽しい記憶だった。しかし、今日は違った。このバスは、自由への道ではなく、身体の所有権を国家に譲渡する儀式へと向かう、冷たい檻だった。
生徒たちの微かな期待
バスが寮を出て幹線道路に入ると、コウキは窓の外の景色を一瞥した。心のどこかで、「信号が長く続かないか」「大きな渋滞に巻き込まれないか」という微かな、しかし切実な願いを抱いていた。一秒でも長く、この「自由な」時間を引き延ばしたい。それは、バスに乗った全ての生徒に共通する、無言の祈りだった。
しかし、その願いは無情にも裏切られた。バスは一般道を過ぎるとすぐに高速道路へと進入し、法定速度の限界までスピードを上げていく。
「クソッ。速い…」タケルが、失望と焦燥を込めて呟いた。
コウキは、窓に映る流れる景色が、彼らの逃げ場のない未来を象徴しているように感じた。
バス内の重い空気
コウキは窓の外を眺めていたが、彼の横に座ったタケルは、苛立ちから膝の上で拳を強く握りしめていた。
リョウは、イヤホンを装着し、外部の音を遮断しようと努めている。彼は、これから起こる身体の支配を理性で受け入れようと必死だった。
ジンは窓から遠い通路側に座り、顔を上げようともしない。彼の身体は極度の緊張で硬直しており、完全に周囲との交流を断っていた。
通路を挟んだ女子席も、空気は重かった。
ミナは背筋を伸ばし、引率のサトウ寮母の背中を見つめている。
ユキは隣のアオイに寄り添い、小さな震えが止まらない。
サクラは窓の外を睨みつけ、管理社会への反抗心を燃やしていたが、その反抗の矛先は、目前に迫った身体的な屈辱を前にして、どこにも向けられずにいた。
バスは、無音の中、静かに幹線道路を走り始めた。これから向かう生殖管理センターは、彼らの個性と性を剥奪し、「資源」として再定義する場所だった。
第二章:義務の洗礼
巨大なセンターの出現とエントランスの緊迫
高速道路を降りたバスが向かった先は、郊外にそびえ立つ、巨大で無機質な純白のビルだった。ビルの正面には、太陽光を反射する巨大なガラスのドームが設けられ、その奥にセンターのエントランスがある。
バスが停車すると、彼らは重い足取りで降車した。センターの入り口には、和風の旅館のように、彼らの学校名が丁寧に毛筆体で書かれたプレートが、「歓迎」の文字と共に掲げられている。
歓迎 中央育成ステーション 都心第24校 第20期生 御一行様
「歓迎、だと?」タケルが低い声で呻いた。彼の顔には怒りが滲んでいる。「これから身体を切り刻まれに来たってのに、歓迎だと?ふざけるな」
コウキもその看板を見上げ、皮肉な笑みを浮かべた。「まるで、生贄を迎え入れる儀式みたいだ。すべてを陽気に、無害に見せかけるための演出だ」
生徒たちがエントランスホールに入ると、ホールは既に複数の学校の生徒でごった返していた。ホール中央の巨大な壁面モニターが、まばゆい光を放ちながら点灯する。
画面に映し出されたのは、パンフレットでもお馴染みの、笑顔の緑色の恐竜、タネザウルスだった。彼は、股間にバッテン絆創膏を貼り、誇らしげなポーズを取っている。
🦖タネザウルス(陽気で明るい機械音声):
「ハロー!中央育成ステーション 都心第24校 第20期生の皆さん! ようこそ、生殖管理センターへ!来てくれてありがとう!」
タネザウルスの陽気すぎるテンションと、生徒たちの硬直した表情との間には、耐え難いほどのギャップがあった。ユキは、その甲高い声に怯えるように、コウキの背中に隠れた。
🦖タネザウルス(機械音声):
「今日は、みんなの『人類存続』への第一歩!不安な気持ちはわかるけれど、ボクたちがしっかりサポートするから安心してね!今日、みんなが体験する施設は、主に3つのエリアに分かれているよ」
タネザウルスは、モニターに映し出されたカラフルなCG図を指し示し、分かりやすい言葉で説明を続けた。その説明は、恐怖心を取り除こうとする意図が明白で、切除や授精といった生々しい単語は避けていた。
1. ミュージアムエリア(学習): 人類が種の危機に至った『過去の過ち』と、『資源管理の必要性』を学べるよ!
2. ライドエリア(貢献): みんなの身体資源を安全に提供し、未来の赤ちゃんを迎えるためのアトラクション型貢献を行うエリアだよ!
3. 精子工場エリア(管理): 提供された資源を大切に選別・管理して、人工受精の為の準備をする最新テクノロジーが詰まったエリアだ!
🦖タネザウルス(機械音声):
「ただね、今日はちょっと混雑していて、みんなのライドエリアへのご案内は、約1時間半後になりそうなんだ。ごめんね!それまでに、奥のロッカーで施術着に着替えてね!」
モニターの端に、『施術着着用必須』の指示が点滅した。
🦖タネザウルス(機械音声):
「ロッカーを出たら、そのままミュージアムの見学は自由だよ!少し退屈かもしれないけど、人類の未来のために、ボクたちと一緒に未来を支えようね!」
タネザウルスの声が終わり、モニターが消えると、ホールの奥の扉が開き、更衣室とミュージアムへの通路が示された。
着替えとタネザウルスの屈辱的な指示
生徒たちは無言で更衣室へ向かい、制服のズボンやスカートを脱ぎ、下半身のみを更衣するよう指示された。
彼らがブレザーを羽織ったまま、膝丈の薄い青の施術着に着替える間、更衣室内のスピーカーからは、タネザウルスの声が繰り返し、淡々と流れていた。
🦖タネザウルス(繰り返される機械音声):
「みんな、制服のズボンとスカートは脱いでね!施術着は、下着をつけずにそのまま履くんだよ!イヤリングやネックレスなどの装飾品は全て外してロッカーに。そして、パンフレットも邪魔になるからロッカーに入れて、手ぶらで出てきてね!」
彼らが昨日まで必死に読み込んだ唯一の情報源であるパンフレットまでが、この空間では「邪魔」なものとして排除された。
そして、排泄に関する具体的な指示が続く。
🦖タネザウルス(機械音声):
「そして、みんな!トイレは必ず済ませておこうね!この施設のトイレには、最新の腸内洗浄機能がついているから、ぜひ試してみてね!ほかだと有料だけど、ここは無料だよ!身体をクリーンにして、処置をスムーズに受けよう!」
男子生徒への施術着に関する注意喚起も繰り返される。
🦖タネザウルス(機械音声):
「そして、男子のみんな!施術着の股の部分はマジックテープで開くようになっているから、前後を間違えないようにね! おちんちんが飛び出しやすいから、特に注意だよ!もし女子に見せるようなことが起きたら、『精犯罪』になっちゃうからね!気をつけよう!」
女子生徒への排泄に関する指示も、同時に繰り返される。タネザウルスは、男子生徒への警告とは異なり、丁寧に、しかし冷徹に指示を与えた。
🦖タネザウルス(機械音声):
「大切な女の子たち! 特に注意だよ!みんなの命のバトンを繋ぐ、大切な身体だから、処置の練習は絶対に成功させたいんだ。みんなの施術は体内に装置が入るから、ウンチが溜まっていると、処置中に痛みを感じたり、装置のエラーの原因になるんだ。必ず、必ず、排便・排尿を済ませて、身体をクリーンにしておこうね!」
さらに、ロッカーの中のオムツに関する指示。
🦖タネザウルス(機械音声):
「ロッカーの中に入っているオムツは、みんなへのプレゼントだよ!処置の後、女性は人工精液が漏れたり、男性は傷口からの出血を吸収できるスグレモノなんだ!忘れずに帰りに履いて帰ろうね!」
ロッカーに用意されたそのオムツは、白地のシンプルなものではなく、中央に満面の笑顔のタネザウルスが大きくプリントされていた。その悪意のないキャラクターデザインは、これから行われる行為の非人道性を皮肉にも際立たせていた。
男子生徒側の更衣室の隅で、タケルが小声で苛立ちを吐き出した。
「オムツだと?俺たちを赤ん坊扱いかよ...しかもタネザウルス柄だぜ。最後までふざけ倒しやがって」
リョウは、周囲の目を気にしながら、小声でタケルを制した。「静かにしろ。聞かれたら面倒だぞ。これは、彼らの言う『儀式』の一部なんだ。屈辱に慣れさせようとしている」
「ウンチとか、精犯罪とか、あいつは何を言ってるんだ...」ジンは顔を伏せ、ほとんど泣きそうな声で呟いた。
一方、女子更衣室側の通路で、ミナがユキに寄り添うように言った。「大丈夫、ユキ。麻酔は効くわ。『大切な身体』として扱われるんだから、エラーは起きないように完璧にやってくれるはずよ...でも、腸内洗浄って、どうすればいいの...」彼女の声も震えていた。
コウキは、薄い施術着の裾から見える、下着をつけない股間の冷たさと、これから履かされるタネザウルス柄のオムツという屈辱的な現実に、言いようのない絶望を感じた。タケルは、パンフレットをロッカーに叩きつけ、怒りを噛み殺した。
1時間半の猶予:ミュージアムと腸内洗浄の列
更衣室を出ると、ホールはさらに人で溢れていた。他校の生徒たちも同じような施術着姿だが、制服のブレザーのデザインが異なるため、コウキたち都心第24校の生徒とは容易に見分けがつく。パッと見ても10校近くの生徒がここに集まっており、皆、施術着の裾の下、下着をつけない股間の冷たい感覚に耐えながら立っていた。
コウキたちもミュージアムエリアへと進む。そこには、ざっと400人近い生徒がひしめき合っていた。
ミュージアムの展示は、タネザウルスの説明とは裏腹に、簡素なパネルと図表が中心だった。
• パネルA:出生率のグラフ — 崩壊した先進国の出生率を赤いグラフで示す。
• パネルB:過去の「過ち」 — 「愛」や「自由」といった情緒的な要因が、いかに非効率的な人口増加と資源枯渇を招いたかを批判的に解説する。
• パネルC:人類存続の計画図 — 人工受精と遺伝子選別による計画的な生殖の必要性を図解する。
男子生徒たちは、展示されている簡素なパネルをただ眺める。
「種の危機」「遺伝子選別」「非効率な愛憎」。
コウキは、パネルの文字を追うが、内容は薄っぺらく、彼らの抱える身体的恐怖に勝るものはなかった。
「あと、1時間20分か…」タケルが、自分の腕時計のデジタル表示を睨みながら、乾いた声で呟いた。時間の流れが、まるで砂時計のように絶望的に感じられる。
女子トイレの屈辱的な行列と侵食の予感
女子生徒たちは、タネザウルスのアナウンスに従い、トイレへと殺到していた。女子トイレの前には、数百人規模の長い行列ができていた。
ユキは、顔を真っ赤にしながら、隣のミナに耳打ちした。「私、昨日から食欲がなくて…ウンチなんて出てないのに。でも…やらなきゃ、痛くなっちゃうのかな…」
「大丈夫よ、ユキ」ミナは答えるが、彼女自身も不安に顔を歪めていた。
トイレの個室からは、最新鋭の腸内洗浄装置の作動音と、時折響く水の流れる音が聞こえてくる。
個室に入った女子生徒は、便座に座り、「洗浄」のボタンを押した。すると、温水洗浄便座のようなノズルの清掃音の後に、便器の奥から細い金属の管が静かに伸びてきた。それは、そのまま肛門に正確に刺し込まれ、生徒たちの意思とは無関係に、浣腸液が体内に注入されていく。
個室の中からは、声を潜めた「んっ」「うっ」といった違和感に耐えるような声が漏れる。彼女たちは、この機械に体を侵食される感覚が、すぐに控えている人工授精装置を酷似しているのだろうと本能的に察し、全身に鳥肌が立つのを感じていた。
「人工授精装置も、きっとこんな感じなのかな。私たちには何の拒否権もない…」
その考えが、行列に並ぶ生徒たちの間で、無言の恐怖となって共有されていた。羞恥心は、この無機質な環境においては、何の価値もない感情だった。
タネザウルスの呼び出し
絶望的な時間が続く中、ホールに設置されたスピーカーから、時折、タネザウルスの陽気な声が響き渡る。それは、彼らの時間を削り取る、進行のアナウンスだった。
🦖タネザウルス(機械音声):
「ハロー!中央育成ステーション 都心第38校 第19期生の皆さん! 準備ができたよ!ライド乗り場に集まってね!みんな、未来に貢献できる喜びを噛みしめよう!」
別の学校名が呼び上げられるたび、コウキたちの心臓は締め付けられた。他校の生徒たちが、表情のないまま、まるでロボットのようにライドエリアへと向かっていく姿が見えた。
生徒たちは、そのパネルを前にしても、言葉を交わす元気もなく、ただ1時間半後の運命を待つしかなかった。コウキは、隣に立つユキの小さな手が、彼のブレザーの袖を弱々しく掴んでいるのを感じた。ユキは、コウキに掴まれた袖口を、微かに震える指で握りしめ返した。